ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「最初で最後のキス」

最初で最後のキス」観ました。
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イタリア。イヴァン・コトロネーオ監督作品。

アメリカで実際に起きた事件を基に、イヴァン監督が書いた小説を自ら映画化した作品。

イタリアのとある地方都市を舞台に。男女三人の高校生の友情と恋。その眩しいまでの輝きと。一転して崩壊する様を描いた。

 

イタリア東部の田舎町。そこに降り立つロレンツォ。トリノにある施設から、この地に住む里親両親に引き取られた。勉強は良く出来るけれど。奇抜な服装と言動(持ってまわった言い方は却って分かりにくいので…つまりは典型的なオネエタイプ)で、転校先の高校でも初日から浮いてしまう。けれど。

同じく浮いていた同級生ブルーとの出会い。ソウルメイト発見。二人の友情は一気に加速。そしてロレンツォの一目ぼれ。同じく同級生のバスケ部員、アントニオ。

バスケ部での活躍はかわれているけれど。如何せん他人とのテンポの違いからからかわれる事の多かったアントニオ。奇抜でお騒がせな二人組の唐突なお誘いに始めこそは戸惑うけれど。次第に彼らと過ごす日々が楽しくなってきて。

と言うのも、三人の中の紅一点、ブルーへの恋心を自覚していくアントニオ。けれどブルーは、遠距離恋愛中の彼氏『先輩』が居て…。

 

「という『片思いトライアングル』なんですよ!誰も幸せにならん…(三角形じゃないけれど)ブルーは先輩の彼女で。ブルーに片思いするアントニオに片思いするロレンツォ、という構図!悲しきちびくろサンボ!片思いの輪がぐるぐる回って皆でバターになる奴!」(支離滅裂)

 

しかしブルー…先輩とのセックスライフの「4Pをした」という事実が皆に周知されているというビッチ。『誰とでもヤル女』(言い回しうろ覚え)等の不名誉な落書きを名指しでされたりする高校生活。

けれど。あっけらかんとそれを受け入れるブルー。ともすれば「私もノリノリだった」と言わんばかりの開き直り。けれど当然周りの女子はブルーを敬遠。独りぼっち。

そんなブルーとスターを夢見るロレンツォ。そして兎に角控えめに。目立たぬように過ごしてきたアントニオの。思いがけない意気投合。
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「そういうはみだしっ子三人組の。出会って盛り上がってわちゃわちゃしている時の多幸感。」

けれど。その歯車は少しづつ狂いだしていく。

 

「いやいやいや。おかしくなったのは後半やし。最後の展開なんて急転直下やったで。」そんな声が聞こえてきそうですが。

 

同級生。クラスメイトや部活の仲間から爪弾きにされてきた三人。そんな三人がとある動画を製作し、公開する下りがあるんですね。

 

…それがまあ。クッソ胸糞悪いんですよ。

 

すみません。映画感想文に於いて、こういう言い回しはしたくなかったんですが。止められない。ここから如何なるフォローをしようともフォローしきれない気がしますが。それでもやっぱり止められない。当方の正直な感想は「こんな動画最低だ。」

 

ゲイ。ビッチ。のろまだと。各々周囲からの悪意ある、マイノリティに対する偏見に対し苛立っている。あんた達は馬鹿にするけれど。私たちは今のままで十分楽しくて幸せ。変わっている?上等。これが個性だ。世界を狭めるな。~そういう動画であって欲しかった。

彼らが作ったのは『個人攻撃動画』しかも体格や家族の事を揶揄する内容。

例えば。体及び体のパーツが大きい事小さい事、どこかに障害や病気がある事。家族や金銭的な事。何一つ本人発信以外笑えない。「そんな大げさな。」と言うかもしれないけれど。あの動画を見て。しかも動画って下手したら半永久的に全世界にはびこるのに。あの動画を流された方はどう思うのか。そういう想像力が無い癖に「他人に傷付けられて可哀想な私たち」というスタンスはなんだ。お前たちは立派な加害者だ。

(そういう行為もまた。若さ故のバカさよね~…とは思えん。ネットリテラシーの罪深さが分かってない。)

 

「マイノリティな私たちが。こんな閉鎖的な場所で私たちだけの居場所を見つけた。」~じゃねえよ!胸に手を置いて考えてみろ!

 

あの動画云々の下りから。当方の、この作品に対する歯車も狂いだし。

 

動画でやり玉に挙げられた同級生の怒りをかって(当然)。エスケープ。平日昼間から古着屋でファッションショー。の下りも「売り物を雑に扱うな!」とキレ始め。

 

「あかんあかん。落ち着け。これはまともに観れなくなるぞ。」足を組み換え。首を振って切り替える当方。

 

まあ。そこからも『クラスに居たら友達になれない三人組』をイライラしながら見続けた訳ですが。(クラスに於ける、当方のスタンスは空想の世界に在籍する無所属です)

 

「最後の展開は確かに初見では唐突に思えたけれど。けれどあれから考えると。もう一度初めからやり直してもこうなったと思う。」そう着地した当方。

 

アントニオに恋するロレンツォ。男と男。ロレンツォの想いは決して女子とつるんでキャッキャ言うだけのお遊びではない。好きだから。アントニオと一緒に居たい。触りたい。キスしたい。けれど。アントニオはどうか。

ロレンツォとブルーの三人でつるむ事が楽しい。ブルーが可愛くて愛おしくて。そんな彼女が輝いている。そんな仲間の一員で居る事がうれしい。

そこにぶっ込まれる、ロレンツォからの好意。戸惑い。揺らぎ。そして揺らいだ自分に対しての怒り。どう落とし込んで良いのか分からない感情。これは悪だと。そんなものを自分に突きつけてきた相手に対する怒り。

 

「自分の感情を表現する事が苦手なアントニオならではの。哀しいけれど理解できる行動。」

 

そして同じ頃。自身の奔放なセックスライフに対しての深層心理が爆発したブルー。

 

作品の中盤。ブルーの母親が小説家(しかも私小説系)で。雑誌公開された小説に「私にプライバシーは無いの!」とブルーはキレていましたが。まさにこの母の文章の通り。

 

一見大人びている娘が。実はひどく子供っぽく、危うく見える。(言い回しうろ覚え)

 

実は重大な問題を孕んでいる事柄を前にしているのに。その重みを理解していない。そして極論過ぎる決断をいとも簡単に下してしまう。それは全てを無にしてしまうのに。そんな不安定で儚い年頃の男女を描いた作品だなと。

 

幾つもの時を経た時。その不安定さと、そこから発する奇妙な魅力。

 

ところで。最後の最後。『これがベストアンサー』みたいなシーンを追加していましたが。

「これ。問題を先延ばしにするだけで、何も解決はされないぞ。」当方にはそうとしか思えず。

モヤモヤとしやまま。物語の幕は降りてしまいました。