ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「新感染 ファイナル・エキスプレス」

「新感染 ファイナル・エキスプレス」観ました。
f:id:watanabeseijin:20170906234628j:image

何事にも全力疾走。本気過ぎる韓国映画の新ジャンル『Z(ゾンビ)映画』

離婚秒読みのエリートサラリーマンの主人公とその娘。

娘の誕生日。「ママに会いたい」と娘にせがまれ。ソウル発プサン行きの高速鉄道KTXに乗った二人。そこで起こった謎のパンデミック(感染爆発)。発狂し、凶暴化したそれは見さかいなく乗客、客室乗務員を襲い。そして噛まれた者は漏れなく同じ人外になってしまう。その姿はさながらZ。

彼ら親子の他。出産間近の妻を気遣う夫。高校野球部集団と女子マネージャー。老いた姉妹。浮浪者。居合わせた者達は、果たして無事に目的地に着く事が出来るのか。

 

「この、ふざけた日本語タイトルの所為でイロモノ枠になってしまっているけれど…この作品は本当に面白い」「馬鹿にしとらんと観に行って!」鑑賞後。周囲に熱くお薦めする当方。

 

当方が好きな電車映画。高倉健が珍しく犯人役。東京発博多行き新幹線をジャックした、名作『新幹線大爆破』。

大好きでは無いけれど。レギュレーションが印象的だった、人間の住めなくなった氷河期を永遠に走る。その列車の中で起きたヒエラルキーの崩壊を描いた、ポン・ジュノ監督作品『スノー・ピアサー』。

それら当方のお気に入り電車映画に並ぶ(どうだっていい話ですが)…しかもZ映画作品。

 

冒頭の鹿のシーン。そこから既に不穏な世界は姿を見せ始めていて。

『その日』の前日。

仕事優先で家族を顧みない主人公と、その家族(主人公の母親と娘)。

娘の誕生日は覚えていたけれど。子供の日と同じゲーム機をプレゼントしてしまうなどの残念さ。案の定、娘は別居中の母親の元に行きたいとダダをこね。「きちんと話し合いなさい」と心配する母親にも適当な返事をし。

夜が明けて。「午後には帰るから」と半ば嫌々早朝のKTXに娘と二人で乗り込んだ主人公。でも。

 

ソウルを出発する時点で、既に『異常事態』の片鱗は見せていた。
f:id:watanabeseijin:20170907204348j:image

この親子以外の乗客。それがまた、無駄が無く上手い組み合わせで。

特に当方が好きだったのは…御多分に漏れずのマ・ドンソク。
f:id:watanabeseijin:20170907204226j:image

 

妊娠中の妻を終始守り続け。でも周りの人間も見捨てない。そして、ダイナマイトボディからは想像も付かない戦闘能力の高さ。


f:id:watanabeseijin:20170907204216j:image

に引き換え。主人公の卑怯さ。

「俺と娘だけ助けてもらえないか」有事の最中。どうにかコネを見つけ電話で懇願。

流石に娘は大切だけれど、周りの乗客なんか知ったこっちゃない。

 
f:id:watanabeseijin:20170907204245j:image

高校生カップル。積極的な同級生の女子に好意を寄せられ。満更では無いけれど恥ずかしくて。そんな高校球児。メンバーに冷やかされながら。ワイワイとはしゃいでいた高校生たちを襲った悲劇。

 

 

また…所謂『走ってくる系Z』なんで。Zの動きが早い早い。しかもZ達は折り重なって襲ってくる。その迫力。『ワールド・ウォー・Z』以来のZドミノ。Zピラミッド。

 

初めのZパンデミック。何事かと逃げ惑った乗客達。密室である高速鉄道に逃げ場は限られていて。兎に角前へ前へ。前方車両に避難する事が出来たのに…途中駅に停車。そこで全員が一旦下車してしまった事で、事態は更にややこしくなってしまう。

まさかの。その駅で待機していた軍隊が総じてZ化。襲われる乗客と職員達。ある者はそこでZとなり。ある者は無事列車にたどり着いて。そしてある者(主人公。ダイナマイト戦士。高校生)は後方車両に戻ってしまって。

 

彼等は始め、親しくは無かった。寧ろ憎んだりもした。でも…各々守りたい者があった。娘。妻。恋人。前方車両に居る彼女達に会う為、必死にZに立ち向かう三人。
f:id:watanabeseijin:20170907204252j:image

「しっかしまあ…半袖にガムテプロテクターで立ち向かうハートの強さよ!!」

しかも。襲い掛かるZに対し、飛び蹴りやらチョップで対抗。逞しすぎる。

終始真っすぐの高校球児。そして彼らと行動を共にすることで『人間らしさ』(この作品でこの言葉は皮肉やなあ)を取り戻していく主人公。

 

この作品のZには「かなり見えていない」という特徴があって。

音や動くものには反応するけれど、眼球は重症の白内障以上に白濁。

「という事は、トンネルではZの動きは鈍くなる」

ただでさえ見えていないZ達。トンネルの暗闇ではただ棒立ちになって呻くだけ。「かしこいな~」高速鉄道ならではのトンネルの利用価値。上手いなあと感心する当方。

 

主要なキャラクターとしては、主人公親子。一組の夫婦。高校生カップルが主軸となる訳ですが。どこまでも利己的で憎たらしかったあいつ。職業倫理を失わなかった客室乗務員と運転手。(何があったのかよく分からんかったけれども)これまで苦労したらしかった老いた姉妹。浮浪者も余す事無く物語の展開を牽引し続けて。

 

「どうして助かったのに…」物語が二転三転するにつれ。そっと溜息を付く当方。どうして人と人が助け合わない。明らかに彼らが逃げてきた相手とは違うのに、恐怖からの疑心暗鬼。そして因果応報。

 

「大体、Zに噛まれてからZになってしまうまでの潜伏時間がまちまち過ぎるんよな」

ある者は即Z化。ある者は暫くは正気を保てる…物語の進行上仕方が無いからなんやろうけれど…けれど、Zに噛まれてから長時間正気であった者なんて居なかったのになと。どうして誰もそう指摘しなかったのかとあのシーンで思った当方。

 

もうここで終わってくれよと。そう思ったのに…。「え?これバトルロイヤルなんですか?」思わず疑った当方。そして悲しすぎる終末。初めて『アロハ・オエ』で泣く当方。

 

電車。パニック。社会派。ハートフル。そしてZ。盛り込みまくっているのにしっかり絡み合ってちゃんと着地(到着?)素晴らしい。

 

なのに。今脳内で再現すると、どうしても大沢たかお(又は東出昌大)と葉加瀬太郎になってしまう。困った事態です。