ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

10月の映画部活動報告

昭:はいどうも。当方の心に住む男女キャラ、昭と和(あきらとかず)です。

和:12月の駆け足感よ!まさに師走!全力疾走なんやけれど?!

昭:まあまあまあ。御託はこのくらいにして、とっとと始めますよ。

「マイ・ブロークンマリコ
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和:ブラック企業に勤めるOLのシイノトモヨ(永野芽都)。ある日ニュースで知った、親友のイカガワマリコ奈緒)の転落死。ショックに打ちのめされながらも、マリコの遺骨がにっくき父親のもとにあると知ったトモヨは、マリコの実家に乗り込み遺骨を争奪。そのままマリコが行きたがっていた岬へと旅にでた。

昭:…いわゆる「メンヘラ案件」なんよな。

和:幼馴染のマリコ。父親から虐待されていて、マリコを守れるのは私だけだった。高校生になってからは、絶えず彼氏が出来ていたけれどどいつもこいつもクズばっかり。結局マリコはいつも私のところに戻ってくる。そんなマリコに時々うんざりするけれど、やっぱり無視は出来ない。なのに…何にも言わずに突然逝った。

私はマリコの全てを知っている。ふらふらして危なっかしいマリコ。私がしっかりしていないと、マリコには他に拠り所がない。そう思っていたのに…なんの前ふりもなく関係が打ち切られた。

昭:「ダチが死んだんで休みます(言い回しうろ覚え)」胡散臭いものを売りつける仕事。加えてブラック。何もかもにうんざりしていた。やってられない日常を送っていたフラストレーションが、親友の死で爆発した。もう無理。

和:仕事放棄をして、家を飛び出した。マリコからの手紙を抱えて向かった先は海辺の街。日常から離脱して、知らない土地で逝ってしまった親友を想う。けれど思い出すのは苦いエピソードばかり。マリコが…あの子が鬱陶しくて突き放したくて…でも出来なかった。

昭:はつらつとした、健やかなイメージがある永野芽郁が随分とやさぐれたキャラクターを演じていた。理不尽な世を踏ん張って生きていた主人公が、親友の死に打ちのめされてドロップアウトして、センチメンタルジャーニーを経てまた生きていく道を選ぶという。

和:ちょっとややこしいこと言うけれど、いいかな。

昭:手短にお願いします。

和:誰かが自ら命を断ったときに、まわりが「なんで私に何も言ってくれなかったんだ」と思うのはおごりではないかと。

昭:ややこしいこと言うなよ!

和:自らの命を断つ。それって相当な覚悟がいるはずなんよな。そんな思いを誰かに相談するかしないかを決めるのは本人以外にいない。言わなかったのならばそれが全て。逆に近すぎる関係ゆえに吐き出せない場合もあるやろうし。

昭:知っていれば何か出来たんじゃないか、止められたんじゃないかと悔やむんじゃないの。

和:確かに「死んだら終わりだ」「生きてこそ」って思うよ。でもそんなの本人が一番分かっているはずで、それでも他に楽になれる手段がない。全てを終わらせるほど辛い状況なんやろう。そこまで追い込まれた状況を他人が背負えるか?一生?勿論色んな状況や人間関係があるだろうから一刀両断には出来ないけれど、この作品の関係性で、主人公の心情と行動はいささかセンチメンタルが過ぎる気がした。むしろ、マリコ事件をきっかけにした、おかれた環境のすべてが嫌になっての現実逃避旅行感が強い。

昭:まあ、あくまでも当方の主観なんで…残された人のとるべき行動は、命を断った大切な人を忘れないこと、いつかは許して受け止めてあげることかなと思うよ。

 

「LAMB」
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和:アイスランドで暮らす羊飼いの夫婦。ある日羊の出産に立ち会った二人は羊ではない何かの誕生を目撃する。夫婦は『アダ』と名付けてわが子として育て始めるが。

昭:ああ…こういう静かに暮らす人の狂気って好みやわ。

和:田舎の牧場で夫婦二人暮し。飼っている羊の世話をする日々。ある日産まれたソレは異形のものだった。

昭:ネタバレは回避したい。そう思うともう何も書けなくなるけれど…初めてソレを見た時の衝撃…義弟と同じ顔してさしまった。あいつ、色々アウトローな奴っぽいけれど唯一まともな人間やったで。あの世界では。

和:なんか実は訳ありそうな夫婦やったもんな。あの義弟と妻の関係とかどう見ても昔なんかあったっぽかったし。一見穏やかで静かな夫婦なんやけれど歪なの。

 

「七人樂隊」

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昭:ジョニー・トー、プロデュースのもと、香港で活躍する7人の監督が1950年代から未来まで、様々な年代の香港を描いたオムニバス映画作品。7作すべてがフイルム時代に敬意を表して、全編35ミリフイルムで撮影された。2020年第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション作品。

和:こういう、色んな監督のショートムービー詰め合わせって2000年代にぽつぽつあって好きやったな。7本もあればさすがに「全部良かった!」とはいかないけれど、やっぱりトップバッターだった『稽古』(サモ・ハン監督)は期待通りやった。監督自身の子供時代を描いているらしい、京劇の学校の話。

昭:『ボロ儲け』(ジョニー・トー監督)もなかなか。三人組が香港で起きた、様々な金融投資絶好のタイミングにことごとく乗れない、もどかしい話。苦々しく笑うしかないの。

和:こういうノスタルジックな雰囲気のオムニバスは観ていて心地が良い。合う合わないはあるけれど、ショートムービー詰め合わせって見つけたらやっぱり観たくなるよ。

 

「RRR」

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昭:1920年代。イギリス植民地時代のインドが舞台。イギリス軍に連れ去られた幼い少女を強奪すべく立ち上がったビームと、大義のためにイギリス政府警察となったラーマ。ある列車事故をきっかけに出会った二人。本来は敵対する立場でありながら、互いの素性を知らぬまま熱い友情を育んでいた二人であったが。

和:でた『RRR』。『バーフバリ』シリーズのS.S.ラージャマウリ監督最新作。

昭:なんかもう色々しんどい。平日は這う這うの体。休日は抜け殻状態で布団の中で過ごしてしまう…そんなミノムシ状態を打破したくて。「ああもうとにかく元気なやつを!」と観に行った今作。元気どころか…ドーピング剤が強すぎて爆発するかと思ったよ。

和:インド映画ならではの長尺、3時間7分をものともしない。終始満面の笑顔。

昭:「映画!最近のやつではどんなんおすすめですか?」映画好きと聞いたらすぐに振られる、無茶ソムリエ質問。いつもは「どういう映画が好きなんですか…(真顔)」から始めていたのに、一律「RRRですかね」と答えていた。長尺さえ乗り越えられるのならば概ね外さない。勢いに圧倒される。けれどそれが気持ちいい。

和:「こいつがいかに強いか」を表現するために暴徒と化した群衆や獰猛なトラを出してくる。展開がいちいちオーバースペクタクル。大爆破。気持ちの高ぶりは歌と群舞で盛り上げる。てんこ盛り弁当インド映画。お腹いっぱい。

昭:ラーマを「兄貴!」と慕うビーム。ひとめぼれしたイギリス人女性へのアプローチをラーマにアシストしてもらうなど、ラブコメ要素も織り込んでほっこりしていたけれど…知ってしまった。お互こいつは敵だと。

和:トンでもカチコミ騒動を起こして、警察に捕まったビーム。ビームに対する処罰(という名の虐待)をなぜか担当するラーマ。鞭打ちに使われた鞭なんて、子供のころに読んだ「ジャックと豆の木」に出てきた豆の木みたいやったよ。そんな仕打ちをしてきた相手を、最終的には「兄貴は大義のためにイギリス政府側についていたんだ」「やっぱり兄貴についていく!」なんてよく思えたなビーム。お人よしすぎる。ラーマよ大義の前には何をしてもいいんかかい。

昭:本当は「仁をもって義となす」であってほしいよな。ただ、虐げられたインド人たちという構図をわかりやすくするためなのか、イギリス人たちはおおむね悪やったよ。実在したインドの英雄の紹介をエンドロールでしていたし、ちょっとプロバガンダ風味もあった。けれど難しい部分は感じさせない。THEインド映画、って言う感じで押し切ってくるエンタメ作品やったな。やっぱりインド映画は一年に一回は観ておきたいと思ったよ。元気がでる。

 

和:駆け足…。かつてないほどの躍動感で年末を駆け抜けているな…。

昭:周りがバタバタ体調を崩している中…あともう少し。体調に気を付けて頑張っていこう。無事に今年が終われるように…。
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