映画部活動報告「ビガイルド 欲望のめざめ」
「ビガイルド 欲望のめざめ」観ました。
トーマス・カリナンの同名小説。1971年にはクリント・イーストウッド主演で『白い肌の異常な夜』が公開された。
1864年。南北戦争の最中。バージニア州にある、女子寄宿学校。
決して貧しくは無いけれど。帰る場所の無い5人の生徒と。若き教師。校長。
女ばかりで暮らすその学校。ある日、学生の一人が学校敷地近くの森で負傷した北軍兵士を発見する。
幼い彼女が連れてきた敵方兵士に対し、恐怖、動揺する面々。しかし。
マーサ校長の「傷が癒えるまではここで面倒を見る」という判断に依って学校に転がり込む事になった兵士、マクバニー。
女ばかりの閉ざされた空間。規律正しいその世界に。突然現れた男性。
正直、この原作も。1971年版の作品も。全く未読の当方ですが。
「女ばかりの世界に。ある日突然やって来たコリン・ファレル‼色気付く女たち」
下品な言い方をするとその一言。だってコリン・ファレルですよ?『セクシー』の権化ですよ。
(おっと。悪意がある写真選択。ですが。当方はコリン・ファレルの「俺色っぽいぜええ~(こんな馬鹿っぽくないですけれど)」と言わんばかりの姿より、この『ロブスター』の彼の方が好きです。(下手したら一番好きです)そしてこの作品のコリン・ファレル、十分に色っぽいですからね。
幼い子供から思春期まで。幅広い年代を預かっているこの学校の。思春期クラスに属するマリシア(エル・ファニング)。「こんなつまんない場所に居るなんてと」。反抗気味。こまっしゃくれた態度を取る彼女は当然、マクバニーに興味津々。
若き女教師。エドウィナ(キルティン・ダンスト)。「ここで私は朽ちていくの?」と自身を持て余す日々。子供達は可愛い。マーサ校長は尊敬できる。けれど。私はずっとこうして生きていくの?
そんな時彼は現れた。うんざりしていた日々から私を救ってくれるかもしれない。そんな彼が。
マーサ校長(ニコール・キッドマン)。清く正しく美しく。いつだって凛として。最善の決断を即決。だって私はここに住む皆を守らないといけないのだから。そうして自分を律していたけれど。
久しぶりに。唐突に現れた『男』に。図らずも胸が高鳴ってしまう。
総勢7人の女の城。そこに一人放り込まれた、精悍な男性。『THE 酒池肉林』。
ああもうもどかしい。当方が原作未読なのも、「男性主観の『白い肌の異常な夜』」を観ていないのも。
ソフィア・コッポラ監督。言わずと知れたフランシス・フォード・コッポラ監督の娘。
当方は2006年『マリー・アントワネット』を観たのみですが。
「あの時のキルティン・ダンスト。可愛かったですね」強張った声を絞り出す当方。と言うのも…。
「マリー・アントワネットを語るに於いて『ヴァレンヌ逃亡』の走りで終わるってなんじゃこりゃああ!(以降下品な悪態)。ただのお洒落映画に落としてんじゃねえよ!だから『ガールズムービー』っていうジャンルは馬鹿にされているんだよ!!(以降下品な悪態)」
高校生当時。ある日何故か妹が買ってきた『ベルサイユのばら/池田理代子著』。
「目がキラキラの古典やろう~」と馬鹿にしながらも。借りて読んで、直ぐに目からボロボロと鱗が落ちた当方。
ルイ16世とその妻、マリー・アントワネット。フランス革命前夜。つかの間の堕落した贅沢三昧な生活と。もう取返しの無い時代の歯車に飲み込まれた。『断頭台の露に消えた』女性。
史実の人と。オスカル、アンドレの架空の人物との絡み。アンドレの。オスカルの最後に声も出ずに号泣した高校生の当方。
そして読了後。遠藤周作著『王妃 マリー・アントワネット』も直ぐに読んだ当方。
そんなフランス革命マニア当方の怒り。
「よくもまあ。こんなに薄っぺらく作れるもんだよ!!」
以降。何となくソフィア・コッポラ作品は敬遠してきました。
(有名監督の娘云々の話しもあると言えばあるのですが。その為に別の二世女性監督を引き合いに出して「どちらもファッション写真だけ撮っておいてくれ」と言うのはナンセンスなので。これ以上は言及しません。していますが)
ですが。題材とキャストを観て。前作から12年(‼)経っているのもあったので…観に行ってみた…のですが。
「流石。画面は美しい。以上」またもや。強張った声を絞り出す当方。
未読ではありますが。恐らく原作通りに進んだのであろう展開。
美しくも鬱屈した女達の城にある日飛び込んできたエロい男。同時多発的に色気付く女達。無意識を装った、同性同士ではミエミエのセックスアピール。あざといとあざけって。
また。回復するにしたがって。調子に乗り始める男。
「君は唯一の友達だ」「君は美しい」
挑発的な視線にはもれなく反応して。そうやって女達をたぶらかしていたけれど。
「女達が手を組んで。総出で手のひら返しをした時の恐ろしさよ」
ただねえ~。原作未読でありながら。早くから。こうなる流れが見えているんですよね。そしてただお話をなぞっているだけ。そんな印象。
「キノコ。の子の子。元気の子」と陽気に歩いていたHOKUTO軍団も表情を曇らせる展開。「そんなに即効性が?」
生意気な態度を取るマリシア。彼女のフラストレーションは何処から?結局は「エル・ファニングは可愛いから。小悪魔キャラやから」という当て書きにしかならず。
若さを持て余す女教師、エドウィナ。「キルティン・ダンスト、老けたなあ~」という悲しみ。
ニコール・キッドマン演じたマーサ校長。彼女の硬質な印象と、かつての恋人とのエピソード。捨てたと思った女の部分。そこ、深めてもいいんじゃないの?
セクシーの権化、コリン・ファレルはあのままでいいですけれど。見た目はセクシーで女達を駆り立てる。けれど。その実空っぽな男。
「総じて薄っぺらいんですよ。見た目は全編美しいけれど。それじゃあ説得力が無くて。ただただ目の保養映画」厳しい当方。
単純に当方がソフィア・コッポラ作風に合わない。それだけだとは思いますが。『マリー・アントワネット』の呪縛。今回は解けず。
「また…12年後」。いつかは納得の『ガールズムービー』を撮ってくれるのだろうと。一応は期待している当方です。