ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「スターフィシュ」

「スターフィシュ」観ました。
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「このミックステープが世界を救う」

 

親友グレイスを失ったオーブリー(ヴァージニア・ガードナー)。

葬儀に参列したけれど受け入れられない。グレイスの家に忍び込んだら彼女がまだいるような気がして…カセットテープを聞きながらいつしか眠りに落ちた。

 

そして目覚めたら。世界は一変していた。

 

「『実話に基づいた物語』ってどこがだ!」

 

親友を亡くし喪失感を抱えるオーブリー。親友の家で眠り、目が覚めたら町は雪に覆われ静寂に包まれていた。

人気を感じない。何故?そう思いながらも外に出たオーブリーは見るからに邪悪そうな怪物が町を徘徊する姿を目にする。

これは人を襲うやつだ!オーブリーの存在を察知し案の定追いかけてくる怪物。何とか室内に逃げ込めた。このままやり過ごしたいけれど、相手はドアを破って入ってこようとしている。危機一髪!

その時。室内にあったトランシーバーから聞こえた男性の声。その人物がオーブリーを救ってくれた。

その人物はグレイスと知り合いであり「最後の信号が昨夜どこからか送信されてこういう事態がおきた」「グレイスは終末が訪れた世界を救う方法の最初の部分をオーブリーに託した」と告げてくる。

 

「グレイスが私に託したもの?」ふと棚の上に封筒があると気づいたオーブリー。その中には「このミックステープが世界を救う」と書かれたカセットテープが入っていた。

 

何らかの信号を見つけた。その信号に乗って現れた何者かが災いを引き起こしている。その信号に不足しているものが7つあると知った。それをバラバラの信号にしてテープに収めて私たちの思い出の場所に隠した。オーブリーならわかるよね?

 

怪獣が跋扈する世界から元いた世界に戻るべく、残りのカセットテープを探し始めたオーブリーだったが。

 

大体こういう掴みだったと思うのですが。ストーリーは支離滅裂で意味不明。基本的には美少女をエモーショナルに撮っているけれど、人を襲う怪物や顔面がえぐられた人物などのえげつないシーンがあったと思えば突然アニメパートが始まったり…全体的な画的バランスも不安定。とまあ歪な印象が強かったのですが…嫌いじゃない。

 

「これはあれこれ突っ込みを入れずにシンプルに感じたらエエんちゃうやろうか」

 

A.T.ホワイト監督。「for Sayoko Grace Robinson(1987~2014)」と捧げていたように、友人を癌で失った経験があったとのこと。先述した「実話に基づいた物語」とは「大切な人を失った」ということだろうと推測できる。

 

精神科医のキュブラー・ロス。彼女が書いた『死ぬ瞬間』から、有名すぎる「死の需要過程」とされる5段階のプロセス「否認/怒り/取引き/抑うつ/受容」。

 

親友グレイスの死。喪失感が大きく受け入れられないオーブリーは異世界へと自身を飛ばしてしまった。そこでは得体のしれない怪物が跋扈しており、人を襲い、食い散らしている。

グレイスとの思い出の場所をめぐり、カセットテープを手にすることでまた元の世界に戻れると知ったけれど、その過程は危険かつ気が滅入ることばかり。そしてその先には…。

 

どうしてグレイスは亡くなったのか。話が進むにつれ、オーブリーにはエドワードという恋人がいたとわかるけれど。オーブリーとエドワード、そしてグレイスに何かがあったのか?いかにも何かがあったかのように見せつつも、具体的なことは提示されない。

 

ネタバレになっていそうで気が引けますが。7つのカセットを集めたときに見つけたメッセージ。『FORGIVE+FORGET(許す+忘れる)』これをどうとらえるべきなのか。

 

おそらくA.T.ホワイト監督はこの作品の解釈を個々人にゆだねている。そう思う当方。

だからガチガチに設定を決めていない。主人公と親友と。そして主人公の恋人との間にどういうやり取りがあったのかは想像に任せている。それどころか親友の死に恋人は関係ない可能性だっておおいにある。

 

「もうこれは当方の見解だけれど。『許す』とはかつて二人の間にあった何かを指しているんじゃなくて。『忘れる』ことを『許す』ということなんじゃないかな」

 

二人は親友。私たちは若くて、これからまだまだ楽しいことが沢山起きる。けれどどんな時だって一緒。そう思っていたのに、こんなに早く別れが訪れてしまった。

信じられない。嘘だと言って。おかしくなりそうで…もう何も考えたくない!!

そうやって殻にこもって。わざと心をずたずたに傷つけた。けれど少しづつ思い出を巡るうちに…親友と再会して、メッセージを受け取った。

 

「忘れることを許す」何もかもじゃない。かつて二人の間で起きたことは、次第に薄れていって、記憶に残るものだけになっていく。けれどそれは仕方がないこと。

この異世界ならば、二人で過ごせるのかもしれないけれど…ここは怪物が跋扈し秩序が崩壊した終末の世界。命があるものは元の世界で生きていかないと。

 

そういうメッセージかなあと感じた当方。センチメンタルがすぎますか。

 

最後にぐっと幻想的な映像で締めた…それは「死の受容過程」を経て訪れる…希望だと思いたいです。