ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「OLD/オールド」

「OLD/オールド」観ました。

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「そのビーチでは、一生が一日で終わる。」

 

ピエール・オスカル・レヴィ―&フレデリック・ペーター著『Sandcastle』を原案とした、M.ナイト・シャマラン監督作品のタイムスリラー。

 

夏休みを楽しむべく、リゾートホテルにやって来たキャパ―一家。リスクコンサルタントの夫・カイと博物館勤務の妻・プリスカ。6歳のトレントと11歳の姉マドリクス。

一見すると仲良し家族だが、実は両親は離婚寸前で喧嘩ばかり。最後の思い出旅行だった。

到着翌日の朝食。ホテルマンから「お薦めのプライベートビーチがあります」と声を掛けられたキャパ―一家。その口ぶりからてっきり自分たち家族だけに薦めたのかと思いきや、ホテルのバンにはもう一組の家族が乗っていた。

もう一組の家族~外科医の夫・チャールズとその妻・クリスタル。娘のカラ6歳、祖母のアグネス。

「貸し切りじゃないの?」というもやもやは置いといて。「17時に迎えに来ます」とバンから降ろされたそこは絶景のビーチ。浮き立つ面々。

「あれ?もしかしてあそこに居るの、ラッパーのミッド=サイズド・セダンじゃない?」

どうやら先人らしい、ビーチの端で一人佇む有名人に盛り上がるマドリクス。

少し遅れてさらにもう一組、看護師の夫・チャールズと心理学者の妻・パトリシア夫婦も合流。

素敵なビーチで夏の思い出作り!思いっきり楽しもう!

と思いきや…全裸の女性の水死体を発見した所から一同に緊張が走る。続いてクリスタルたちが連れてきた愛犬が。そして祖母のアグネスが次々と亡くなっていく。

そして…わずか6歳と11歳だった子供たちが異常なスピードで成長していく。

「ここでは…何が起こっている?」

 

予告でもがっつり出てましたし、この説明なしでは流石に進める事が出来ませんので…「ビーチを取り囲む鉱石から出る磁場の影響で時間の流れが異常に早い」「一時間で約2日進む」という恐ろしい場所なんですわ。

 

成長しきった大人たちの変化は緩慢だけれど、絶賛成長過程中である子供たちの外見はみるみる変化する。

「いやいやこんな所に居れるか!」

慌ててビーチから出ようにも、磁場の影響からか陸路では頭痛が激しく失神。挙句ビーチに体が飛ばされて無理。海からは海流が激しくて無理。脱出不可能。

 

「これは詰んだな。」

真顔の当方。なにこれ、考えただけで地獄。

夏休みに家族でリゾートホテルに滞在。とかくインドアな当方はホテルでだらだらしたい…でも子供連れの家族ならば、そりゃあプライベートビーチを紹介されたら行くだろう。

同席する事になった家族。いかにも金持ち。神経質そうな夫と派手な妻。祖母と小型犬。息子と同じ年の少女。

そして遅れてきた夫婦。妻は確か、朝食のラウンジでてんかん発作を起こしていた。

元々ビーチに居たガタイの良いラッパーは何故かずっと鼻血を流している。

まあでも…別に仲良くする必要なんてないし。そう思っていたら、まさかの水死体発見。

ラッパーのツレだという女性の死体に「お前が殺したんだろう!」という緊張が走るけれど。それ以外にも異常事態が多発し、騒然とするビーチの面々。

 

次から次に起きる出来事に、観ている側の意識も常にノンストップ。

時間が爆速で進むことから、おそらく早々にビーチから去る事になった犬と祖母。

水死体が瞬く間に白骨化したことから、博物館勤務プリスカの推測により「このビーチでは2時間で一日進む」というおおよその時間軸ルールが全員に周知。

心臓外科医であるというチャールズ。いかにも頼りに出来そうな人物だったのに、精神を病み相当不安定な状態であると判明。

そして「あっちで二人で遊んでおいで」テントで過ごしていた6歳のトレントとカラの急成長~の妊娠、出産。

 

「いやいやいや。流石にそれは~。」

同じ年ごろの男女が一緒にいて、ふざけてお互いを触りあっていたら妊娠する。それ事自体はありえんでもないと思うけれど。「僕たちの子供だ」その知識は何処から?

 

終始どんちゃん騒ぎのテイを成していましたし、突っ込み所は大いにありましたが。当方が言いたいところは一点。「年を取って体が大きくなることと成長することは違う」

 

色んな人や考えにもまれて、経験を積んで。学校だって学業だけが目的じゃない。集団の中で生活することが重要で。社会に出てもずっと付きまとう人間関係。マナーやルールを知り、自分はどうやって生きていくのか。それは誰しもが生きていく中で積み重ねて成り立っていくもので…6歳の子供が、体が成長したからって一足飛びに得られるもんじゃない。

「体は大人!頭脳は子供!」という、どこぞの蝶ネクタイ眼鏡キッズとは逆の人格になるはず。

それは11歳の姉、マドリクスにも感じていた。見た目が大人っぽくなった途端に憂いを持って大人たちに接していましたが…無理がある。

まあ、グダグダ固執していては埒が明かないので…飲み込みますが。

 

そもそもこのビーチ。ホテルの所有地ならば、一体何を目的としているのか。何故この面々が連れてこられたのか。

どうやら、大人たちは誰もが何かしらの持病を抱えているのに…誰も薬を飲んでいない。普通、持病があったら内服薬の時間は気になるけれど。

 

シックス・センス』をどこまで引きずるのか。未だに「最後にどんでん返し」を期待されているM.ナイト・シャマラン監督。

毎回オチを期待されるけれど…大振りだってある。癖が強い。そんな大喜利監督が久しぶりにスコンをした落としどころを見つけてきた。

 

「あ~その理由は納得。ブラックやけれど。」

 

離婚寸前の夫婦。最後の家族旅行のつもりが…家族の絆は強まったけれど、本当に最後の家族旅行になってしまった。時間が一方通行にしか進まない早回し、けれども巻き戻しはないという不幸。

納得の着地はしたものの、苦い気持ちが拭えなかった当方。

 

ところで。近年でもぶっちぎりの「こんな死に方は嫌やな~」案件あり。言葉では語れないですが…こんなの目の当たりにしたら、怖いけれど笑ってしまいそうです。