ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「クリーチャー・デザイナーズ」

「クリーチャー・デザイナーズ」観ました。

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「今日ほど映画のモンスターたちが熱狂的に支持されていることはなかった!」

映画という文化と共に進化してきた特撮、特殊効果は、巨大なスクリーンに突如、現れる想像上のモンスターたちに驚異的な変化をもたらしてきた。モンスターを実物の物体として表現する特殊造形の時代からデジタルの時代へと突入した今、その魅力と背景を紐解いていく。
グレムリン』『アビス』『ターミネーター2』『ジュラシックパーク』『スターシップ・トウルーパーズ』『スパイダーマン2』など、数々の映画で活躍してきた有名なアーティストとその製作者の間の魅力的な関係性に迫るドキュメンタリー(映画フライヤーより抜粋)。

「ハリウッド版『はたらくおじさん』。こういう裏方職人映画って面白いんよな~!」
予告編を見た時から気になって。うまいこと泊まり勤務明けに機会があり鑑賞に至りました。至ったのですが…ちょっと言い訳してもいいですかね。

比較的新しい映画館。最前列には靴を脱ぎゴロンと寝転んで映画鑑賞できる座席があって。鑑賞日は月曜日。(休日はどうなのか知りませんが)普通料金でその席を利用できる…となるとその席を体験してみたくなる。
泊まり勤務明けの体+寝転んで鑑賞できる座席=睡魔との闘い。
何故そんな簡単な数式が想像できなかったんでしょうかねえ。案の定、ところどころまどろみながら…寝落ちるのは何とか回避。そんな有様だったことを先んじて報告しておきます。
知らねえよ!という話ではありますが…いつにも増してふんわりした仕上がりになること間違いないと思いますので。

映画の世界を彩る『人ならざる者=クリーチャー』たち。
動物。恐竜。怪獣。異星人。はたまた…クリーチャーが作品の中でいきいきと動き回る。観ている者に恐怖を興奮を…時には愛着を沸かせてきた。
そんなクリーチャーを生み出してきた歴代の創造主、すなわち『クリーチャー・デザイナー』たちの物語。

始めは特殊メイクからだった。『オペラ座の怪人(1925)』そして『フランケンシュタイン(1931)』そして着ぐるみ、パペットの時代。ここで『スターウォーズ(1977)』『グレムリン1984)』が現れる。
ストップモーションアニメ、すなわちコマ撮りからのアニマトロ二クス(アニメーション:動作+エレクトロニクス:電子工学)の時代。『アビス(1989)』など。
そしてついにCGの時代が到来。『ターミネーター2(1991)』『ジュラシックパーク(1993)』さらに3Dデジタル『アバター(2009)』へ。なおも進化の途中。

そういえば。かつて映画はフイルム上映だった。けれど2000年代を迎え、2010年頃にはほぼデジタル上映へ移行していった。この過渡期に映画映像技術も大きく変化した…いち映画ファンの当方ですらそう感じる。昔の映画にはその作品なりの良さ、感動がある。けれどもし今同じ題材を今活躍している監督やスタッフが作るとしたら、同じ手法は使わないだろう。なぜなら「いろんな技術があることを知っていて、その中からどれを使えばよりその世界観を語るのに効果的か」を知っているから。

『クリーチャー・デザイナーズ』はかつての技法を生み出し、活躍してきたパイオニアたちのインタビューで構成されている。自分の技術が認められ、大好きな映画の中で自分が生み出したキャラクターが活躍する。その高揚感たるや。
着ぐるみの中に入って苦しい態勢で何時間も過ごした。一つのキャラクターを動かすのに何人もの人間が関わった。気が遠くなるほどのコマからできるのは一瞬のシーン。
割に合わない、労力に見合わない…けれど…それがなんだっていうんだ。
自分と仲間たちで生み出したキャラクターが動くのが、作品の流れを先導していくのが楽しくて。たまらない。軒並み少年のような表情で当時の苦労を語るデザイナーたち。
けれど、技術は常に進化していく。自分の持つ技術の先を持つ者が必ず現れる。

何より大きかったCG技術の出現。『ジュラシックパーク』でアニマトロ二クスではなくCGが選択されたとき。もう何も生み出せないという絶望感でしばらく何もできなかったとアニマトロ二クスのデザイナーは語った。
アナログの時代は終わった。これからはデジタルの時代だ。そう考え、華やかな世界から去った者もいる。けれど…決してアナログ時代のすべてが終わったわけではない。

たとえば、昨年公開された全編ストップモーションアニメの『JUNK HEAD』。アナログな手法を根気強く続けて制作された作品の有無を言わせない唯一無二感。

今作で登場したギレルモ・デル・トロ監督が語った着ぐるみ怪獣の魅力と巨大怪獣やロボットの表現方法について。

つまりは…先述してしまいましたが、今は『映画映像を表現するための選択肢が増えた時代』なんだと思った当方。

この作品が公開されたのが2015年なのでまた新しい時代がきているのでしょうが。終盤にちらっと語られていたことが気になった当方。
それは「納期がどんどん短くなっているということ」「そこに対応できた者が出ると、注文先はもっと短く、と要求してくるようになる」「そうなるといつしかクオリティーが担保できなくなる」(言い回しうろ覚え)
どの業界にも通じる部分ですね。安い、早い。けれどそれを追求してしまうと安かろう悪かろうになりかねない。労働環境の悪化は精神状態も良くない方向に連れていく…悩ましい。けれど。

「もうゴムが劣化してるから動かないけどね。こいつは最高だったよ」かつて活躍した自分の代表作であるクリーチャーの人形を大切に抱えて語ったデザイナーの恍惚の表情。
常に変化する映画映像世界で。困難なことも多いのだろうけれど、結局は「映画が大好きだ」という裏方職人気質。ハリウッド版『はたらくおじさん』はやっぱり面白かった。

本当に…もうちょっとしっかり覚醒できる状態だったらねえ…まどろみ半分…なんだか夢を見ているような気持ちで鑑賞してしまいました。