ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「パーフェクト・ケア」

「パーフェクト・ケア」観ました。
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ロザ厶ンド・パイク主演。J・ブレイクソン監督作品。

 

身寄りがなく、自己判断に難のある高齢者の成年後見人となるマーラー・グレイソン(ロザ厶ンド・パイク)。

高齢者本人には手厚いサポートが受けられる施設へ入所してもらい、マーラーは本人の資産を残された人生を有意義に使ってもらえるように運用する。

マーラーの行為は善意の塊であり、地元の裁判所の評価も高い。かくして多くの顧客=金づるを持つ彼女。

 

実際には、身寄りのない金持ち高齢者に目星を付けては後見人となり。懇意にしている老健施設に放り込んでは高齢者の資産をしゃぶり尽くしている詐欺師だった。

 

ある時。仲間の女医から紹介されたジェニファー・ピーターソン(ダイアン・ウィースト)という高齢女性。

明らかに資産家と思われる彼女を新たな標的に定め。いつも通り施設に放り込んだその足で、即パートナーであるフラン(エイゴ・ゴンザレス)とジェニファー宅を物色。金目の物を金に換える作業を進めていたが。

なんてことない、いつもどおりの身寄りがない資産家の高齢者。そう高を括っていたジェニファーが、実はド級の曲者だったことから、マフィアとの喰うか喰われるかの戦いに発展していって…。

 

ゴーン・ガール』の印象所以か。すっかりしたたかで貫禄のある女性像が付いたロザムンド・パイク(日本人で浮かぶのは米倉涼子ですか)。今回もまた、どこまでも屈強なメンタル所持者マーラーに化けておられました。

 

兎に角マーラーが強い。高齢者を食い物にしている詐欺師でありながら、どこまでも肝が据わっている。「身寄りが居ない…」という触れ込みであっても、結局は何処からか身内が現れる事がある。冒頭の「おいおいうちの母親いつの間にか施設に入れられているけど?!」」と慌てて施設に乗り込んで母親を奪還しようとした男性も、ガタイのいい警備員や職員によってはじき出されてしまい、面会もままならない。

 

今回のターゲット、ジェニファーがとんでもない曲者だった。彼女のせいでロシアンマフィア、ローマン・ルニョルフ(ピーター・ディンクレイ)とやりあう羽目になったマーラー

こんなの無理。そう思って尻尾を巻いて、ジェニファーを手放したらいいのに。マーラーは他の入居者同様、決してジェニファーをローマンの元には戻そうとはせず、ローマンに喧嘩を売りにいく。

 

誰一人『善い人』が居ない世界線。詐欺師。マフィア。実は大玉。誰もが相手に喰われてなるものかと牙を剥いて威嚇し。傷つけられても撤退などしない。「やりやがったな!」と飛び掛かる。

 

マーラーのパートナーが同性であることや、マフィアのローマンが小人症であること。それらはこれまでならば意味ありげに語られそうだけれど、この作品では何も語らない。

なぜなら当たり前だから。語る必要がない。本編に関係のない事だ。そう言わんばかりの姿勢に非常に好感が持てた半面、「これは語るべきだと思う」と当方が感じたこと。

 

それは「どうしてマーラーが高齢者の後見人詐欺をしているのか」という点。

 

「金になるからよ」だとしたらそれでいいんですけれど。

どうして彼女はこういった詐欺をしているのか。元々彼女はどういう人物だったのか。語られなかったですよね?(見落としていたのなら申し訳ありません)

あるシーンで。マーラーが自身の母親について触れられた時。「あんな奴どうなってもいいわよ(言い回しなどうろ覚え)」的な事を吐き捨てていた。そういう、親との関係性…これは語っていいんじゃないかと。そんなの全然なかったというテイで「金になるからよ」ならばそれはそれでいいんですけれど。

 

「兎に角のし上がりたい」「この国の頂点に居る一握りの金持ちになりたい」その野望は何処から?そしてその手口が高齢者後見人詐欺なのは何処からの知識?

そこについて説明を求めるのは無粋な事なんだろうか?脳内にある個人個人の引き出しで補てんせよと?その背景は語られていいように思うんですがねえ。テンポが悪くなるからですか?

 

誰もが恐れるマフィアのローマン。彼が取る行動の根底にあるのものが、まごうなき愛だと思う当方は、ならば対峙するマーラーにも確固たる信念があって欲しいと思ってしまう。

 

マーラーとローマンの、何度も「やられたらやり返せ」というターンを繰り返した挙句に着地した結論に座りの悪さを感じていたら。「これぞ因果応報」というぐうの音も出ない締めくくりが待っていた。これはもう…文句の付け所が無い。

 

兎に角テンポが速く、展開がスピーディ。初めから一体どういう世界に連れていくのかと思いきや…最終地点がしっかり同じ場所に戻ってくるという気持ちの良さ。

善い人なんて存在しない世界線で、胸糞悪い登場人物たちの殴り合い。そんな118分のクライム・コメディ。小気味が良いと思って流れに乗るしかない。「あれ?」と立ち止まったら終わり。

 

ところで。終盤にマーラーの年齢が公開された時。「それはない」と思わず声に出しそうになった当方。その貫禄は流石にその歳では無理です。