ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「PMC ザ・バンカー」

「PMC ザ・バンカー」観ました。

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韓国。『テロ・ライブ』のキム・ビョンウ監督作品。

 

韓国と北朝鮮軍事境界線。その地下30メートルに広がる巨大地下要塞(バンカー)。そこに集まった民間軍事会社(PMC)の傭兵13人を取りまとめる隊長エイハブ(ハ・ジョンウ)。

政権交代の危機にある、現大統領の切り札となる北朝鮮の要人を捕獲し安全な場所へ護送せよ。」という依頼をCIAから受けたエイハブ。

韓国特殊部隊の元兵士。除隊後PMCとして作戦成功率100%を誇るエイハブにとって、わずか10分ほどで完了出来るはずのミッション。

しかし。約束の場所に現れたのは要人ではなく『キング』と呼ばれる、北朝鮮の最高指導者だった。

仲間の裏切り。CIAの策略。国家の駆け引き。二転三転し続ける状況の中。本来は敵であるはずの、北朝鮮のエリート医師ユン・ジイ(イ・ソギュン)とタッグを組んで状況を打開していく事になったエイハブ。

果たして彼らは無事にバンカーを脱出することが出来るのか。

 

「俺が、絶対守る。」

 

「これは…久しぶりに脳を溶かして流れに身を委ねられる作品が来た。」「アメリカが大統領選挙に於いて朝鮮半島外交問題を切り札にするかね。彼らはもっと自国の事に夢中やぞ。」早々から突っ込み当方の茶々入れ開始。

北朝鮮の国防大臣を拉致して核施設の詳細を吐かせるため。CIAからの要人捕獲依頼。ミッションを遂行すべく、現地で待機していたPMC。しかし現れたのは、対象者ではなかった。

「キングじゃないか!」北朝鮮の最高指導者が?何のためにここに現れた?亡命?でも待てよ。

「高額の懸賞金を掛けられているキングを捕獲したら。そんな要人案件なんかよりよっぽど外交カードが切れるぜ。」「大統領に恩を売れ。」お前はやれる子だろ、と言わんばかり。テレビ電話の相手、CIA韓国支局長マッケンジージェニファー・イーリー)を煽り、嬉々としてキング捕獲に向かったPMCの面々。

こんなの朝飯前。そう思ったのに。仲間の裏切りに依って窮地に陥れられたエイハブ。銃撃戦を逃れ、何とかキングを連れ出して司令室に戻る事に成功したけれど、仲間の大半はバンカーに残ったまま。

しかも。軍隊時代に負傷して片足義足であるエイハブの義足が損傷。身動きが取れない挙句、キングも瀕死な状況に陥る。

絶体絶命の状況の中。北朝鮮最高責任者キングが暗殺され、その首謀者がエイハブであるというアメリカのニュース速報を目にしたエイハブ。「一体どういう事だ!」嵌められた⁈

このままでは犬死する。バンカーに残るPMCの仲間を失い、折角連れてきたキングも死なせてしまう。そして自身は暗殺者の汚名を着せられてしまう。そんな事になってたまるか。

そんな時。バンカー内にキングに同行していた北朝鮮の医師ユン・ジイを見つけたエイハブ。奇跡的に発信機でコンタクトが取れたことから、互いに遠隔で己の分野の指示を出し合い、互いの窮地を救っていく。

 

想定外に内容を綴ってしまった…まあ、結構なトンでも設定なんですが。もう息つく間が無い展開でガンガン進むので、茶々入れは程々にして身を委ねたモン勝ち。

 

ハ・ジョンウ。色んな韓国映画で見かけるお馴染みの俳優ですが。英語がペラペラなんですね。どの程度ネイティブな発音をされているのかは当方には分かりませんが…国際色豊かそうな傭兵集団をアジア系の彼が取り仕切るには、よっぽどの傭兵スキルと語学力、コミュニケーション力が無いといかんなとは確かに思いましたよ。

(2016年公開『お嬢さん』での藤原伯爵。あの日本語よりは流暢に聞こえた。)

 

そして、イ・ソンギュン。

直近で言うと『パラサイト』で金持ちのIT企業社長を演じておられた…男前エエ声俳優。

「耳元で万景峰号って言って欲しい!」(完全に語感でのチョイス)もうその声を想像しただけで当方の心にある何かが震える。

今作に於いて、主人公はあくまでも傭兵エイハブなんですが。もうこのユン医師が堪らなく良い。彼が出てきてから、俄然話が面白くなってくる。

「何故ならば。彼はまともだからだ。」

医療監修、雑だけれどまだきちんとしている。素人に心嚢穿刺。心臓マッサージ。輸液ルート確保。輸血投与。そんな事を雑なモニター画面を見て指示出来るユン医師。

「そして対応出来たエイハブよ!韓国特殊部隊ってそんな実技訓練あるの(っていう設定)?それともPMC?後あれな!司令塔にある救急セット、完璧やないか⁈なんで輸血まであるの!凄すぎる!」

保管状態は非常に悪そうですが…「非常事態として、O型は一応どの血液型にも合うから…じゃなくて、キングがO型なんか!あっ。他の血液型バックもある。そっか…そこまでは…。」勢い付きすぎて尻つぼみになってしまった当方。

 

成功率100%を誇るエイハブの傭兵スキル。残念ながら足を負傷した事でお見せすることは出来ず、司令塔としての活躍に留まり。

現場に取り残されたPMCメンバーとの「~がやられた!」「俺はお前を信じるぜ。」「お前は仲間を大切にする奴だろう。」という友情イチャイチャも、「えっと。そもそもおたく誰でしたっけ。」とついていけない当方。脳内で補完しながら進めるけれど…どうもPMCメンバーのここまでのメモリアルが少なすぎて。

 

韓国特殊部隊時代。彼が遭遇した「仲間を助ければ自分も死ぬ」という事態。

そこでエイハブが選択した決断。それこそが彼の基本理念。

 

目の前で起きている事態は二転三転。仲間はどんどん失われているし、自身の立場もおかしな所に追いやられている。どうやらキングに取り付けられている生体モニターからキングの生死が把握できているらしい各国は、たとえ瀕死状態であってもキングの命がある限りは最終決断が下せない。

 

「医者だから。患者を救うのは当たり前だ。」

誰もが私利私欲に翻弄される中。あくまでも真っすぐで真っ当であったユン医師。折れに折れまくったエイハブの心を何度でも何度でも何度でも立ち上がり呼んだ。

「ユン医師よ!」胸が熱くなる当方。彼こそは正義。

 

バンカーからの脱出。けれどまだそこから続く展開に「おいおいおい。もう流石にキング死ぬで。」もう何度目か分からん突っ込みをしてしまった当方。

 

「キングって心臓悪い設定やったよな。失血したり何回も心停止して、挙句ハイリスク輸血。脳死…少なくとも敗血症にはなりそう…な所にそんな!」

ビオフェルミン止瀉薬のCMさながらの急降下。あわわわ。

 

「結局エイハブは何を守ったんだ。」

いや、この着地で良いんですけれど。物語の序盤に彼が守ろうとしたものと最終地点。何だかちぐはぐじゃないか?そう思うのは無粋なのか…。

 

最後に。序盤でリンゴ食べたりしながら「今日30回目のトイレだ。どうも嫁が妊娠してから尿が近くてな(言い回しうろ覚え)。」という訳の分からん話をしていたエイハブ。「大方前立腺肥大症なんやろうから、泌尿器科に受診しろよ。」そうぼんやり思っていた当方が、どれだけこの非常事態でのエイハブのトイレ事情を心配したことか。

 

とまあ。散々茶化してしまいましたが。つまりは充分楽しかったということで。

ノンストップサバイバル映画として息つく間もなく展開する、意外とスケールの大きな作品。

身を任せて委ねたら…思いもよらない所に着地出来ます。