ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

2018年 映画部ワタナベアカデミー賞

昭:ようこそ。『智の部屋(サロン)』へ。

和:気持ち悪う。何その出だし。

昭:2018年も後わずか。たった二人の映画部が現実世界でほぼ消滅しかかっている事態の中。何とか明るく今年の活動を振り返ってみたい。そう思って、初めて当方の心に住む男女キャラクター『昭(あきら)と和(かず)』がプレゼンターとして起用されました!

和:平成が終わると言われる昨今に我々昭和キャラクターを召喚て。お蔭で暇が無くなっておせちの黒豆担当を妹に明け渡すしか無くなったんやけれど。

昭:まあまあ。ぶつぶつ言わんと。サクサク進めていきますよ。因みに前もってお断りしますが、この選考内容はあくまで個人の好みで判断しており、高尚だとか世間の評価とか技術がどうとか。そういうのは一切考慮されていません。…年末映画好きあるある『年間ベストランキング』に対し「順番なんて付けられないよ!」という優柔不断振りを見せながら、ジャンル別ベストを叩き出す(時に複数出ます)という『アカデミー賞方式』を採用しています。

 

和:今年の劇場鑑賞作品数は104本。内旧作は5本(午前十時の映画祭2本)でした。

昭:一応100本は越えたのか。今年は地震とか台風とか家族の手術とかあって、特に後半以降出足が延びなかったんやけれど。

和:まあその話はおいおいやれたら。じゃあ、何処からやりますか?

 

『ファミリー映画部門』

万引き家族 デットプール2
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昭:『万引き家族』は無視出来ないな、やっぱり。あの寄せ集めのスイミー一家が醸し出す危なっかしい温かさと、そのハリボテが崩れていく様。

和:『デットプール2』。前作を越えてくる続編ってやっぱりなかなか無いから。前作が実は恋愛映画で、今回は家族映画だった。そう思ったら今の家族映画って世界各国「血の繋がりより精神的な繋がりを家族とする」みたいな流れがあるのかもね。

 

『カーチェイス部門』
 レディプレイヤー1  タクシー運転手
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昭:『レディー・プレイヤー1』は冒頭オープニングからワクワクしたけれど。やっぱりあのカーチェイスシーンの高揚感。

和:これはクリアできへんやろう~と唸るしかなった。だからこそああいうクリアの仕方はずるいと思ったな。正統派で突破してくれよと。

昭:『タクシー運転手』ラスト広州から脱出する時のタクシー集団‼

和:脳内で中島みゆきの音楽が流れた瞬間やったね。

昭:え?

 

『オープニング部門』

デッドプール2 レディー・プレイヤー1

昭:あ。『レディ・プレイヤー1』はさっき言っちゃった。

和:(無視)『デッドプール2』最大の悲劇から始まるという…デップ―の元々のキャラクターが陽気やから、深刻な事態なのにどこか明るくて。あの不謹慎なのに憎めない感じはデッドプールしか出せないと思ったな。

 

『エンディング部門』

君の名前で僕をよんで
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和:お話自体には言いたい事も一杯あったんですがね。兎に角エンディングが最高。ティモシー・シャラメが暖炉の前でひたすら泣いている画なんですが…ぞくぞくしてまうの!!

昭:それって…。

 

『胸糞部門』

デトロイト
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昭:部門名で誤解を招きそうやけれど。この中の「白人警官に依る、40分に渡る拷問シーン」ホンマに嫌やった。

和:けれど。史実に沿っている事件やし「何が彼をそうさせたのか」を考えざるを得ない。そして黒人たちは本当に完全な被害者なのか。デトロイトという町の治安の悪さなんかもあったやろうし…。

 

韓国映画部門』

V.I.P.修羅の獣たち
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昭:今年公開された韓国映画は『タクシー運転手』や『1987、ある闘いの真実』に描かれた、光州事件や韓国民主化運動を題材にした作品。『悪女/AKUJO』や『the Witch 魔女』の女性アサシン覚醒モノ(しかも最早笑うしかないアクション)。その他「また新たな扉が開かれたよ…」というジャンル飽和状態。「最早日本にノワール作品など存在しない」「韓国映画に持って行かれている」という当映画部共通認識の中で。何故この作品がベストなんですか?

和:オイタが過ぎた北のボンボンに最終食らわす制裁の仕方が堪らんかったから。

昭:それアンタの性癖なだけやんかあああ。

 

『アニメ映画部門』

若おかみは小学生!
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昭:完全に舐めてた。観るまでは。

和:絵柄も正直苦手な感じやったしね。でも始まってしまえば全然気にならない。

昭:悪者が居ない世界。そして何より主人公おっこちゃんが滅茶滅茶いい子なんよな。

和:愛されて大切に育てられた子。でもふんわり優しいだけの話じゃない。不意に締め付けてくる喪失感とか、別れとか。でもどうやって前を向くか、みたいな事を無理なく描いていた。最後の辺りなんてずっと泣いていたし。あれは子供に連れられて行ったら親の方が号泣しちゃうよ。

 

『変態映画部門』

恐怖の報酬
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昭:一体誰があんな嵐の中の吊り橋を見て「行ける!」って判断したんだ。何故「せめて雨がやんでから」と提案しなかったんだ。

和:40年前やから、当然CG技術だって無かったやろうし。たとえセットとは言え、あんなの命がけ。命がけで映画を撮るなんて狂気の沙汰。絶対けが人出てるよなああれ。

昭:「どんなに苦しい仕事だって、ダイナマイトを運ぶ仕事よりはましだ。」っていう感想を見て大きく頷いたよ。せめてさあ、もう一回り小さな車無かったん?

和:緊張感で体が強ばって…見終わったら全身の筋肉がおかしくなってた。劇場の一体感も半端なかったよ。

 

『助演俳優部門』
男性 サム・ロックウェル/ディクソン スリー・ビルボード

女性 柳ゆり菜/加奈 純平、考え直せ
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昭:『スリー、ビルボード』の警察官ディクソン。始めは凄い嫌な奴で。差別主義者で態度も横柄。けれど彼もまた人から偏見の目で見られている。全然好きになれないキャラクターやと思っていたのに。途中の事件からどんどん変わっていって。「人を初めから決めつけてはいけない」件の彼の態度は何処から来ていたのか。それがほどかれていったら。不器用で、最終的には憎めない、魅力的なキャラクターになっていたな。

和:メインの女性キャラは彼女なんやから、助演、とするべきか分からなかったけれど。柳ゆり菜は今年注目せざるを得なくなった女優やった。お話自体は「う~ん」と思う所もあったけれど。彼女が演じた『加奈』というキャラクターが余りにもイキイキしていて、加奈そのものにしか見えなかった。バッサリ脱いで、エロも厭わない。あのレイプシーンなんて息を呑む迫力だったけれど、だからと言って脱いだから彼女が凄かった訳じゃ無い。加奈の表情で〆たラスト。あの顔は…今年の邦画ベストショットやったかもしれない。それくらい良かった。

 

『主演俳優部門』

男性 ソン・ガンホ/マンソプ タクシー運転手

女性 フランシス・マクドーマンド/ミルドレッド スリー・ビルボード

 安藤サクラ/柴田信代 万引き家族


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昭:マンソプはソウルのタクシー運転手で。娘と二人暮らしのシングルファーザー。どうしても娘に靴を買ってあげたくて、もぎ取ってきた仕事から『光州事件』を知ってしまう。

和:マンソプが初めから物わかりの良い奴では無い所が良かった。なんだこれと逃げ出そうとして、娘の元に帰りたいと泣いて。けれど同業者を初めとする広州の人達を見てしまったら捨て置けなくて。あのうどん屋からのUターン以降、号泣。

昭:『スリー・ビルボード』は本当に人間の多面性をどこまでも追及してくる作品で。正に「罪を憎んで人を憎まず」ミルドレッドの怒りは当然だけれど、その怒りの方向性は苦しいけれど違う。

和:でもそれ、分かってるんよな。だからビル署長に怒りをぶつけても彼が病気で倒れれば取り乱すし。ずっともがいている。ただ闇雲に怒っている人、では済ませなかった。

昭:また、良い終わり方をしたよね。あの作品は。

和:安藤サクラは化け物。そんなの『愛のむきだし』から分かっていました。

昭:こういうお母さん、苦手やなあ~って思っていたけれどね。終盤の取調室でのあの表情。あれは…あかん。完全に打ちのめされた。

 

『ワタナベアカデミー大賞』

該当作品なし

昭:うわあああああ。

和:ここ何年かは出たんですがね。今年は該当作品なし。こればっかりは仕方ないです。

昭:どういう基準なの、これ。

和:大賞って、もう観ている時から「これはベストだ。年間ベスト作品だ。」って実感するねん。もうこれはホンマに直感でしかない。それが今年は走らなかった。

 

『佳作部門』(公開順)

ガーディアンズ/スリー・ビルボード/ピンカートンに会いに行く/アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル/心と体と/ブリグズビー・ベア/志乃ちゃんは自分の名前が言えない


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昭:好きな作品は多かった。まず「ロシアを舐めたらあかんで!」という『ガーディアンズ』上半身が熊!という愛すべきビジュアルとか。展開も早い早い。

和:『スリー・ビルボード』が米アカデミー賞を取れなかった時。昼休憩中やったけれど、早退したくなったよ。本当に好きな作品。

昭:『ピンカートンに会いに行く』ああいうもがいて、恰好悪くて、っていう作品は堪らんよな。

和:『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』は作品自体がトーニャハーディングそのもの。無様で恰好悪くて。でもしたたかでがむしゃら。当時をおぼろげに知っている者からしたら「あれってこういう事やったんか」の答え合わせ。テンポも良かった。

昭:『心と体と』不器用の一言では済まされない女性と。もう恋なんて何度も繰り返してきたはずの男性の全然上手くいかないモダモダ感。なのに夢の中での彼らは美しいつがいの鹿。兎に角全編美しい。

和:『ブリグズビー・ベア』誘拐・監禁。幾らでも湿っぽく出来る題材なのにああいう持って行き方が出来るなんて。誰も悪い人なんていないし、ブリグズビー・ベアを馬鹿にしたりしない。最高なのに泣けて仕方なかった。

昭:『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』志乃の歌声。打ち解け合って、奇跡みたいな毎日やったのに。あっという間に崩壊してしまう悲しさ。どうしても変化を受け入れられない。けれど現実は確かにそうだなと。「あの素晴らしい愛をもう一度」でも、どこまでも心は通わない。切ない。

 

ラズベリー部門』

キングスマン ゴールデン・サークル
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昭:2018年の映画初め作品でした。

和:二人で失恋レストランに行ったんですよ。(当ブログ談)本当に。本当に辛かった。

昭:前作が好きすぎたから。だからおのずとハードルが上がり過ぎていた。その結果、ハードルを飛ぶ事無くなぎ倒しての暴走に我慢が出来なかった。

和:お願い。お願いですからこれ以上続編は作らないでください。

 

昭:いやあ~。お疲れ様でした。

和:一つずつコメントしていくのは初めてだったんで。随分長くなりましたね。お疲れ様でした。

昭:『カメラを止めるな!』案件とか。『ちはやふる 結び』とかも喋りたかったね。

和:話題になり過ぎて…同じような事しか話せない気がしたんでスルーしました。

昭:今年はどうしても下半期の活動が鈍ってしまった。結果振り返ったら上半期の作品が多く選出された気がする。

和:これまで経験した事が無かったレベルの地震を体験して実家が壊れたり。台風が来たり。家族が入院したり。そのせいで気持ちが落ちてしまったし、実際映画館に行く事が出来なかった(交通の関係で)のも大きかったかな。

昭:映画に元気づけられたり、逆に引きずったり。映画って喜怒哀楽が発生するし、それが己の精神状態にとって良い感じのカンフル剤になる、それが映画を好きな理由の一つでもあるんやけれど。けれど映画館に向かう気力も沸かない。それどころか布団から出る気もしない。そんな日もあった。

和:それでもやっぱりふっと映画が観たくなって。結局観たら楽しくて。別にそれでお金を貰っている訳じゃ無いし、無理矢理映画を観る必要なんて無い。なのに…観たくなるんよな。

昭:この映画感想文も。「どんどん長くなっているな~」「メリハリが無いな~」と思う事ばっかり。「スパンと短く要点を!」と思うのに。常に抱える問題点。

和:ただ。一つだけ褒めるとしたら『観た映画全ての感想文を書く(飛ばさない)』『観た順番を入れ替えない』のルールは今年も無事守れた。それはよく頑張ったなと。

 

和:今年の映画部長との年間総括で。「もし映画を一つ撮れたら、どんな作品にしたいですか?」というお題を出そうとしていましたが。一体何て言うつもりだったんですか?

昭:『注文の多い料理店』みたいな話。薄暗い部屋でドレスを着た女性がテーブルについていて。その正面画でカメラ固定。クラッシック音楽が流れる中、出て来る食事を彼女が淡々と食べる、ずっとそれが続くの。

和:それ…寝てまうやつちゃうん。

昭:段々照明が落とされていくから、彼女が一体何を食べているのかがよく見えない。でも新しく料理が出される度に彼女の状態も変わっていくの。あれ?眼帯してる。何か赤ワイン濃いな~とか。食事を食べさせて貰ってる?手は何処に行った?とか。

和:怖。アンタ散々私に言うけれど。アンタこそ変態やないの。

昭:仕方無いよな~だって俺たち、得意分野が『変態映画部門』やもん。因みにこの女性役はダコダ・ファニングでお願いします。

和:『ブリムストーン』から着想を得てるやないの‼
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昭:因みに部屋はここ。

和:『血の部屋(サロン)!』

 

…長かった。長い長い文章にお付き合い頂きましてありがとうございました。

2018年もいつの間にやら最終日。確かに当方にとっても『災』であった一年でした。

けれど。大きな目で見たら、大病をした訳でも家や家族を無くした訳でも無い。何も失っていない。気落ちする事はあっても基本的には元気じゃないか。そう振り返る大晦日です。

 

最後に。このような個人の備忘録映画感想文に、少しでもお付き合い頂いた方。

貴重なお時間頂きましてありがとうございました。

 

来年も、(当方も含め)楽しい映画ライフになりますように。