映画部活動報告「ムカデ人間3」
「ムカデ人間3」観ました。
トム・シックス監督作品。
話題の三部作の最終回。
当方が、どれだけの胸の高鳴りを抑えながらこの作品公開を迎えたか。
これまでの飲み会で、飲まない会で、いかに熱く「ムカデ人間について」語ったか。
「え~。結局、ムカデ人間って何なんですか~?」と聞いてくるくせに。
なのに、必ず最後には「怖そう~。」「夢に出てきそう~。」「もういいですう~。」と悲しい結末を迎えるピエロ当方。
基本的に女子は観てくれませんね。
「観ましたよ…。」
リアル界で、当方のプレゼンを経て観てくれたのは、半笑いで肩を叩いてきたマーティン風の不気味系後輩男子のみ。
今回の公開に先立ってのイベントや宣伝もあって、随分と「ムカデ人間」の認知度も上がり、最近ではカジュアルな扱いを受けている気もしますが。
かと言って、結局「ムカデ人間3」を観る為には前二作を飛ばす訳にはいかない。カジュアルでは済まない、結構辛い鑑賞経験をしなければ、「ムカデ人間3
」には到達出来ないんですよ。
今回は、当方が「ムカデ人間三部作」に対してどの様な経過を辿ったのかを、だらだらと綴らせて頂きたいと思います。
長文になりますがね。…やりたいんですよ。
リアル界でやったら、間違いなく健全な女子に途中でぶったぎられますからね…。
後、当方にとっては重要なお断りなんですがね。
「当方は、人様のパーツ及び排泄物を食べる事態になった時は、死にたいと考えています。」
数多の性癖に、一応は寛容な理解を示したいと(犯罪は除く)思う当方ですが。やれるかは別問題です。
何でも好きではありません。
「ムカデ人間」
2009年。暑い暑い夏の昼間。
(昼間。って、これはR15やったんですよ。後はレイトショーしか出来ないR18+になりました)
基本的にこういうホラー作品を観ないはずの当方が、何故引かれたのか。最早思い出せない位ですが。…やっぱり「医学的に100%可能」の文字と松尾スズキ氏のコメントですかね。
映画館でのポスターを観て、ふらふらと入ってしまい。
体がくっついて産まれてくる、シャム双生児。その分離手術の権威であるハイター博士。
しかし、彼は分離では無く「つなげたい」という創造的手術の夢を抱いていて。
取っ捕まえた3人を繋げ、ムカデ人間を造る。
結構繋げるまでが長いんですがね。
ドイツ人ハイター博士のドSインパクトがくどい!
しかし、手術の説明及び実際の面白さ。出来上がったムカデ人間のシンプルさ。
「口元をステープラー(医療用ホッチキス)で打つ!痛え~!」という悲鳴。
先頭男性が「関西弁のヤクザ」という爆笑。(これこそが日本でうけた一因だと推測)警察の無能感。
緑がかった絵面の、後味の悪い怪作。
変態映画部門を得意とする当方としては、非常にストライクな作品でした。
「ムカデ人間2」
2011年。前作で既に「ムカデ人間は3部作だ」と知っていた当方。
「またハイター博士の話やったら嫌やな」と思っていた当方。確か、事前情報が余り出なかったんですよね。「イギリス、オーストラリアでは上映禁止」位しか。
「ムカデ人間2」の最大の魅力。マーティン。
「ムカデ人間」にハマり「自分もつなげてみたい」と考えた、地下駐車場管理人のマーティン。
「ムカデ人間2を観たら、ムカデ人間がホームドラマの様に爽やかに感じた。」
「あれがカラーやったら、全世界で上映禁止になったやろうな…。」(因みに、あの時のノベルティーはエチケット袋でした)
ハイター博士は外科医ですが。マーティンはあくまでも素人であり。なので、大工道具でばんばん破壊。無理矢理な結合。勿論無麻酔。
前作がクールでスタイリッシュ?であったのと比較したら「造る工程を見せる」事に重点を置いた今作は、ぐしゃぐしゃのグロさ。無臭な映画館が匂ってきそうな阿鼻叫喚。
でもね。そんな非道なマーティンが、堪らなくいとおしく思えるんですよ。
マーティンの生い立ち。自分を押さえ付ける環境。出せない自我。悲しさしかなくて。
爆発して、ムカデ人間を造った彼のイキイキとした笑顔。
マーティン役のローレンス・R・ハーヴェイ。(しかも親日家)
イギリス人で、イギリス国営放送の教育番組の「リトル・グリーン・マン」を演じていた彼。(だからイギリスは上映禁止したのか?と邪推する当方)
悪魔としか思えないマーティンを、チャーミングに魅せる彼の力量に脱帽。
ムカデ人間に対するマーティンのわくわく感が、ひしひしと伝わり。
「良かったね!マーティン!」と思ってしまった当方。
因みに、妊婦の下りで笑ってしまった当方。人外の極みです。
そして、「ムカデ人間3」
「ハイター博士もマーティンも出る!そして繋げるのは500人!舞台はアメリカの刑務所!」
もう、前作の時点から知らされていた情報。しかし、製作、撮影。そして公開に至るまでは、随分と待たされました。
ハイター博士役のディーター・ラーザーと内容について揉めているからと聞いてヤキモキしたり。
今年の春。満を持して「ムカデ人間3」公開日が発表された時、即座に手帳に書き込んだ当方。
「もう~。い~くつね~る~と~。」と指折り数えた日々。
そしてやっと、この文章も、冒頭まで戻る訳です。
公開したばかりですし、中身をあれこれと細かく取り上げるつもりはありません。
やっと終わる「ムカデ人間三部作」に対し「お疲れ様でした。ありがとうございました。」という気持ちで一杯ですし、充分楽しませて貰えたのでどんな内容でもいいとは思っていました。
「ハイスクール奇面組の伝説の最終回風でも構わない。」とすら覚悟して臨んだ「ムカデ人間3」…ですが。
「マッドマックス現象」「サンダードーム…。」(と言う事は、30年後に続篇が…。)
鑑賞前の覚悟とは裏腹に、鑑賞直後、もやもやした気持ちを押さえられない当方。
帰宅。自宅で三部作のパンフレットを読み直し、脳内で反芻する当方。
「始めから、こういう流れが確定していたんだな…。」
ドイツ。イギリス。そしてアメリカを舞台に移し。
経営も質も不良化している、「ジョージ・ブッシュ刑務所(何て名前だよ)」囚人500人をムカデ人間にする事で、安定化を図ろうとするが。
ある意味、アメリカの馬鹿馬鹿しいビックスケール映画に則っていると言えばその通りで。
ビル・ボス所長の過剰演技。
ドワイト会計士の一見マトモそうでマッドな内面。
こんなに嬉しそうにコンセプトを語るなんて。…やっぱり…ローレンス・R・ハーヴェイ可愛いな。
外科チームでのムカデ人間手術。もっと見せるかと思いましたがね。ていうか、あれ…溶ける糸じゃないの?くっついちゃったら外せないじゃないの。
「芋虫に関しては、江戸川乱歩先生に任せておきなよ!」
芋虫人間に関しては蛇足。(震える手で「ムカデだけにな」と続けて打ち込む、関西人の悲しき性。)
潰瘍性大腸炎。人工肛門(ストーマ)患者。スカトロマニアに対する回答もあり。
文化が細かく、ウエットな笑いに寄りがちな日本人。アメリカナイズな「でっかいことは良いことだ!」という笑いは合わない事もしばしば。(トム・シックス監督はオランダ人ですがね)
今作ではそういう大転倒を見てしまったのかもしれません。(我ながら、遠回し過ぎて言いたい事が分かり難い。だって、スベっただなんて…。)
ディーター・ラーザーは一体、どういう口出しをして、そしてどう納得したらあのビル・ボスキャラクターにたどり着いたんですかね。
「揉めたから、ああいう役なのか?わざとか?」
勝手な想像ですがね。
映画館を後にする人達の群れ。そこでふと耳に入った「世界の北村の扱い…。」
薄ら笑う当方。
「結局、全部一人で観たな…。」
何にしても、長かった「ムカデ人間三部作」という祭りを見届けた当方。
「夏が、終わった…。」
帰宅中の信号待ちで、ビルを見上げながらふと秋を感じた夜でした。