映画部活動報告「カオス・ウォーキング」
「カオス・ウォーキング」観ました。
2008年に発表された、パトリック・ネスの小説『心のナイフ』の映画化。ダグ・リーマン監督作品。
環境破壊が進み、遂に人類が地球外に居住する時代がやって来た。『ニューワールド』と名付けた惑星に入植した人類。先住民のスパクルとの戦闘を経て、得た永住の地。
しかし。その地には独特な現象があった。それは「頭の中で考えていることが筒抜けになってしまう=ノイズ」というもの。
戦闘の際、スパクルによって集落の女性は一人残らず殺された。男性だけで構成された集落に住む主人公のトッド(トム・ホランド)。義父のベンとキリアンに育てられたトッドはものごころ付く前には母親を無くし、女性を見た事は無かった。
誰もが「ノイズ」のせいで本心を隠すことなどできない中。唯一心を読ませない首長・デイヴィット(マッツ・ミケルセン)に心酔しきっていたトッド。
ある日。地球から来た偵察船がニューワールドに墜落した。そこの唯一の生存者に集落中の注目が集まる。何故なら、ヴィオラ(デイジー・リドリー)は女性だったから。
どうやら女性には「ノイズ」が起きないらしい。
ヴイオラの出現に騒然となる集落。ヴィオラにとっては危険極まりない。
早く仲間の生存者に連絡を取らなくては。そのためには遠く離れた場所に墜落している本船までたどり着かなければいけない。
「ファーブランチという植民地がある。まずはそこまで行けば誰も追ってはこないだろう」義父のアドバイスにそって、ヴィオラと共に集落を後にするトッド。
しかし。ノイズでその作戦を知った首長たちは、ヴィオラとトッドを倒して本船を乗っ取りニューワールドを支配ようと考えどこまでも馬で追いかけてくる。
自分の本心は筒抜けなのに、ヴィオラの本心は分からない。初めて接する同世代の女性にドキマキしながら行動を共にするトッド。旅を進めるうち、一体この地で何が起きたのかを知ってしまうが…。
「そういう話やったのか…」今回感想文を書くにあたって、改めて内容を振り返りそう思う部分もちらほら。ちょっと諸々お疲れな当方の文章も大概雑ですが…この作品は「ん?それどうなった?」「なんで?」「そこもっと深めんでいいの?」というツッコミがちょいちょい入らざるを得なかった。
まずはこの作品のキモ「脳内で考えていることが筒抜ける」怖い現象…しかも男性限定。ただでさえ生々しい感じになりそうなのに、初めて女性を見て、共に行動するトッドの脳内は超健全。
「可愛い」「キスしたい」その程度なんですよ。確かにノイズ全てを駄々洩れに映画館で流すわけにはいかないだろうけれど…それはないやろう。
そして。「先住民スパクルの掘り下げ不足」正直存在すら疑っていましたが。旅の道中でばったり出くわしたスパクルに「おお。本当に居たのか」と内心驚いた当方。
ところが。どうもこれまでに聞いていた感じと違う。とても女性たちを皆殺しにしたようには見えない。
結局「女性たちを殺したのは誰だったのか」はきちんと語られるのですが。そうなると、スパクルってどこまでも不憫じゃないか?自分たちが暮らしていた惑星に地球から野蛮人どもが大挙して押し寄せた上に居座っているって。そのスパクル側の目線が欲しい。
今回は悪役だった、マッツ・ミケルセン。当方は「北欧の至宝」と呼ばれるマッツ・ミケルセンを見るべくこの作品を鑑賞したので…まあ、割に合っているといえばそう。例えマタギの親分みたいな恰好をしていようが男前には変わりなく、乗馬する姿なんかにも惚れ惚れしていたのですが。
「なんだか。この首長の行動もイマイチ納得できない」確かに自他共に精神をコントロールする力にたけているのだろう。ノイズで己をさらけ出すことは無く、相手に対し高圧的に振舞う。文字通りの男社会では完全にボスざるのポジション。
「とはいえ結局は井の中の蛙でしょう?他の集落には女性が存在していて、老若男女でコミュニティを形成している。そういう世界を実は知っていてなおかつ自分がトップに立てると思うほど馬鹿には見えないけれどなあ~」
むしろ「余計なことを言いそうなヤツは消す」の精神で二人を追い回している方がまだ理解できる。
植民地と呼ばれていた、ファーブランチ…何となく「ミッドサマー」っぽく感じた(あくまで個人の感想です)集落も無茶苦茶にし。(って、彼らの通った後はぺんぺん草も生えないな…ところで!なんであの犬は!あんな目に合うんでしょうかね?!)
本船に到着。そこに眠っていた通信機器がまだ使える状態であると確認し、仲間たちに連絡を取るヴィラン。そしてその本船の外ではトッドと首長の最終決戦!という「何度も見たことがあるぞこういうの」を経て。結局どうなったのか‼
原作小説未読。どうやら続き物らしいという情報は入手しているのですが。これはまだまだ序盤という事でしょうか。ならばきっと、スパクル側の視点、または真摯に人類VSスパクルについてが描かれているのだと思いたい。だって…だって、勝手に自分たちの惑星に人類が入植してきて。戦闘を仕掛けてきた挙句わが物顔で居座ったり、仲間同士で争ったり。終いには4000人の生存者が新たに入植してくるなんて。何たる災難。
109分とコンパクト。キャストが豪華でモチーフも面白そう。なのに何故…?ちょいちょいツッコミが入らざるを得なかった作品。もしも続編があるのならばスパクル目線でお願いします。