ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「アメリカン・ユートピア」「ストップ・メイキング・センス」

アメリカン・ユートピア「と「ストップ・メイキング・センス」観ました。
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「デイヴィッド・バーン×スパイク・リー 一生に一度の、至福の体験!」

2021年7月30日公開。音楽好きな人たちからの「すっげえやつが来たぞ!」という大絶賛に「とは言っても当方は音楽にはとんと疎いんで…」と始めは引け腰だったのですが。それでも何だか気になって映画館で観たのが8月上旬。

鑑賞後「一体何を観せられたんだ…」自失呆然。

余りの熱量…陳腐ではありますが『エンターテイメントの力』に圧倒されて、脳内の整理がつかず。

そのまま、夏バテもありだらだら日にちだけが過ぎていましたが。

 

先日、一旦逃した期間限定上映の再期間限定上映「ストップ・メイキング・センス」を鑑賞。興奮冷めやらぬまま同日そのまま「アメリカン・ユートピア」を再鑑賞(再だらけの文章)。

間に「ストップ・メイキング・センス」を挟んだ事でより世界観が見えた今、この瞬間を逃すまいと勢いで感想文を書いていきたいと思います。

後。当方以外の誰もが「知らんがな」という、この「映画部活動報告のルール」。

それは「映画館で観た映画全ての感想を書く」「観た順番を飛ばさない、入れ替えない」というものなのですが。流石にこれは同時に語るべきだと判断しましたので、イレギュラーに進めていきたいと思います。

 

前置きが長くなりました。

感想文が〜と書きながら当方が思うのは「少しでも興味があるのならば、映画館で観て欲しい」ということ。

アメリカン・ユートピア」は2019年秋からブロードウェイで始まったショー。元トーキング・ヘッズのフロントマン、ディヴッド・バーンと11人の仲間たちで繰り広げるパフォーマンス。揃って皆グレーのスーツと裸足の出で立ち。配線を無くしたパーカッション集団とコンテンポラリーダンサーの、マーチング・バンド形式の音楽とダンスの融合。シンプルであり、どこかユーモラス。けれどしっかりと現在のアメリカが抱える問題に提起する。

ブロードウェイで大評判となり、再演を熱望されながらも2020年から始まる世界的コロナ禍により幻となってしまった…そんな「2年前ならアメリカに行って実際に鑑賞できたかもしれない」ショーが。今は誰も見る事が出来ない。けれど映画館なら観る事が出来る。これは行くしかない。

 

1984年。当時最高潮にノッていた、トーキング・ヘッズのライブを撮影した「ストップ・メイキング・センス」。

今から36年前のディヴッド・バーンのキレッキレな歌とギター。そしてダンス。

「こんなに動き回って息も切らさず歌っている!」

いやいや、プロのボーカルなんやからと言われるのかもしれませんが。それにしても凄い。

そして一緒に演奏している仲間たち、ダンサーの笑顔。皆の高揚した気持ちがひしひしと伝わる。楽しくて楽しくて仕方がない。

 

そして。36年前の作品を観てから改めて鑑賞すると「ああ。こういう始まりが好きなんだな」とか「36年前のライブとは違うトーンだけれど、時を重ねた事で深みが出るんだな。同じ曲なのに違った風に感じる」「36年前はほとばしる勢いがあった。けれど荒削りにも感じる。それがブラッシュアップされて、スタイリッシュになった。とはいえ、根底に流れる思いは大きくは変わっていないように思える」

 

舞台の幕が開いて。ディヴッド・バーンが一人でラジカセのテープに合わせてギターを弾いた。

そこから仲間が一人増え、二人増え…皆で音楽を奏でた。

それから36年。再び一人で現れたディヴッド・バーンは観客に脳の繋がりを示しながら「感じろ」と歌う。そしてダンサーが、パーカッションの面々が増えていく。

この、メンバーの登場のし方も、ダンサーもマーチングバンドの動きも…全てが気持ち良い。

歳を重ねたディヴッド・バーンは、かつてのような激しいダンスは踊らないけれど、それでも伸びやかな歌声は健在。曲と曲の間にユーモラスなMCを挟み、テンポ良く繋いでいく。

 

トーキングヘッズの歌を織り交ぜつつ、2019年当時アメリカが抱えていた社会問題にも切り込む。

移民問題。差別。選挙に参加すること。銃の所持について。社会的なメッセージであるけれど、一辺倒ではなく説教臭くもない…それはひとえに彼らのパフォーマンスセンスの賜物だろうと思う当方。

 

冒頭から脳内の興奮物質がダダ漏れだった当方は、最終的にはタオルを顔に当てて涙を拭っていた。それは「こんなに楽しい場所があるなんて!」という感情崩壊。

演者たちと観客が一緒になる。文字通りの絵面。

切り取られた舞台が無くなった後、演者が舞台から飛び出して…劇場全体が「ユートピア」になった。

泣いて笑って手を叩いて。なんて最高なんやろう。

 

エンドロールで流れた「例の合唱団のバージョン」にまたホロっときた当方。

 

因みに。8月に鑑賞した直後、音楽・ライブ大好きな知り合いにお勧めした所、「エンターテイメントの力よ!いいモノ観させて頂きました!」と大興奮の嵐。そうでしょうよ!

 

音楽、演劇、映画…あらゆるエンターテイメント好きな人に全力で推したい作品です。