ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

2020年 映画部ワタナベアカデミー賞


昭:怒涛の2020年が終わろうとしている。

和:今年も我々、当方の心に住む男女キャラクター『昭と和』が映画部活動報告一年の締めくくりを担当させて頂きます。

昭:映画好きあるある『今年の映画ランキング』。当方は「皆頑張ったのに順番なんて付けられないよ~。ジャンルも違うしさあ。」という観点から、オリジナル部門別でベストを付けていくアカデミー賞方式を採用しています。

和:ですが。ベストと言いつつも複数の受賞が出る事もあります。その場合は公開順番で公表させて頂いています。以上のルールで進めたいと思います。

 

昭:今年の劇場鑑賞本数は71本。うち旧作は3本。NETFLIX作品は2本でした。

和:少ない…近年は年間100本を切ってきていたとはいえ、流石に滅茶苦茶減っている。

昭:そりゃあなあ…今年はやっぱりどこを切り取ってもコロナ一色。全国の映画館が約2か月間閉館した事が大きすぎたよ。

和:劇場が再開した後もしばらくは間隔を空けての座席制限。収容人数が半分~3割位しかないから、観たい映画が観れなかった日もあったな…ちょっと、部門賞発表前に今年一年の個人的な映画鑑賞の思い出語っていこいうか。

 

昭:2020年幕明けの作品は『エクストリーム・ジョブ』。どこまでもカラッと明るい韓国映画。解体寸前の麻薬取締班が起死回生を掛けて唐揚げ屋になる。
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和:「俺たちは一体何をやっているんだ」。唐揚げ屋に夢中になり過ぎて自分たちが警察官である事を見失っていた。けれど、いざ行動開始したら、実は滅茶苦茶優秀なチームだったと。テンポが良くて楽しい作品やった。

昭:『さよならテレビ』。東海テレビドキュメンタリー劇場第12弾は自社の報道フロア。
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和:観に行ったのが製作者の舞台挨拶回やったんよな。元々小さい映画館ではあるけれど、満席で立ち見で観た。

昭:今では考えられないな。

 

和:中国武漢で発生した新型コロナウイルス肺炎。対岸の火事だったのもつかの間。全世界に波及。日本にも上陸し、あっという間に感染爆発した。得体の知れないウイルスに対する不安と恐怖は人々の判断力を奪い、他人への攻撃に向かう人も多くいた。

昭:マスク、アルコール、その他衛生材料や思ってもみない商品の争奪戦。どこそこでクラスターが発生したと報道されれば総出でバッシング。自粛警察誕生。

和:「まだ映画館とか行ってるんですか?」「もう行くのやめてください」面と向かってそう言われた時、全身が震えるくらいのどす黒い感情が駆け巡ったね。

昭:全国の映画館が閉まった約2か月間。再開してから今だってずっと映画関係や映画館で働く人たちは苦しい思いをしていると思うけれど…正直あの閉まる直前の3月あたりは映画館で映画を観る事をライフワークにしている者にも厳しい時やった。

 

和:何が映画だ。不要不急の外出は~そう叫ばれ出した頃に観たのが『ジュディ 虹の彼方に』。
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昭:鍵っ子だった当方と妹が覚える位に観た、MGM映画会社製作の『オズの魔法使』。その主人公ドロシーを演じたジュディ・ガーランドの人生の終盤を描いた作品。「オズ!」懐かしくて涙が出そうになった出だしから。どんどん堕ちていくジュディと最後の合唱に涙腺崩壊したな。

和:公開初日。本当はもっと観客が居ただろうに…というがらんとした映画館で上映を待っていたら、足を骨折した松葉杖の女性が入ってきた。この人にとっては今観ないといけない作品なんだなと思ったよ。

 

昭:映画館が閉まった間。ミニシアター・エイド基金にもささやかながら募金したけれど…映画が観たい。映画館で観たい。その気持ちが止まらんかったな。

和:そして満を持しての劇場再開。そこで観たのが『復活の日』。
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昭:ドンピシャの選択やったな~。40年前の作品とは思えない現在とのシンクロ設定。そして当時の角川映画が膨大な資金をつぎ込んだというバブリシャス。

和:『AKIRAIMAX版で観られる贅沢。原作者大友克洋が製作に関わっているから世界観が崩れないし流石の画力…でも個人的に圧倒されたのは音楽。迫力があったな~。
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昭:座席数を減らしての再開。映画館の換気システムについて広報され始めたのもあって、映画館=密。の印象がましになってきた。

和:マスク着用必須。飲食についての制限等はあるけれど、座席数制限も解除された。でも…前ほど映画を頻繁には観れなくなった。そもそも公開画延期の作品も沢山出たから…。

昭:未だ渦中という感じがするよな…ところで、思っていた以上に話が長くなったからここで一旦止めて発表に移っていこうか。

 

【ドキュメンタリー部門】

『さよならテレビ』『彼らは生きていた』
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和:『さよならテレビ』ホンマ、東海テレビのドキュメンタリーって良品やなあと思う。自社の報道フロアを対象にした今作。普段はカメラを向けている彼らが撮られる立場になった時の態度。そして3人の男たち。

昭:でも実は…という最後のシーンで足元を掬われる。「一体ドキュメンタリーってなんだ」という困惑。これ、本当に舞台挨拶の回で良かった。

和:『彼らは生きていた』。イギリス帝国戦争博物館所有のモノクロ映像を修復して編集した、第一次世界大戦終結100周年記念事業作品。

昭:西部戦線をメインに。戦争が勃発してからの国の機運や実際の現場。捕虜との交流や戦争終結以降までが淡々と記録されている。

和:何しろ本当の映像やからなあ。下手な演出も無い。こういう戦争映画が観たかったと思ったな。そしてこれ、パンフレットも見ごたえあり。

 

【美味しそう部門】

『在りし日の歌』『エイブのキッチンストーリー』
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昭:『在りし日の歌』は一人っ子政策をとっていた頃の中国で生まれた二人の男の子とその家族を描いた作品なんやけれど…食事シーンが滅茶苦茶美味そうやねん。

和:でっかい饅頭とスープ。悲しい気持ちで食べた年越しの水餃子。堪らん。

昭:『エイブのキッチンストーリー』は主人公エイブがワクワクしながら料理を作る様が観ていて楽しくて。後、ブラジル出身のチコのキッチンスタジアムシーンなんてずっとそこに居たくなるくらい高揚する。

和:美味しいは正義。

 

【お似合いのカップル部門】

『マティアス&マキシム』マティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス)とマキシム(グザヴィエ・ドラン

『本気のしるし≪劇場版≫』辻一路(森崎ウィン)と葉山浮世(志村芳)
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昭:真逆なやつ持ってきたな~。

和:『マティアス&マキシム』5歳の時からの幼馴染の男性二人が、自主製作映画のキスシーンに協力した事に依って恋愛感情に気が付くという。もうねえ…マティアスよあんなにがっつりマキシムを求めといて往生際の悪い…腹を括れ!終始それ。

昭:『本気のしるし≪劇場版≫』どこに良い所を見つければいいのか皆目わからん浮世に俺のメンヘラアラームが早々から作動したけれど。実は全てを受け入れて堕ちる事に快感を感じている辻君こそが真のヤバい奴。もうねえ~二人だけでひっそり生きて欲しい。誰にも迷惑を掛けん様にさあ。

 

【変態映画部門】

『アングスト/不安』
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和:1980年にオーストリアで殺人鬼ヴェルナー・クニ―セクが起こした一家殺人事件を題材にした作品で1983年に公開された問題作。

昭:主人公K.の行動と彼の脳内ナレーションを延々観せられるんやけれどさあ。もう全然思考に共感が出来ないの。こっちは置いてきぼりやのにお構いなし。

和:犬が…何故この状況でこんなにK.に懐いているのか。そして劇場からの「犬は無事です」グッズ。笑ったね。

 

【ラストが胸アツ部門】

『シカゴ7裁判』
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昭:1968年8月に行われた民主党全国大会。その近くでベトナム戦争反対を掲げて集まっていた群衆の一部が暴徒化。扇動したとされた7人に対し国が10年の禁固刑を求刑した、「アメリカ史上最悪の裁判」。

和:オイタをしたにしても罪が重くないか~。そもそもその日に何があったんだ。けれど裁判自体が余りにも理不尽に進行。フラストレーションを抱えながらも「そうか。そういう事が起きたのか」そうしんみり終わろうとしたら。まさかの胸アツラストシーン。

昭:心の中でスタンディングオベーション

 

【助演女優部門】

『パラサイト 半地下の家族』キム・キジュン(パク・ソダム)
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和:あの作品に於けるメインの女性って誰なんだ。シンプルな奥様?あの奥様も凄く好きやったしこの作品に出てくる俳優陣のそうそうたる演技力には舌を巻いたけれど…キム家の長女キジュン。水が溢れかえる便器に座ってタバコを加える彼女は最高の画やった。

 

【助演男優部門】

『TENETテネット』ニール(ロバート・パティンソン

『罪の声』生島聡一郎(宇野祥平
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昭:『テネット』クリストファー・ノーラン中二病ロマンさく裂キャラクター。最後は「ニール!ニール!」の脳内シュプレヒコール。最近変態っぽい役が多かった印象やったから…正統派イケメン枠に返り咲いたな。

和:そして我らが宇野ちん…(勝手な宇野ちん呼ばわり)。『罪の声』グリコ森永事件をモチーフにした、イケメン俳優二人を主軸に置いた割には浮つかずにしっかり骨太な作りに落とし込んでいた。でも「聡一郎さん」登場からはもう…宇野ちんの独壇場やった。

 

【主演女優部門】

『ジュディ 虹の彼方に』ジュディ・ガーランド(レネー・セルヴィガー)

『ソワレ』山下タカラ(芋生悠)

『泣く子はいねぇが』桜庭(後藤)ことね(吉岡里穂)
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昭:『ジュディ 虹の彼方に』落ちぶれていくジュディ・ガーランドを全身で表現したレネー。老け込んだビジュアル。そしてびっくりしたのがあのパフォーマンス力。

和:歌って踊れるイメージが無かったからなあ。

昭:『ソワレ』父親から虐待を受けていたタカラ。刑務所送りになったのに、遂に出所して自分に会いにきた父親。父親と対峙して取った行動と、たまたま目撃してしまった翔太に見せた表情。

和:何て顔するんだよ。息を呑むとはこういう事。そこからずっと、タカラから目が離せなかった。

昭:『泣く子はいねぇが』正直吉岡里穂のポテンシャルを舐めていた。可愛くて元気な印象が強いからさあ。いつまでも子供じみた夫のたすくに対する苛立ち。そして時が経った今のことね。こんな演技の出来る女優だったなんて。

和:パチンコ屋の駐車場で見せたあの表情…堪らん。

昭:何様だ俺ら。

 

【主演男優部門】

『サンダーロード』ジム・アルノー(ジム・カミングス)
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和:テキサス州の警官、ジム。愛する母親が亡くなったその葬儀で、母親が好きだった曲「涙のサンダー・ロード」に合わせて踊るはずが持参したラジカセが故障していた。動揺し、支離滅裂なスピーチを続けた挙句、自ら歌いながらたどたどしく踊り始めたジム。この冒頭12分。共感性羞恥の末、一体何を見せられているのかという悪夢。

昭:ジムの事、しばらく好きになれなかったな~。すぐキレて大声出すし、暴力的やし。でもジムの必死さが分かってくるにつれて見方が変わったな。

和:最後のシーンは泣ける。ジム…不器用にも程があるよ。

 

【ワタナベアカデミー大賞/ラズベリー賞】

該当作品なし

昭:うわああああこう来たかあ。

和:元々から大賞は出たり出なかったりするというのもあるけれど…今年は映画館で映画を観られた事に感謝したいから。ラズベリーも出さない。

 

【監督部門】

昭:相変わらずぶっ飛んでたテリー・ギリアム監督の『テリー・ギリアムドン・キホーテ』。
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和:良かったね。やっと念願のドン・キホーテを完遂出来て。

昭:コロナ禍で公開延期作が続出した中で。それでも年内に公開した、クリストファー・ノーラン監督の『TENETテネット』。壮大な中二病世界。楽しかった。

和:大林宜彦監督の遺作となった『海辺の映画館/キネマの玉手箱』。何というか…色んな寓話をありがとうございました。
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昭:そしてまさかのキム・ギドク監督。

和:『人間の時間』あれが遺作?ええ~って思うけれど。なんかもう本当にコロナのやつ…。
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昭:延々語りつくしたので。そろそろ〆ますか。

和:ええと。想定外な一年となりましたが、何とか年を越せそうでひとまずほっとしています。

昭:全世界に蔓延した新型コロナウイルス肺炎。それに依って強制的に変化せざるをえなかった生活や習慣、意識。もうこれは。騒ぎが終息したとて、以前の生活には戻らないんやろう。そう思っています。

和:たまたま当方の趣味は映画鑑賞だった。今年は映画館で映画を観る事に窮屈な思いをしたけれど、これは当方に限ったことではない。皆が何かを制限されたり我慢したり諦めるしかなかった。その事で生活が立ち行かなくなった人も大勢いる。

昭:けれどエンターテイメントは生活が安定していないと享受してはいけない訳ではない。映画や音楽、舞台やイベント。人が集まり何かを成す。それらは決して「あっても無くてもいいもの」ではない。

和:ただ。今だにどう対応する事がベストなのかよく分からない感染症のせいで、大切にしている場所やモノが傷付けられたり取り上げられる訳にはいかないから…流動的ではあるけれど「こうしてください」と言われた事を守りながら映画部活動を続けていきたいと思っています。

 

昭:延々と長文にお付き合いいただいてありがとうございました。「観た作品全ての感想文を書く」「観た順番を入れ替えない」自身の課したレギュレーションに押しつぶされそうになることは今年も往々にしてありましたが。何とか完走出来て良かった…良かった(ホッと溜息)。さあ!混沌とした2020年も終わるぞ。という事で『復活の日』からはいどうぞ!

和:「どんな事にだって終わりはある。どんな終わり方をするかだ」。