ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

8月の映画部活動報告

昭:はいどうも。お久しぶりです。当方の心に住む男女キャラ、昭と和(あきらとかず)です。

和:あれ?この映画感想文やめたんちゃうかったん?

昭:やめてない(溜息)やめてないけれど…色々積み重なって、映画感想文を書く余裕がなくなった。でも映画鑑賞は少ないながらも続けているから、書けていない本数だけが増えていく…気になって仕方がないけれどどうしようもなくて…もういっそこのままフェードアウトしようかとも思っていたけれどそれも気持ちが悪いし…。

和:うじうじしていた時にふと浮かんだ折衷案「もういっそ月単位で締めたらいいんじゃない?」。

昭:「観た映画の感想を全て書く」「観た順番を入れ替えない」一つの作品につき一つの感想文を書いていたことを思うともやもやするけれど…そのスタイルを継続するのは現状では難しい。年内まではこれでいこう、そう切り替えていきたいと思います。

和:辛気臭い出だしはこれくらいにして。進めていきましょうか。

 

『ボイリング・ポイント/沸騰』

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昭:一年で最も賑わうクリスマス前の金曜日。ロンドンの人気高級レストランを舞台にした、95分ノンストップワンショット作品。オーナーシェフのアンディを主軸に、曲者揃いのスタッフやひと悶着起きそうな客たち。制作・脚本・監督のフィリップ・バランティー二がレストラン勤務経験者らしく、飲食店あるある(らしい)トラブルが大小同時に同時多発。それらがうねりながらとんでもない場所へと着地していく。

和:なんてせわしないレストランなんだ。騒がしくて、とても高級レストランには見えなかったよ。しかも…コロナ禍を体験した今、あの店の衛生面がひどくずさんに見えた…。主人公アンディが何回も息子とスマホで連絡するシーンが「調理しながらスマホをいじるシェフ」と気になったり。調理中に調味料入れみたいなボトルから水分補給しているのも気持ちが悪かった。なにしろ「触ったあと手を洗っていない」からさ。

昭:素手で料理してたからな。ってそこばっかりじゃないやろう。白人スタッフには愛想よくしているくせに黒人スタッフにはいちゃもんをつける客とか。招かれざるライバルシェフとグルメ評論家のサプライス来店とか。ナッツアレルギーの客とか。

和:ナッツアレルギーに関しては「踏むぞ踏むぞ~」というフラグが立ちまくっていたもんな。一体どこで?という種明かしも「これはどうしようもない」というがっかり感。

昭:スタッフ間のいざこざも盛り沢山。愛されない支配人。働かないジャンキー。まだ新人で不慣れなスタッフ。エトセトラ、エトセトラ。とにかく皆情緒不安定でぎすぎすしていて仲が悪い。飲食店におけるチームワークとはなんぞ?

和:それに関しては、『渡る世間は鬼ばかり』の中華料理店幸楽をだぶらせてみていたな。当てこすりしながら仕事する従業員。正直そんなの聞きたくないよ、こっちは食事しに来てんだから。バックヤードで時間外にやれ。店内で店員たちが大声で喧嘩している店なんてろくなもんじゃないよ。

昭:あれよあれよという間に怒涛の顛末を迎えていた。目が離せなかったし面白かったけれど…若干「盛りすぎかなあ」という感じも否めなかったな。

 

 

キングメーカー 大統領を作った男』

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和:韓国第15代大統領金大中とその選挙参謀・巌昌録をモデルに描いた作品。光の当たる表の存在として民衆の希望となる国会議員、キム・ウンボム(ソル・ギョング)と同じ理想を追いながらもウンボムの影となり暗躍する選挙参謀のソ・チャンデ(イ・ソンギュン)。この国を変えるためには勝たなければならない。どこまでも清廉潔白であろうとするウンボムと彼をのし上がらせるため裏工作に奔走するチャンデ。志は同じだけれど手段が違う。互いに必要不可欠な存在ではあるけれど最終的には混ざり合わない…。

昭:近年の韓国政治モノ映画って本当に面白いよな。史実をサスペンスドラマ仕立てに作り上げる力量。しっかり重厚なのにわかりやすくみやすい。何となくしか知らなかったことが「そういうことだったのか」になる心地よさ。

和:軍事独裁国家から民主的な政権へと移行したい。その想いは同じなのに…「光が強くなれば、影もまた濃くなるものー」影の存在からもう抜け出せなくなってしまった。二人が決別したときの「あのとき 同じ花をみて 美しいといった二人の 心と心が 今はもう通わない」。『あの素晴らしい愛をもう一度』が脳内で流れた瞬間。

昭:最後のシーン…切なかったな。まぶしい…やっぱりどこまでも光と影なんやなと。

和:でも…時の流れは物事のいい所だけを強くするから…老いたときにしみじみ「あの時は楽しかったな」って思うんじゃないかな。間違いなくともに戦った同志やったんやから。

 

『NOPE/ノープ』

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昭:カルフォルニアの山に囲まれた広大な牧場を舞台に起きた、UAP(未確認空中現象)とそれに翻弄される兄妹を描いた作品。ジョーダン・ピール監督。

和:牧場を経営する長男のOJとその妹エメラルド(以降エム)。無口な兄と奔放な妹が牧場で起きている不思議な現象の正体を突き止めようとするが…開けたらびっくり玉手箱。

和:第一印象ではわかりやすい作品やったなと思ったけれど、後から思うと色々深い…人様の考察を読んだら「聖書!」とか「あの映画からの引用云々」とか。よく見てらっさることよ。こちとら「大型バイクときたらAKIRAやりたくなるんやな~」と思ったくらい。

昭:「考えるな、感じろ」でやってますんで。昔のホームドラマ撮影現場で起きた事故のシーンに感じた違和感も「深追いするな」とすぐさま打ち消しちゃったな。

和:ジョーダン・ピール監督がこれまでの作品同様に訴えたかったテーマの一つが『人種差別』なんやと勝手に思っているんやけれど。今回お馴染み黒人キャストだけでなくアジア人キャスティングをしたことでまた違うステージに進んだ気がしたな。

昭:どういうこと?

和:アジア系の少年がホームドラマでちょっと下に見られるキャラクターだったこと。共演していた猿の誕生日パーティの回で、急に凶暴化した猿が共演していた人間たちを襲ったのに、彼だけは襲われなかった。彼もまた『異質なもの』と扱われていた、いわゆる同類だと猿に認識されたから。黒人だけじゃない。アジア系だって、他の人種だって。多種多様な人種が混在する国だと言いながら結局異質だと認識したものを自分より低く、無意識に馬鹿にする者へのメッセージ。お前たちが馬鹿にしている相手にも感情があって、思いもよらないときに爆発するかもしれないんだぞ。

昭:大人になった彼は芸能界とは縁を切っていて、牧場の近くでテーマパークを経営している。もう華やかな世界には興味がない、というそぶりを見せているけれどどこか未練がましいんよな。かつて自分が出演していた件のホームドラマ関連のモノをコレクションしていたり。

和:「これは一体なんだ」そう思って思わず『それ』を見てしまったら終わり。目が合ったら最後、取り込まれてしまう。そこに気づいたOJ。ならば見ることなく対峙すればいい。

昭:OJが馬の調教師だっていう設定が生きているな。相手を得体のしれない化け物として扱うのではなく、生き物だととらえる。そのうえでどうすれは手なずけられるのか、自分のテリトリーから出て行ってもらえるかを考える。見たい、知りたい、そう思ってしまうと相手に飲み込まれる。性質を見極めて受け流す。OJとエムの大捕り物、見ごたえあったな。

和:個人的には、自宅にいて血の雨がドッシャーてたたきつけるっていうシーンに高揚してしまった。ああいうの…好きなんで。

昭:これまでのジョーダン・ピール監督作品の中でもうまくまとまったな~という印象やったな。

 

 

和:めっちゃ駆け足。8月の映画部活動報告かあ…もう11月後半。秋も深まってきてますよ。

昭:そうやなあ。でもずっと気になっていたんよな。感想文が書けないままになっていくの。これまでのスタイルでは難しい、でも備忘録は残しておきたい。やめるときはちゃんとやめる、フェードアウトは嫌やなって思ってた。

和:このスタイルなら頑張れそう?

昭:それはなんとも。でも年末の映画部総括で今年の映画を振り返りたいから、そこまでは頑張りたいとは思っているよ。

和:映画を観ることが重荷になるなんてナンセンス。本来は「映画が好き」。ただそれだけ。年内走り続けたいけれど…体が資本なんでほどほどにしよう。

昭:ということで。月締めスタイルで続けていく所存で、頑張りすぎないように頑張りたいと思います。

 

映画部活動報告「こちらあみ子」

「こちらあみ子」観ました。

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あみ子はちょっと風変わりな女の子。優しいお父さん、一緒に登校してくれるお兄ちゃん、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいるお母さん、憧れの同級生のり君、沢山の人に見守られながら元気いっぱいに過ごしていた。だが、彼女のあまりに純真無垢な行動は、周囲の人たちを否応なく変えていくことになる。誕生日にもらった電池切れのトランシーバーに話しかけるあみ子。「応答せよ、応答せよ。こちらあみ子」―。

奇妙で滑稽で、でもどこか愛おしい人間たちのありようが生き生きと描かれる。

(映画館配布チラシより引用)

 

今村夏子が2010年に発表したデビュー作「新しい娘」(のちに「こちらあみ子」に改題)。の映画化。監督・脚本森井勇佑。主人公あみ子を新星・大沢一菜。両親を井浦新尾野真千子が演じた。

 

たしか原作は読んだ…けれど、あまり覚えておらず。なので今回映画鑑賞し改めて「こういうお話やったのか」と思ったのと同時に「あみ子に対してどういう印象を持ち、どう対応すればお互いを傷つけないのだろう」と引きずっている当方。

 

「あみ子はちょっと風変わりな女の子」なんてふんわりした言い回しでは収まらない。普通の人たちから見ると異質で馴染まない存在のあみ子。小学校5年生。

基本的に誰にでもずけずけとした言いまわしで会話は一方通行。周囲に合わせる配慮は一切ない。おそらくそういう発想がない。

大好きな同級生のり君を執拗に追い回し、のり君が迷惑そうでもお構いなし。

優しいお父さんとお兄ちゃん。再婚したお母さんはちょっと神経質でぴりぴりしているけけど、今はお腹に赤ちゃんがいて近いうちに弟が生まれる。生まれたらきっとこの家族はひとつになる。

家族や色んな人たちに見守られて、のびのびと暮らしていたあみ子だったけれど…新しい家族が増えるはずたった未来が絶たれたことで、家族の均衡が崩れはじめた。

 

「ああもう一体誰がどう動いたらこんなことにならずにすむんやろう」

終始険しい表情が崩せなかった当方。

 

赤ちゃんを失った痛みから一旦立ち直りかけていたお母さんを打ちのめしてしまったあみ子。お母さんは書道教室や一切の家事…どころか日常生活もできなくなり、自室に引きこもってしまった。

無邪気故の無神経が生んだ暴力はお母さんだけでなく、あみ子と一緒に決定打を打ってしまったのり君をも傷つけ、のり君はあみ子を避けるようになってしまった。

周囲に気を使って円形脱毛症までできていたお兄ちゃんは、家族が崩壊していくさまがいたたまれなくてタバコを吸い始め、夜な夜なバイクを乗り回す集団に混ざるようになり、そして家には帰ってこなくなってしまった。

優しいお父さんは、壊れゆく家族の誰に対しても責めたり非難することなく…ひたすら受け入れようとし受け止められず。家族は崩壊し何年もの月日が流れた。あみ子は中学生になった。

 

相手の言葉や行動のせいで嫌な気持ちになったこと。踏み込んでほしくないテリトリーがあること。集団生活を営む中で往々にして起きるネガティブな感情。けれど感じたことすべてを誰にでも伝えている人などおそらくいない。

どうしても伝えたいと、必死に言葉を尽くす場合がある。だって分かってほしいから。そしてきっと説明すれば分かってくれる相手だから。分かり合いたいから。

けれど。大したことじゃない。ぐっと我慢すればいい。言っても分からない。どうせ伝わらない。そう思って飲み込む場合もある。

 

終盤。お父さんがあみ子に「あの時起きたこと」を絞り出すように告げたあと、ひとり残されたあみ子が「なんであみ子にホンマのこと言ってくれへんかったんやろ(言い回しうろ覚え)」と言ったとき、深いため息が出た当方。

 

「あみ子には言っても伝わらない」そう思ってあみ子と関わることを諦めていた。

一緒にいるとイライラする。言うことを聞かない、行動が突拍子もない、清潔感に欠ける。世間は子供なんてそういうものだとかいうけれど、明らかに逸脱している。幾つになっても変わらない。あみ子は普通の子とは違う。

いつだって会話は一方通行。こちらの話なんて聞いていない。そんなあみ子にきりきり舞いして騒ぐのは疲れる。自分が嫌になる。

 

すでに心身共に疲労困憊だったお母さんは打ちのめされて立ち上がることができなくなった。お兄ちゃんは出ていった。お父さんはお母さんとあみ子に寄り添いながらじわじわ消耗し倒れそうになっている。

あみ子との距離感が絶妙だなと思ったのは、あみ子と同級生の男子。「お前なあ、臭いねん」呼びかけはぎょっとするけれど、決して嫌味たらしくない。交差するかどうかわからないあみ子との会話を諦めずに続ける。さっぱりしている。

「でも。誰もがこの子みたいに関われるわけじゃない」そしてあみ子の周りの人間すべてがこういう関わり方をするのがベストだとは思わない。

 

閑話休題。長らく社会人をしていると、新人指導に関わったり若い人が成長していく姿を見ることがあるんですよ。

歳を重ねるにつれ感じるのは「人間は多くの人が関わって成長する」ということ。

怖い先輩がいる。叱られた自分を慰めてくれる先輩もいる。

新人の頃は慰めてくれる先輩に心を寄せるけれど…実は人を叱るのはすごく勇気がいるということを知るのは随分たってから。

そして。誰かを指導するとき、初めは「自分が全部教えてあげたい」「いい先輩でありたい」と気負うけれど。結局、色んなタイプの人間が関わって人は成長するものだと知る。

 

あみ子の家族は、あみ子を大切な家族だと認識していたからこそ、どう接すれば和やかに過ごせるのかずっと苦しんでいた。

自分が感情をぶつけたらあみ子を傷つけるのではないか。

中学生になったのり君はあみ子が耐えられなくなって爆発した。これはあみ子に関わる人たちが共通してもつ衝動なんだろう。けれどこんな自分が出てしまったら…自己嫌悪で押しつぶされる。

 

「応答せよ。応答せよ。こちらあみ子」

片方しかないおもちゃのトランシーバーに何度も何度も声をかけ続けるあみ子の姿に「それでも…やっぱり…諦めたらあかんと思う」苦しい声を絞り出した当方。

 

最後にお父さんがとった選択。何とも言えない気持ちになったけれど、冷たいとは思わない。確かにあの家族にはいったん休憩が必要だと思うから。

 

時間がかかるだろう。家族がひとつに、なんて都合のよい未来じゃないとも思う。覆水盆に返らず。けれどこの家族なりの落としどころがいつか見つかる。これは願い。

「応答せよ」。来るレスポンスの時まで、あみ子にはいろんな人にもまれて、多くの景色を見て触れて欲しいです。

映画部活動報告「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」

ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」


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ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」観ました。

 

ジュラシック・ワールド〉のあった島、イヌラ・ヌブラルが火山の大噴火で壊滅、救出された恐竜たちは、世界中へと放たれてしまった。

あれから4年、人類はいまだ恐竜との安全な共生の道を見いだせずにいる。恐竜の保護活動を続けるオーウェンクリス・プラット)とクレア(ブイラス・ダラス・ハワード)は、人里離れた山小屋で暮らしていた。

そこで二人が守っているのは、14歳になったメイジ-(イザベラ・サーモン)、ジュラシック・パーク創設に協力したロックウッドの亡き娘から作られたクローンの少女だ。

ある日、オーウェンは子供を連れたブルーと再会する。ところが、何者かによって、ブルーの子供が誘拐される。オーウェンはブルーに「俺が取り戻してやる」と約束し、クレアと共に救出に向かう。

一方、サトラー博士(ローラ・ダーン)は、世界各地から恐竜を集めて研究をしているバイオテクノロジー企業の巨人バイオシンをある目的から追っていた。そこへグラント博士(サム・ニール)も駆けつけ、マルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)に協力を求める。

人類と恐竜の共存の前に立ちはだかる、バイオシンの恐るべき計画とは?

オーウェンとクレア、そして3人の博士は大切な命とこの世界の未来を守ることができるのか?

(映画館チラシより引用)

 

1993年公開『ジュラシック・パーク』を含む三部作から。装いも新たに2015年から始まった『ジュラシック・ワールド』シリーズ。

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かつて『ジュラシック・パーク』で散々痛い目にあったはずなのに。人々のあくなき「恐竜を見たい!」という願望によって再び作られてしまったテーマパーク『ジュラシック・ワールド』。ハイブリッド個体へと進化した(当方には難しいことはよくわかりません。ICチップ内蔵しました程度だった気がするけれど)、安全性を売りにした(何を根拠に?)パークは案の定早々に崩壊。

テーマパークとしては使用不可。恐竜たちだけの楽園と化していたイヌラ・ルブラル島は火山活動が活発化したことにより壊滅した。噴火前に恐竜たちを別の島に移送する計画が遂行されようとしていたが、コレクターたちの横やりもあり、恐竜たちの完全移送計画は転覆。恐竜たちが世界中に放たれるという最大級の事故で幕を閉じた前作。

 

「何故ジュラシック界の人間は過去から何も学ばないのだろう?」

 

毎回毎回…ジュラシックシリーズを鑑賞するたびに当方の脳内に浮かぶフレーズ。

何故?何故恐竜たちと分かり合えると思うのか。食物連鎖の圧倒的強者を前に対等であろうとするのか。飼いならせると思いあがるのか。

 

とはいえ。毎回シリーズ新作が公開されるたびほぼ初日に鑑賞してしまっている当方もまた…「動き回るでっかい奴を見たい!」の動機なんで。同じ穴のムジナですが。

 

これも毎回おことわりしているのですが。当方は「巨大海洋生恐怖症」でして。

でっかい魚類を見ると動悸がする。水族館など小学生以降は近寄ることもしていない。先日昼休憩中にニュースで「水族館で飼育していたジンベイザメが22メートルまで巨大化したため海へ放し、代わりに先月定置網にかかった4メートルのジンベイザメが仲間入りしました」と映像付きで流れた時など、鳥肌が止まらなかったほど。

つまりは…何を言いたいかというと…怖いんですよ。アイツが。

 

「名前も言いたくないアイツ」当方のなかでヴォルデモート級、恐怖の化身。ジュラシック・ワールドシリーズに出てくる恐竜たちに対し「でっけえな」「足が速いんやな」「なつくやつもいるんやな」とのんびりした印象を持つ当方が唯一恐怖を感じてやまない海のアイツ。デカい。デカすぎる。(そして今回もトップバッターで登場にのけぞった当方)

 

「奴ら(恐竜)を生み出し、そして世に放った…世界中が恐怖に包まれた…お前は万死に値する」。

 

ジュラシック・ワールド責任者の一人であるクレアには怒りしか感じていない当方。

よくもまあいけしゃあしゃあと娑婆を歩いているな。経営者及び責任者たちは軒並み拘束し恐竜たちとの共生及び凶暴な個体の回収に全力を尽くせと当方は思うのですが…優しい世界ですよ。

 

「恐竜たちが解き放たれた世界。生態系のヒエラルキーは圧倒的強者の出現で一変した。恐怖と混乱に満ちた世界で。人類はどうやって生きる道を見つけるのか」

かつてジュラシック・ワールドを創設したメンバー。果てはそもそものジュラシック・パークに関わったメンバーも集結。「責任者ででこい!」に対し出てきた彼らが。一体この事態にどう落とし前をつけるのか。

 

という話になると思うじゃないですか。少なくとも当方はそう思っていましたよ。シリーズ最終作と銘打っていたし。

 

「よくここまで入口と出口が違う話に仕上がったな…」

 

はっきり言うと『イナゴ映画』でした。

新進気鋭のバイオシンというバイオテクノロジー企業が遺伝子操作したイナゴを繁殖し生態系を脅かしているとの推測で潜入捜査する旧作メンバー、サトラーとグラント。古代生物学者の二人はかつてジュラシック・パーク創設のさいに見学したさいにパーク内の恐竜たちの大暴走を体験した仲間。二人はバイオシンで働くマルコムと再会する。

 

場面が変わって。現在は山奥で暮らすオーウェンとクレア。二人はジュラシック・パーク創始者の娘のクローン・メイジーを引き取り疑似家族的に生活していた。

けれどある日、なついていた恐竜・ブルーの子供とメイジ-が何者かに連れ去れる事案が発生。何とか後を追ったオーウェンとクレアが行きついた先はバイオシン社だった。

 

こうして新旧二組の主人公たちが合流して、バイオシン社の野望と計画を暴きながら愛する子供を救出する、そんな話になっているんですよ。なにこれ。

 

「こっちは恐竜映画を観にきたんやぞ!」

バイオテクノロジー云々はどこか別のところでやってくれ。こっちは恐竜とのどんちゃん騒ぎが観たいんだ。

…一応ねえ…恐竜三体による取り組みなんかも見せてはくれたんですが…物足りない。

 

とにかく遺伝子操作した枕サイズのイナゴが大量に出てくる。地面をびっしり這うイナゴ。ガラスケースいっぱいのイナゴ。空を埋め尽くすほど飛来してくるイナゴ(「ゴールデンカムイでラッコ鍋食べる羽目になったきっかけの光景に類似)。中盤以降はとにかくイナゴ映画。

 

一応「遺伝子操作して作られた恐竜たちの繁栄に、少しは歯止めをかけられる希望」とも思えなくはないんですが…いかんせん弱い。

 

もやもやしながら映画館を後にした当方。一体…何を観たんだろう。

「おそらく…新たなる支配者とはイナゴのことだ」

さすがに違うとは思いますが。ジュラシック・ワールドシリーズの思いもよらなかった着地。

 

いつかまた。新たなジュラシックシリーズが生まれることがあったとしたら…三部作にはしない方がいい。どちらも一作目は成功するんやから。そこで止めておけば…。

ですが。「ジュラシック界の人は過去から学ばない」んでねえ。そして観客にも共通する、あくなき「恐竜が観たい!」欲。

恐竜にはまた映画館で再会する予感がしてなりません。

映画部活動報告「エルヴィス」

「エルヴィス」観ました。f:id:watanabeseijin:20220814155911j:image

 

最多ヒットシングル記録151回、最も成功したソロアーティストで「キングオブ・ロックンロール」と呼ばれたエルヴィス・プレスリー

1935年にアメリカ・ミシシッピ州の貧しい家に生まれた白人の少年が、黒人音楽にもまれて育った。1954年にメンフィスにあるサンスタジオでのレコーディングでその才能を見いだされ、瞬く間にトップミュージシャンへと上り詰め…そして1977年、42歳の若さでその生涯を閉じた。

溢れんばかりの才能とセンス、圧倒的歌唱力と煽情的なダンス。一体エルヴィスとはどういう人物だったのか。

 

エルヴィス・プレスリーかあ…」

ラスベガスのホテルでのステージ。リーゼントともみあげ。中年太りをスパンコールぎっしりのジャンプスーツで包み。派手な首巻を振りながらねっとり歌う…いうならば晩年の印象が強く、若かりし頃の彼は知らなかった。

なので。今回の作品を観て「こういう人物だったのか…」と知った当方。

恰好良く粋でセクシー。「なんだかいけないものを見てしまった。興奮するなんてはしたないって思うけれど…体が動いちゃう」戸惑いながらも、いつの間にか立ち上がり嬌声を上げてしまう若い女性たち。

けれど。煽情的なアイコンの持ち主は「家族や仲間思いで情に厚く、寂しがりや」な人物だった。

 

主人公エルヴィスを演じたオースティン・バトラー。エルディスにしてはシュッとしてる(大阪の誉め言葉…)線が細いかなと思っていましたが。実際に映像で見たらこそれなりの説得力。成人くらいから晩年の40代までをしっかりと演じきっていた。

そして悪徳マネージャー、トム・パーカー大佐を演じたトム・ハンクス。どちらかといえば良い人キャラクターが多い彼は今回がっつり悪役。

 

実在したアーティストを描いた映画作品は昨今多く作られていて、それら観て当方が思うのは「いかに突出した才能を持っている個人がいたとしても、それを生かすか殺すかは取り巻く環境次第だな」ということ。

 

近年公開されたミュージシャンの自伝的映画は大体構成が似ていて『THEあの有名人の栄枯衰退物語』

「たぐいまれな才能を見いだされ、一気に頂点へと上り詰める」「若さゆえ調子に乗る」「金銭感覚が桁外れで浪費がち」「性に奔放」「保守的な人々から非難されるが熱狂的ファンに大ブーイングを受ける」「家族や仲間思いで情に厚い」「酒やドラッグに溺れる」「昔からの仲間に愛想をつかされ見放される」「とことん落ちぶれる」~からの「本領発揮となる大仕事が大成功」「エモーショナルなラスト」というオペラができている。今作もおおむねこの流れに乗っ取って進行しており、つくづく「環境が違えば…」と苦々しく思った当方。

 

1954年にサンレコードで才能を見いだされてエルヴィスは翌年の1955年にはパーカー大佐の薦めでRCAへとレコード会社を移籍している。

時代は1950年代。2度の世界大戦と経済不況の後。様々な不満と不安から差別が生まれる一方、景気の上昇とともに大衆文化が爆発していった。若者たちはエネルギーを持て余し、体制に押さえつけられる。こと性の解放については問題視されていた。

そんなフラストレーションの塊だった若者たちの前に現れたエルヴィスという存在。片方のつま先を立て、腰を振り煽情的に踊りながら歌うといったパフォーマンスは「社会への反抗=ロックンロール」という構図にピタリと収まった。

 

若者たちからの熱狂的支持を誇る一方、保守的な層からは「ロックンロールが青少年の非行の原因だ」と非難される。ついにはテレビ局からも骨盤ダンスをやめよとの通達がきた。おとなしく従うかと思いきや…大勢の観客の前ではじけ切ったパフォーマンスを披露、興奮した群衆により暴動まがいの事態に発展してしまう。

 

映画では、暴動ののち自宅謹慎状態であったエルディスのもとに届いた母グラディスの訃報。アメリカ陸軍へ1958年から2年間の徴兵生活。勤務地であった西ドイツのアメリカ軍で知り合った所属部体調の娘、プリシラとの出会いと結婚までテンポよく進んでいく。

 

若い妻と可愛いわが子に恵まれ、意気揚々と帰還したエルディスだったけれど…パーカー大佐が契約を取り付けた多すぎた映画出演(1956~1969年で31本!)。

よく言えばチープでキッチュ…はっきり言えば駄作が多く、次第にエルディスの経歴に陰りが見えてくる。

 

「もしパーカー大佐と出会ってなかったら?」エルヴィスの人生はどうなっていたのだろう。けれどそのたらればは無意味だと即座に打ち消す。

 

音楽活動も1962年までは比較的順調だったけれど…ビートルズの台頭に押され、エルディスは時代遅れになっていく。

 

パーカー大佐のプロデュース能力がまともなものであったなら。せめてワンマンではなく良心的な人材が揃ったチームであったら。

パーカー大佐。THE悪徳マネージャー。どこまでもエルディスに食らいつき、搾取し続けた。

世界中を回ってみたいというエルディスの夢を、自身の都合で決して実現させなかった。

 

結局…若いころに自身の才能を開花し世間の注目を浴び、称賛されてしまうと年齢を重ねるにつれて反動がきてしまうということなのか。

時代と自身がシンクロしなくなっていく。加齢に伴い次第に無理がきかなくなっていく己に強く感じる『老い』。若いころ、反骨精神を持っていたからこそ強く感じてしまう『落ちぶれた自分』。始めこそ認めたくない、そんなはずじゃないとあがくけれど…諦観に至ってしまう。精神的フォローとチームでのバックアップ不在の顛末。

 

自身のギャンブルによる借金をチャラにするために、エルディスをラスベガスのホテルに売ったパーカー大佐。

始めこそラスベガスでのコンサートは大成功に終わったけれど。これがホテルによる恒例ディナーショーになるとマンネリ化してしまう。そりゃあそうやろう…。

 

けれど。パーカー大佐の搾取を感じながらも結局彼を切り捨てることができなかった。それが「家族や仲間思いで情に厚く、寂しがりや」なエルディスの性。哀しい。

 

最後。しんみりしてしまった幕切れ。あの歌声に「やっぱりエエ声…」とうっとりする反面、42歳という若さにため息が止まらなかった。

 

栄枯衰退を絵にかいたような…今回改めてエルディスの人となりを知った。

太く短く駆け抜けた…尖って強く見えるけれど実は脆くて。ずっともがいていたのに過ぎ去ってしまえば夢のような生き様…「キングオブ・ロックンロール」。

映画部活動報告「哭悲/THE SADNESS」

 

「哭悲/THE  SADNESS」観ました。

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「哭悲(こくひ):悲しみ泣き叫ぶこと」

 

台湾発パンデミック・ホラー。監督は本作が長編初監督となったロブ・ジャバズ。

 

謎の感染症に長い間対処し続けてきた台湾。専門家たちに“アルヴィン”と名付けられたそのウイルスは、風邪のような軽微な症状しか伴わず、不自由な生活に不満を持つ人々の警戒はいつしか解けてしまっていた。ある日、ウイルスが突然変異し、人の脳に作用して凶暴性を助長する疫病が発生。感染者たちは罪悪感に涙を流しながらも、衝動が抑えられず思いつく限りの残忍な行為を行うようになり、街は殺人と拷問で溢れかえってしまう。

そんな暴力に支配された世界で離ればなれとなり、生きて再会を果たそうとする男女の姿があった。感染者の殺意から辛うじて逃れ、数少ない生き残りと病院に立てこもるカイティン。彼女からの連絡を受け取ったジュンジョーは、独りで狂気の街を彷徨い始める。

(劇場配布チラシより引用)

 

「風邪のような軽微な症状しか伴わない謎の感染症」まさに昨今のコロナウイルス肺炎による事態を彷彿とさせる題材を基に「ウイルスが突然変異し、人の脳に作用して凶暴性を助長する」という厄介な疫病が発生した世界線

 

「残酷すぎる描写に世界が戦慄」「史上最も凶暴で邪悪」「「二度と見たくない傑作」随分な煽り文句にそいつはこの目で確認しておかないとなと腰を上げた次第。

 

まあ…ひとことで言ってしまえば「足が速い系のゾンビもの」なんですわ。

大多数は重症化しない謎の感染症のせいで人々の生活は一変。始めこそ警戒心をもって生活していたけれど、いかんせん自粛生活が長い。長引くにつれて気持ちが緩んでいく…というタイミングでウイルスが変異する。「脳に作用して凶暴化する」というものに。

 

人を襲う。そこで傷ついた者は即座にウイルスに感染。感染者たちは徒党を組み新たに人を襲う。まさにゾンビシステム。旧タイプとの違いは、昨今はやりの足が速いこと。

物音を聞きつけ、相手の姿を確認したら即座にダッシュ。飛びかかり、噛みつき、食い破る。「感染者たちは罪悪感に涙を流しながらも~」そうでしたかねえ?結構人の心、失っていたように見えましたけれど。

 

物語は若い同棲カップルの朝から始まる。もう起きて仕事に行かなくちゃ、というまどろみ。近々休みを合わせて旅行に行こうと約束していたのに、彼氏のジュンジョーの仕事の都合でとん挫しそうなことに苛立つ彼女のカイティ。のらりくらりいなされながら機嫌を直し、ジュンジョーの運転するスクーターに乗せてもらって電車の駅まで送ってもらった。いつもの二人のルーティン。隣に住むおじさんも「仲良しだねえ」とほのぼの声をかける。

 

けれど。カイティを見送ったあと、馴染みの店でテイクアウトに立ち寄ったら。

不気味な老婆が現れたと思ったら、あれよあれよという間に店が阿鼻叫喚に包まれる大惨事に発展。ホットプレートに顔を押し付けられる店主。訪れていた客たちが恐怖の表情で立ち上がったと思いきや、明らかに人ならざるものに変貌したそいつらは徒党を組みまだまともな者に襲い掛かってくる。

命からがら店から自宅へ逃げジュンジョー。なんだなんだ。さっきまでいつも通りの日常だったじゃないか。混乱しながらテレビをつけたらもうそこには日常などない。どうやら世界は突然変異したらしい。

 

ついさっき二人を微笑ましいといってくれた隣のおじさんがベランダを破って侵入。揉みあったあげく殺してしまったジュンジョーは、駅まで送った恋人カイティの安否が不安になる。

 

そこからはほぼカイティの目線で物語は進行。通勤のため乗っていた地下鉄での大惨事。たった一人の感染者の登場から瞬く間に車内が血の海になり果てる。

 

この地下鉄でたまたま居合わせたくたびれたおじさん(感染者)にひたすら追われるのが中盤以降のメイン。もうこのおじさんがやたらしつこい。しかもどんどん強くなる。

感染する前から、隣に座ったカイティにウザ絡みしてきたおじさん。そのなれなれしさにぎこちないながらも拒否感を示したら、キレてきた。ただでさえ関わりたくない相手なのに、感染したら無双で周りの者をなぎ倒しつつどこまでもカイティンを追いかけてくる。

 

電車で重傷を負わされた女性を病院へ運ぶカイティン。バリケードを作り、感染者侵入を防いでいたのに…結局感染者たちが侵入し、そこもまた地獄へと化してしまう。

 

シンプルなストーリー。彼女を心配し、彼女の元へはせ参じていこうとする彼氏がその道中で目の当たりにする地獄絵図。とはいえ彼女も決して震えて待っているだけじゃない。感染者たちと戦い、なんとか逃げおおせる(主人公は死なないからな~というお約束)。

 

けれど…二人が再会したとき。物語はハッピーエンドになるのか。

 

確かに昨今のパンデミック情勢から着想を得た作品ではある。けれど「長らく抑圧された人々の精神がウイルスの変異をもたらし…」とか「世界を救うためには云々」という難しい話はなし(一応「この事態を収めるには」的な話をするキャラクターはいましたが…あいつもまともじゃなかった…)ただただ「足の速いゾンビもの」として観ていればいい。

 

先述の「残酷すぎる描写に世界が戦慄」「史上最も凶暴で邪悪」「「二度と見たくない傑作」。個人によってふり幅があると思いますんであくまで当方比ですが「残酷すぎたり市場最も凶暴で邪悪」ではなかった。なんというか「悪趣味ギリギリで攻めてきたな」という感想。

…けれどならば当方は一体何を観たかったのか。何を求めていたのか。

 

映画館からの帰宅。ぐるぐる脳内で考えましたが。ろくなものではありませんでした。


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映画部活動報告「神は見返りを求める」

「神は見返りを求める」観ました。
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イベント会社に勤める田母神(ムロツヨシ)。合コンで出会った、YouTuberゆりちゃん(岸井ゆきの)。再生回数に伸び悩むゆりちゃんを不憫に思い、頼られるがまま配信活動を手伝い始めた田母神。二人で組むようになったからといって内容も再生回数も飛躍したわけではなかったけれど、番組を重ねるうちに距離が近づき、よいパートナー関係を築きつつあった。

ある日、田母神が仕事で多忙になり、一人だったゆりちゃんは田母神の同僚・梅川(若葉竜也)の紹介で人気YouTuberチョレイカビゴン吉村界人・淡梨)と知り合う。勢いで彼らの体当たり企画にコラボ参加したら…バズってしまった。

突然人気YouTuberの仲間入りを果たしてしまったゆりちゃん。

ゆりちゃんと田母神ではどうにもあか抜けなかった配信内容も、イケメンデザイナー・村上アレン(柳俊太郎)を紹介してもらったことで問題解決。

ほのかに恋の予感を感じさせていた田母神とゆりちゃんの関係は一転、とんでもない方向へと舵をきる。

 

吉田恵輔監督最新作は「見返りを求める男と恩をあだで返す女」の物語。

 

昭:はいどうも。当方の心に住む男女キャラ『昭と和(あきらとかず)』です。

和:また我々の登場か…でもまあ、作品の傾向から「男女の心の機微云々案件」かなと思っていたよ。

昭:とはいえ我々は当方の心から派生しているので。毎度対立するような構造では語られません。というお断りをしておいて。茶番はここまで。おとなしく始めますよ。

 

和:『ヒメアノ~ル』などでおなじみ、当方的には『さんかく』が印象的だった吉田監督。

とにかく「前半はいい雰囲気を醸し出していた人間関係が途中からとんでもない修羅場へと急転直下する」「前半はほのぼの、後半はホラー」という展開をみせる作風。

昭:今回も御多分に漏れず「恋が始まる5秒前」から「泥団子の投げ合い」へと変貌。「あのとき同じ花を見て美しいといった二人の心と心が今はもう通わない」もう見事なまでの感情のオセロひっくり返し。

 

和:コールセンターで働く傍ら、YouTuberとして活動しているゆりちゃん。けれどその内容は素人全開。当然登録者数も再生回数も伸びない。そんなゆりちゃんと合コンをきっかけに知り合った田母神。

昭:イベント会社勤務。ならば録画や動画編集スキルも自分よりできる。そう思って田母神に連絡したゆりちゃん。もうここから始まっているんよな~。おどおどした感じで頼ってきているようで、ちゃっかり相手を値踏みして利用してんの。

和:待て待て。険がある。でもさあ、田母神もまんざらじゃない感じで手伝ってたやん。

昭:当たり前やろう!田母神の年齢設定知らんけどさあ!推定40代のもっさりした独身男性が!明らかに人数合わせで呼ばれた合コンで20代の女子と知り合って!動画配信してるから手伝ってって頼られれたらもう…何よりも先行して休日返上するよ!

和:声が大きい。まあでも初期の気持ち悪い着ぐるみ着た田母神とゆりちゃんの戯れている姿…あの頃はよかったね。

 

昭:ゆりちゃんよりスキルのある田母神の参入で若干ましな番組にはなったけれど…いかんせん田母神のセンスも古いんよな。

和:だからといってゆりちゃん一人に任せるともうどうしようもない。おもしろいものを作る企画力が皆無。挙句行きつけの居酒屋の裏メニュー(違法)をアップして営業停止に追い込んでしまう。

昭:そしてゆりちゃんの尻ぬぐいをしてくれたのが田母神。前半の田母神はとにかく誰に対しても滅私奉公のスタイル。人当たり穏やか。頼られればなんでも答え、しかも押しつけがましくない。

和:会社の元後輩。借金があっていまだに田母神に金の無心をしてくる。同僚の梅川には見放せと言われたけれど無下にできない。あかんな~時間とお金にルーズな奴は本当にあかん。信用に値しないよ。

昭:案の定というか。よりにもよって田母神が元後輩の相手をしなかった後にあてつけがましく自殺。借金の連帯保証人になっていた田母神も窮地に陥ってしまう。

 

和:同じ頃。田母神が繁忙期で一緒に動画活動することができず、一人になっていたゆりちゃん。勉強になればと人気YouTuberチョレイカビゴンのイベントに参加したら。イベントを担当していたのが田母神の同僚・梅川だった。

昭:梅川を介してチョレイカビゴンとお近づきになれた。そこでゆりちゃんもYouTuberと知った二人に乗せられて『体当たり企画』に参加。その動画から一気に開花した。

和:どうなんですか?男性目線としてああいう動画。

昭:俺はエロというより…年齢的に田母神と同じくらいやし…若い女の子が自分の体を不特定多数に晒してそれをネタにするみたいなのは痛々しくて嫌かな…親御さんに申し訳ない気持ちになる。だから田母神がゆりちゃんに言った言葉には深く頷いたな。

和:ところがどっこい!ここがゆりちゃんと田母神の軋轢の始まりなんだな!

 

昭:ゆりちゃんって、そもそもなんで動画配信を始めたんやろうな。

和:見落としていたらアレやけれど、はっきりとは語られていなかった気がする。だから推測やけれど…動画配信に興味があったからという動機の他に、ただでさえ地味なOL生活、小綺麗な同僚からちょっと見下されている自分。だから周りに一矢報いたい…目立ちたい、周りとは違う。という気持ちがあったのかなあと。実際に動画配信を始めたけれど、持ち前のセンスではどうにも伸びなくて、ますます小ばかにされて。くすぶっていた部分があったから、今回のチャンスに飛びついた。あの、会社を退職するときのゆりちゃんの勝ち誇った顔。ざまあみろ。絶対こういう顔して辞めてやろうと思っていたんやろうなって。

 

昭:先述の動画をきっかけに人気がでて。新進気鋭のニューカマーに躍り出た。そうなった途端、これまで苦労を共にしてきた田母神を切ろうとしたゆりちゃん。焦る田母神。おいおいお前、ちょっと待て。誰のおかげでここまでやってこれたと思ってんねん!なんでトカゲのしっぽ切りしてんねん!

和:笑止!今の私があるのは自分自身のおかげですけれど?確かに一緒にやってた時もあったけれど。動画はハネたのは田母神のおかげじゃない。

 

昭:ここからは悲しいまでの泥仕合になるんよな。これまでの紳士的な態度から一変、ゆりちゃんへの攻撃へ転ずる田母神。自身もYouTubeチャンネルを開設。けれどその内容はひたすらゆりちゃんへの誹謗中傷。

和:小さい…。女心が冷める所以「器が小さい」。ヒステリックにわめく男なんて最低。これまで頼りになる人物だと思っていたからこそ尚更みっともなく見えて嫌悪感で一杯になる。

昭:根底にあるのは「ありがとうって言えよ!売れないときに支えたのは俺やろう」という気持ち。

和:それはゆりちゃんだけじゃない。本当はこれまで尽くしてきた人たち皆にそう言ってほしかったんやろう。俺に感謝しろ、俺のおかげやんかって。でもこれまで余裕のある人物を演じてきた田母神の豹変に誰もついていけなくて引いていたら…大爆発して手が付けられなくなった。

昭:なんでこんなことになっちまったんやろうな。一時は仲良くやっていたのに。

 

和:人気YouTuberに囲まれて。売れっ子らしくふるまいながらも、ふと自分がもともとやりたかったことを想うゆりちゃん。顔出しで人気YouTuberの誹謗中傷を繰り返したことで社会的地位も失った田母神。さんざんやりあって、けれどどうしても相容れなくて。へとへとになった二人が互いに新しい道を見つけた…ところのあのラスト。

昭:よしととるのかバットエンドととるのか。

和:言葉では通じなくなった相手にそれでも気持ちを伝えよう、たとえそれが弾丸になっていたとしても、いつかは納得してくれるはずだと諦めないのはある種の愛ではあったと思う。どうでもよければ見限ればいい話やから。ただ…ここまでこじれるのは…時が解決したらいいねと思うけれど…果たしてその時間はあるのかないのか…切ない。

映画部活動報告「ザ・ロストシティ」

「ザ・ロストシティ」観ました。
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『考古学者ラブモアと冒険家ダッシュの冒険小説シリーズ』の作者ロレッタ(サンドラ・ブロック)。ダッシュ役のモデル・アラン(チャニング・テイタム)のセクシャルな魅力で女性ファンが多いシリーズだけれど、見た目だけで軽薄なアランが苦手なロレッタ。加えて5年前に考古学者の夫を亡くしてからロレッタの創作意欲は低下しつつあった。

担当編集者で親友のベスの協力もあって、新作『ザ・ロストシティ・オブD』が完成。

その完成披露お披露目会に出演したのち、拉致されたロレッタ。連れられた先に居たのは大財閥の御曹司・アビゲイルダニエル・ラドクリフ)だった。

 

昭:はいどうも。当方の心に住む男女キャラ『昭と和(あきらとかず)』です。

和:えっ。私たち引退したんじゃなかったの?

昭:俺もそう思ってた。ていうかこの感想文自体がひっそりと幕を閉じたと思っていたよ(当方も何回もそうしようと思った…)。ただな、やっぱり観た映画の感想は残しておきたい気持ちもあってな…。

和:そうなのか…ってこれ、そんなしんみりムードなんてぶち壊しのやつ。

 

昭:弟に財閥の後継者の座を奪われたアビゲイル。彼の起死回生案は『ロストシティ』という島の購入。実はこの島には伝説の古代都市があったといういわくがあり…島の半分を管理し、王の墓に眠る炎の冠(お宝)を探していた。

和:THE一攫千金。さすが世間知らずのボンボン。

昭:炎の冠に関する記述があるらしい羊皮紙の解読ができるのはロレッタだ。

なぜならロレッタの書く冒険小説の舞台と所有する島がそっくりだから!

和:キッズの心を忘れていない、金持ちのボンボンアビゲイル。実在したらぜひともお友達になりたい。純粋できかんぼうで…愛らしい。手のひらで転がしたい。

昭:何言ってんだと振り切ろうとしたけれど。力ずくで島に連行されたロレッタ。無理やり羊皮紙と向き合わされる羽目になるけれど…確かにこれは、何かありそう。

 

和:新作小説完成お披露目会。作者のロレッタとモデルのアランの対談はハチャメチャに終わった。あからさまにアランと距離を取ろうとするロレッタとは対照的に、実はきちんと話をしたいと思っていたアラン。対談のあとロレッタを追いかけたけれど…目の前で怪しげな車に連れさられてしまった。

昭:すわ、誘拐。慌てて編集者のべスと警察に駆け込んだけれど相手にされず…。遠い知り合いこと『元シールズ特殊部隊CIA工作員』のジャック(ブラッド・ピット)に連絡しロレッタ保護の依頼と同時に自身も合流すべくロストシティへと向かった。

和:この作品は本当にキャストが豪華なんよな。メインがサンドラ・ブロックチャニング・テイタム。脇役にダニエル・ラドクリフブラッド・ピットて。

昭:なのにまさかのブラッド・ピット無駄使い。登場即退場の流れ、思わず声に出して笑ってしまったよ。

和:だってこれ、そもそもが超B級の作りやもん。昭:おいお前。ばっさり言うんじゃない。

 

和:かつて人気があったけれど、今は落ち目のロマンス冒険作家。色々お疲れな中年女性が、年下のちょっとおバカで自分になついてくる大型犬みたいなハンサムとどこかの離島で繰り広げるアドベンチャーワールド。オールウェイトウギャザー。

昭:やめろやめろやめろ。

和:連れ去られた離島に迎えにきたハンサム。手と手を取り合って悪者から逃げ、その中で島の秘密を知っていく。誰の得にもならないエロも織り交ぜながら、テンポの良い会話で進むストーリー。

昭:途中、自分の小説を「駄作だ」と言い放ったロレッタをアランが叱咤するという熱いシーンもあったぞ。俺はこの作品のモデルを務めていることを誇りに思っている、自分の小説をそう言って貶めるのはファンを馬鹿にしていると。

和:真面目なシーンってそこくらいじゃなかった?あとはもう概ねわちゃわちゃ揉みあってふざけて騒いでいる感じ。

まあ、それでもお話としての着地はきちんとしていたな。ぎくしゃくしていた原作者とモデルの作品に対する姿勢の再確認。冒険を進めるうちに深まる二人の絆。そして島の伝説、王の墓に眠る炎の冠とは…。

 

昭:アダム・ニー、アーロン・ニー監督作品。でもサンドラ・ブロックが主演+制作…彼女がこの作品をもって2022年から俳優業休業するということは、休む前に好きなことをやりたかったんやろうなと心中お察しする。

和:昔のサスペンス劇場みたいなことがしたかったんやね。何曜日かの…片平なぎさ船越英一郎とかの。中年男女で友達以上恋人未満な二人がじゃれあいながら珍事件に立ち向かう、みたいな。確かにこれ1時間52分と2時間ドラマに収まってるし。

昭:これ以上敵を増やす発言はやめてくれ。そもそも火曜サスペンス劇場小京都ミステリーシリーズ、ほぼ見た記憶ないやないか。雰囲気でだしたら痛い目にあうぞ。

和:(無視)木の実ナナが出てるシリーズものもあった気がする…。

 

昭:閑話休題。でもさあ。こういう全身の力を抜いて楽しめる作品って、時々必要だなあって思う。

和:わかる。中年女性の悩みとか、創作意欲の減退と気力体力の低下とか、仕事に対する姿勢とか、離島で暮らす原住民の思いとか…その他諸々、真面目に描いたり深堀りしなくていいねん。餅は餅屋、そういうのはどこかの餅屋がやればいいこと。こっちはそれなりにお金をかけて豪華俳優陣を取り揃えて作ったB級作品を楽しみたいねん。

昭:俺はそこまで言ってないぞ。

和:当方の激押し、ダニエル・ラドクリフ。ハリポタ以降の出演作品のセンスがシュール。そんな彼が出るんだから間違いない、そう思って観たら今回もスマッシュヒット。加えてブラッド・ピットも参加してふざけているのが楽しかった。サンドラ・ブロックの、紫のスパンコールジャンプスーツ姿なんて金輪際見ることないやろうし。

 

昭:「何やねん!ふざけやがって!」「これは駄作だ…」そう思う人もいるかもしれない。真面目な人だよ…人は時には身も心も空っぽにして物語の世界にゆだねたらいい、そんな精神状態の時がある…それが歳をとるということ。疲労困憊の中年に効く作品。

和:多分現在劇場公開終了しているやろうし…それならば家で酒を飲みながら見たらいい。ちょうどいい2時間ドラマ。80年代~90年代っぽい懐かしい作品。駄作って言ったらこの作品のファン(我々)に失礼。何だかんだ言って嫌いじゃないし何なら周りにおすすめしたいくらいです。