ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

11月の映画部活動報告

昭:はいどうも。当方の心に住む男女キャラ、昭と和(あきらとかず)です。年末進行過ぎて、さすがの我々も無駄口叩けません。本気でお尻に火がついているつもりでやっています。

和:本当は日ごろからコツコツやっていれば、こんな年の瀬に慌てなくても良かったんやけれど(小声)。

昭:後悔先に立たず!11月は鑑賞本数が多いんやから!四の五の言わずにやっていくぞ!和:お、おう!

 

未来惑星ザルドス
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昭:1974年公開。ショーン・コネリー主演。ジョン・ブアマン監督作品。

核戦争によって荒廃した未来社会。人類は一部のエリート、ボルテックスにより支配され、文化水準は大きく後退していた。ボルテックスの手下であったゼットは、ある日支配体制に疑問を持ち、彼らの正体を調べ始める。

和:観る前からハードル下がりまくりの当方大好き映画。当然公開初日の金曜日、仕事終わりに観に行ったんやけれどさあ、もうマスクの下表情デレデレやったもん。

昭:1970年代のカルト映画最前線やったな。赤いふんどしパンツ一丁のショーン・コネリー(加えて当時でも絶対流行ではなかったろうヘアスタイル)。ボンド俳優という往年のイケメン枠として黒歴史ではないのか…気になる(妹に画像を見せたところ「寒そう」の一言やった)。
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和:核戦争後の荒廃した未来社会。(その設定に関して、北斗の拳は先駆者なのかそれとも後続者なのかは勉強不足ゆえに分からない当方。とにかく核戦争以降の世界はもれなく荒廃する)ボルテックスという特権階級に住む人種以外はおおむね獣同然の文明まで水準が低下。ボルテックスの手下として狩猟民族のごとく暮らしていたゼットは、ある時この世界のカラクリに疑問を持ち、禁断の扉を開いてしまう。

昭:でっかい顔の形の乗り物?に乗って、ボルテックスたちが住むコミュニティに行きついたゼット。果たしてそこで見たものは~。

和:まあ…いわゆるノアの箱舟的なきっかけで、この世界の中枢は出来上がった。少数精鋭の科学者たちが生み出した理想の楽園。けれど時がたつにつれ楽園はディストピアへ変貌し、下界との乖離も進み荒廃した~というのが大筋だった…と勝手に解釈したんやけれど。そんな素直な説明なんて皆無。そういうことなんやろうな~と慮るしかない。

昭:そう思うと近年の映画ってなんて丁寧なんやろう。比べると「観ろ!感じろ!俺たちは作りたいものだけを作る!説明などせんぞ!」って感じ。あと、上半身裸の女性とかレイプシーンとか普通やったんやなあと思った。まあ、そもそも赤いふんどしパンツ一枚の主人公自体が今のご時世無理か…。

 

アムステルダム
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和:1930年代のニューヨーク。かつてアムステルダムの戦地で出会った医師、看護師、弁護士の3人が、時を経てある殺人事件の容疑者となってしまった。濡れ衣を晴らすべく事件の真相に迫るうち、思いもよらない政治的陰謀に巻き込まれていくが。

昭:『アメリカン・ハッスル』『世界に一つのプレイブック』のデヴィット・O・ラッセル監督最新作。主要な3人の登場人物にクリスチャン・ベールマーゴット・ロビー、ジョン・デヴィット・ワシントンをおいて、史実とフィクションを巧みに交えて描いた作品。

和:…第二次世界大戦開始間際くらいのアメリカ史について当方は不勉強で、そういう社会情勢を多少でもわかっていたらこの作品に対する理解は違っていたかも…って、もう正直に言ってもいいかな!この作品、なんか色々もったいなかったと思う!

昭:豪華すぎる俳優陣。個性的で芸達者な面々に目を奪われるけれど、いかんせん話が分かりにくかった。なんか賢い話してるみたいやけれど俺には分からんな、みたいな気持ちがした。脳内で補填すべき引き出しがこちらになさすぎて。

和:貧しい、苦しい者を見捨てない医師が馴染みの患者家族から死体解剖を依頼されたのをきっかけに、なぜか命を狙われる羽目に。あらぬ罪を着せられそうになり、真相を追ううちに思いがけない陰謀計画を知ってしまう…って「これは(あったかもしれない)真実です」と言われてしまえば何も言えないけれど…どうも全体がうまくつながらなくて。なんでやろうなあ。一つ一つのシーンをおしゃれに仕上げることが優先されてしまったのか…話に集中できなかった。せっかくの布陣を生かしきれていなかったように感じたな。

 

『ある男』
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昭:愛したはずの夫は、まったくの別人でした。

亡くなった夫・大祐(窪田正孝)の身元調査をしてほしいと妻の谷口里枝(安藤サクラ)から依頼された弁護士の城戸(妻夫木聡)。一体谷口大祐という人物は何者だったのか。平野敬一郎の同名小説原作、石川慶監督作品。

和:あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です。

昭:『クリーピー』じゃない!そういう面白作品じゃなくて!至って真面目なヒューマンミステリー作品!

和:面白て!黒沢清監督の名作でしょうが!本当に…時間がないからってカリカリしちゃってさあ…。

昭:茶番に付き合う暇はないからな!…ってこれ、いわゆる「戸籍交換」なんよな。

和:病気の子供を亡くし、離婚したシングルマザーだった里枝のもとに現れた男性。彼は谷口大祐と名乗った。交際を始め結婚。子供にも恵まれ、4人家族として幸せに暮らしていた矢先、大祐が仕事中の事故で急死。そして疎遠になっていた大祐の兄によって発覚した「彼は大祐ではない」という事実。

昭:一体私が愛した男は何者だったのか。かつて離婚調停でお世話になった弁護士、城戸に連絡した里枝。またこの城戸弁護士っていうのがいわゆる人権派の人で…まあざっくりいうと「いい人」なんよな。妻と幼い息子とマンション暮らし。妻は家族が増える未来を見据えてもっと広い家に住みたいと考えているけれど、城戸は今のままでいいと思っている。

和:谷口大祐を名乗っていた、Xという男をなぞるうち、次第に浮き上がってくる「彼が生き辛いと感じ、他の人生を生きたいと思った理由」。亡くなってしまった今、決して交わることのないXの生きざまを、思わず自分に照らし合わせていってしまう城戸。

昭:弁護士として活躍し、妻子を養う。一見何の不自由もない城戸に、誰かしらたびたび突き刺してくる「あんた在日でしょう」「見たらわかるんですわ」。

和:だから何だ。個人的にはそう思うけれど…そう思わない人も確かにいる。いわゆる「出目」で人を判断する輩が。そしてその「出目」をとことん気にして、生きづらくなっている人が。

昭:君が君であるために僕は一体何をしてやれるだろう。けれど結局他人は何もしてあげられなくて。何度も交換して、自分で作り上げた。『谷口大祐』という男を。

和:マイナンバーカードは任意やけれど。運転免許証も履歴書も。写真入りで本人確認を取る今の時代。ましてや家族を作って、戸籍交換した身で生きていくって難しい気がするけれどな~。

昭:まあまあまあ。そういう具体的なこと云々じゃなくて。「どんな名前になっても、里枝を愛し家族を愛したことは変わりない」って言いたいんでしょう。

和:Xと名前を交換した、本来の谷口大祐(仲野太賀)の背景に触れられていなさすぎると感じたけれどなあ。大切なことやと思うんやけれど。

 

『土を喰らう十二か月』
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昭:1978年に水上勉が記したエッセイから、中江裕司監督が紡いだ作品。沢田研二主演、料理研究家土井善晴が料理監修。長野県の山荘を舞台に、作家のツトム(沢田研二)の四季折々の暮らしを、時折東京から訪れる恋人で編集者の真知子(松たか子)との関わりとを絡めながらみせていく作品。

和:土井先生が大好きだから。この作品を観た理由はその一点。なのでストーリーがどうとか一切期待していなかったけれど…想像していたよりは起承転結があったな。もっと坦々とした感じかと思っていた。

昭:長野県の山荘に住むツトム。冬は雪深く、夏もそんなに暑くなさそうな…ああいう田舎にある古い日本家屋で四季の移ろいを感じながら生きていく。憧れるわあ。

和:丁寧な暮らしをされていたけれど。文明の利器に囲まれた現代人の我々にあんな生活ができるかね。雪国出身でもないし。

昭:もはや初老といっていい年齢の男一人暮らしの生活としては美化されすぎている気はしたな。あ、でも確か子供のころお寺で暮らしていたっていう背景があったやん。

和:東京で編集者として働く、歳の離れた恋人。っていう設定、リアリティがなかったなあ。どうしても恋人同士には見えなくて…恋愛関係云々より作家と担当編集者っていう関係性だけで十分やったんちゃうかな。印象的やったのが、寒い中車でやってきた真知子にツトムが暖かい食事を出すシーン。家の中やのに真知子が全然コートを脱がないの。それを囲炉裏に座って暖をとりながら口にするんやけれど…なんか、すぐ帰る人なのか、失礼な人のか、はたまたコートの下は裸なタイプなのか…距離感のある二人やなあって思ったよ。

昭:食事を作るシーンや、出来上がった食卓はさすがのクオリティやったな。どれもこれもめっちゃ美味しそうやった。あれらを目にできただけで満足ではある。

和:あと。途中一部音声がおかしかった(異常に声がこもって聞き取りにくかった)のはそういう仕様だったのか、はたまた映画館の設備の問題やったのか…。

 

『ザ・メニュー』

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昭:ある孤島を訪れたカップル、マーゴとタイラー。目的は予約が取れないことで有名な高級レストラン『ホーソン』でのディナー。有名シェフ・スローウィグが生み出す、ストーリー仕立てな食事に感動しかりのタイラーだったが、違和感と不快感が否めないマーゴは出された食事に手を付けることができなくて。

和:「食べ物で遊ぶな!」もうこの一言に尽きる。

昭:早い早い早い。さすがに結論が早すぎる。

和:専用のクルーズ船で上陸する、孤島にある高級レストラン。そこでふるまわれるストーリー仕立てのコース料理。それがもうどうにも悪趣味で美味しそうじゃない。

昭:まあそもそも当方がこういうでっかい皿に小さく盛り付けてなんかのソースを点状に散らす系の食べ物(言い方)を有難がらないタイプなのもあるけれど。確かに「美味しそう」ではなかっったな。

和:高級レストラン『ホーソン』で繰り広げられる、最後の晩餐。同じメニューを共有する客は、レストランの常連、有名グルメ評論家。いかにも成り上がりな成金3人組。落ち目な役者と彼女。始めこそ盛り上がっていたけれど。コースが進むにつれ、全員に動揺と不安と恐怖が広がっていく…って、もうこのレストラン何がしたいねん。

昭:シェフのスローウィグが客に対して日ごろ感じていたフラストレーションを料理で表現して客に出していたんやけれど…なんていうか…。

和:シンプルに意地悪。そして表現が子供っぽい。話が進むにつれ観ているこちらのフラストレーションが募ってくる。当てつけっぽいことをしなくても、ここに集まった客人はあんたのシンパなんやから話を聞くやろう。仮にも料理人なら、食べ物で遊ぶなよ。

昭:あのうんざりな最後の晩餐で、唯一無二だったハンバーガー。あれだけが滅茶苦茶美味そうだった。映画館を出てからまっすぐマクドナルドに向かってしまったよ。

 

『ザリガニの鳴くところ』
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和:全世界で累計1500万部を売り上げた、ディーリア・オーエンズの同名ミステリー小説の映画化。オリビア・ニューマン監督作品。

1969年。ノースカロライナ州の湿地帯で、地元で有望視されていた青年の変死体が発見された。殺人の容疑を掛けられたのは「ザリガニが鳴く」と言われる湿地帯に一人で住む、街では変わり者と称される少女、カイアだった。

昭:「真相は初恋の中に沈む」父親の暴力から一家離散。最終的に一人取り残され、幼いころから湿地帯で暮らしてきたカイア。学校には一回通ったっきり。川からとれたムール界を馴染みの雑貨屋に売って生計を立て生きてきた。

和:初恋の人、テッド。ひとりぼっちになってしまったカイアにとっては唯一安心できる相手だった。想いが通じて恋人になれたのに、テッドは進学のために町をでてそれっきりになってしまう。その後できた恋人が、地元のボンボン、チェイスだった。

昭:金持ちのボンボンで女たらし。仲良くしているけれどどう見てもカイアはチェイスの本命じゃない。だからチェイスの変死体が見つかったとき、カイアの仕業だと誰もが思った。

和:どうして町に「一人になりたいときに行くんだ」いう鉄塔があるんやろう。あんな下がスケスケフェンスで建付けが悪い足場の鉄塔なんて危ない。チェイスじゃなくても、誰がいつか転落事故を起こすよ。管理責任者は誰だ。出てこい。

昭:違う違う。そういう話じゃない。これは殺人の容疑者として捕まったカイアの半生を振り返りながら、彼女がどうやって生きてきたのか、そして一体何が起きたのかが明かされていくという話やったよ。

和:1969年という時代やったんかもしれんけれど…やっぱり危ないよな。7歳から20歳そこそこまで女の子が一人であばら家で暮らしていくって。行政の手助けも全然なさそうやったし。一人で自給自足で生きた少女。一見弱弱しそうに見えたけれど…人は見かけによらない。彼女は強かった。

昭:カイアを支え続けた雑貨屋夫婦。ああいう人たちこそが本当に優しい人なんやと思う。初めにカイアが提示した条件を飲んで変わらず対価を払い続けた。かわいそうだ、何とかしてやりたい、支えたいと思いながらもいやらしくならない方法。一過性ではなく、継続して対等な関係を保ってそれができるって素晴らしいと思ったな。

 

『母性』
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和:湊かなえの同名小説の映画化。廣木隆一監督作品。 戸田恵梨香と永野芽衣が母娘を演じたミステリー。

ある事件をきかけに「娘を愛せない母親」と「母親に愛されたい娘」それぞれの視点から二人の関係を描いていく。

昭:相変わらず、湊かなえの世界に住む人間は意地が悪いなあと思ったな。

和:母親である戸田恵梨香の視点から描かれる世界と娘である永野芽衣の視点から描かれる世界。二人に流れた時系列は同じでありながら、視点が違うとこんなにも見え方が違うのか。

昭:ざっと時系列を言うと、お嬢様育ちのルミ子(戸田恵梨香)。工場勤務の男と結婚して一軒家に暮らし、娘の清香(永野芽衣)が生まれた。夜勤で夫が不在だった悪天候の夜。祖母(大地真央)とルミ子、清香が三人で休んでいたところに落雷による倒木から火事となり祖母が亡くなった。住処を失い夫の実家に同居することになったが、義母(高畑淳子)からはさんざんいびられるようになって。っていうのが大筋の半分くらいかな。

和:最後に清香が言ってたように、ルミ子は「いつまでも娘でいたい(言い回しうろ覚え)」人やったんやろうな。でもなあ…なんだかんだルミ子って家族に対して献身的やと思うけれどなあ。その原動力が見えにくい人ではあったけれど。そしてどこまでも父親不在の世界。ルミ子の父親。夫。夫の実家。軒並み父性が皆無。

昭:高畑淳子の演技、ピカイチやったな。最後の顛末も「ありがち…」って頷くやつやった。顛末と言えば従兄のお姉さん、本当に良かった。

和:ところでさあ。この話って何となく幸せな雰囲気で着地していたけれど、どうやって二人は和解したんやった?そしてそもそものきっかけになった事件はどうなった?結局なんの糸口もないままじゃなかった?なんか…不完全燃焼感があるんよな。

 

『ドント・ウォーリー・ダーリン』
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昭:夫のジャックと共に、完璧な幸せが約束された街に住む主婦のアリス(フローレンス・ピュー)。平穏で幸せな日々を送っていたけれど…隣に住む仲良しの主婦仲間が徐々に精神に異常をきたし始め。ついに異常行動をとっている姿を目撃し、挙句彼女は何者かに連れ去られた。一体この街では何が起きているのか~。

和:フローレンス・ピュー。『ミッドサマー』からすっかり精神的に不安定なキャラを演じさせたらピカイチな役者枠。今回も千々に乱れていた。そんな言い方しているけれど、フローレンス・ピュー、やっぱり好きやなあって思ったよ。健康的な体型も好感が持てるし衣装もヘアメイクも可愛い。

昭:男にとってのユートピアは女にとってはディストピア、っていう話やったね。

和:砂漠の中にある社宅街。一軒家に夫婦で住んで。男たちは昼間働きにでて女たちは家を守る。彼女たちは全員専業主婦。夫の給料で十分な暮らしができているし働く必要がない。着飾ってデパートで買い物。ここには何でも揃っているから街の外に出る必要なんてない。パーティには夫婦で参加。絵にかいたようなアメリカンドリーム。

昭:何も考えずに毎日を楽しんでいたのに。仲良しの主婦が精神的に不安定になった挙げ句男たちに連れて行かれるのを目撃してから疑問が湧いてしまった。「この世界は何かがおかしい」。

和:わかりやすい展開、話の流れやったけれど手垢が付いた感じではなかった。不穏で悲しくて…「あの時 同じ花を見て 美しいといった二人の 心と心が 今はもう通わない」。愛し合う二人の幸せの定義がズレることで起きた悲劇。畳み掛け方も終わり方も好感が持てたな。思いがけない良作やった。

 

昭:11月は映画鑑賞本数が多かったんよな。観たい作品が沢山あった。でも仕事は毎日が修羅場でヘトヘト。気力も体力も尽き果てて、帰宅しても何もできない。そこにどんどん積み重なっていく映画感想文…遂に心が折れた11月。

和:今も状況は変わらない…でもやっと11月の感想文というヤマは超えたぞ!頑張ろう!後少し!
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