ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ボクたちはみんな大人になれなかった」

「ボクたちはみんな大人になれなかった」観ました。
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1995年。21歳だったボク・佐藤誠森山未来)は、彼女・加藤かおり(伊藤沙莉)と出会って初めて頑張りたい」と必死になれた。 

『普通』を嫌う彼女と一緒に居ると楽しくて、自分も特別な何かになれそうな気がした。

1999年。皆がどこかで恐れていた『世界の終わり』は訪れなかった…けれど彼女は急にボクの前から姿を消した。

2020年。46歳になったボク。社会と折り合いをつけてすっかりくたびれた中年となっていたけれど…ふとした拍子にFacebookで彼女と再会した。

 

燃え殻の同名WEB小説原作。森義仁監督作品。

 

昭:はいどうも。当方の心に住む男女キャラクター『昭と和(あきらとかず)』です。最近登場頻度上がってない?お久しぶりな気がしないよ。

和:まあまあ。これは仕方ない。感想文の内容的に一人称の目線よりは男女の機微で進む方がやりやすいもん。という事で、とっとと始めていきますよ。

 

昭:原作未読。けれど「エモい」という世間の声は聞いていた。1995年。小沢健二。世紀末…。当方は主人公よりは少し下の世代だけれど…十代から二十代前半くらいの不格好さと、あの騒がしかった時代のマッチングに思い当たる節があり過ぎた。

和:21歳から46歳までを演じた森山未來の引き出しよ。それにしても『モテキ』といい、どれだけ森山未來を通じて己の青春時代の記憶に悶えさせられているんやろう。

 

昭:2020年、コロナ禍。テレビ関係の制作会社に長く勤務するボク。とある番組の打ち上げパーティでひっかけた女の子をお持ち帰りしたけれど、盛り上がらずに終わったホテルで。ふと開いたフェイスブックの画面に彼女の姿を見つけた。

和:一気に蘇る、かつての恋。1995年だけじゃない。これまで関りのあった女性たち…元婚約者。いい雰囲気になりつつあった女性。これらのエピソードを、韓国映画『ペパーミント・キャンディ』みたく2015年、2011年、2000年、1999年…と遡って描いていく。

昭:遡りの尺、そこそこあったな。即かおりとのエピソードにもっていくのかと思っていたら、破局した元婚約者・石田恵(大島優子)とか、危なげなクラブの店員スー(SUMIRE)との淡い関係とかもそれなりに触れていくの。

和:そりゃあ、46歳の業界人男性が20代の彼女以降、拗らせまくって浮いた話が無かったってことはないやろう。

昭:スーの佇まい、好きやったな~。今はどうしてるんやろう。元婚約者の恵は他の人と知り合って直ぐに結婚していそうやと思ったけれど。

 

和:その時々の時代背景。2011年の東北地震。2000年のバブル終焉と「ノストラダムスの大予言が外れたことで漂っていた虚無感」。後、1990年代後半の小沢健二をグイグイ押していたけれど、2000年の小柳ゆきとかもうわああ~ってきたよ。

昭:1995年に、三好英明(萩原聖人)が立ち上げたばかりの製作会社に入社したボク。といっても、同期の関口賢太(東出昌大)との合わせて三人しかいない会社。三人共が製作なんてほぼ未経験で、すったもんだしながらも少しずつスキルも身に付いて、会社も大きくなった。この東出昌大はアタリやったね。

和:彼は役に嵌る嵌らんのふり幅が極端やから…でも20代~40代を演じ分けられていた。主に髪型で。ああいうチャラい金髪とか、2000年代初頭に居たよ~。

 

昭:そして。満を持していきますか。1995年から1999年の、忘れられない恋人・かおり。

和:出会いが文通…あったな~。雑誌の文通相手募集。(本名と住所は未公開。募集したらその雑誌に手紙が届き、それがまとめて送られてくるというスタイル)やってたな~。細々と手紙を送りあったりしたよ。実際に会ったりもした。あれ、まさに1997年位やったわ。

昭:共通の趣味が小沢健二を聞く事。小沢健二って、あの当時ではサブカル界(原宿系)の王子様やったな~。

和:どうして「強い気持ち・強い愛/それはちよっと」が出なかったんだ。

昭:何回か手紙のやりとりをして、ドキドキしながら初めて会った。古着屋で働くかおりは奇抜な恰好で変わったことばかりを言う女の子で。直ぐに夢中になった。

和:1995年なら絶対「強い気持ち・強い愛」は流れるべきやった。「カローラⅡにのって」もいいのに。「ぼくらが旅に出る理由」も。どうしても小沢健二のアルバムは『犬は吠えるがキャラバンは進む』より『LIFE』の方が好きすぎるな…。

昭:「普通」であることを嫌うかおり。突拍子もないことを言ったり振り回してくるかおりが可愛くて愛おしくて。一緒に居たい、自分も変わりたい。そう思って転職したりもした。

和:「ラブリー」のかわいさも良い。

昭:おい。和:はい?

昭:いい加減にせいよ…さっきから俺ら、全然会話成り立っていないやんか。

和:…じゃあそろそろ言わしてもらおうか。

昭:はあ。

 

和:昭さんは、どうしてかおりが突然ボクの前から姿を消したんやと思う?

昭:分からん。いわゆる不思議ちゃんやったってことやろう?

和:違う。そこが分からんからアンタ女心が分からんのやって。

昭:オンナゴコロ…どこの演歌だよそれ。

和:「ボクみたいな平凡な男にとって、かおりという予測不能な女子は魅力的だった」これってしんどいねん。分かる?

昭:でもかおりは自分で変わっているアピールしまくってたやん。

和:二十歳そこそこの拗らせ系サブカル女子の典型やと思ったよ。自分は他の女子とは違う。流行に乗っかって同じ格好なんてしない。独自の価値観を持っていたい。けれど反面羽が生えているかのように身軽でいたいし広い視野を持ちたいという気持ちもある。

昭:そういう自由さって憧れるやん。

和:ボクと一緒に居ても、自分の奇抜さを吸い取られるだけ。アウトプットをやたら求められるけれど、ボクからのインプットが無いの。もう尖っていることにも疲れてきたし。そういうこと。

昭:そんな…。

和:求めるばかりじゃ相手がしんどくなってしまう。そしてさ、かおりは言ってたやん「君は大丈夫だよ、おもしろいもん」おもしろいことは自分で見つけてこい。

 

昭:最後に46歳のボク。タクシーで流れる小沢健二。車窓から見える風景に、ふと重なるかつての思い出たち。いいやん、そんなセンチメンタルになる夜があったって。

和:否定はしないよ。彼女達と交わした言葉も感情も、嘘だとは思わないし互いに幸せだと思う日々があったんやとは思う。でも…そのセンチメンタルな感情はたまに一人でしがむ程度にしておいた方がいいよ。聞いたとしても今の彼女達は「そんなこともあったね~」とうっすら笑って頷くだけやと思うから。中年男性のセンチメンタルなんて大抵聞いてられない代物やもん。

昭:お前。身も蓋も無いな。

 

和:「ボクたちはみんな大人になれなかった」というタイトル。「ボクたち」のたちってどこに掛かっていたんやろうな。これって出てきた女性陣ではない印象を受けたんやけれど。

昭:そうなると…観ている側なのかな…。

 

和:NETFLIX映画。登録していないので映画館で鑑賞したけれど。どちらにせよ、夜の鑑賞が似合いそう。少なくともボクと同世代には堪らん。脳内フラッシュバックが炸裂した作品でした。