映画部活動報告「スタートアップ!」
「スタートアップ!」観ました。
勉強は嫌だ、ましてや学校なんて大嫌いだ。高校を中退し遊び惚ける主人公のテギル(パク・ジョンミン)と親友のサンピル(チョン・ヘイン)。やんちゃをしては元バレーボール選手の母親(ヨム・ジョンア)から鉄拳制裁を食らう日々だったが。
不遇で貧乏な一家を支えるべくサンピルは社会に飛び込み。そしていつも通りの母親との喧嘩の末、家出したテギルが行き着いた先…そこは『チャンプン飯店』。
住み込みで働けるからと、腰を据えたテギルを待っていたのは…おかっぱの厨房長、コソク(マ・ドンソク)だった。
韓国が生んだ、アジア版ハルクことマ・ドンソク。
「マブリーことマ・ドンソクの新作?それは是非とも観に行かないと」。
アジア人ではおよそ不可能と思われるムキムキな体躯と強面な表情。なのに口を開けば…どこかオドオドしいていてチャーミング。森のくまさん。そんな、ラブリーと掛け合わせてマブリーと呼ばれるマ・ドンソク。
10月23日の公開初日。しとしとと雨が降っていた金曜日の朝、初日初回の映画館のロビー(この日は当方は泊まり勤務明け。よく泊まり勤務明けで映画館に向かう当方からしたら通常運行)で。
「あら~。何某さんお久しぶり」。
「お久しぶりですう」。
「これ、先日宮島に行った時のお土産です。何だか素敵なご利益があるらしいの」。
「誰某さん、遅いわねえ。もしかしたら間違えて鶴橋に行ってないかしら?ふふふ」。
韓流マダム御一行様ご健在。朝9時台の映画にきっちり待ち合わせてご鑑賞。売店でしこたま韓流ドラマ&映画DVDを購入?したのか荷物多めでロビーに集まっておられる。
(数年前、手作りのお揃い韓国俳優プリントTシャツを着用されているご婦人を見掛けた事もあった)
幾つになっても推しの存在は女性を輝かせることよ。泊まり勤務明けでボロボロの風貌の当方、遠いまなざし。
「とは言え…誰もマブリーを推している訳じゃないんやろうな…」。
若き主人公テギルとその親友サンピル。彼らを演じた二人の俳優さん、非常に人気のある俳優さんなんですね。当方はどうもそちら側の事情には疎いもんで…。
ラブラブファンタジーな韓流ドラマに嵌る人たちとは、無縁な様で時々映画館で交差する当方。けれど当方のテリトリーでの韓国作品は基本的に『バイオレンス、アクション、グロ、エロ、不条理』等々…彼女達にとって厳しい内容では無いかと勝手に案じていたのですが。
「いやあ今回の作品の明るい事よ!」「笑いと感動の痛快コメディ!」
韓流マダム御一行と当方がまさかの同じ笑顔。いや~兎に角明るいは正義。
一部悪の存在もあるにはあるのですが。『誰も悪い人なんて居ない』の世界線で。『頑張ればいつかいい方向に向かう』という安心感。
主人公のテギル。母一人子一人の家庭で。高校中退し、毎日遊び惚けている日々。そんなある日、母親と喧嘩し家出。挙句中華飯店に住み込みで働く事になった。
そこに元から住み込みで働いていた従業員の一人が、強烈なキャラクターの厨房長コソクだった訳ですが。
おっかないんだか面白いんだか判定しかねる独特な風貌。けれどやっぱりコソクが繰り出す張り手は気絶してしまうくらいの超人級。なのにテレビに映されたアイドルにはぞっこんというアンバランスさ。かと思えば、いざおっかない人たちを前にしたら逃げ出す…そんなちぐはぐなコソクに反発しながらも、生活を共にしていく事で成長していくテギル。
偶然知り合った、ボクシングを嗜む赤髪の女子との甘酸っぱい恋なんかも絡め。何だかキャッキャしたチャンプン飯店。
引き換え。やや認知症のある祖母との家計を助けようと取り立て屋稼業に足を突っ込んでしまったサンピル。
確かに収入は良いけれど…血も涙もない取り立ての現場に、次第についていけなくなるサンピル。胸が苦しくて。
「寂れた中華飯店の、ただの太っちょおかっぱ厨房長?マブリーが?そんな訳ないやんか」。
マブリー推しの当方がこれまで観てきた、マブリー主体の作品。アウトローな世界で名を馳せた暴れ熊、それがマブリー。ただ今は…その姿を隠しているだけ。
まあ今回も正直、そんな王道のマブリーだった訳ですが。
当方がこの作品に対し好感が持てたのは、あくまでも「自分のピンチは自分でどうにかしろ」という方向性だったこと。
いつも喧嘩していた母親。でも本当に嫌いなわけじゃない。
気になって。「母さんが言うとおりに学業は続けられないけれど、俺は俺で働き口も見つけて頑張っているよ」。なかなか言えなかったけれど…それでも初任給を握りしめて母親に会いに行った。母親はこれまでの夢だった自分の店を持った所だったけれど…それはいわくつきの物件だった。
案の定、身に覚えのない取り立て屋が乗り込んできた。そんな時、実は無敵なアウトローだったコソクが蹴散らかしてくれれば一発。なのに。
自分が苦しかった時、一緒に居た仲間がずっと同じ場所に居るとは限らない。皆それぞれ事情を抱えている。元々居た場所に戻らなければいけない者も居る。先に進まないといけない者も居る。寄り添う相手を再確認する者も居る。
一緒に過ごした日々は無駄ではない。けれど。
自分が大切にしたい相手は。大切にしたい場所は。自分がしたいことは。
誰かに助けてもらう日々はもう終わり。誰かにすがるな。自分で決めろ。
「何しろ若いからな~。何とでもなるよ」。誰も悪い人なんて居ない世界観で。各々くすぶった日々を経て、やっと意地を張らずに大切にしたいものを見つけたテギルとサンピルにエールを送りつつ。
ところで。マブリーが中華鍋を振るってくれるチャンプン飯店は一体どこにあるんですかね。メニューの上から下まで全部頼む気合で臨みたい当方なんですけれども。