ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「Mank/マンク」

「Mank/マンク」観ました。
f:id:watanabeseijin:20201208183453j:image

 1941年アメリカ公開の映画『市民ケーン』。

オーソン・ウェルズ監督。そして脚本、ハーマン・J・マンキー・ウィッツ。

新聞王ケーンの生涯を、ケーンを追う新聞記者を狂言回しにして描き出した作品。

元々は新聞屋から大富豪へとのし上がり、政治にも進出したケーン。美しい愛人にも恵まれ…しかし結局彼が欲しかったものとは何だったのか。

主人公のケーンは、当時の権力者ウィリアム・ランドルフ・ハーストを連想するに容易く。作品公開にあたり、ハーストに依るあからさまな上映妨害運動が頻発。

しかし世間からの注目によりその年の第14回アカデミー賞に多数ノミネート。結果皮肉にも脚本賞での受賞となった。

その後も英国映画協会でのオールタイムベストとして数回選出されるなど、根強い人気を誇る。

その作品を産んだ脚本家、ハーマン・J・マンキー・ウィッツに焦点を当てた今作。

デヴィット・フィンチャー監督。脚本は父親のジャック・フィンチャーの遺稿。Netflix配信映画。

 

「正直に告白すると、当方は『市民ケーン』未見」。

 

「えっ?!だってこれ‼」間違いない。これは『市民ケーン』鑑賞ありきの映画作品。

余りにも有名。有名すぎて却って「大きいスクリーンで観たい」とかうだうだしている内に未見のままここまで来た。調べれば大まかなあらすじや当時のごたごたも目にする…けれど…言い訳はこれくらいにして。

 

「どうも『Mank/マンク』が面白いらしい」。「デヴィット・フィンチャー監督」。どうにもこうにも気になって。映画館鑑賞に至った当方。

 

どう考えても『市民ケーン』鑑賞ありき。これまでも思うがままに垂れ流してきたこの感想文の中でも、ぶっちぎりの薄っぺらさで駆け抜けていこうかと思う当方。

 

1930年代。『市民ケーン』の脚本を仕上げるべく取り組んでいたマンク。アルコール依存症。怪我からの療養生活を兼ねた半缶詰状態の脚本執筆の日々や、親交の深かった新聞王ハーネストとその妻マリオンとの日々などが描かれていた。

当時もまた、現在とシンクロするかの様に不景気で。そんな中で当方が印象的だったのは「国政選挙活動としての、いわゆるフェイクニュースを映画製作している人たちが作っていた」シーン。

 

「今は~陣営が優勢」「今世の中はこうなっている」皆がリアルタイムの情報源を持っていなかった時代に。貴重な映像は世論を操作するために作られる。

けれど…それは果たして過去の事なのか。現代に生きる我々は本当に沢山ある真実や意見、考えから己の思想を導きだしているのか。

 

浅瀬に居る当方の、何も調べず呟くたわごと。

「今全世界で(割とお手軽なお値段で加入出来て)配信されているNetflixの場で有名監督がこういう作品を輩出している理由は何なのだろう?」

監督父親の遺稿。やりたい題材だった。製作費や会社との折り合い。大手配給会社とのしがらみのなさ。エトセトラ。エトセトラ。多くの条件が重なり生まれた。勿論そうなんでしょうが。

「これが、今社会で起きている事に対して、映画人が声を上げる方法なんだろう」。

何となく。何となくそう思う当方。

 

「一代で成り上がり。富権力を得た男が最後に本当に欲しかったもの」そのもの哀しさを描いたのが『市民ケーン』だったとしたら。

そんな作品を生み出した男が見た時代と。どこかシンクロする今こそとっておきの作品を世に出すべきだと、そう思ったのではないか。

 

ところで。この作品を映画館で観るに当たって、事前に『市民ケーン』を観るという手段…勿論考えましたが。

「そういう付け焼刃で知った様な事、言いたくないな」「もうこれはじっくりいくしかない」。

 

唐突に話が脱線しますが。『不思議の国のアリス』という有名過ぎる作品を生んだ、ルイス・キャロル(チャールズ・ドジスン)。

彼の事を始めて知った中学生の当方が受けた衝撃。けれどそれは「気持ち悪う」では無く。

「こんなに世界中から愛される作品が、元々はたった一人の少女に贈られた物語だった」という極めてシンプルな誕生だったこと。

「ねえ。何かお話聞かせて」そうせがまれて幼いアリス・リデルに語った、思いつきのオリジナルストーリー。それをおこして本にして彼女に贈った。けれどその物語は多くの人の心に残り、世界中で語り継がれている。

 

誰もが知っている作品。これまで鑑賞した多く人の心を揺さぶり、何かを語らずにはいられない。

けれど。その作品が生まれるに至った経緯。そこにはまた別の物語があった。その内情を知った時。今まで見えていた世界が大きく広がっていく。

 

主人公マンクを演じたゲイリー・オールドマンの熱演や「しっかし俳優陣豪華やなあ~」というキャスティング。『市民ケーン』を踏まえたという演出などなど。どう考えてもただのモノクロじゃない。拗らせ拘った、オタク映像作品なのは間違いない。

 

「まあこれはどう考えてもちゃんと『市民ケーン』を観ないと…」。

どう強がっても苦しい。年貢の納め時。言い訳しないで探しに行かないとな。折角映画人が声を上げてれているんやから。

Netflix映画作品。映画館に流れてくるものは相当自信のあるチョイスで選択しているんでしょうが…レベルが高くて毎度唸ってばかりです。