ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「告白小説、その結末」

告白小説、その結末」観ました。
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フランス。デルフィーヌ・ド・ヴィガン著『デルフィーヌの友情』を。巨匠ロマン・ポランスキー監督が映画化。

私小説で人気をはくしたが、現在絶賛スランプ中の女流作家デルフィーヌをエマニュエル・セニエが。デルフィーヌに近づく謎に満ちた女性エルをエヴァ・グリーンが演じた。

 

人気女流作家デルフィーヌ。自身の母親を題材にした私小説にて有名になった彼女。「大感動」「勇気付けられた」「これは私に向けられた物語」読者からの絶賛の嵐。

しかしその反面「実の母親を食い物にして」と揶揄、中傷される事もある。というのも、小説の内容は精神を病み、最後には自身で命を絶った母親との生活を赤裸々に描いた告白本だったから。

件の本をきっかけに有名になったデルフィーヌであったが。それから数年。現在は絶賛スランプ中で、ひたすら『資料集め』『準備中』の日々。

子供達は独立し。恋人も居るけれど、互いの生活を尊重し別々に住居を構え。一見不満はないけれど…兎に角書けない。全く書けない。そんな状態にジレンマを抱え、そして疲れ果てていた。そんな時。

とあるサイン会で。出会った美女。その後出版社の内輪なパーティーで再会した彼女はエルと名乗り。

デルフィーヌの熱狂的なファンだというエル。エルの魅惑的な風貌。そして会話してみて分かった、引き出しの多さ、聡明さ。すっかりエルに惹かれていくデルフィーヌ。

 

「このエヴァ・グリーン配置。大成功。アン・ハサウェイ系目と口が大きい女性が見せる百面相。THE ナイス サイコパス。そしてくたびれ女流作家がぴったりのエマニュエル・セニエ。ナイスキャスティング。」

 

加えて脚本が『アクトレス~女たちの舞台~』のオリヴィエ・アサイヤス監督とポランスキー監督との合同執筆。そりゃあ、女同士のひりひりしたいやらしさ、体現出来ますよ。

 

件の告白本から、(恐らく身内と思われる)不明人物から執拗に送られる嫌がらせの手紙。それもまたデルフィーヌの精神的負担となっていた。

 

そんな、兎に角お疲れのデルフィーヌにごくごく自然に。しかしゆっくりと忍び寄るエル。デルフィーヌの悩みを聞いて。献身的に支えになって。すっかりエルに心を許すデルフィーヌ。遂に二人は共同生活を送る事になる。

 

「一体エルはどういう人物なのか。どうしてデルフィーヌに近づいたのか。その目的は?」

 

順を追ってネタバレしていくのもアレなんで。私的な感想を書いていきますが。

 

映画部長と当方の。当方が属するたった二人の映画部で。「当方の得意なジャンルは変態映画です」と公表している当方。これは何だか…そんな予感がするなと思って鑑賞に向かったのですが。

 

「ややこしい考えに囚われていたんやなあ。」自身に溜息が出た当方。

と言うのも、当方の予想ではもっとえげつない事になると思っていたから。

 

スランプに陥り、お疲れの中年女性作家。そこに現れた、怪しい魅力に溢れた若い美女。

自称ゴーストライター。何だか文筆業ではあるようだけれど。結局何をしている人物なのか分からない。そいえば後からよく考えたら、彼女の言動も行動も何一つ信ぴょう性は無くて。でも…そんな事思いもよらなかった。だってエルと一緒に居ると楽しいから。安心出来たから。

 

「何故楽しいんですか?何故安心出来るんですか?」

 

夢の大先生。自分の書いたモノが売れて、世間から評価された。けれど…皆が皆好意的な感想を寄越す訳じゃ無い。(それはどんな作品でもそうでしょうが)

そして今。自分は何一つ書けない。月日が経つにつれ、焦り、そして疲労していく。

子供も近くに居ない。恋人もいつも一緒に居る訳じゃない。友達だって煩わしい時がある。誰にも話せない。自分のこの燻った感情を。

そんな時。エルが現れた。丁度自分の話を聞いてくれて。そして存分に甘やかしてくれる相手が。けれど。

 

「貴方は兎に角書いてくれたらいいの。」次第に言動や行動に異常性を見せ始めるエル。不意に現れる凶暴性。ヒステリックにモノに当たる姿。初めこそ親切に見えた行動が、デルフィーヌを社会から隔離している様にしか見えなくなっていって。

出会った頃見せていたのと同じ表情が。時が経つにつれ、何だか常軌を逸したモノに見えてくるエル。

 

…っていうエルの豹変、分かりやすく描き過ぎかなあと。もっと真綿で首を絞めるごとく、じわじわ見せていってはどうなんですかね?そしてぶっちゃけ「エロく出来たんじゃないの?」そう思う当方。

「だって。あんなにエロいエヴァ・グリーンを配置しているんなら。恋人は居るけれど孤独を感じている中年女性作家に、微妙なエロさも匂わせながら近づいてもいいんじゃないのかね?そして『こんなくたびれた私が…好きなの?エル』と困惑させてもいいんじゃないのかね?」「彼女がみせる執着は…私の作品に?それとも私自身?」とか。

 

実際の作品では中盤位から、エルのサイコパスっぷりは露呈し始めて。デルフィーヌはそこにちょいちょい気付きながらも「エルの事、面白いから小説にするわ!」とのんきにくっ付いている。そして案の定怒涛の畳みかけの結末。

 

「一体エルはどういう人物なのか。どうしてデルフィーヌに近づいたのか。その目的は?」

 

一応それらしい回答は見せていましたし、「げに恐ろしき熱狂的ファンのお話」とも取れなくもないのですが。

 

「結果的に出た本。これは誰が書いた本なのか」

「これはデルフィーヌが書いた本なのか。ゴーストライターエルが書いた本なのか。」

 

そして全てが終ろうとしている中。ふと思い立ち、問い続ける当方。

物語が入れ子になっているのではないかと。

 

この物語を書いたのは誰だ。これはデルフィーヌが書いたノンフィクションなのか。エルが書いたフィクションなのか。果たしてデルフィーヌは存在したのか。

 

そう考えると物語の見方はガラッと変わる。なかなか面白い…(けれど描写はちょっと物足りない。)不思議な作品でした。

 

映画部活動報告「メイズ・ランナー 最期の迷宮」

メイズ・ランナー 最期の迷宮」観ました。
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2015年。たった半年の間に公開された『メイズ・ランナー』『メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮』

 

「主人公トーマス。目が覚めたら見知らぬ場所。そこは少年ばかりのコミュニティ。辺り一面壁に覆われた、閉鎖された場所。そこでの原始的な生活。一日に一度壁は音を立てて開く。それは間違いなく彼らを出口に導く…得体の知れない迷路。」

そこで芽生えた友情。トーマス、ミンホ、ニュートを中心に、少年たちは三年を掛けて迷路を脱出。しかし出口は決して楽園では無かった。

 

結局捉えられていた少年達は何者だったのか。

世界は正体不明の病原菌に侵されていた。感染したが最後『クランク』というゾンビ(足が速い系)になり、人間を襲ってしまう。

少年達はその病原体に対する免疫を持っていて。それ故少年達は秘密組織WCKD(病原菌に対して研究、治療を行っている団体)によって捉えられ、巨大迷路に隔離され、人体実験を行われるといった研究対象となっていた。

 

失われていた記憶が蘇るにつれ、自身もまたWCKDの職員であったこと、所謂潜入捜査であった事を思い出すトーマス。そして、自身の後から迷路に送り込まれたコミュニティ唯一の女性、テレサも同じくWCKDの同僚であり恋人であった事を思い出す。

 

「人類を救う為に、自分たちは犠牲になっても良いのか」

 

否だと。迷路の出口から果てしなく広がる砂漠に飛び出す少年達。

そこで遭遇する事になった人類の成れの果て『クランク』。奴らをかわしながら。追ってくるWCKDから逃げながら。遂に少年達は残された人類達が暮らす集落にたどり着く。

しかしそこでの休息もつかの間。まさかのテレサの裏切りによって仲間のミンホを奪われてしまう。

 

~という様な流れであったと記憶しているのですが。(特別に何かの資料を読み返したりしていませんので…間違っていましたら申し訳ありません)

 

「三年も空くとな。もう覚えていない事も色々あって…」トントン拍子に公開された全2作。そこからの「製作中断!」「主演(トーマス)の大けがにより、撮影延期!」「公開未定!」なんて。随分とん挫を繰り返し。

なので「兎に角終わらせる事が目標!大風呂敷を終う回!」だった今作。

 

シビアな目で見たら「雑やなあ~」の一言。ですが…まあもう無事幕を下ろせたって事でいいのかなあと。

 

「前作から既にその感じはしていたけれど。このシリーズに於ける真のヒロインはミンホだ。」

 

WCKDに立ち向かう仲間達。その中にはブレンダという『クランクになりかけたけれど、トーマスからの輸血等で生還した』という女子も居るのに。あくまでもヒロインはミンホ。「ミンホを助け出すんだ」が今回のトーマスの最大のミッション。その為には今一緒に居る仲間も、彼らと共にユートピアを探す旅からも降りてしまう。

「そもそも前作で、ヒロインの座に居たテレサが仲間を裏切った」という展開が『なんでもあり』なこのシリーズに拍車をかけてしまった。

 

女子なんて存在しない世界。ラブなんて要らない。俺達が信じるのは仲間(ごくごく小さな人間関係)のみだ」清々しいまでの「一人はミンホのために。皆もミンホのために」の世界。

 

そんなトーマスに付いて行くニュート。一作目のあどけない面影は無く。そしてミンホ一人にスポットが当たるでもなく、しっかりニュートにも最後見せ場は用意されていた。

 

…超個人的な備忘録とは言え、ネタバレ上等とは思っていないので、あくまでもふんわり話を纏めたいんですが。と言っても…これ…纏めにくいんですよ。だって本作が纏まっていないから。

 

「ご都合主義にも程がある。だって…死んだと思っていた人間が生き返り過ぎやし、さっきまで瀕死やった人間が飛び跳ねてアクションしてるし。そもそもキャラクター設定がブレブレ過ぎて良い奴なんか悪い奴なんか、せめて一体何に信念を置いているのかも分からんし…。」ブチブチと愚痴る当方。人間模様のオセロが激しすぎて。

 

「で結局WCKDって何なの?ええもんみたいな印象も与えようとしていましたけれど。」

 

正体不明の病原菌。そこから人類を救いたい、その割には人類から愛されないWCKD。確かに。人体実験とかされている側からしたら、非人道的でしかない暴力組織ですけれど。じゃあ一体何処の誰が他に対処法を探っているんだ。

「俺たちは実験動物じゃない!」ごもっとも。でもじゃああんたたちは一体何の解決策をもっているんだ。

結局人類総ゾンビ化して、感染しなかった者達だけのユートピアを世界の果てに見つけようっていうノアの箱舟話じゃないのと。腑に落ちない当方。不満。

 

シリーズの初め。「何だか知らない間に巨大迷路に放り込まれた俺」から、一体どうなったらこういう大風呂敷を広げられて、そしてこう着地するのか。訳が分からん。これが元々目指していた『メイズ・ランナー』シリーズの出口だったのか。

 

「まあ…そういう無粋な事は言わんといて。何はともあれ幕が下ろせたんやから…。」

 

褒める所としては…アクション、爆発、CGは凄かったです。「そりゃあトーマス大怪我するわ。と言うかよく誰も死ななかったな!」こんなの無理、というシーンの連続。息を呑むばかり。

 

思う所がありすぎて、険しい表情で映画館を後にしましたが。

何はともあれ。無事シリーズ終了を見届けられて良かったと思う事にする当方です。

 

映画部活動報告「それから」

「それから」観ました。
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「これはまあ。なんという公私混同が生んだ作品…。」

 

韓国の名匠の一人、ホン・サンス映画監督。

彼の現在のファムファタール、キム・ミニ。今作以降も幾つもこのタッグでの作品公開予定が告知された劇場予告編。

「キム・ミニからどれだけのインスピレーションを受けているんだ…そしてホン・サンス監督ってここまで惚れ気の強い人だったとは。」

 

とある小さな出版社。そこに勤める事になった、新入社員アルムの散々な初日と。恋多き社長ボンワン。ボンワンのかつての恋人。恋人との日々。そしてボンワンが他の女に恋をしていると気づいた妻。

時系列をシャッフルしながら。大人の男女のどうしようもない、どこか可笑しな恋と生き様を描いた作品。

 

…もう。今回の感想文はこれでいいんじゃないかと。正直思う当方。

だって当方は…「KO…I?」と聞き返すほど、そういう感情を失っているアンドロイドなんで。人らしい感情と引き換えに機械の体を手に入れてしまっているんで。(何を書いているのか意味不明)ほんわかとした感想は書けないですよ。

 

なので。このボンワン社長にも「取りあえずあんたさあ!女性社員を雇うの辞めたら?」「ここの女性社員は一体どういう職務内容なんだか知らないけれど…せめて奥さんを会計とか経理で会社内に在籍させなさい。」「こういう会社の女性社員に手を出しちゃう癖のある事業主、また繰り返すよ。」「全く、会社を何だと思っているんだ。」等々、THE正論の厳しい畳みかけを被せてしまうばかり。

 

「いや。ほら…あかんたれの甘えたさんって。放っておけないやん。社会的地位のある男性が自分だけに見せる弱い所、奥さんには吐かない愚痴とか。私だけって感じするやん。」

やんやん理論。正に不倫女子発言(こういった発言は作中はありません)。ですがねえ…その男は貴方を選んでますかね?結局奥さんの元に帰ってませんかね?

 

時系列をシャッフルしているのですが。結構分かりやすい流れ。

冒頭、ボンワンに妻が「貴方恋をしてるでしょう」と唐突に切り出す朝食から始まり。何を言っているのかと一笑に付しながらも、次の場面では若い女性といちゃついている。彼女は自分の会社の従業員。そして次にはその不倫相手が中華料理屋で「貴方は卑怯だ」と大泣きしている。

それら場面場面のはざまに、キム・ミニ扮する新入社員、アルムの出勤初日が描かれる。

 

大学教授からの紹介で就職する事になった出版社。少し前に従業員(それが先述の不倫相手)が辞めてしまい、今はボンワン社長一人。けれど、きさくで人当りも良さそうで、働きやすそうな職場。早速仕事に向かうけれど。

ボンワンが外出し、一人になった時。おもむろに突撃してきたボンワンの妻。突然の大声。罵声。挙句殴られるアルム。

ボンワンを外出先から呼び戻し。ボンワン、妻、アルムの最悪な三者面談が開始。どうやら妻はアルムをボンワンの不倫相手だと思い込み。それで逆上したという事が判明する。

 

「ああもう。この会社、仕事を何だと思っているんだ。この出版社の労働実態は。」イラつく社畜当方。なのに。

作中では勤務時間内に延々妻からの「貴方の書いた詩を見つけたの」からの、同席者全員の前で自作のラブポエムを読み上げさせられるという、舌を噛んで自害したくなるような羞恥プレイが横行。「それは…前の彼女に書いたんだ。随分前だ」加えて恥を上塗りするボンワン。「あ。あほか。それは酒に酔って書いたんだ、とかでええやん。」ずっこける当方。呆れるアルム。

 

「でも貴方美人だから。」とかなり納得しないまま会社を後にする妻。そして「まあ…昼めしにでもするか。一緒にどうだ。」と午前業務終了。何それ。アンタら一体何のジョブをしたんだ。

そして真昼間から酒を飲みだすとんだサラメシ。アルムが何やら人生論的な蘊蓄を語っていましたけれどね。すみません。正直全く頭に入らなかったし何一つ思い出せない当方。

 

「兎に角辞めないでくれ。」そうして何とかアルムを引き留める事に成功したのもつかの間。まさかの元恋人が登場。

 

そして「何それ。よくぬけぬけとそんな口が叩けるな」というド厚かましい元恋人と、さっきまでアルムに泣きついてきていたはずのボンワンの完全なあかんたれ露呈。

ボンワン、元恋人、アルムの午前とは別の意味で最悪な三者面談が開始。

 

「出版社のお仕事内容、知りませんけれど。少なくともこの日丸一日働いてないやん。」苦々しく呟く社畜当方。社長…こんな事していたら潰れますで。この会社。

 

そして月日が流れ…。ボンワンとアルムが再会。そこでボンワンから語られた「それから」。

 

「よくもまともに聞いてられたな!当方ならソファーに座ったままそのローテーブルを蹴り上げたかもしれん。あほらしくて!」

THE恋する俺に酔う中年。「皆に悪い事をしたよ…」何全てを綺麗な思い出にしてるんだ。こっ恥ずかしい。お前、やっぱり皆の前でポエム読めるメンタルの持ち主なんだよ。何でいい年して冷静さが欠けているんだよ!

 

…とアンドロイド当方は身も蓋も無い事ばかり思ってしまいましたが。

 

けれど。「ホン・サンス監督やなあ~」という独特のカメラ回し。当方の言う『運動会の父兄ビデオ方式』(=我が子の走る徒競走グループを先ずは撮って。その中から我が子を見つけたら一気にズーム!)みたいな、ズームの多用。あまり音楽は使わないけれど。使う時はちょっと耳障りなほどの爆音。

そして登場人物達の食事シーン。兎に角対面に座って食事をしながら会話しているシーンが多い多い。(そして大体食べ方が汚い)

けれど。それが何故か下品にはならない。寧ろそんな歪さが癖になってくる。それがホン・サンス監督の不思議な魅力。

今作は全編モノクロというのも相まってか。『何言ってんだデレデレ中年案件』なのに生々しさは感じなかったし、「しゃあないなあ~。」という所に着地できた。(まあ、間違いなくアルムがまともな人ポジションを死守したのが大きいですけれど)

 

何だか…凄く…監督の公私混同している印象が否めなかった作品でしたが。

 

「作品を生み出す原動力=KO…I。お幸せに…。」

 

アンドロイド当方は真顔でそう言って踵を返したいと思います。

 

映画部活動報告「修羅の華」

修羅の華」観ました。
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韓国ノワール作品。

韓国奇跡の美魔女、キム・ヘス。少し前『グッバイ・シングル』という彼女の作品を観た際、予告編を見て気になっていた、韓国で2017年に公開された作品。

 

大企業ジェチョルグループの会長秘書、ヒョンジュン(キム・ヘス)。

このグループの実態は犯罪組織で。ハニートラップ、暴力、恐喝と裏の手を使って現在の大企業までのし上がった。

ヒョンジュンもかつてはハニートラップ部隊の一員であったが。今では会長に次いで組織の№2の座に収まっている。

しかし、最近会長は「事業拡大の為にも、今後はクリーンでありたい」と犯罪行為を拒否。挙句「もうゆっくりしたい」と言い始める。

長らく組織に仕え、汚れ仕事を一手に引き受けてきたサンフン(イ・ソンギュン)。サンフン無しでは企業はここまでのし上がれなかった。サンフンは実質№3。けれど。

会長の方針の方向転換に戸惑い、自身の存在価値が揺らぎ始める日々。

会長が引退?それはまだ良いとしても、一緒に付いて行こうとしているヒョンジュが許せなくて。と言うのも、サンフンのこれまでの行動の全ては、ヒョンジュンへの恋心故だったから。

 

和「とんでもない『プロポーズ大作戦』が来ました!!」

昭「紹介もされていないのにフライングしちゃってるよ…落ち着け落ち着け。」

 

ややこしい、歪みまくった男の恋心。全方位ジャンル配置完備されている韓国映画ですら、なかなか女性がメインのノワール作品は少ない印象(今年日本公開された『悪女/AKUJO』がありましたが)の中。当方注目女優キム・ヘス主演。…ここは当方の心に住む男女キャラクター昭(あきら)と和(かず)に男女別々からの視点で語って頂きたいと思います。

 

和「『欲しかったのは、愛だった』チラシのフレーズが胸を締め付けてくる。でもねえ~女ってそういうグイグイにはなびかないのよねえ~。世知辛い!」

昭「俺だって良いとは思わないよ。って言うか俺とお前は同じ人間の気持ちから派生したキャラクターなんやから、例え男女で役割を振り分けられても同じ考え方にしかならない部分がある。あらかじめ断っておくけれど。」

和「つまんねええ~。何それ。じゃあ何のために私ら二人で出てるんよ。あんた何の為に生きているんよ。」

昭「そこまで存在を否定されるいわれもないけどな。俺はこのサンフンの気持ちを『男って奴はさ…』という代弁は出来ないの。だって俺はこういう…何て言うの?女々しさみたいなのは理解出来ないから。」

和「組織のトップである会長にずっと仕えてきた男女二人。かつて二人は同士だった。けれど。月日が流れるにつれ、女は会長に連れそう妻の様になっていて。会長が引退をほのめかし、そして女も共に一線を退きひっそり暮らすと。そう聞かされて居ても経ってもおれない男。何故なら男は女を愛していたから。会長の為?違う。俺はこの女の為にずっと手を汚してきたんだぞと。」

昭「そういう美学?M的思考?俺には無いんよな~。」

和「(無視)俺が今までどれだけお前を想ってきたと思っているんだ。何が会長だ。お前は俺のものだ。お前は俺のものだ。」

昭「人をモノ扱いすんじゃないよ(溜息)。まあ、どうしてそんなにサンフンが暴走するのかという所に、『ヒョンジュンが愛するもの』の存在を知っての自棄自暴という背景があるんよな。ネタバレなしで進めにくいんやけれど…頑張る。」

和「そうか。俺は何も知らなかったんだな。こんなに長く一緒に居たのに。お前にはいつの間にか誰よりも大切に想う相手が出来て居たなんて。」

昭「そしてそれを思いもよらない所から知らされる自分。」

和「冒頭。実際この組織がどういう手口で商談を成立させているのかが描かれるんやけれど。会議が開かれるホテルで、要人が宿泊する部屋に各々送り込まれるハニートラップ。案の定引っかかる面々。そしてその一部始終を録画され、翌日それを見せられる。」

昭「余りの恐怖に体が震えたよ…あんなの…据え膳とか喰うに決まってるし…でもそれをハメ撮りされて再生されるって。絶叫やしそりゃあ、如何なる手を使ってもその画像の元データを回収して破壊。そして関わった連中も末梢したい案件。」

和「その思考回路は理解出来るんやね(嫌味)。まあ、そういうハニートラップに引っかかって。しかもその相手に好意を寄せていたけれど振られた。プライドをスタズタにされた上に件のデータを取り戻したいチェ検事。彼にとってはヒョンジュンは憎っくき相手でしかない。そんな時。組織がごたついているのに便乗しサンフンに入れ知恵。サンフンを煽りに煽ってヒョンジュン潰しにかかる。」

昭「自分のハメ撮り映像なんて。万死に値するからな。地獄にも持っていきたくない」

和「(無視)愛するものを奪えば、お前は俺を愛してくれる?お前を愛し、お前から愛するものを全て奪ったら。そこには俺だけが残る。誰よりもお前を愛する俺が。」

昭「だから。そんな奴、愛せる訳がないって。」

和「何でそのフレーズをあんたが言うんよおおお。」

昭「会話のラリー的に俺の番やったから。第一、そんな押しつけがましい愛なんて受け取れるか。愛は無償のもんやぞ。会長を見ろ‼」

和「寒うう。でも。ヒョンジュンだって、サンフンの恋心分かっていたと思うんよな。けれどずっとそこにはお互い触れずにバデイを組んできた。なのに。今になってグズグズ恋だの愛だのを押し付けてくる。そうして二人のバランスが崩れていく。でも、サンフンの気持ちには答えられない。」

昭「で、結局殺し合いなんよな。今回は銃や棒も出ていたけれど。安定の韓国お家芸、刃物での戦いも健在。」

和「キム・ヘスの「IKKOさん?」みたいな謎の髪型も結構すんなり馴染んで。彼女の完璧なスタイルといかにもな服装も相まって、全ての動き、アクションの画面が決まっていた。実際動けていたと思うし。」

昭「そしてあの最後の締め方。何だかジンとしたな。」

和「女性視点という、韓国ノワールの新しいドアが一つ開いた感じがした。そして男性の哀しさ。けれどこれは究極の純愛とも言える…。」

昭「そしてハメ撮り映像がどれだけ我を失う事に…」和「それはもういいです。」

 

ややこしいけれど、根底に流れるのは驚くほど真っすぐな想い。哀しいのに何故か少し希望や温かみを持って物語は閉じる。

 

柔らかさを持った韓国ノワール作品。

新しいなと思いました。


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映画部活動報告「万引き家族」

万引き家族」観ました。
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是枝裕和監督。第71回カンヌ国際映画祭パルムドール賞受賞作品。

 

東京下町の汚い一軒家に住む柴田家。五人家族。家主の初枝(樹木希林)、日雇い労働者の治(リリーフランキー)と、クリーニング工場で働く妻の信代(安藤サクラ)。息子の祥太(城桧吏)。風俗店で働く、信代の妹亜紀(松岡茉優)。

THE貧乏。誰一人、確固たる職に就いていない柴田家の安定の収入源は初枝の年金。

しかし当然それでは生活は成り立たず。家族は万引きをする事で生計を保ってきた。

ある冬の夜。帰宅途中の治と祥太はとある団地の廊下に出されていた少女、ゆり(佐々木みゆ)を見つける。

児童虐待を感じた治は思わず自宅に連れて帰ってしまい…。

初めこそ「やばいって。」「ご飯食べたら返してやろう。」と話していた柴田家の面々であったが。ゆりの体に刻まれた明らかな虐待の跡や、ゆりの住む家から聞こえてきた夫婦の大声に、引き渡せなくなってしまって。

 

「近年の是枝監督作品の最高峰。」「安藤サクラは化け物(称賛)。」「家族とは。絆とは何か。」「タイトルだけで判断するな。先ずは観てからだ。」随分大きな賞を得た事で、多方面から注目されている作品。

 

ネタバレされるのは嫌だと。6月8日公開の先行上映、6月2日に観に行ってきました。

 

そして10日程経過。未だ考えが纏まらず、ふわふわしている状態。

これは…たどたどしい感じになると思いますが。書き出していきたいと思います。

 

「家族総出で万引き」「年金不正受給」「貧困」「風俗」「幼児虐待」兎に角昨今の日本の悲しい問題をひっくるめた柴田家。

 

「それにしても汚い家!!よくもあんなに散らかって暮らせるな‼」ゴミ屋敷寸前の柴田家に震える当方。

 

とは言え東京の一軒家。(下町たって)間違いなく資産価値があって。なので未だに『民生委員』の肩書を持つ元地上げ屋にはマークされている。けれど、世間からは完全に隔離された家に。所狭しと五人も住む柴田家。

 

「大体、失礼ながら裕福な家庭はああいう呈を成していないんよな。だらしない、片付けられない、無駄なモノに溢れている、不衛生。これらの要素が突き抜けている家=貧乏という印象…でも恐らく合っている。」

貧乏で生活がままならない柴田家は、哀しいかな10歳そこそこの祥太に万引きをさせて日用品や食料品を調達。

治と祥太だけが通じる指のサイン。ちょっとゲームの要素もあってスリルもあるけれど。やっている事はれっきとした犯罪。

そうして手に入れたカップ麺は家族の夕飯。皆でカップ麺にコロッケ入れて。それが立派なご馳走。

「あかああああああん!」食いしん坊万歳の当方、心の中で絶叫。何て貧相な食生活。仮にも家族の夕食じゃないし、あの少年の成長に悪影響すぎて。目がチカチカする。

 

そんなある日。柴田家に新しく迎えられた『家族』。

 

4,5歳。未就学児童のゆり。こんな寒い夜に外に出されていた少女。明らかに児童虐待案件。けれど治は思わず拾ってきてしまった。当然家族は戸惑うけれど。

 

返せない。あの家にはゆりを返せない。そうしてゆりは柴田家の一員になった。

 

「貧しくても。ここにはいつだって笑いがある。絆がある。ここには家族の姿がある。」

冬の夜、殆ど肉の無い鍋をつつきあった。夏。家からは見えない打ち上げ花火。それを皆で縁側に座って見上げた。一緒に水着を選んで。海に行った。毎日一緒にご飯を食べて、毎日一緒に布団を並べて寝た。私たちは家族。家族だから。…けれど。

 

そうかな?どうしてもそうは思えなかった当方。

これは決して美しい家族の話では無い。

 

少し遅れて万引き家族を観た、当方の身近に居る教育者がぽつり。

「子供を学校に行かせないのは、立派な虐待だ。」

 

両親から心身共に暴力を受けていたゆり。彼女の愛らしさが引き立つにつれ、その理不尽な生い立ちにやるせなくなりますが。では柴田家で育ってきた祥太はどうなのか。

 

「学校は勉強を家で出来ない奴が行く所だ。」じゃあ祥太は家で何を教わっているのか。後に治が言った「俺に教えられるのはこれだけだったから。」万引きの手口?生きていく術を?今この日本で?学校に行くべき年頃の少年が?それは…。

 

「学校は勉強だけをする場所じゃない。人間関係を学ぶ所だ。寧ろそれが重要だ。」

身近な教育者の受け売りですが。だとしたらそうやって、外界との関わりを絶たれて特殊なコミュニティーでのみ成長していく子供=祥太だって思いっきり虐待を受けている側に居るじゃないかと思う当方。殴る蹴る、無視又は暴言だけが虐待では無い。

 

大人はいいんですよ。貧乏だってたかりだって万引きだって風俗だって。結局自分で選択してそこに落ちていて。せせら笑って自己嫌悪に陥っても、結局その環境から抜け出せないんじゃなくて、抜け出そうとしていないんですから。そしてその底辺の世界にささやかな幸せを感じて、紡いでいこうとする。けれど子供はどうか。

 

「おい。妹にはそれ。させんなよ。」

がっつりネタばれしましたが。いつも日用品や駄菓子を万引きしていた雑貨屋で。気づいていないと思っていた店主に祥太が言われた時。

 

『祥太=スイミー説』当方に点滅。(これは完全に当方の暴論です)

 

祥太が散々治に語った『スイミー』。

言わずとしれた、光村図書出版の小学校二年生国語教科書に載録(1977~)されている作品。(当方も学びました)

「大きくて怖い魚を、小さな魚が集まってより大きく見せて追い払った」という『巨大海洋生物恐怖症』の当方には鳥肌嘔吐モノの作品。スイミーはその小さな赤い魚界で唯一の黒い魚で、行動を扇動。そして自身は小さな魚の集合体の内、目を担当した。

 

最終、想像以上につぎはぎだらけであった事が露呈していった柴田家。彼らは確かに『大きく見せる為に集まった、小さな魚たち』だった。けれど。では柴田家にとっての『大きな魚』とは何だったのか。そして、大きな魚に立ち向かった小さな魚たちはその後どうなったのか。

 

「その魚たちはその後ちりぢりになるはず。だってもう、彼らにとっての大きな魚は居ないのだから。再び集まって魚の影を作る必要は無い。小さな魚は、各々の安住の地で幸せに暮らすはず。一致団結した、その美しい思い出を胸にして。」

 

もう祥太の限界はどちらにせよ近かったと思いましたが。やはり彼の行動原理は「ゆり=妹を守りたい」だったのだと思うと。「それでも家族という繋がりを感じていたのだな」と切なくなった当方。

 

そして。そのつぎはぎの家族で『大きな魚』に体当たりする事は、結果全員を解放した。

 

これから。一体柴田家はどうなるのか。

 

時が各々に流れ。そうしてまた彼らは交わるのか。それはもう、観ている側の手を離れていきましたが。

 

頼むからゆりには。寄り添って救いだすスイミーが早く現れてくれと。そう思った幕引きでした。

 

映画部活動報告「レディ・バード」

レディ・バード」観ました。
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「これは…最近で言うと『スウィート17モンスター』や『勝手に震えてろ』等のこじらせ女子がもがく…。『げに恐ろしき自意識の壁よ!』映画」

 

watanabeseijin.hatenablog.com

 

2002年。カリフォルニア州サクラメント。片田舎のカトリック系高校に通う女子高生クリスティン。父母兄との四人暮らし。

クリスティンという名前があるけれど。自称『レディー・バード』(テントウムシ)。髪をピンクに染めて。

両親は荒れた学校を恐れて、育ちの良い子供が集まるカトリック系の高校にクリスティンをやった。けれどその学校はつまらなくて。

早くこんな所から飛び出したい。もっと大都会に出たい。NYの大学に行って華やかな世界を見たい。兎に角サクラメントでさえなければどこでも。

なのに。母親はクリスティンのNY大学進学に反対。「地元にもいい大学がある。」「うちにはそんなお金は無い。」

クリスティン家の暗い経済状況。病院勤務の母親は安定しているけれど、父親は低空飛行。遂には会社をクビになってしまった。兄もなかなか就職出来ない。母親は何かとクリスティンに「貴方の学校の学費が高い」と言ってきて。

 

「中々の閉塞感に包まれた主人公。クリスティン。」

 

「あの頃は良かった。」「何も考えていなかったあの頃に戻りたい。」くたびれ切った中年は時々、えてしてそう中高生、果ては大学生を指して言いますが。

「あの頃何も考えていなかったなんて事は無いし、それなりに閉塞感もあった。決して自由ではなかった。むしろ自身でお金を稼いでいる今の方が自由な部分もある。」同じくくたびれた中年の当方は静かに反論。

「ただ。責任だけは無かったな。」そう思いますが。

 

どうして学生時代がずっと続くような気がしたのだろうかと振り返る当方。

だって、高校生なんて三年で終わるのに。なのにひどくつまらない、単調な日々の様に思えた。あの頃は。

けれど何故か今『あの頃』を思い出すと、そうやってつまらないと斜に構えて痛々しかった自身が、何だか悶えを越えて終いには愛おしくなってしまう。

 

この作品のクリスティンを通して自身を見ている様で。なかなか心のやらかい所を締め付けられました。

 

まあでも。何だかんだ高校生活を満喫しているクリスティン。気の合う親友といつも一緒に行動。
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親友に誘われて行内のイベントで上演される劇のオーディションに参加。無事通過したクリスティンはそこで同級生のダニーと恋に落ちる。(後に悲しくも破局

その後、ちょっと毛色の違う女子とつるみ始め。その頃バイト先のカフェで同級生カイルを見掛け、後に交際に発展。

一年の間で二人を好きになって、付き合ってって、結構充実した恋愛生活。

まあ、当方的にダニーは好印象でしたけれど。カイルの奴…。「薄っぺらいなあ~。」THE少女脳が恋する男子。女性作家が一人称で書く少年…の小説みたいなやつ。「やれやれ。女の子って奴は。」「彼女とかいう関係は互いを束縛するから嫌なんだ。」

一見浮ついていなくて、皆が騒いでいる時も一人小説とか読んで。ケミカルなモノや安物を馬鹿にして。なのにその実態は薄っぺらい。ただのヤリチン(下品)。

震える…またそんなカイルをティモシー・シャレメって!!ベストアンサー。ぴったりでしたよ。(ややこしい言い方ですが褒めています。)

 

クリスティンの周りの大人達が皆良かった。学校の先生、シスターもジョークが効いていて寛大。高校生を決して下に見ていない、対等な感じ。

NYの大学に行きたいというクリスティンをそっと後押しした父親、ラリー。

そして何よりクリスティンの母親。マリオン。

 

「ママは私が嫌いなのよ。」時に母と娘はぶつかるけれど。母親が娘を嫌いなはずがない。そして娘だってその事は承知。

兎に角娘には幸せになって欲しい。だから学費が高かろうと安全そうな学校に入れた。トリッキーな性格やだらしない所に苛々するし、どうにかしてまともに育って欲しいと、ついやいやい言ってしまう。

どうしてサクラメントが嫌なの?良い場所じゃないの。何故そんな大都会に憧れるの?どうしてここから出ていきたいの?

 

「でもねえ。出ていきたいのならば、一回出て行かせるしかないんですよ。それから本人がどう判断するかという話で。」「彼女には彼女の人生を選択する権利がありますから」(何様だ。)

 

けれど。当然常にぶつかり合っている訳じゃ無い。一緒にパーティの洋服を選びに行って。そして「セックスっていつからして良いと思う?」なんて母親に聞いたりもする。(これ、当方なら絶対話題にもしない案件ですよ)

 

そしてクリスティンが旅立つ日。
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つまらない片田舎。貧乏な家庭。閉塞的な学校。唯一無二だけれど。ずっと一緒に居れる訳では無いと分かっていた親友。煩い母親。

 

なのに。一人になった時。クリスティンの心のオセロがひっくり返されていく。

馬鹿にしていたはずなのに。一人教会に入って泣くクリスティン。煩くて…でも全力で愛されていたと感じた時、クリスティンが両親にした電話。全当方が大粒の涙。

 

痛々しくて。なのに愛おしい。これはクリスティンを通じて自身に繋がる物語でした。

 

映画部活動報告「デッドプール2」

デッドプール2」観ました。
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「これは…ファミリー映画だ。」

 

前作で「これは恋愛映画だ。」と思った当方。続編の『デッドプール2』は完全なファミリー映画でした。

 

元々は末期のがん患者のウェイド。彼がマッドサイエンストに依って不老不死のミュータントになったのが前作。

その時、全身にやけどを負って変わってしまったビジュアルを、変わらず愛してくれた彼女とのラブラブな生活…が今回のスタート。

 

「こんな私的な感想文ではあるけれど。一応ネタバレ禁止は厳守したい。」

 

となるともう何も書く事は出来ない。些細な事でもほころんでしまうし…一気に決壊してしまう。

なので今回は、非常に歯切れの悪い…ふんわりした感じになると思います。

 

前作の『デッドプール』。非常に軽快でフットワークの軽いお調子者。そんなキャラクターが主人公。全編に渡るギャグとテンポの良さ。楽しいけれど…何だか乗り切れなかった当方。でしたが。

「今回のデップ―は全部好き。笑える。面白い。」まさかの偏屈当方が諸手の同意。これは楽しい。というのも。

 

「散々このご意見は見たけれど。一見おふざけキャラのデップ―やけれど。芯が全くぶれていないし、倫理観も常人と掛け離れていない。寧ろ性善説に則った行動。」

 

悪い奴は許さない。そんな奴は俺ちゃんがバッタバッタと倒してやる。けれど。大切にすると決めた相手はとことん大切にして守る。そういう心意気。

 

今回の物語の冒頭。まさかの悲劇。喪失感で一杯のデップー。けれど、それをきちんと抱えたまま『どうすればいいのか』と己のこれから進むべき信念を見つけ出した。そしてそれに沿った行動。

 

「でもそこはデップ―。センチメンタル一辺倒じゃなくて、きっちり笑いを取りにくる。」

 

新たに見つけた『守るべき相手』。けれどそいつは全然一筋縄ではいかない14歳のミュータント、ラッセル。危険な力を持つけれど、力がコントロール出来ない。精神的に不安定。そしてそんな彼を狙う、未来から来た刺客ケーブル。

打倒ケーブル‼ラッセルを守るべく結成される『Xフォース』。

 

「パクリやんか!」マーヴェルお得意のレンジャー展開。でもそれがもう。面接から実働まで終始面白い。

 

「そして今回のニューフェイス、ドミノ。能力は『運が良いこと』って。あそこまでなら最強やん。」興奮する当方。

 

これもまた散々既出ですが。前作と比べ、桁違いに跳ね上がったという製作費故か。アクションもCGも爆発もスケールアップ。あの護送車の下りなんてワクワクが止まりませんでしたよ。

 

「おっと。地味に話をなぞってしまっている。」

自重しなければと座りなおす当方。

 

「え。これR15+なの。」

改めて資料を見て。呟く当方。

R15 指定。確か、子供が誤解、真似しそうなアウトロー、ダウナー、ちょっとしたエロなんかが規制されるやつ。という縛りの中。アメリカでは「ファック!」を2回言ってしまったらR15になってしまうとの話も聞いた事がある。

 

「まあ…確かにデップ―終始エロギャグとかかましているし…でもあいつ…口は達者やけれど、別にそんな過激な思想持ってないし。寧ろ超まとも。ってそうか。」膝を打つ当方。

 

「そうか。前回の時も過ったけれど。確かに子供にはアレかも知れんけれど。これは15歳からは楽しめる事を前提としているキャラクターなんやな。つまりはターゲットを低年齢(失礼)から狙っている。」

 

アベンジャーズに全く食指が働かない当方。件のシリーズ、及び他のマーベルキャラクターは殆ど知りませんので。説得力に欠けますが。

 

「例えば。DCの『バットマン』シリーズの重苦しさ。(DC作品事体がそんな感じですが)あれは大人が観る話という感じで、あんまり高校生が楽しめる印象は無い。けれど。デップ―は違う。大人からしたら何とも思わない下ネタを散りばめて、一見破天荒に見せているけれど。しっかり高校生から楽しめる話に仕上がっている。」

 

「でも。多分掴みは軽快なノリとテンポ。アクションを初めとした画力なんやけれど。そこにはしっかり愛情とぶれない信念が横たわっている。そこに大人は痺れるんよな。だって。まさかデップ―で最後こんなに鼻がジンときて目が潤むなんて。(後、あいつの持つ知識の引き出し。相当数)」

 

まあ。ぐだぐだ言わなくても。分かりやすいお話で。乗せられてワクワクしていたら、いつの間にか泣ける展開が待っていた。その巧みな構成に唸るばかり。

 

まさかアナ雪までいちゃもん付けてくるなんて。そしてあんな使い方が出来るなんて。

そして…あの表現で『ムカデ人間』が出た時。ぞくぞくが止まらなかった当方。(ムカデ人間と言われれば反応せざるを得ない。当方のその習性を、人様は愛と呼ぶんだぜえ。(勿論認めません))

忽那汐里‼めっちゃ可愛いやん!!

そしてエンドロールよ‼

 

 

おっとまた。自重がキャリーオーバーしていますので。とっ散らかったまま幕を下ろそうと思いますが。

 

「前作は恋愛映画。今作はファミリー映画…次は?」

 

早くも続編に期待。この調子を維持しながら、良作生産を続けて行って欲しいです。