「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」観ました。
ダークなイタリア映画。
「街のしがないゴロツキが。大切な女性、守りたいものを見つけて。そして心に傷を負って。孤独なヒーローになっていく」
日本が誇る漫画家永井豪の「鋼鉄ジーグ」日本では1975年~1976年のわずか10か月しか放送されていないのに。1979年イタリアに渡り。イタリアで今でも根強い人気を誇る「スーパーロボットアクション」アニメ。
色んな資料を継ぎ合わせた、当方なりの説明…からもお察し下さい。当方はこのアニメを知りません。…そりゃあそうやろう!生れてないし!当方は藤子不二雄系アニメで育ちましたが、こういう系統には触れなかったんで。そりゃあ無知ですよ!(逆ギレ)
たった二人で構成される、当方の属する「映画部」その映画部部長。(中年)もこの作品への期待値が半端なく。「だって鋼鉄ジーグやぞ!」それと共にロボットアニメについての講釈をされては堪らんと一瞬身構えたり…もした当方でしたが。(この下りについては何の広がりも見せませんので以降省略します)
まあでも。そんな「鋼鉄ジーグ」を全く知らない当方が観ても、全然しんどくない。
寧ろ「こういうヒーロー誕生ものは凄く好きやな」と素直に感じる作品でした。
「そもそもイタリア映画でヒーローものってあったっけ?」
いや。皆無では無いでしょう。当方が知らないだけで。当方は別にイタリア通な訳でも、イタリア映画を語る術も何も持たないのですが。ですが。
「イタリア映画って、当方の中では良くも悪くもイメージが固定されているんよな。『超巨匠作品』か『底抜けに明るいやつ』か」
黄色と水色と白色が強くて。出てくる人たちは皆陽気。海を見ながらワイン片手に大皿料理食べて。何故かそんなイメージ。
でも。勿論、そんな明るい奴ばかりじゃない。
不景気で。治安の悪い街。テロが多発する世の中。
ずんぐりむっくり。さえない主人公、エンツォ。しがない街のゴロツキ。チンケな窃盗をして、そのささやかな金での楽しみ?はヨーグルトを食べる事とエロDVDを見る事。
冒頭。盗みを働いた後追いかけられていたエンツォ。逃げ場を失い川に飛び込んだ所、放射線廃棄物(不法投棄)に全身浸かってしまう。その後。大層な体調不良の後、突如手に入れてしまった「未知のパワー」
と言っても。超能力云々では無い。体が正に鋼鉄並みの固さを持ち…後はまあ平たく言えば驚異的な力持ちへと変貌。
「そんな力を得たら…なのにその運用が『ATMごと盗む』というエンツォの犯罪者心理。(しかも頭悪いやつ。そんなお金、使える訳が無い。しかも防犯カメラに思いっきり映っているし)」
結局そんな発想しかないエンツォ。普段の犯罪をスケールアップさせる位しか出来なくて。
「そこで絡んでくる、ヒロイン『アレッシア』」
エンツォと繋がりのあったゴロツキの娘。悲しくも天涯孤独となってしまった彼女。
「何て危ないんだ…」
凄くスタイルが良くて。そして流石イタリア人、顔が凄いバタ臭い。(あくまでも当方の主観)いや、見ようによっては滅茶苦茶美人にも見える。そんな彼女が、非常に無防備な感じ(乳丸出しとか)でエンツォに絡んでくる。これはキツイ。こんなの、己を律するのは無理。
でも。そんな成熟しまくった悩ましボディとは全く不均衡な、彼女の精神世界。
「父さんを。皆をすくわなきゃ、ヒロ」
「鋼鉄ジーグ」のDVDをコンプリートし。すっかりその世界の中にいる彼女にとって、超人的なパワーを持つエンツォは「鋼鉄ジーグの主人公、司馬宙」
「何でだよ!」「皆って誰だよ!」「って言うか俺に付きまとうなよ!」
初めこそは邪険に扱っていたけれど。段々彼女に惹かれていくエンツォ。
いつもはエロDVDを再生していたけれど。ふと彼女の持っていた「鋼鉄ジーグ」を見て。その世界感を理解したエンツォ。でも…ですがね…。
「こんなの、耐えられんわ!!」(当方心の叫び)
二人並んでソファーに座って。一緒に共有出来る世界(アニメ)があって。
けれど隣の彼女は悩ましボディ。無邪気なのか誘っているのか分からん「自分の食べているヨーグルトに手を突っ込んで食べてくる」リアクション。そりゃあ目の前の共有していた世界(アニメ)なんてどうだってよくなってしまいますよ。
なのに「そういうのは嫌!!」って。どういう半殺しだよと。
(なので、あの試着室のシーンは確かに必要でしたね。「店員よ!」とは思いましたが)
でも。だからこそ。
「彼女を大切にするとはどういうことか」
もう、恐らくまともな精神世界には戻って来ないのであろう彼女。彼女とは自分の求める性的なスキンシップは共有出来ない。普通のカップルにはなれない。それどころか彼女の言ってる事はしばしば理解を超える。訳が分からない。でも。彼女と居たら楽しい。「今は生きていて楽しい」
治安が悪い街で。気づけば底辺。ゴロツキ。家族も仲間も死んで。自分だっていつか簡単に死ぬ。でも特に悔いは無い。生きている意味なんて無い。そう思っていたけれど。
つまんなかった人生に光をくれた彼女。
自分の欲より、相手の幸せ。彼女が笑顔で居てくれたら。自分と一緒に居てくれたら。それが一番楽しくて幸せ。
その時。エンツォはヒーローとして目覚めていく。
悪役の話を一切しませんでしたが。
この作品のまた堪らん所。「悪役が小者」
こいつもまた街のゴロツキ。といっても、エンツォよりは各が上?ではあるけれど。
そこそこのイケメン(狩野英孝風)
かつてはアイドル風な活動もしていたけれど、今やすっかりゴロツキの元締め。
しかもかなりの臆病者な上に卑怯者。人望も金も尽きて。ビクビクしながらも何とか起死回生を狙っている。
「いやあ。もう清々しいまでに当方の嫌いなタイプ」
どうしようもない小者が。どこまでもしぶとく食らい付いてくる。
小さく小さく幸せになろうとしていたエンツォとアレッシアの世界が。こんな奴によって脅かされてしまう。
もう、最終ネタバレ直前まで来てしまいますので。ここいらで止めますが。
「この作品のラストは。これは当方のヒーローモノの中でもかなり上位に残る」
加えて。ふと今、あの寂れた遊園地。観覧者で笑う二人のシーンを思い出して。何だか泣きそうになっている当方です。