ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ルクスエテルナ 永遠の光」

「ルクスエテルナ 永遠の光」観ました。
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『注意:本作は光に対して敏感なお客様がご覧になられた場合、光の点滅が続くなど、光感受性反応による諸症状を引き起す可能性のあるシーンが含まれております。ご鑑賞いただく際には予めご注意ください』

 

悪趣味と芸術のスレスレをいく映画監督、ギャスパー・ノエ(当方の決めつけ)。

雪山の施設で。酒と薬物でキマってしまったダンサー集団の阿鼻叫喚の一夜を描いた、前作『CLIMAX クライマックス』の記憶も新しい。そんな監督の最新作はファッションブランド、サンローランのアートプロジェクト作品。

「様々な個性の複雑性を強調しながら、サンローランを想起させるアーティストの視点を通して現代社会を描く」というコンセプトでスタートさせたアートプロジェクト『SELF』(映画館予告チラシからそのまま抜粋)」。

 

「映画館で敢えてポケモンショックを?!」

オサレとも小難しいアートとも無縁。ただただ物珍しさで鑑賞に至った当方。

ポケモンショックとは:1997年にテレビ放映されていたテレビアニメ『ポケットモンスター』の視聴者が光過敏性発作を起こした放送事故・事件)

 

魔女狩りを描いた映画作品の撮影現場。主演女優はシャルロット・ゲンスブール

女優出身の監督ベアトリス・ダルが延々鬱陶しい自分語りを繰り広げるのを皮切りに「これはあかん現場やなあ~」と思わずうなってしまう、混沌とした現場。

ヒステリックな女性監督。歯車がこれっぽっちも噛み合っていないスタッフ。ぞんざいな扱いを受けていることに声を荒げる共演者。監督を引きずり降ろそうとしているプロデューサーと撮影監督。シャルロットを自分の作品に出したくて売り込みに来ている新人監督。報道。「何で部外者がこんなにうろうろしているのよ!」監督が吠えるのもごもっとも。誰もがフラストレーションを抱え、一触即発状態。

いつ誰が爆発してもおかしくないそこで。愛娘からシャルロットへ気になる電話。一体何事か。娘の元に掛けつけたくていても経ってもおれない状態のシャルロットが迎えた『磔のシーン』。

 

お話の中身はこれが全て。

正味51分というショート・ムービーの中で。雪だるま式に膨らんでいくフラストレーションを溜めに溜めて…衝動を爆発させる怒涛のフラッシュシーン。

 

鑑賞した日曜日。未明から緊急で職場に呼ばれて仕事明けだった当方。ほぼ寝ていなかった体に「光に対して敏感な云々~」の文言。一瞬怯んだものの「いやいや。元々今日はこの映画を観る予定だったんだ。試した事はないけれど光感受性反応を体験した事もないし…しっかりご飯さえ食べていれば大丈夫なはずだ」。

そう己に言い聞かせ。映画館のすぐそばのマクドナルドでしっかりダブルチーズバーガーセットを摂取(余談ですが当方はマクドナルドではダブルチーズバーガーセット一択)し鑑賞に挑んだ当方。

 

「これ51分で限界。こんな現場これ以上見せられんの厳しすぎる」「光ィ⁈なんていうかもう…目が痛い!」。

 

嵌る人にはとことん嵌ったらしい今作。実際映画館で当方の後方座席に座っていたカップルは、劇場が明るくなった途端に「うわあ~これめっちゃおもろくない?」「めっちゃ凄い。おもろかった~。IMAXで観たかったくらいやでえ~」と座席で伸びをしながら、若干オーバーさを感じるほどに大絶賛。「具体的にはどういう点が?」という言葉を喉元で何とか飲み込みましたが…刺さる人には堪らんかった様子。

 

こんな書き方をしている所からお察しして頂きたい。当方は…あまり…。

多分『ヒステリックな女性』とか『相手の都合を一切考えずにグイグイ我を押し通してくる輩』とかが本当に苦手なのと。どんどん積み重なってくるストレスフルな現場描写に苛々とフラストレーションを溜めていって…からの爆発した(文字通り)閃光シーンが。けれどそれがどうにもこうにも「うるさい」。

多分ねえ…疲労困憊というコンディションも相まったんだとは思いますよ。「一体何が起きるのかな?オラ、ワクワクすっぞ!」というテンションでは構えていなかったんで。

 

ギャスパー・ノエ監督は敢えてこういう設定にしたんだとは思いますが。女優ベアトリス・ダルが満を持して監督として魔女狩りを描いた映画を撮るにしては絵面がチープ。セット感があり過ぎるし女優たちの服装もやや下品。

「いやいや実際こんなんもんやで!」と言われたらそこまでですが。低予算B級カルト作品感がプンプンする現場。『主演・シャルロット・ゲンスブール』という一点豪華主義で作られようとしていたのか?

安っぽい現場なのに、高尚な御託をこねて統率の取れない女優上がりの監督。疲弊し苛立つ現場。そこで行われた撮影監督たちの強行突破。「ほら。俺たちが演出してやるから見せてみろよ。火あぶりにされる魔女の姿ってやつをさあ」。

 

「それがこれなんですか?」「これってクラブ的な光と音楽の演出じゃないですか?」「それがこれなんですか?」「シャルロット・ゲンスブールよ。アナタもっと演れるんじゃないの?」「それがこれなんですか?」。

光の世界の中。ただただ脳内で問い続けた当方。そしてひたすら「目が痛い」。

 

疲労困憊。帰宅後泥の様に眠りに落ちた当方。目を閉じるとチカチカ赤と青の光が交差する。脳が痺れている。寝ても覚めても何かが点滅している。一日その感触が取れなかった。

 

まあ、嵌る人にはとことん嵌る作品。光過敏症の方にはポケモンショックを引き起こす可能性がある作品。そして当方にとっては「目と頭が痛くなった」作品。

ところで。実際の撮影現場では光過敏症の人は居なかったんですかね?勿論あのままのフラッシュの強さでは無かったんでしょうけれど…気になる所です。