ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「哭悲/THE SADNESS」

 

「哭悲/THE  SADNESS」観ました。

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「哭悲(こくひ):悲しみ泣き叫ぶこと」

 

台湾発パンデミック・ホラー。監督は本作が長編初監督となったロブ・ジャバズ。

 

謎の感染症に長い間対処し続けてきた台湾。専門家たちに“アルヴィン”と名付けられたそのウイルスは、風邪のような軽微な症状しか伴わず、不自由な生活に不満を持つ人々の警戒はいつしか解けてしまっていた。ある日、ウイルスが突然変異し、人の脳に作用して凶暴性を助長する疫病が発生。感染者たちは罪悪感に涙を流しながらも、衝動が抑えられず思いつく限りの残忍な行為を行うようになり、街は殺人と拷問で溢れかえってしまう。

そんな暴力に支配された世界で離ればなれとなり、生きて再会を果たそうとする男女の姿があった。感染者の殺意から辛うじて逃れ、数少ない生き残りと病院に立てこもるカイティン。彼女からの連絡を受け取ったジュンジョーは、独りで狂気の街を彷徨い始める。

(劇場配布チラシより引用)

 

「風邪のような軽微な症状しか伴わない謎の感染症」まさに昨今のコロナウイルス肺炎による事態を彷彿とさせる題材を基に「ウイルスが突然変異し、人の脳に作用して凶暴性を助長する」という厄介な疫病が発生した世界線

 

「残酷すぎる描写に世界が戦慄」「史上最も凶暴で邪悪」「「二度と見たくない傑作」随分な煽り文句にそいつはこの目で確認しておかないとなと腰を上げた次第。

 

まあ…ひとことで言ってしまえば「足が速い系のゾンビもの」なんですわ。

大多数は重症化しない謎の感染症のせいで人々の生活は一変。始めこそ警戒心をもって生活していたけれど、いかんせん自粛生活が長い。長引くにつれて気持ちが緩んでいく…というタイミングでウイルスが変異する。「脳に作用して凶暴化する」というものに。

 

人を襲う。そこで傷ついた者は即座にウイルスに感染。感染者たちは徒党を組み新たに人を襲う。まさにゾンビシステム。旧タイプとの違いは、昨今はやりの足が速いこと。

物音を聞きつけ、相手の姿を確認したら即座にダッシュ。飛びかかり、噛みつき、食い破る。「感染者たちは罪悪感に涙を流しながらも~」そうでしたかねえ?結構人の心、失っていたように見えましたけれど。

 

物語は若い同棲カップルの朝から始まる。もう起きて仕事に行かなくちゃ、というまどろみ。近々休みを合わせて旅行に行こうと約束していたのに、彼氏のジュンジョーの仕事の都合でとん挫しそうなことに苛立つ彼女のカイティ。のらりくらりいなされながら機嫌を直し、ジュンジョーの運転するスクーターに乗せてもらって電車の駅まで送ってもらった。いつもの二人のルーティン。隣に住むおじさんも「仲良しだねえ」とほのぼの声をかける。

 

けれど。カイティを見送ったあと、馴染みの店でテイクアウトに立ち寄ったら。

不気味な老婆が現れたと思ったら、あれよあれよという間に店が阿鼻叫喚に包まれる大惨事に発展。ホットプレートに顔を押し付けられる店主。訪れていた客たちが恐怖の表情で立ち上がったと思いきや、明らかに人ならざるものに変貌したそいつらは徒党を組みまだまともな者に襲い掛かってくる。

命からがら店から自宅へ逃げジュンジョー。なんだなんだ。さっきまでいつも通りの日常だったじゃないか。混乱しながらテレビをつけたらもうそこには日常などない。どうやら世界は突然変異したらしい。

 

ついさっき二人を微笑ましいといってくれた隣のおじさんがベランダを破って侵入。揉みあったあげく殺してしまったジュンジョーは、駅まで送った恋人カイティの安否が不安になる。

 

そこからはほぼカイティの目線で物語は進行。通勤のため乗っていた地下鉄での大惨事。たった一人の感染者の登場から瞬く間に車内が血の海になり果てる。

 

この地下鉄でたまたま居合わせたくたびれたおじさん(感染者)にひたすら追われるのが中盤以降のメイン。もうこのおじさんがやたらしつこい。しかもどんどん強くなる。

感染する前から、隣に座ったカイティにウザ絡みしてきたおじさん。そのなれなれしさにぎこちないながらも拒否感を示したら、キレてきた。ただでさえ関わりたくない相手なのに、感染したら無双で周りの者をなぎ倒しつつどこまでもカイティンを追いかけてくる。

 

電車で重傷を負わされた女性を病院へ運ぶカイティン。バリケードを作り、感染者侵入を防いでいたのに…結局感染者たちが侵入し、そこもまた地獄へと化してしまう。

 

シンプルなストーリー。彼女を心配し、彼女の元へはせ参じていこうとする彼氏がその道中で目の当たりにする地獄絵図。とはいえ彼女も決して震えて待っているだけじゃない。感染者たちと戦い、なんとか逃げおおせる(主人公は死なないからな~というお約束)。

 

けれど…二人が再会したとき。物語はハッピーエンドになるのか。

 

確かに昨今のパンデミック情勢から着想を得た作品ではある。けれど「長らく抑圧された人々の精神がウイルスの変異をもたらし…」とか「世界を救うためには云々」という難しい話はなし(一応「この事態を収めるには」的な話をするキャラクターはいましたが…あいつもまともじゃなかった…)ただただ「足の速いゾンビもの」として観ていればいい。

 

先述の「残酷すぎる描写に世界が戦慄」「史上最も凶暴で邪悪」「「二度と見たくない傑作」。個人によってふり幅があると思いますんであくまで当方比ですが「残酷すぎたり市場最も凶暴で邪悪」ではなかった。なんというか「悪趣味ギリギリで攻めてきたな」という感想。

…けれどならば当方は一体何を観たかったのか。何を求めていたのか。

 

映画館からの帰宅。ぐるぐる脳内で考えましたが。ろくなものではありませんでした。


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