映画部活動報告「WEEKEND ウィークエンド」
「WEEKEND ウィークエンド」観ました。
イギリス。2011年公開のアンドリュー・ヘイ監督作品。
金曜日の夜。一夜の相手を求めてクラブに立ち寄ったラッセル。そこで出会ったグレンを連れ出す事に成功、共にラッセルの自宅に帰宅した。
そうして始まった週末。何度も二人で落ちあい、体を重ね、言葉を交わした。
スイミングプールでライフガードとして働くラッセルと、アーティスト志望のグレン。出会う事の無かった二人が、これまでの自分の思いをぶつけ合う。笑い、時には苛立ちながら。
きっとこれは運命の人だ。けれど。土曜日の夕方、グレンはある事実をラッセルに告げる。
昭:どうしてここで俺たちの出番なんかな?俺たちは「当方の心に住む、男女キャラ。昭(あきら)と和(かず)」じゃなかったのかな?
和:私ら、男女の機微を語り合うキャラクターやったよな?
今回。LGBT映画枠で、ゲイコミュニティの恋愛を描いた作品ではありましたが。「別にゲイ云々にこだわる必要は無いな。そしてこの作中の二人のように、とことん会話していくスタイルがいいな。」と思ったので。ではよろしくお願いします。
昭:(小声)困る。こういう「ゆきずりの恋」みたいなの、語れるだけの引き出しが無いよ。
和:(小声)知ってるよ。同じ人間から派生しているんやから。そこはもう…お得意の想像力を付け加えまくって。江戸時代のタンスばりの引き出し作り上げよう。
昭:(小声)あのちっさい引き出し滅茶苦茶付いているやつか!えっと。今さっき調べたら「ゆきずりの恋に落ちやすい星座ランキング」で我らが射手座、一位やったぞ。
和:それ。どうでもいいやつ。無駄に時間喰うから、とっとと始めよう。
昭:金曜日の夜。仕事終わりに友人宅でのホームパーティ。ちょっと顔を出して。皆は陽気に騒いでいたけれど、何だか乗れなくて。さっさと切り上げて帰ろうとしたけれど…落ち着かない。ムラムラする。
和:男の人ってそういうのあるんですかあ~?
昭:むかつく言い方やなあ…だってそういう始まり方やねんもん。向かった先はおなじみのバー。ゲイ同士の交流の場。そこで気になる相手を見つけた。
和:あの。これはゲイがどうのこうのじゃなくて言うんやけれど。一夜の相手を自宅に入れちゃうもん?求めているのは体やのに。どういう相手か分からんのに自宅知られるって怖くないんかな?
昭:どこまで酒に酔っていたのかやろうけれど…正直、怖いよな。でも話がずれるからちょっとその話、置いていくよ。
和:翌朝。ベットでまどろんでいたらコーヒーを入れて持ってきてくれるラッセル。
昭:「布団の上でものを食うな!」子供の頃そうやって親に怒られたからとても出来ない…そしてそもそもコーヒーが飲めない。「お湯沸かしたよ。何飲む?」って起こされたいな。
和:だからモテないんだよ!(昭:お前もだろうが!)…ともかく。ラッセル凄くセンスが良いんよな。このコーヒーだって、カップ&ソーサ―使ってるし。一人暮らしの男性でカップ&ソーサ―持ってる?絶対でっかいマグカップやろう。その他にも「バザーで買ったんだ」からの。モノ達にストーリーを付けていたり。シンプルであまり多くモノを持たないんやろうけれど、大切に使いそう。
昭:ところで。「昨日のセックスどうだった?どういう順序だったっけ?」って聞いてくる奴。どうよ。
和:昨日のセックス…酒の勢いもあって、一種のトランス状態やん。朝になったシラフの状態でのフィードバック。嫌やわあ。しかもグレン、それを録音してんの。
昭:「俺はアーティスト志望だから。これも作品だ。」しかも流出すんの!…息の根を止めてやりたくなる。少なくともねじ伏せてレコーダーは奪うな。
和:結局、グレンのやろうとしている『アーティスト』ってどういう内容なんやろう?彼の言動なんかからはおそらく『LGBT』、特に『ゲイセクシャリティ』について表現していきたいんやろうなと思ったけれど。
昭:それがいわゆる『リアルピロートーク』とかなのかなあ?でもそれってグレンが作中で言ってたみたいに「どんなイチモツなのか知りたいだけだ(言い回し加工)」になりがちで。つまりは…下世話な見世物と紙一重。
和:同じ場所で足踏みしている感じがあるから、ネタバレしていくけれど。グレン、週明けにはアメリカに行く身なんよね。その『アーティスト』として開花するために。
昭:「たった、2日間だけの恋ー。」
和:慣れ親しんだ場所に居るの期間は2日。3日後には飛び立つ。そんな時、離れがたい相手に出会ってしまったら?
昭:やってやってやってやって。やりまくる。体の相性が合うのなら尚更、狂ったみたいにセックスしてるよ。
和:引くわあ。でもさあ、この二人もまあやる事はやってるんやけれど。ずっと会話してるんよな。ゲイである事。カミングアウトする事。家族の事。パートナーを得る事。
昭:何となく思うんやけれど。そうやって制限時間があるからこそ、そういう会話が濃縮して行われたんじゃないかな。普通、ゆきずりやったとしても…もしそこから関係が続くのであれば…彼らが交わしたテーマは小出しに語られると思う。
和:そうやね。そこで相手の意見に同調する事もあれば、受け入れられない事もある。時には言い合いになったり。そういうすり合わせをする行為は何も、ゲイに限った事じゃない。
和:どういう意味で?
昭:出会ったのはクラブ。ゲイの社交場やし、元々の利害関係は一致してスタートやけれどさあ。そうじゃなかったら、普通には知り合わないやん。職業違うし。そして性格も全然違う。でも。結局体から入った事で、互いのパーソナルスペースが共有された。そうしたらガンガンにお互いの意見が交わせる相手だったと。
和:一々皮肉っぽくて。なんでも噛みついて。やりたい事はあるけれど今のところ形に出来ない。本当は誰かに甘えたいけれど、裏切られた過去もあるから誰かに寄り掛かるのは怖い。そんな一杯一杯のグレン。
昭:そんなグレンを包み込むラッセルの包容力よ。穏やかでどっしりとした安定感。
和:でもそう見えて、揺らいでいる部分もある。「カミングアウトしていくゲイたち」に漠然とした憧れ?みたいなものもあるけれど…自分には家族がいない。
昭:そんなラッセルの心情を聞いて、即対応出来るグレンの瞬発力。本当になあ…運命の相手ではあるんよなあ~。互いの話をきちんと最後まで聞いて、茶化したりしないで誠実に答える。気まずい雰囲気に流されずに、自分が譲れない部分は曲げない。そして「さっきはごめん」と言い、抱き合える。そしてまた話をする。
和:互いに成長出来る相手。ってやつですか。
昭:たった2日間。週末だけの。忘れられない恋をした。
和:期間限定であるからこそ輝いている部分はある。きっと二人はこれからまた誰かと出会い、恋に落ちるのだろうけれど。時々ふっと過って胸が痛む。そんな恋人。
昭:羨ましい。そんな…俺たちは『ゆきずりの恋に落ちやすい星座』なのに。
和:射手座の仲間に謝れ!恋に縁遠いのはあくまでも当方の問題だ!
2011年公開作品。8年の時を経て。この作品を観ることが出来て良かった。美しくて。けれど悲しくはない。広がる多幸感。至高の時間。97分。