ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「フリー・ガイ」

「フリー・ガイ」観ました。
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「物語の主人公が…まさかのモブ(雑魚)キャラ⁈」

 

ルール無用で悪事を働く事が出来るVRゲーム『フリー・シティ』。

プレイヤーは「サングラス族」となり、空を飛び美女をハンティングし車を乗り回して町を破壊する。

そんな町に住む、銀行員・ガイ(ライアン・レイノルズ)。毎日決まった時間に起床しブルーのシャツにベージュのズボンで出勤。決まったカフェでコーヒーを買い、欲しいスニーカーは高価だからと眺めるだけ。勤務中には必ず銀行強盗/サングラス族が現れ被害に遭う。そんなプログラムされた機械的な行動しかしないモブキャラ(=NPC:ノンプレイヤーキャラクター)。

ある日見つけてしまった。運命の女性・モロトフ・ガールを。そして、サングラス族の象徴である眼鏡を奪って掛けてみたら…世界が変わった。

 

ライアン・レイノルズがモブキャラ?!」

元々は2020年7月公開予定だった作品。VRゲーム世界に住むモブキャラ…近年ではデッドプール役でお馴染みのキレッキレな俳優がそんな地味キャラには収まるまい、さぞ面白い感じになるんやろうな~と予告編でワクワクしたのが大体2020年年明け頃。

未だ渦中の疫病のせいで、公開延期に次ぐ延期。「一体いつお目見えするのかね」そう思っていた2021年夏。4回の公開延期を経てようやく観る事が出来ました。

 

VRどころか。テレビゲームを始めとするゲーム機器に一切触れた経験のない当方。なので「ゲーム界あるある」を語る事は出来ません。先んじてお断りしておきます。

 

ゲーム世界が舞台の映画。近年でいうと『ピクセル』や『レディ・プレイヤー1』などと同じく「極彩色の世界で異次元なキャラクターが縦横無尽に動き回る」という視覚的高揚感。

ゲーム世界で俺は無敵!ハンサムでマッチョ。美女を侍らせつつ有り余る力をふんだんに行使する。俺はこの仮想空間では人気者…現実ではひ弱でコミュニケーション弱者だけれども。そういう現実社会ではイケていない主人公が実は…というパターンが多かった記憶がありますが。

 

今回はちょっと様相が違う。何しろ現実社会のプレイヤーが存在しない、ゲーム内にプログラムされたNPCが主人公。そんな「決められた行動しかしない」はずの主人公・ガイが運命の女性・モロトフ・ガールを見つけて恋に落ちた所から自我が芽生えてAI人工知能に変化していく。

 

これまでは、所謂「他人の褌で相撲を取る」(他人の物を利用して、自分の利益を図る。自分は犠牲を払わずに平気で人のもので事を行うことの例え)という感じで「イケてない現実社会を見ない様にしてゲーム社会で人気者になっていた主人公が、ゲームを通じて知り合った仲間から成長し…ちゃっかりリアルな恋人も得る」という流れが多かったと思うのですが。

主人公ガイは他人の褌で土俵に上がる力士(現実社会に実体がある連中)とは違う。常に土俵にいて「は~っけよ~い」と声をあげる行司のような存在。戦う者ではないが常にそこに居る。けれどそんな当たり前の存在に意思が発生し、役割を変えてきた(相撲にもとんと詳しくないので…お叱りを受ける前に撤退!)。

 

とはいえ。お話を進めるためにはプレイヤーの現実社会事情は必須。ここでは『フリー・シティ』というゲームを販売しているゲーム会社・スナミ・スタジオのプログラマー、キーズ(ジョー・チーリ)とかつてキーズと一緒にゲーム製作をしていた友人のミリー(ジョディ・チーリー)が主軸で関わってくる。

というのも。『フリー・シティ』は二人がかつて共同で製作していたゲームが盗用されたものだったから。

骨格コードをスナミ・スタジオの悪徳社長(タイカ・ワイティティ)に奪われた過去にご立腹なミリー。訴訟するのに必要な「ミッション56」を入手するべく、毎日『フリー・シティ』にモロトフ・ガールとしてアクセスし、ゲーム世界を捜査していた。そんな折、ゲーム内のモブキャラに一目ぼれされてしまった。

 

「私に釣り合いたいんなら、もっとレベルを上げてきなさいよ!」そう言って撒いたと思ったのに。地味にレベルを上げるガイ。その方法は「正しいことをすること」。

本来、サングラス族(プレイヤー)が暴力・破壊的的行為を行うことでレベルが上がるというレギュレーション。しかし元々暴力を受ける側=モブの立場であるガイは、暴力・破壊行為を行うサングラス族をやっつけることでレベルを上げる。

「おい。なんだなんだこいつ」プレイヤーたちの間でもガイの存在は見逃せないものとなっていき…次第に『ブルー・シャツ・ガイ』と呼ばれ人気者になっていく。

 

なし崩し的にスナミ・スタジオの社員なっていたキーズが悪徳社長に「ガイとは何者か調べろ」「ガイを消せ!」と命令されて探っていくうちに、ガイを通じて、疎遠になっていた関係が再び繋がっていくキーズとミリー。

 

順を追ってダラダラ内容を綴っていくのもアレなんで。ここからの顛末はあやふやにしていこうと思うのですが。

 

この作品の主人公は、間違いなくVRゲーム内に生きるガイ。恋をしたことで自我が目覚めてAI人工知能として変化していく姿は、周りのモブキャラ達にも伝播していく…その流れはなかなかグッとくるものがありましたが。

現実社会に生きるキャラター達が、やはり先人たちの作品と似通ったパターンを辿ったなと思った当方。ひいては「他人の褌で~」。

「何故ガイが自我に目覚めたと思う?実は彼には一つのプログラムが仕込まれていたんだ」「これはラブレターだ」ゲームを通じて現実社会も上手くいく。

「ハッ!そんな上手くいくか~い!」映画館でマスクの下、真顔で突っ込むしかなかった当方。

 

あと、新進気鋭のベンチャー企業の社長があんな原始的なキレ方するんですかね?「今のバージョンが人気すぎて、続編の予約率が6割減」が悪徳社長の「ガイを消せ!」の原動力なんですが。仮にもIT系お仕事会社のトップでしょうが。

 

諸々「風呂敷の畳み方…」と思う部分もありましたが。やはりゲーム世界が舞台という自由度が高い画面で映し出される映像はワクワクしましたし…何より4回も公開延期された作品をやっと観る事が出来たという満足感で一杯になりました。

 

公開より随分経ってしまいましたが、もし観られるのならば大きいスクリーンで。こういう作品は自宅テレビ画面は味気ないです。