ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

12月の映画部活動報告

昭:はいどうも。当方の心に住む男女キャラ、昭と和(あきらとかず)です。

和:大掃除を無理やり切り上げてやっていますよ。もうこれで今年最後!最後の映画部活動報告。頑張っていこう。

 

『MEN 同じ顔の男たち』
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昭:心に深い傷を負ったハーバー。静かな田舎町で休暇を過ごすことにし、豪華な屋敷を借りた。管理人のジェフリーに案内してもらった後、街を散策していたハーバーは出会う男たちが皆ジェフリーと同じ顔をしていることに気づく。

和:気持ち悪かった。なんていうか、生理的に嫌やった。

昭:そうやな…最後の20分?「一体何を見せられているのか」という気分になったな。

和:冒頭、夫のジェームズが転落死するシーンから始まるんやけれどさあ。もうあの時点から禍々しかったよ。しかもジェームズの死因が「夫婦げんかからの、妻ハーバーへの当てつけ」。もうホンマに、こういうやつ嫌いやねん。

昭:まあまあまあ…話を進めましょうや。心に傷を負ったハーバーは休暇をとって傷心旅行をきめることにする。場所は田舎の豪華な屋敷…というかもはや古城。

和:個人的には一人であんなに広い屋敷って怖いけれど…で、到着してすぐに管理人ジェフリーに館内を案内してもらう。で、この後町で出会う男の顔が全員ジェフリーと同じなの。怖い。

昭:全裸で庭をうろつく不審者。警察官。子供。牧師。立場も年齢も違うのに顔が同じ。怖いな~そんなモンに遭遇したら即座に荷物をまとめてこの町を後にするよ。

和:リンゴの木が印象的であったり、教会が出てきたり、最後のくだりも「アダムとイブ」的なメタファーが云々とか宗教的思想とかも考えたけれど…個人的には「男は幾つでどんな立場であってもこういう風に女を見ているんだな」という嫌悪感を感じた。

昭:性別で括らんといてくれ。それって個体差やろう。

和:あの、屋敷でのハーバーVSジェフリー軍団のデスマッチで牧師がハーバーに放った発言。心底軽蔑したしあそこからはずっとバーバーと同じ表情をしていたよ。

昭:ネタバレ回避したいけれど…ジェフリー軍団って結局夫ジェームズの化身やん。

和:おっと。

昭:ありとあらゆる手段を使ってでもハーバーの心を取り戻したい。でもどんな姿になっても自分の浅ましさがにじみでてしまうから、ボロがでてしまうんよな。また愛し合っていた頃に戻りたいだけやのに。

和:覆水盆に返らずという言葉を知らんのか。愛情って、壊れたらもう戻らないものなんですよ。ましてやあんな気持ち悪いもん見せつけられて心が戻るか。

 

『ケイコ 目を澄ませて』
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昭:生まれつき聴覚障害があり、両耳が聞こえないケイコ。東京の下町にある老舗ボクシングジムに通い日々鍛錬を重ねる彼女は、プロボクサーとして活動しながら普段はホテル清掃員として働いていた。時は2020年。コロナ禍が始まり、誰もが先いきの見えない不安と疲労で極限状態にあったとき。「いつまでボクシングを続けるの?もういいじゃない」母親からは心配され、言葉にできないフラストレーションが彼女の中に溜まっていく。そんなある日、ジムの閉鎖を知ったケイコは~。ケイコを岸井ゆきの。ボクシングジム会長を三浦友和が演じた。三宅唱監督作品。

和:この作品が2022年の映画部活動締めやった。

昭:実際に、聴覚障害があるプロボクサーの小笠原恵子さんがモデルらしいんよな。ゴングの音もセコンドの指示もレフリーの声も聞こえないボクサー。けれど彼女をスーパースターとして描くのではなく、不安や葛藤を抱えて揺れ動く一人の女性として描いた。

和:東京で弟と二人暮らし。普段はホテルで清掃員として働き、仕事終わりにジムに通って練習する。それもまた古い…会長がインタビューで「日本で一番古いんですわ」とか言っちゃうくらいの古さ。

昭:しかもコロナ禍。練習にこれないまま退会してしまう練習生が続出するのも相まって、ジムの閉鎖が決定してしまう。

和:「いつまでこんなことしてるの」「もういいんんじゃない」母親はそう言ってしまうよ。わが子が…女の子が殴り合いして傷だらけになって。見てらんない。

昭:母親の言葉に腹が立つけれど。でも自分でもそう思っている部分がある。リングに立っているとき。相手が怖くて、逃げ出したくなる。でもそれでも辞めたくない。だってボクシングが好きだから。

和:抱えきれない気持ち、吐き出せないフラストレーションを拳に込めたとき。たまらなく気持ちよかった。前に通っていたジムではまともに練習をさせてもらえなかったけれど、今のジムではきちんと教えてくれる。プロにもなれた。けれど…好きなことをやれているはずなのに。怖くて、不安で、逃げ出したくなる。でも諦めたくない。

昭:決して社交的な性格じゃない。むしろ不愛想ゆえにぶっきらぼうな印象を与えがちなケイコ。ましてやコロナ禍で皆マスクをしていて、口元が見えないケイコには相手が何を言っているのか分かないこともある。

和:ケイコが聴覚障害のある友人たちとカフェでランチしているシーンがあって。手話で談笑しているんやけれどなんの字幕もでないの。後、弟がイライラしているケイコに声をかけた時に「勝手に心の中を読まないで」って怒っていたりもした。確かにそうなんよな。映画を観ている側はケイコの心情を知りたくてなんでも情報を欲しがるけれど、リアルの世界で、何もかも自分の思っていることを口に出して表現している人なんていないよ。皆何かしらの想いを秘めているし、揺らいでいるし、どの想いを吐き出すかは個人の裁量やもん。勝手にこういうやつだって決めつけられないよ。

昭:ジムの閉鎖は悲しいけれど、会長との関係性は続いたらいいな。ああいう、尊敬できる人生の先輩って本当に出会えたら奇跡やから。

和:どこを切り取っても良かったけれど、胸にずんときて涙が止まらなくなったのがラストシーンからのエンドロール。

昭:しんどいけれど…皆しんどいのは同じで。自分だけじゃない。皆頑張って生きている。シンプルにそう思えた。良い作品やったよ。

 

和:終わった…お疲れさまでした。

昭:お疲れさまでした。怒涛の畳みかけやったな…納まらないかと思ったよ。

和:ところで。毎年恒例の『ワタナベアカデミー賞』、いつも年内ギリギリに仕上げていたんですが…2022年度は年明けすぐへ変更します。

昭:そこまで一気にやるのはさすがに雑すぎる。あと、一応全部の年間感想文を読み返しての総括から選出しているんで…そこはきちんとしたい。

和:8月以降がダイジェストになってるのがな~。

昭:まあ何はともあれ。今年もありがとうございました。

和:相変わらずのコロナ禍。少しずつ日常生活が戻っているとはいえ、暗いニュースも多くて不安定な気持ちになることもあった一年やった。

昭:仕事が…ただでさえ人員不足な上に色々…崩壊寸前で、踏ん張るけれど心身ともに疲労困憊…ついに11月にこの感想文の形態も変化してしまった。やめようと考えたこともあったけれど、何とか年内分までたどり着けて良かったよ。

和:当方だけでなく、家族も含め、大病を患うことなく健康に過ごせた。映画館で映画も見ることができた。そう思うと決して悪くない、いい年でしたよ。そう思って。

昭:その通りやな。ということで今年も一年、本当にありがとうございました。

和:どなた様にとっても、2023年が良い年でありますように。