ワタナベ星人の独語時間

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映画部活動報告「戦場のメリークリスマス(4K修復版)」

戦場のメリークリスマス(4K修復版)」観ました。f:id:watanabeseijin:20210630203403j:image

大島渚監督伝説の話題作。『戦場のメリークリスマス』と『愛のコリーダ』がスクリーンに蘇る‼」

2021年。年明け。テアトル映画館で大体的に宣伝された日から。「うわあああ~何となく知っているけれどちゃんとは分かってないやつ!映画館で観られる日が来るとは‼」

これは絶対に観に行かなければと思いながらも。段々とまたもや疫病の影が忍び寄り。当方の住む地域は(当時)日本中で最も危ないパンデミックエリアとして多くの商業施設と共に映画館も休業。

約一か月の映画館休業の中。他県に行けば映画を観られる環境をグッと我慢。そうしてやっと映画館の平日時短営業再開の後、公開初日を迎えた2021年6月11日。

「仕事が終わらん。」当日怒涛の緊急案件で初日鑑賞ならず。上映時間には間に合わないけれど、映画館が閉まる時間には間に合う…滑り込み、お目当ての物販(マグカップ。パンフレット。思わずキーホルダーも)を購入。

まだ休日は映画館は休館を強いられていたため。当方がやっと本編を観る事が出来たのは一週間後の6月18日。満を持しての鑑賞となりました。

 

戦場のメリークリスマス』1983年公開作品。

終戦間近の1942年のジャワ島。日本軍捕虜収容所を舞台に、極限状態にあった男たちの友情と愛を描いた作品。陸軍大尉ヨノイを坂本龍一。不思議な魅力を持つイギリス人捕虜陸軍少佐セリアズをデヴィッド・ボウイ。粗暴なハラ軍曹をビートたけし。イギリス人捕虜ロレンス陸軍中尉をトム・コンティが演じた。

ミュージシャンやコメディアンなど演技経験のない者達も加えた配役。自ら志願したという坂本龍一のサントラ。加えてグランプリ確定と思われたその年のカンヌ国際映画祭の受賞を逃すなど、何かと話題が欠かせなかった作品(受賞したのは『楢山節考』)。

 

「こういう作品やったか。なるほど。」

 

当方の実家にあるVHSビデオたち。何曜日かのロードショーでテレビ放送されたものを録画した古いやつ。他『戦場にかける橋』『ビルマの竪琴』など、正直印象が混在していた当方(流石に『ビルマの竪琴』はインパクトが強くて独立してますけれど)。

余談ですが。当方の母親は、1983年の公開当時映画館に観に行ったらしく。今回購入したパンフレットを興味深く読んでいました。

 

まあ。だらだらとした前置きはいい加減にして。本編の感想文に入ろうと思いますが。

 

英国作家、ローレンス・ヴァン・デル・ポストが書いた「影の獄にて」が原作。

第二次世界大戦中日本軍捕虜であった自身の経験を書いた小説で、彼とハラ軍曹との友情もセリアズとヨノイ大尉との様子もまま描かれていると(当方未読)。

 

ジャワ島日本軍捕虜収容所で日々起きる出来事に対処すべく奔走するハラ軍曹。一見粗暴なハラと温厚なロレンスの奇妙な友情。

 

日本軍の輸送隊を襲撃し捕虜となったセリアズを預かる事になったヨノイ大尉。

軍事裁判で初めてセリアズを見たその時から、目が離せなかった。

ジャワ島の捕虜施設に収容した後も、体調を崩し療養中のセリアズを夜間にそっと見に来るなど、明らかに他の捕虜たちへの対応と違う。かと思えば、たちが怯えるほどの気合を込めて日本刀の稽古をするなど…明らかに様子がおかしいヨノイ大尉。

 

「恋をしなすったんだな…。」溜息交じりの当方(誰だよ)。

 

自身を「満州に居ながら二・二六事件に参加出来なかった自分は死に遅れた身なのだ」と厭世的に語る一方、それでもストイックに生きようとするヨノイ大尉の…おそらく一目ぼれ。その相手は敵国の捕虜。

 

物語の幕開け。オランダ人捕虜を朝鮮人軍属が犯すという事件から始まり。そしてその人物に下った処罰からも、同性愛に対する理解は一切無かった時代背景。

(問題は同性愛云々というより「同意の無いセックスを強要した」事の方に重きを置いて欲しいよ。)

自身がセリアズに抱く感情が一体何なのか。それにヨノイ大尉が気づくのはもう取り返しがつかなくなった後半も後半。

そして。一見飄々と掴み所のないセリアズもまた、幼い弟への後悔を引きずり「俺は裏切り者だ」という思いが経ち切れないでいた。

 

ヨノイ大尉とセリアズ。そしてハラ軍曹とロレンス。

この二組の男たち。後者がブロマンス的な…相棒の様相を呈してくる中、前者たちの息が詰まる感じ。というかどんどんヨノイ大尉が支離滅裂になっていく(当方の印象です)。

 

一本筋が通った日本男児に見えたのにな~。段々ヒステリックで横暴になってきている…誰か。誰かちょっとバシッと言ったって!そう思っていたら…セリアズの抱擁とキス。お前…モテる奴やな。そんなの、日本男児がやられたら…そりゃあ腰抜かすわ。(後ねえ。やっぱり抑えられないから言っといていいですか。「ヨノイ大尉。メイク濃過ぎ」。)

 

戦闘シーンの無い戦争映画。残酷描写も「お国の為云々」も無い。押しつけがましい教訓めいたメッセージは一切無いからこそ、しんみりと寂しい気持ちに包まれる。

 

晩年のハラに「貴方は過去の犠牲者だ」と声を掛けたロレンス。

戦時中。「死に損ないは恥ずかしい」「生き恥を晒すくらいなら死ね」という考えを持っていた日本人と「今の自分は時の運。生き延びるのは恥ではない」と答えたイギリス人。

同じ時代。同じ場所で。けれど置かれた環境が全く違った。もし戦争が無ければ…互いに良い理解者になれたのかもしれない。けれど。戦争が無ければ出会う事は無かった。

 

想像以上に散漫になってしまった感想文に、当方自身が驚いていますが。公開から38年経って。ようやくしっかり鑑賞する事が出来たこの作品が、想像以上に不格好(褒めています)で純度の高いものだったことに、消化しきれていないのが正直な感想。

 

そして。お馴染みなはずなのに…最後の、ハラの屈託のない「メリークリスマス。ミスターロレンス。」に案の定グッと涙が込み上げた当方。

 

ところで。公開初日に映画館で購入したマグカップ。意外としっかりとした作りの、いい大きさで重宝。パンフレットは『愛のコリーダ』も同時収録で読み応えあり。キーホルダーは職場のロッカーキー専用としちょいちょい自慢している当方。

 

此処まできちんと日常で役に立っている物販は初めてかもしれません。
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