2021年 映画部ワタナベアカデミー賞
昭:2021年が終わろうとしている…早い。早すぎやしないか。
和:はいどうも。当方の心に住む男女キャラ、昭と和(あきらとかず)です。すっかり恒例となりました、映画部年間総括ことワタナベアカデミー賞。今年も我々の司会進行で執り行いたいと思います。
昭:映画好きの年末あるある『マイ年間ベストランキング』。ですが優柔不断な当方は「ランキングなんて付けられないよ~」と思っているので。【~部門】という部門別で今年の映画部活動を振り返っていきたいと思います。
和:あくまでも私的なユルユル基準で行っております。また、同じ部門で複数受賞者が出る場合もあります。その場合は公開時期順で表記しています。と、あらかじめお断りしておいて…ではどうぞ!
昭:ではどうぞ!ってそんなサクサクいけるか…まあ確かにもう大晦日やし急がなあかんねんけどな…今年の映画館鑑賞作品は66本。うち旧作は8本でした。
和:少な!
昭:まあ…どうしてもコロナ禍2年目。度重なる公開延期。当方の住む地域は再び映画館の休館期間があったこと…士気が下がったところがある。
和:正直、映画感想が年内に収まらなかったらどうしようかと思って、12月は鑑賞数をセーブしたという事情もあった。
昭:ちょっと布団と仲良くし過ぎた一年ではあったな。
和:気持ちがどんよりする。だるい。けれどやっぱり映画館に行ったら元気がでた。ああそうだ、物語の世界はいつだって当方に元気をくれた。つくづくそう感じた一年。
【美術部門】『春江水暖』『JUNK HEAD』
昭:『春江水暖』内容は「渡る世間は鬼ばかり」なんやけれど…兎に角美しい山水画の世界。孫娘が彼氏と水辺を歩きながら交わす会話。その時の流れるような景色は至高。
和:『JUNK HEAD』長編ストップモーション作品。見た目のかわいらしさとは裏腹に気の遠くなるほどの手作業…まさかの三部作らしく…見守っていきたいという気持ちになった。
【アクション部門】『ベイビーわるきゅーれ』
昭:ちさと(高石あかり)とまひろ(伊澤彩織)。高校を出たばかりの可愛い女子二人のキャッキャした日常かと思いきや…実は二人は殺し屋で。という。特に、スタントマン出身の伊澤彩織のアクションがもう半端ないの。
和:冒頭のコンビニのシーンから高揚感。敵との最終決戦なんて、もう何が起きているのか分からんかった…続編出るんよね。楽しみ。
【ACP(アドバンス・ケア・プラン二ング)部門】『ノマドランド』『スーパーノヴァ』
昭:「ACP=将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、本人を主体にして家族や近しい人、医療機関と方針を決めておく、意思決定を支援するプロセス(概略)」自分が将来どう生きるのか。自分がしっかりしている内に意思決定を伝えておくこと。
和:アメリカの現代版遊牧民=ノマド。けれど朴訥とした遊牧というイメージはない。車上生活。季節に沿って移動し、時に仲間と集い。家族の待つ家に戻る者もあれば、自分の命をどう終えるのかを見据えている者も居る。
昭:あの人たちは今頃アマゾンの工場で働いているのか…そして駐車場で年越し。
和:『スーパーノヴァ』長く連れ添った恋人が、不可逆性の病気で己を失っていく。自分が自分でなくなる前に離れたいという思いと、どんな姿になっても愛せる、一人になりたくない…という互いのせめぎ合い。
昭:深々と溜息を付くばかりやった。切ない…。
【こんな死に方は嫌だ部門】『OLD/オールド』
和:なんでしんみりした直後にこういうタイトル持ってくるのかな~情緒は?
昭:そんなモン、とっくにどこかに捨ててきたよ。『OLD/オールド』はなあ~「一日で50年の月日が流れる」という最悪なビーチに閉じ込められた複数の家族の話で…最終どういう目的でこんな場所に連れてこられたのかが明示されるんやけれど。理不尽極まりない。
和:あのビーチに連れてこられた皆さんには本当に掛ける言葉もない。特にあの洞窟であんな最後を迎えたあの人に至っては…。
昭:不憫やけど怖ええ~。
【変態映画部門】『クラッシュ』
和:デイヴィッド・クローネンバーグ監督の1996年公開作品。主人公が交通事故にエクスタシーを感じる集団と出会って…という作品。
昭:車の安全テスト?車内に人形を乗せて壁に激突させる、衝突実験映像を皆で見ながら盛り上がる…あんなに何一つ共感出来ないエロビデオ上映会は無かったよ。
和:ペーパードライバーな当方からしたら、普段の運転すら神経を使うのにさあ。あんな危険運転する輩が近づいてきたら、それだけでパニック起こして事故る。迷惑極まりない…理解出来ないフェチズム。車屋と整形外科医がうんざりするやろうな。
昭:1979年に起きた大統領射殺事件。その犯人は大統領直属の中央情報部(KCIA)の部長だった。実際にあった事件をほぼ忠実に描き切った硬派な作品。
和:イビョンホンが…あの、耐えに耐えて敬愛する主君を討つ姿が堪らんかったね。
昭:そういう言い方するとなんかニュアンス違ってくるな。それにしても、1970年代あたりを描く、最近の韓国社会派映画は攻めてるな~。見逃せない。
和:元トーキング・ヘッズのフロントマン、デイヴィッド・バーンによるブロウドウェイショー『American Utopia』を映画監督スパイク・リーが映像化した作品。
昭:トーキング・ヘッズもデイヴィッド・バーンも知らないし…とスルーしていたけれど。あまりにも評判が良すぎて観に行ったら…もう目から鱗と涙が止まらんかった。
和:音楽とダンスが伝えるもの。社会風刺も盛り込んでいるのに説教臭くない。兎に角エンタメの力よ!舞台が観たい!
昭:ところで。今調べたらBlu-ray発売されていたぞ。これは買い…年末年始は配送の人に迷惑かけるから数日後に買うか…そうか、久しぶりに正月タワレコ行ってみよう。
【ドキュメンタリー部門】『コレクティブ 国家の嘘』『ボストン市庁舎』
和:ルーマニアの「コレクティブ」というライブハウスで起きた火災。そこからまさかのルーマニアの医療腐敗の実態へと話が広がっていく。驚くばかりの展開に「え?現実?」と疑うばかり。
昭:若くまともな政治家の姿も印象的やったな。今、ルーマニアはどうなっているんやろう。
和:ドキュメンタリー映画の巨匠、フレデリック・ワイズマン監督の新作は監督の故郷であるボストンの市庁舎。
昭:休憩挟んで4時間越え。でもいつまでも観ていられる。上質な『はたらくおじさん』所々コミカル。でも「市民の為に何ができるだろう」と取り組む市長と職員に好感が持てた。
【監督賞】リドリー・スコット『最後の決闘裁判』
和:フランスで1386年にあった決闘裁判を映画化。妻を暴行された夫とその加害者。そして妻。3者の視点から「何があったのか」をあぶり出す。いわゆる『藪の中』方式。
昭:同じ出来事だけれど。立場を違えたらどう見え、感じるのか。妻を暴行され憤る夫と、かつては親友だった加害者。
和:妻からしたらどっちも大概な男。もういいから刺し違えてどちらも消えて欲しい。そう思えて仕方がなかった。後ねえ…あのレイプシーンのおぞましさ。トラウマ級。
昭:ところが。脚本に沿うと情緒的になりそうなのに、そうはさせないリドスコ監督。どこかドライ。そして(おそらく)自分自身がやりたい決闘裁判はがっつり見せてくる。そして「負けたらただの肉袋」を叩きつける。流石リドスコ監督。冴えてる。
和:返す返すパンフレットが作られなかったのが惜しまれる。関わった人たちの話、知りたかった。
【助演女優部門】北川景子『キネマの神様』 ローレン・リドリフ『サウンド・オブ・メタル』『エターナルズ』
昭:山田洋二監督作品『キネマの神様』この作品自体はあんまり嵌らんかったんやけれど、兎に角出てくる女優さんたちが綺麗。その中でも、映画女優桂園子を演じた北川景子がもう…言い方悪いけれど、北川景子を見直した。こんな素敵な俳優やったなんて。
和:映画監督を目指す主人公と食堂の看板娘の駆け落ち。そんな二人に取った行動と言葉が粋やった。
昭:ローレン・リドルフ。手話で話す俳優。でも全然ハンデじゃない。表情がコロコロ変わるのがチャーミングで愛らしくて。現実世界にだって色んな人がいる。各々体や心のどこかに特徴があるのは当たり前。でもその当たり前がやっと物語の中に組み込まれてきた。
和:そんな大仰な理由じゃないよ。『サウンド・オブ・メタル』と『エターナルズ』の彼女が魅力的やったから。今後も色んな作品で見たいよね。
【助演男優部門】マ・ドンソク『エターナルズ』
昭:来た!我らがマブリー!
和:でっかい図体で強面。見た目通りの剛腕。でも笑顔が可愛くて心は優しい。そんな「もりのくまさん」的な韓国映画界での扱いがそのままハリウッドにもスライドした。
昭:エターナルズの一員、ギルガメッシュ。モンスターを拳で殴り倒す腕力を持ちながら、心を病んだ同胞を優しく包み込む。エプロンつけて料理する姿も愛嬌があって。クロエ・ジャオ監督、分かってる。
【主演女優部門】山田杏奈『ひらいて』
和:もうこれ完全に好みやん…。
昭:しゃあない。これはしゃあない。だってもう愛ちゃん堪らんかったもん。
和:知能と語彙力の低下よ。高校3年生の木村愛。人気者の彼女が好きになったクラスメイトには、隠れて付き合う地味な彼女がいた。
昭:なんとしても彼の心を掴みたくて。どんどん無茶苦茶になっていく愛ちゃん。なりふり構わない彼女が堪らんかった。
【主演男優部門】役所広司『すばらしき世界』アンソニー・ホプキンス『ファーザー』
和:「今度こそはカタギぞ」13年の刑期を終えて出所した元殺人犯、三上正夫。もうヤクザじゃない、まともに生きるんだと誓って娑婆に出たのに。世間は全然居場所を与えてくれない。
昭:初めこそ生真面目に頑張っていたのに。ふと垣間見せる狂暴さ。怒りが抑えられない気性。でもそれは何処からきているのか…役所広司はやっぱり日本を代表する俳優だよ。
和:『ファーザー』のアンソニー。認知症の人にはこういう風に世界が見えているのか。そうだとしたら、なんと混沌とした世界なんだろう。
昭:時系列がぐちゃぐちゃ。相手との関係性すら不安定で誰が誰だか分からない。常に腕時計を無くしたと探しているアンソニー。
和:どうしても娘のアンの立場で観てしまうから…切なかった。
【ワタナベアカデミー作品部門】該当作品なし
昭:そうやろうな。
和:元々年間ベストって滅多に出ないんよな。でも去年のワタナベアカデミー賞で言ったのと同じ。コロナ禍で困難な状況下で映画が公開されただけでも大感謝なので…ベストはなし。同じ理由でラズベリーもなし。
昭:お疲れさまでした。寄り道しなかったわりには長かった。年内には終わらんかと思ったよ。
和:お疲れ様でした…本当にねえ。大島渚監督特集の『戦場のメリークリスマス』『愛のコリーダ』の話とかもしたかったのにね。
昭:公開延期を繰り返し。その度に有給休暇を取り直した『ゴジラVSコング』。でっかい奴とでっかい奴が殴り合う。ただそれだけでいい。
和:『トキワ荘の青春』1995年公開された作品をリバイバルで観たら俳優たちの若いこと。個人的には赤塚不二夫のエピソードには涙が出たよ。
昭:『由宇子の天秤』今年絶対に見逃してはいけない邦画。そして今年圧倒的に足りてないなかったのがインド映画。
和:コロナ禍2年目。自粛期間も長くていい加減疲れてきた。どうしても気持ちが沈んでしまう、そんな日もあったけれど。映画館に行くと必ず元気が出た。
昭:ここに来れば確実に別世界に行ける。映画館はその入り口。そういう非日常=物語がやっぱり大好きなんやと再確認したな。
和:とはいえ。相手は疫病なんやから。我慢しないといけない部分があるのは分かっている。皆が欲望のままに行動したら、この状態は抜け出せない。そう言い聞かせて…自らと周囲を守れる行動をとりたいと思っています。
昭:でもなあ~。来年はもうちょっと映画を観に行こう。今年はあまりにも布団と仲良くし過ぎた。後ねえ、最近気づいた。やる気がないからって布団の中に居ても、やる気は降ってこない。退団して強制的に動き出さないと気持ちは晴れない。太るし。
和:どうしてもしんどい時は寝てたらいいと思うけれど。確かに寝すぎたよな。って何の話を延々しているんだか。
昭:来年は諸々対策を取りながら外に出よう!映画を観よう!年間ベストに出会いに行こう!
和:今年の年間ベストは大同電鍋やけれどな。台湾のご家庭には必ずあるという。
昭:それは今年買ったもののベストやろう!
和:だらだらと長い文章にお付き合いいただいて、ありがとうございました。
昭:「観た映画作品全ての感想文を書く」「観た順番のまま書く」己に課したレギュレーションに毎度のごとく押しつぶされそうになりましたが。下手な駄文ながらなんとか今年も完走することが出来ました。
和:いつまで続けられることやら。そう思いますが。まあ…気力と体力が続く間は備忘録として頑張りたいと思います。
昭和:今年もありがとうございました。
2022年がどちら様にとっても健やかで良い年になりますように。