ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ダーティー・ダンシング」

「ダーティー・ダンシング」観ました。
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「これは私がベイビーと呼ばれていた頃。1963年の夏だった。」

 

17歳。夏季休暇明けには大学進学が控えていた。そんな、家族で過ごす恒例の避暑地で出会った恋とダンスが…私を大人にした。

 

1987 年公開。80年代ダンス映画ブーム。『フラッシュ・ダンス』『フットルース』と並ぶヒット作であり、1987年米アカデミー賞の主演歌賞受賞作品。

 

ティーンの頃に観たかった…。」

 

何だか凄いダンス映画がリバイバル上映されるらしいぞと。前知識も全く持たずにフラっと鑑賞したこの作品。そうして、むせかえるようなみずみずしさと少女漫画的世界観に酔いしれながらつくづく感じたのは当方自身の「汚れちまった悲しみに…」。

歳を取り、分別のついてしまった今よりも。純粋に観る事が出来たであろうティーン時代にこの作品を浴びたかった。(勿論今出会えた事自体には大いに感謝)。

なので。今回の感想文は、17歳の主人公ベイビーの恋にキュンキュンしながらも、終始しがない中年当方の突っ込みか絡んでしまう事を先んじてお詫びしておきたいと思います。

 

1963年夏。フランシス(ジェニファー・グレイ)17歳。裕福な医師家庭に育ち、両親からは今でも『ベイビー』と呼ばれている箱入り娘。

両親と姉のリサとで訪れたケラーマン山荘。家族で過ごす恒例の夏季休暇。そこで出会った、不良っぽいダンスインストラクター、ジョニー(パトリック・キャッスル)。

始めて目にした『ダーティ・ダンス』=マンボ。その激しさ、妖艶さに魅入られ、惹きつけられていくベイビー。

ジョニーのダンス・パートナー、ペニー(シンシア・ローズ)の予期せぬ事態をきっかけに、ジョニーのパートナーとしてダンスを踊る事になったベイビー。

二人の秘密のダンスレッスンは親密さを増していって…。

 

もう一つ先んじてお詫び「今回結構ネタバレします」。

 

1960年代のアメリカ。詳しくはありませんが。どことなく身分制度意識は残っていて、富裕層と労働者階級との差分がある。

この『ケラーマン山荘』という富裕層向けのホテル。湖畔にある大型ホテルで、富裕層家族が長期休暇を過ごす目的で使用される事が多く、大人には大人の社交場。そして子供たちには色んなお楽しみプログラムがある(仮装大会やダンスパーティ、最終日の出し物発表会など)。

従業員の中でも、宿泊客の相手をする給仕などには医学生などのエリート学生バイトたちを付け「娘たちをナンパしろ」とたきつける。

そして、お楽しみ要因(楽団やダンサー)などは労働者階級があてがわれている。

 

そういう環境で。医者の娘のベイビーと従業員のダンサー、ジョニーが恋に落ちる。

 

「とは言え。ベイビー自身はまだ何者でもないんだがな。」早速老いたる当方がぶつぶつ言ってしまう点ですが。

ベイビーは、大学で発展途上国の経済学を学び、平和部隊でボランティアに取り組むつもり…という真面目に誰かの役に立ちたいと望んでいる少女で。およそ嫌味な部分がない。

ホテルの支配人から甥を紹介され。乗り気でないけれど参加したダンスパーティで、けた外れのダンスパフォーマンスを目の当たりにする。

ダンス講師のペニーと、パートナーのジョニー。プロの二人の圧倒的なダンス。

その夜。ふとしたきっかけで従業員宿泊棟に紛れ込んだベイビーは、彼らのダンスパーティの様子に衝撃を受ける。

 

この作品の魅力はやはりダンスシーンの迫力。ケニー・オルテガの振り付け。

ジョニー役のパトリック・キャッスル(元バレエ劇団員)。基礎がしっかりしまくっている彼と、ダンスパートナーのペニー役のシンシア・ローズ(元ダンサー)のキレッキレなダンスシーンは「そりゃあベイビーじゃなくても惹かれるわ」という至福のダンスシーン。

 

「二人…恋人なの?」「それがさあ。違うんだな。」てっきり恋仲だと思っていたのに。ペニーの妊娠が発覚。しかも相手は給仕の医大生、ロビーだという。

所詮はあばずれ。まともな恋人だと思うはずが無いだろうがと随分な言い草のロビーと、早く中絶しなければと泣くペニー。

ベイビーが父親からお金を借り、そのお金で非合法に堕胎手術を受ける事になったペニー。しかしその日がダンスユニットの他ホテルでのダンスショーの日であったことから、ベイビーがペニーの代わりにジョニーのパートナーとして踊る事になった。

 

「待て待て待て。これまでダンスをしたことが無かった女子が超短期間でプロダンサーレベルまで持っていけるもんかね?」

 

まあねえ…そこはファンタジーなんで。ジョニーとペニーの猛特訓でそこそこまで踊れるようになっていくんですわ。

またその練習風景がエモい。二人が絡むシーンの手の動きがこそばゆくて笑ってしまうベイビー。雨の中車に乗り込んで二人で向かった森で練習する様。丸太の上に立つジョニーにつくづく「体幹がしっかりしてるんやなあ~」とほれぼれする当方。

そして…鑑賞した人の多くの記憶に残ったであろう、湖でのリフト練習。水に濡れてスケスケの上着…じゃない。二人のにじみ出る高揚感に釘付け。

 

運命のダンスショーの夜。イマイチな出来でケラーマン山荘に戻った二人を待ち構えていたのは、非合法な堕胎手術で止血処置が不十分だったために大出血を起こして衰弱していたペニー。

おろおろする仲間たちを尻目に。一目散に父親の元へ走り、ペニーの処置を依頼したベイビー。職業意識の高さから、階級などに構わず即座に適切な処置を施した父親だったが。窓口に立って対応したジョニーがペニーの相手だと勘違いする。

 

ここまではジョニーは大人だなと感じていたんですが…突然グイグイ押してくるベイビー(当方個人の感想です)に押し切られるジョニー。

「おいおいお前。子供じゃないか。」そう思っていたら…ジョニーの部屋に押し掛けてくるベイビー。そして二人で熱く踊り…結ばれる。

 

「お前ら!ペニーが生死を彷徨った後によくそんな気持ちになれるよな!生まれなかった命の事も思ったら、今日は悼む夜じゃないの?」老いたる当方が吠えるのを尻目に。どんどん盛り上がっていく二人。

「う~。体の関係を持ったら一気に彼女面するっていう女子ってセリフが初めて脳裏に浮かぶ…」ジョニーに対する扱いがどんどんこなれていくベイビーに「夢見る少女じゃいられない」が流れる脳内(何この文章)。

 

結局二人の関係は父親に知られる事となってしまい。そして唐突に発生した事件の濡れ衣を着せられ、解雇に至ったジョニー。(あの事件の蛇足感よ…と思っていたら、しっかり伏線があった事にやや驚いた当方。)

 

傷心で迎えた最終日の出し物発表会。そこに、もう二度と会えないと思っていたジョニーが現れた。

 

出し物発表会が始まり、その様子を舞台袖から見ていた支配人が「今ではもうこういったホテルはすっかり古くなってしまった」と涙ぐんでいた時点から既に極まっていた当方。

最後のダンスシーン。主人公二人は勿論、ダンス仲間たち。そしてつられて皆が立ち上がり踊り始める…その姿にいよいよ涙が溢れた当方。

 

「何よりも怖いのは、この部屋を出たら、これからの人生であなたと一緒だった時のような思いをする事は二度とないことよ。」17歳。ベイビーと呼ばれていた、フランシスの言葉。

 

「客と従業員の恋愛は即解雇よ(言い回しうろ覚え)!」ベイビーとの関係を知ったジョニーに忠告したペニーの言葉に、ごもっともだと頷く当方。客は家族つれ。大人ならまだしも、子供は…おそらく未成年だろうし、責任持てない。(でもエリート学生はいいんよな。格差時代…。)そりゃあホテルはそう言うだろうよと思っていたら、ジョニーの年齢21歳!若っか。未成年ではないけれどジョニーも若い…ジョニー老けすぎやろう。

 

「この後二人はどうなるのだろう…」その想像がどうも現実的になってしまう悲しさ。「高校の卒業式に告白して、当時の数学の先生と付き合ったんですが。進学したらすぐ別れてしまいました。」何故か昔飲みの席で聞いた女子の過去の恋愛トークが脳内を過ってしまって…おそらく、ベイビーには素敵な恋の思い出になる。でもジョニーは?切ない思いをしそうな予感がするぞ…。

 

ティーンの時に出会いたかった。」

そう思う当方も居るけれど。それは仕方がない事で。それよりも1987年公開作品を34年後の今、映画館で鑑賞出来たのが感動。良い映画はどれだけ時が経っても色あせないもんなんだな。

諸般の事情もあるんでしょうが。30~40年前の映画を今映画館でリバイバル上映する流れのありがたさ。やはり名作と呼ばれる作品は見ごたえがあるし面白い。

 

またふらっと。こういう作品に出会えますように。