ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「サイコ・ゴアマン」

「サイコ・ゴアマン」観ました。
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はるか太古の昔。ガイガックスという惑星ではてしない力を使い、宇宙におけるすべての正義を一掃しようとした悪魔が居た。

悪魔は〈残虐宇宙人〉と呼ばれ恐れられたが。正義の味方集団〈テンプル騎士団〉によって制圧され、力を封じられた〈残虐宇宙人〉は遠く離れた地球のとある庭に葬られた。

悪魔が眠りから覚め、封印が解かれる時…それは全ての者にとっての破滅を意味する。

 

時が流れ…偶然封印が解かれた。

しかも8歳の少女・ミミとその兄・ルークによって。

〈残虐宇宙人〉はすぐさま残虐の限りを尽くそうとするが、破茶滅茶な少女ミミに自身の力を操ることが出来る宝石を奪われていた。

 

「なにこれ。絶対好きなやつやん」

映画館で予告編を見るたびに感じていた「このチープでキッチュな雰囲気。間違いなく当方の心を掴んでくるタイプのやつですわ」。お楽しみ感が半端なくて。実は公開初日に観に行ってきました。

 

ティーヴン・コスタンスキ監督。カナダが誇る〈アストロン6〉の一人であり、彼らの過去作品には『ターボキッド』がある。と後から知った当方。

「『ターボキッド』‼あの『チャリンコ版マッド・マックス』の‼クサクサしていた気持ちを一掃してくれた最高にキッチュなボーイ・ミーツ・ガール作品やんか‼」(←興奮し過ぎて語彙力が底辺まで落ちています)。

watanabeseijin.hatenablog.com

 

「本作は、80年代と90年代の低予算ジャンル映画への私の愛情から生まれました」

パンフレットに寄せられた、スティーヴン・コスタンスキ監督からのメッセージ。

そんなの、嫌いになんてなれない…という事で、今回は完全にデレデレした感想になる事を先んじてお詫びしてます。

 

折角太古からの眠りから目覚めたのに、己の力を封じ込めてある宝石を8歳の少女ミミに奪われた。この宝石が無ければまだ完全体には戻れないのに…けれどこのミミが…手の付けられない悪ガキだった。

 

おそらく内弁慶。友達が居らず、いつも兄のルークとつるんでいる。ルークの友達アレックスに恋しているがそれを恋だとは認めていない。

生意気で自分勝手。いつだって自分最高で、兄は手下。〈残虐宇宙人〉だって怖くない。寧ろ見てみて!私の新しいオモチャ!という感覚。

 

「ねえ。どこから来たの?」という問いに、熱くこれまでのヒストリーを語った〈残虐宇宙人〉のエピソードも、早々に興味を失い離脱。上の空。

「そんな名前じゃなくてさあ…サイコ・ゴアマン!略してPGね!」勝手に改名。超マイペースで勝手。(以降当方の表記もPGで統一します)

宝石の所有者の命令は絶対という仕組みに有頂天なミミ。心中穏やかではないPGをものともせずに好き勝手町中を連れまわしていた。

 

ちょうどその頃。はるか彼方の惑星、ガイガックスでもPGの覚醒を察知。緊急で宇宙会議が行われた結果〈テンプル騎士団〉の最強宇宙怪人パンドラが地球に送り込まれることとなった。

一方地球。ミミたちからテレビを与えられたPGは電波を利用し、かつての仲間〈暗黒の勇士たち〉へ集合するようメッセージを発信していた。

 

宇宙全体から見ると「かつて宇宙を制覇しようとした悪魔の封印が解かれた!これは我々の破滅を意味するぞ!」という絶体絶命な有事。

けれど。悪の権化・PGの目線では「かつて俺たちは〈テンプル騎士団〉から奴隷のような扱いを受けてきた。強制労働の中で見つけた宝石を手にしたことで力を得て立ちあがった。有り余る力で暴力、破壊を尽くしていたら〈テンプル騎士団〉の連中に捕まり封じ込められたんだ」と変化する。

正義VS.悪。宇宙の平和を守るという点では〈テンプル騎士団〉に味方したい。そう思うけれど…「さあヤッテやるぞ!」といきり立つ気持ちとは裏腹に、宝石を持つミミに牛耳られているPGのモダモダしている姿に愛着が湧いてくる。

そしてミミは「そんなの知らない。一緒に遊ぼう!」の一点突破。強い。

 

完全無敵のミミに振り回される周囲にも笑えるけれど、ミミの家族は皆個性が立っている。

兄のルーク。臆病。父親のグレッグは絶賛無職で毎日ダラダラしており、そんな夫にキレている母親のスーザン。

 

最終。〈暗黒の勇士たち〉との闘いで戦闘力が落ちたPGを、待ち構えていたテンプル騎士団最強宇宙怪人パンドラの戦い…にがっつり食い込んでくるこの家族。

「知らんがな!」という夫婦喧嘩。「いつまでも妹の言いなりになるもんか!」という兄弟喧嘩。

そんな内輪もめと宇宙の平和を守る戦いが同時に行われる。しかも2チームに分かれた『クレイジーボール』というボールゲームで。

 

この『クレイジーボール』ってやつ。ミミとルークがやたら夢中になって遊んでいるボールゲームなんですが。もう一つたりとも当方には説明できないゲームルール。

「同数の選手で2つのチームを組む」「レディー/セット/クレイジーボールの掛け声の後、各チームから自分のクレイジーボールを相手チームから遠くに投げる」というボール二つでやり取りするんですが。そこからのルールが全然飲み込めない。

なので「どうせミミが考えた破茶滅茶な遊びなんやろう」と思っていたら…まさかのパンフレットに「カナダで14番目に人気のあるスポーツ」と紹介されていて、一瞬「えっ」となった当方。まあ…真偽のほどは…アレですが。

 

まあ。無理やりこじつけると…家族の絆とか、PGとの友情とか、相手を思いやることの大切さ…みたいなのもテーマとして持ってこれるんですが。何しろ圧倒的な「チープ&キッチュ!古き良き低予算映画へ捧ぐ」に満ちているんで。もう全身を委ねてヘラヘラ笑うしかない。

 

宇宙人たちの造形の懐かしさ。(その中の一人〈ウィッチマスター〉の声を黒沢あすかが担当していた所に「分かってんなあ~」と唸った当方。だって、カナダの監督があすか姐さんの存在を認識していたなんて!)何だかんだ結構冷酷非道な展開や顛末。当方的に大好きだったボンクラ父親のグレッグ。PGに名前で呼んでもらえないルーク。

そして圧倒的理不尽だった、ルークの友達アレックスの扱い。

なんでミミの「一生一緒にいたい」があんな事になるんだ。そして受け入れるな!アレックスとその家族!不憫にもほどがある。

 

こういう世界観が好きな人にはとことん嵌る。そうでない人には「一体何を観せられたんだ」としか言いようがないだろうけれど…思考回路を打ち切って、全身の力を抜いてヘラヘラ笑う。当方は好きなんで…楽しかったです。
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