ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「屋敷女」

屋敷女」観ました。
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「2000年代前半。フランスは時ならぬバイオレンス・ショッカー・ブームに沸いた。」「アレクサンドル・アジャの『ハイテンション』、パスカル・ロジェの『マーターズ』、サヴィエ・ジャンの『フロンティア』そしてジュリアン・モーリーアレクサンドル・バスティロのコンビが監督した『屋敷女』は最怖のフレンチホラーの四天王と呼ばれている。」

「映画史上最も邪悪な禁断の映像の数々で、2007年の日本公開時には大幅なカットを余儀なくされた。」

 

「そのヤバさ『アングスト/不安』超え、そのグロさ『ムカデ人間』以上!」

ムカデ人間以上?

 

随分とハイテンションな予告チラシがあるなと。行きつけの映画館ロビーでチラシを手に取った当方。フレンチホラー?全然馴染みがないけれど…そう思いながら読み進めていくうちに目に入った文言。「『ムカデ人間』を超えるだと」

 

何故か当方の映画部活動の中でも突出して受け取られがちな『ムカデ人間3部作』への愛。今は無き酒の場でも、迂闊に話題を振られようものならば、思わず延々と熱弁してしまっていた。

「グロさで比較しているのだとしたら『ムカデ人間2』だな。」

(『ムカデ人間』はホームビデオ。『ムカデ人間2』はマーティンに依る"できるかな♪″『ムカデ人間3』は茶番、というのが当方の見解。)

watanabeseijin.hatenablog.com

 

先んじてこの件について答えておくならば。「それはそれ。これはこれ。」

どうしても贔屓目が出てしまうのですが。「『ムカデ人間』は笑える」けれど「『屋敷女』は笑えない」と言うのが率直な感想。

 

クリスマス・イヴの夜。明日出産予定の妊婦のサラは自宅で猫と過ごしていたところ、見知らぬ女の訪問を受ける。

インターフォン越しにも伝わる、不気味で不穏な雰囲気。恐怖を感じたサラは警察に通報。女は姿を消し、安心して床についたはずが…黒い服に身を包んだ長い髪の女が自宅に侵入してきていた。しかも手にハサミを持って。

 

「怖えええええ~刃物を持った侵入者なんて一生出くわしたくない。」

 

ものすごい形相で、ひたすらサラに襲い掛かってくる女。勝手知ったる我が家なのに、女から逃げるためにバスルームに逃げ込んだサラには外界に緊急事態を知らせる術がない。

 

お話自体は超シンプル。一人で暮らす妊婦サラの家に見知らぬ女が刃物を持って乗り込んできた。目的はサラの殺害一択。けれどサラにとっては見知らぬ相手。何故相手が自分に殺意を持っているのかが分からない。

 

「何故相手がこんなに殺意を持っているのかが分からない」って…冒頭のシーンから観ている側には「いやいや。絶対あの時に関わっている人やろう」と直ぐ様お察しなんですが。そして最後の種明かしでも「だと思いましたよ!」とひねりの無さに声が出そうになった当方。じゃなきゃあ、ホンマモンの無差別殺人犯やないの。

 

この作品の見どころ…当方的には「一軒家を血みどろに汚していく快感」ですかね。

冒頭~オープニングの映像では正直「このCG嘘くさいな~」と思っていましたが。いざどんちゃん騒ぎが始まったら「血で汚れていくさまがリアルな感じ」で楽しくなってくる。

 

サラ宅。意外と来客者が多いんですよね。

初めにサラが通報した事でやって来た警察官たち。彼らは見回った後サラの家から去ったので無事でしたが。

職場の上司。サラの母親。そして異変を感じてやって来た警察官たち(先述したのとは別者)。

「一体何時だと思っているんだ」何もなければそう思ってしまうくらい、サラの家には次々来客者が訪れる…けれど誰もかれもが不穏な刃物女に太刀打ちできない。

 

「まあでも確かに。誰も扉を開けた先に狂人が圧倒的殺意を持って暴れているなんて思わないよな。」

当方が万が一そんな場面に出くわしたら…「早いところ痛くない様に殺してください」と懇願する。戦闘力ゼロ故無条件降伏しかありえない…と思っていましたが。あの猫の下りには震えるほどの怒りに襲われた当方。「お前は万死に値する‼」「いてまえ!」

 

妊婦のサラ。最後に立ち上がるまで概ね泣いているだけ…妊婦で動けないし、滅茶苦茶怖い。外界からは遮断された場所に閉じ込められているし、助けてくれそうな相手がことごとくやられていくいく様は精神を破壊されてもおかしくない。分かるけれど…サラが動きださないと話も停滞してしまうんですよね。

 

なので。「遂にサラのターンが来た!」となったところからの「ああああこれはあかん~。」という突き放しまくったオチに「確かに悪名高きと呼ばれるだけのことはある」と胸を悪くした当方(褒めてはいませんが、貶してもいません)。

 

終始全身に力が入っていたようで…鑑賞後には疲労困憊。とりあえず「こういった狂人を自宅に招き入れてしまうなら」または「回避」を考えてみた当方。

・セコムまたはアルソックなどの大手警備会社と個人契約する。

・その上で携帯電話以外にも警備会社に連絡できるツールを(できれば全室)に設置する。

・翌日に出産予定ならば前日から入院する。一人にならない(そもそも急な容態変化時に病院に連絡できない可能性がある)

・窓には雨戸またはシャッターを付け安易に外部から侵入されない様にする(ガラス窓にカーテンのみなんて入って来いといわんばかり)。

・『ホームアローン』を参考に自宅を武装する。

 

とんだクリスマス映画。翌日には我が子を抱いて幸せの絶頂のはずだったサラの痛ましい恐怖体験。2007年版が大幅にカットと修正を余儀なくされたとの事なので、今回ノーカット完全版を観る事が出来たのは貴重な体験でしたが(しかも1週間期間限定上映だった)。

「とりあえず。飲み会で手放しにネタに出来た『ムカデ人間』とは違う。下手したらこちらのモラルや常識まで疑われてしまう。」危ない危ない。

けれど。ひっそりと分かる人には話してみたい「『屋敷女』っていうヤバいフランス映画があってさあ…」。そういう作品です。