ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ドント・ルック・アップ」

「ドント・ルック・アップ」観ました。
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アダム・マッケイ監督。NETFLIX作品。

 

アメリカ。ミシガン州立大学天文学教室。地味に活動していた彼らが「半年後の確実に地球に衝突する巨大彗星」を発見してしまったからさあ大変、というお話。

天文学教授のランドール・ミンディをレオナルド・ディカプリオ。博士課程の学生ケイト・ディビアンスキーをジェニファー・ローレンスが演じた。

 

「あと半年後に巨大彗星が地球に衝突し人類は絶滅する。」

もしそんなニュースを目にしたら。当方はどういう行動をとるのだろう。

 

「もう無理して生きる意味なんてないな」即座に仕事を辞め。貯金を下ろし。好き勝手暴飲暴食して何も我慢なんかしない。だって「確実に衝突するし人類は絶対に死ぬ」と言っているから…なぜだろう。むしろ、最後の最後まで仕事を辞めずにできる限り普段通りに生活していそうな当方の方が想像がつく。

 

ミシガン州立大学天文学教授とその学生が、ある日「6か月後に地球に衝突する巨大彗星」を発見してしまった。何度軌道を計算しなおしても結果は同じ。彼らはNASAへ連絡。事実と認定され、NASAの惑星防衛調整室長のテディ・オグルソープ博士(モブ・ローガン)が出動する事態となった。

 

「これは大変だ」ホワイトハウスに有事を報告すべく向かった一同。しかし事の重大性は全く伝わらず暖簾に腕押し。問題を打破させるべく人気報道番組(という名のワイドショー番組)『デイリーリップ』の出演を果たすが。世間は「世界の終わり」よりも「歌姫と有名ラッパーとの破局」の方に興味津々で。

 

「世界の終わりに向けて」という一見シリアスなテーマを扱っているようで、この作品はあくまでコメディ。それもブラックユーモア路線。

 

「ありそう~」「こういう世論の雰囲気ありそう~」「有事に乗じて金儲けする奴いてそう~」毎度展開に苦笑い。

 

とにかく「ここで手を打っていればまだ人類は救われたかもしれないのに」の連続。

着々とタイムリミットは近づいているのに、ことごとく事の重大性が伝わらない。

 

女性大統領ジャニー・オーリアン(メリル・ストリープ)。初見では「とりあえず様子見」の軽い扱い。なのに、自身の政治家生命を問われるスキャンダルをうやむやにするために突然方向転換。真面目に事態に取り組む姿勢を見せた…と思いきや、肝心な時に大手企業CEOの口車に乗っておかしな方向に舵を切ってしまう。まさに風見鶏。

 

大手企業バッシュ社のCEOピーター・イッシャ-ウェル(マーク・ライアンス)。

胡散臭そうなスピリチュアル系コンテンツが盛り込まれたスマートフォン販売などをこなす…なんだかよくわからないけれどお金と権力はやたら持っているIT企業を率いるピーターは、人類の希望を託した『巨大惑星にスペースシャトルで体当たり作戦』を土壇場で強制的に中止させる。理由は「この彗星に貴重な物質レアアースが含まれており、人類の発展と生活の向上のためにはこれを利用しない手はない。」という理屈。

 

『デイリー・リップ』の女性キャスター、ブリー・エヴァティーケイト・ブランシェット)。緊張感をみなぎらせて現れたミンディとケイトに、初めは茶化した態度をとっていた。しかし、大統領の手のひら返しを目にするやミンディたちへの対応を一変。

特にミンディに対し色目を使いだし、妻子がいるミンディと不倫関係に発展する。

 

「みんな。真面目にやって!」

事の重大性に危機感を持ち、声を上げ続けたのはケイトくらい。けれど、不安を強くにじませた彼女の態度は世間からは「ヒステリック」「頭がおかしい」と避難されてしまう。(ミンディだって同じスタンスで訴え続けていたのに…悲しいかな男女の差なのか…)

 

こうなればバッシュ社の打ち出した『巨大彗星からレアアースを抜き出して衝突回避作戦』にすがりたいけれど…いかんせん、器械が計算しただけの計画で、有識者たちの査読が一切入っていない。博打にもほどがある。

 

繰り返しますが。とにかく「ここで手を打っていればまだ人類は救われたかもしれないのに」の連続。

 

イムリミットは近づいている。いよいよ肉眼で見えるくらいに彗星が近づいてきた。

そこでタイトルの「ドント・ルック・アップ」と「ルック・アップ」の水かけ論争が繰り広げられていく…もう…どうしようもないのに。

 

巨大彗星衝突による地球の終焉。それを事前に知っていたのに。くだらない見栄や欲が絡んで手が打てない。新しい意見が出るたびに人々は翻弄され、救われたい一心で縋り付く。結局終わりの日を迎えることになってしまう。因果応報とはこのことか。

 

「なんか…昨今の社会情勢やご時世が頭をよぎるな…」おそらく。今の時代にこの作品が作られたことのメッセージをふんだんに詰め込んでいる。

 

「ドント・ルック・アップ」空を見上げるな。都合の悪いことは見るな。そう叫んでも…実際に空を見上げればそこには例の彗星が存在している。確実に人類を追わらせることができるらしいそいつが。

 

「ルック・アップ」見るしかない。この世に生を受けたからにはいつかは死ぬ。そうわかっているからこそ、もう打つ手がないのならば自らの命を奪う相手をしっかり見なけば。未曽有の事態にどういう態度をとるべきか、見極めたい。悔いなく人生を終わらせるために。

 

世界の終わる日。もし確実にこの日だとわかったら。その日をどう過ごすのだろう。この作品の主要人物たちのラストはとても理想的だと思った当方。これがいい。これがいいな(映画『エンド・オブ・ザ・ワールド/2012年公開作品』も好きな終末)。

 

最後に。地球が崩壊した後の未来が映し出されたとき。「お前たち…そういうあさましさ!」「人類は繁栄しないぞ!」どこまでも皮肉な展開に突っ込まざるを得なかった当方。

 

テンポよく突き抜けたブラックコメディ映画…と見せかけて盛り込まれたメッセージは盛りだくさん。

果たしてそれを「ルック・アップ」か「ドント・ルック・アップ」とするか。