映画部活動報告「リバーズ・エッジ」
「リバーズ・エッジ」観ました。
1993年~1994年。雑誌『CUTIE』にて連載された作品。
「主題歌が小沢健二‼」公開初日。胸を熱くして映画館に向かった当方。
そして今。小沢健二の名アルバム『LIFE』と『刹那』をBGMに流しながら。
「正直、1990年代にこの映画を観たかった」
CUTIEというファッション雑誌。当方は一度も買った事はありませんでしたが。クラスのお洒落女子によく見せてもらいました。
もう廃刊してしまいましたが。1990年代…所謂原宿系お洒落雑誌だったと記憶しています。
兎に角元気のある雑誌で。ファッション雑誌なんですが。そこに載っていた連載漫画。
当方は岡崎京子世代ではありませんでしたので。(安野モヨコ世代)この作品も未読。そもそも岡崎京子作品は『ヘルタースケルター』しかきちんと読んだことはありません。けれど。
1990年代に10代を過ごした。そんな当方からしたら。これは観ておかなければと。
そう思ったのですが。
「1990年代に。1990年代の10~20代の俳優達で。あの時代の空気そのままで作ったら。そしてそれを当時の当方が観たら。」どう受け止めたのだろう。
主人公若草ハルナ(二階堂ふみ)。高校生。彼氏の観音崎は、何故か同級生の山田一郎(吉沢亮)を酷く虐めていて。見ていられなくて何回も助けにいくハルナ。それが気に食わなくて観音崎の行動はエスカレート。
ある日。助けてくれたお礼にと「僕の宝物を見せてあげる」と山田に川原に連れて行かれたハルナ。
生い茂る藪をかき分け。山田がみせてくれたそれは何と白骨死体。
呆然とするハルナをよそに恍惚と『宝物』への想いを語る山田。そして発した「もう一人この宝物を共有している人が居るんだ」。
同じ高校に通う後輩の吉川こずえ。幼い頃から芸能活動をしていたモデルの彼女はいやに大人びているけれど。摂食障害で。人知れず過食と嘔吐を繰り返している。
「ああ。キャラクターが全員濃い」
ハルナの友達、小山ルミ。「30代の彼氏がいる」と、彼氏から貰った物を纏い。色んな男とセックスをする。裸で抱き合っている時が一番幸せ。
実は同性愛者の山田の便宜上の彼女、田島カンナ(森川葵)。山田君が大好き。山田君を好きな自分が大好き。山田君は私だけのもの。そうやって束縛してしまう彼女。
出てくるキャラクターが総じて濃い中。主人公である『若草ハルナ』が一番影が薄い。
なぜなら。終盤こずえがぼそっと言ったように。ハルナはあくまでも『傍観者』の立場だから。
他のキャラクター達が輪になって。ぐるぐる回りながら自身の踊りを舞う中で。その輪の真ん中に居ながらただ立ち尽くして見ている。タバコを吸いながら。そういう役回り。
「何スカしてんだ…」呟く当方。周りのキャラクター達は。各々ボロボロになりながらも必死な中で。一見彼らに無茶苦茶にもまれている様で…ハルナは絶対に飲み込まれない。
そうして。一人のキャラクターが業火と化し。己もその火に包まれながらハルナを弾き出した。この世界から、主人公の退場。そういう終わり。
この原作漫画を未読なんで。何とも言えない…歯切れが悪い当方。ですが。
「1990年代を2010年代に表現する事の意味。そして難しさ」
いっそ設定は現代にしても良かったのかもしれない。だって…正直、再現が中途半端だと思ったから。服装も見た目も何となく当時とは違う。ちょっと現代に置き換えてしまっている。(見た目では観音崎が一番リアル)
そしてあの時代を肌で感じた当方は何となく思い出せるけれど。分からない世代にはとことん分からない。
1999年。世界は終わる。ノストラダムスの大予言を馬鹿にしながらも。何となく漂っていた世紀末感。高度経済成長のピークが過ぎつつあることを匂わせていたあの頃。加えて10代。意味不明な厭世観。シャカリキに頑張るのは馬鹿らしくて。一生懸命は恥ずかしくて。クールでちょっと尖っている。そんな自分は特別。
未成年だけれど、タバコもお酒も呑んで。あんまり好きじゃないけれど、学校でそこそこに目立つ男子が彼氏。スカして、その実空っぽなハルナ。
周りは子供だと下に見て。大人の男性と付き合って、セックスして。そうやって自分を高見に置いて。そんなルミ。
本当は甘えたいだけ。でもそうは言えなくて。結局は暴力で相手をねじ伏せてしまう。観音崎。
「死体に癒される」という悪趣味極まりない発言と行動。いかにも自分は他人とは違うとアピールする山田とこずえの自己主張の強さ。(本当のサイコパスはそういうの、全部黙っているもんですわ)
モデル=摂食障害というベタ。(和式トイレの床に食べ物並べて食べるって…)
同性愛者という設定が何だか生かし切れていない。(山田の方じゃ無いですよ)
当方がいいなと思った、狂気を孕んで加速していくカンナ。(当方が森川葵が好きだという贔屓目もありますが)
あの「この演出要らんやろう~」と思ったインタビューシーン達の中で唯一。「幸せ?」と言った彼女の表情…ばしっと決まった感じがしました。
ぜ~んぶ。『1990年代の、尖っているとされるキャラクターあるある』。これらが全部登場して。そうしてぐるぐる輪になって回っている。これを20年以上経った現代でされると…ちょっと溜息を付いてしまう。けれど。
「1990年代に。1990年代の10~20代の俳優達で。あの時代の空気そのままで作ったら。そしてそれを当時の当方が観たら。」
おそらく違った気がします。
作り手の作りたかったものも。見せたかったものも。言いたいことも。全部分かるのに。なのに…。
ただ。時を経ても変わらず良かったのが『小沢健二』。アルペシオ。素晴らしい。
映画館から出て。
直ぐ様『LIFE』を選択。イヤホンを耳に差し、歩き出した当方。