ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ブリムストーン」

「ブリムストーン」観ました。
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開拓時代。いわゆる西部劇の世界。小さな村で。

夫と息子、娘と慎ましく暮らす主人公のリズ。とある理由で口がきけず。手話でコミュニケーションをとりながら。村では貴重な助産師として重宝がられていた。

ある日。村に新しくやって来た牧師。その姿を見て激しく動揺するリズ。

加えて、次々起きる不幸。「兎に角牧師から逃げなければ」

リズとその家族をどこまでも追い詰めてくる牧師。

一体リズと牧師に何があったのか。

 

いやあ~。年明け早々の『胸が悪い映画作品』でした。(褒めています)

 

映画が始まってすぐ。「おっとこれ。『ウィッチ』案件か?」なんて構えてしまった当方。不幸な出来事をきっかけに、閉鎖的な村で広がる不協和音。悪いのはどいつだ。誰のせいでこんな事になっている?てっきり関わった助産師リズを「魔女だ!」と狩っていく話かと。

…まあ。そういうのじゃ無かったですね。

 

四部構成。現在のリズ一家に訪れた災い。リズの過去。そもそものきっかけ。そして結末。起承転結で言うと『転、承、起、結』の順に時系列を若干シャッフルして。一体『牧師』とは何者なのか。そしてそもそも主人公『リズ』とはどういった人物なのか。そしてその因縁の関係性を…兎に角嫌~な感じで描いていく。

 

ガイ・ピアース演じる牧師の最悪さよ」嫌悪感で震える当方。(褒めています)

 

信仰心から来る精神の歪みだとか、聖職者の性だとか…そんなの関係無い。ただただ暴力で相手をねじ伏せるしかないクズ。利己的な思考しかなく、相手に感情があるなどと思わない。そして堂々とした変態。

 

「こういう奴。大っ嫌い!!」

(注:以降、やんわりネタバレしていますのでご注意ください)

 

暴力とSMの違い。あくまでも私見ですが。

『互いにレギュレーションを理解していて。その上で行われる、あくまでもプレイ。どちらも楽しい』がSM行為だとすると。暴力というものは全く違う。天と地ほど違う。

 

「だってこれって。DV加害者と被害者の図やん」

 

一家の主からの、家族への暴力。今回は性質が悪い事に「宗教」に絡めてくるけれど。やっている事は完全にDV。どうして?どうしてそうやって暴力でねじ伏せた相手が己を受け入れてくれると思うのか。

 

「あの人は私を殴るけれど。いい人なの。私を愛してくれているの。悪いのは私なの」

 

そんな思考の持ち主も居るんでしょうが…大抵は相手を憎み、嫌悪していくだけだろうと思う当方。何かしらの事情や、精神的な束縛に依って実際には逃げだせなくとも、心は絶対に離れていくはずだと。

 

主人公リズを演じた、エミリアジョーンズ(リズの少女時代)。ダコタ・ファニング。西部劇の時代。荒々しい男達がドンパチして。女をどこか下に見ていた時代に。気高くありたいと必死で生きた姿が印象的でした。(とは言え。どこか図太い面もありました。)

 

少女時代の。チンピラヒーローとの淡い恋。売春宿時代の親友。そんな『おかしな環境の中で見つけた、まともで大切な人』…切ない。

 

ただ全体を振り返ると…「得意とするのは変態映画部門です」と公言する映画部員当方としては正直…「もっとやれたんじゃないの~」と不完全燃焼感もありました。

 

ダコタ・ファニングガイ・ピアースで。口がきけない主人公と鋼の変態牧師の設定で。148分もあったら…もっときっちり田舎の閉鎖環境と宗教とエロを盛り込んでドロドロでかつ、込み入った話に出来たんじゃないの?」「後、あの拘束具での生活。見たい」

まあ。当方の考える様な世界観にしたら劇場公開が出来ない感じになってしまいかねず。この匙加減で正解なんでしょうが。

 

あの牧師だって『何故彼がこうなったのか』みたいな背景を入れたら蛇足になるのは必須。あくまでもあいつは悪者。一点の曇りもない。だからこそ主人公リズが際立つ。

 

ああ。そういう顛末で話を終えるのか…。でも。ある意味すっきりと潔い。

 

万人にお薦め出来るタイプの話ではありませんし、「胸悪う!」となる事必須。

観た後も、もやもやと後を引く作品ですが…当方は嫌いではありませんでした。


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映画部活動報告「キングスマン ゴールデン・サークル」

キングスマン ゴールデン・サークル」観ました。
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「マナーが人を作る」

日本では2015年公開の前作『キングスマン』。

イギリス。英国紳士御用達の仕立て屋『キングスマン』。そこに勤める者、表向きは紳士服テーラー。しかしその実態は…最強のスパイ機関の諜報員。

前作ではただの街の底辺であった若者エグジーが、いかにしてキングスマンの一員となっていくかを描いた作品でした。それが大筋でした。でしたが。

 

「これはコリン・ファースを愛でる作品」

 

『Mr.エレガント』(当方が勝手に命名)=コリン・ファース。その彼の魅力を存分に引き出して、観る者を散々に酔わせた。

「きっちりとしたスーツに身を包んで」「結局インテリって無敵なんよな」「絶対優秀な人材」「丁寧な口調で。でもちょっと茶目っ気もある」「どこまでもエグジーを見捨てない」「コリンがまさかのアクションまで?」「教会のシーン最高!」御多分に漏れず。当方も酔いに酔ったクチでした。

 

なので。今回「キングスマンの続編」という案件に。期待と。同じくらいの不安を抱えながら胸を膨らまし。

文字通り、もう幾つ寝ると~と待ちに待っての公開初日鑑賞となりました。

 

今作に関しての感想もまた、前回と同じく当方の心の中の昭和キャラ、昭(男)と和(女)に語って頂きたいと思います。

前回は、昭15歳。和お疲れアラサーとしましたが。今回は二人ともくたびれた中年設定。

場所は『失恋レストラン』にて。(作詞作曲:つのだ☆ひろ 歌:清水健太郎

 

和:マスター!『涙忘れるカクテル』作って!

昭:荒れてるなあ~。まあ…荒れるよなあ~。(溜息)

和:はっきり言って、観たかったのはコレジャナイ感が半端無かった!マシュー・ヴォーン監督は『キック・アス2』の前科があった事を思い出したよ。続編作ったらあかん人なんやって。調子乗っちゃうんやって。

昭:酔って好き放題言ってるけれど…まあ…確かに前作とは違う所に来てしまった感じがしたな。

和:実は前作だって、いかにも少年漫画的な作風だったんよね。やたら凝ったスパイアイテムというガジェット好きをワクワクさせる部分。振り切った悪役。

昭:あまりにも楽しみ過ぎて公開前日に自宅で前作のBDを観たけれど。何やろう…時が経ったからかなあ~結構チープでギリギリな世界観やなあと思ったな。

和:でも!下手したらB級なのにあそこまで昇華したのは、間違いなく『オールドキングスマン(当方の造語)』の存在故やったの!どこまでも正統派の役者コリン・ファースが締めに締めていた。あの『ハリー』というキャラクターが絶対にブレなかったから。そしてアーサー。マーリン!マーリン!(涙)

昭:マスター『涙ふくハンカチ』下さい。…そうか。そう思うと、今回こんなにしっくりこなかった一因は『ハリー』がブレにブレていたからやな…。

和:エグジーだって成長したとは思ったけれど。如何せん、どうしても軽いんよね。下品をウィットには持って行けない…若いからかなあ。

昭:その話キリが無いし停滞するから、ちょっと視点を変えてもいいかな。公開してあんまり経っていないからネタバレしにくいんやけれど…。何故舞台を英国からアメリカに持って行ったんやろう?

和:そりゃあ、麻薬界の女ボス『ポピー』にキングスマン組織が破壊されたから。そこでキングスマンとアメリカにある蒸留酒メーカーステイツマンが相互関係にあったと知って。唯一の生き残りとなったエグジーとマーリンでステイツマンを頼って行ったという筋書きでしょう?

昭:ポピーってアメリカ人なんやろう?そして麻薬使用者を人質に取って声明を出した相手もアメリカ大統領。ステイツマンだってアメリカのスパイ組織ならそっち狙えばええやん。何でイギリスのスパイ組織を潰しにいくん?

和:それは…あいつの存在故じゃないの?右手野郎の。

昭:何故ステイツマンがハリーを救助するの?人道的措置たって。状態が安定したらすぐ祖国に帰せばええやん。そしてキングスマンって、仲間の遺体回収したりしなかったりするの?意外とずさんな組織なの?

和:うわ。どんどん追い詰め始めた。

昭:そもそもキングスマンって総勢何人居たの?あのテーブルに着いて眼鏡掛けたら何人も居るけれど。実働スタメンは3~5人しか居ないやん。

和:そういうの、今回一掃されたやん。

昭:そう!それも気に喰わないんよな。今作どれだけの人員整理が行われたか。非情な粛清っぷりで。

和:前作のストーリーも結構ギリギリの綱渡り展開やったんよな。でもそれを繋ぎ止められる、どっしりと安定感のあるキャラクターとアクションがあった。

昭:アクション!(『涙ふくハンカチ』を和から渡されながら)前作のアクションは…正統派俳優のキレッキレのアクションとかが新鮮で。最後の辺りは蛇足やったけれど。何て言うか…地に足がついていた。今作はスケールが上がった分、リアリティーが一切排除された。冒頭のカーアクションの時点から人間離れしすぎていて…完全に漫画の世界。

和:兎に角、全体的に雑過ぎたし、それをフォロー出来る要素が弱すぎた。

昭:悪役も。エルトン・ジョンも…不完全燃焼やったなあ。

 

(『ポッカリあいた胸の奥につめこむめし』を出しながら)

マスター(初登場):どこか良い所は無かったの?

昭和:マーリン!!

和:兎に角マーリンが最高やった!いや、前作だって十分好きなキャラクターやったんやけれど。もう…もう!!堪らんかった!!

昭:キャラクター崩壊が随所に起きた今作で、それが唯一プラスに働いたのがマーリン。あの人間味。そして…そして!!

昭和:カントリー・ロード!!

和:泣けた~今作で唯一泣いた。

昭:(小声)だからこそ、今回みたいな復活劇は絶対に彼には当て嵌めて貰いたくないな…。

 

これ。延々と書いてしまいそうなので。適当な所で止めてしまう事にしますが。

 

キングスマン ゴールデン・サークル』正直当方は嵌りませんでした。

ですが大絶賛の声も沢山聞きましたし、感想や嗜好はあくまでも個人の自由ですのでとやかく言いません。でも。でも…これだけは言いたい。

 

「頼むから続編は作らないで!!ここで止めて!!」

 

映画部長に「あの作品世界にもうマナー紳士は居ません」と切なく報告した当方からの。心からの叫びです。

 

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2017年 映画部ワタナベアカデミー賞

今年も遂に年の瀬。例年執り行われてきた『映画部年間総括』。当方と部長二人だけの映画部部員が年に2回実際に会って会合(上半期総括と年間総括)するといったただの飲み会…がままならなくなって早1年半。

「某店長の部長。過労にて倒れる」「お忙しいから」そんな日々を経て。最早「映画部部長は存在するのか」なんて事態になりつつありますが。

最後に会った時、恥ずかしい位に酒に酔ってしまった引け目もあって。今回も具体的な日取りを言い出せず。結局ひっそりとワタナベアカデミー賞を選考。発表する下りとなりました。

 

…まあ。そんな事情はいいとして。サクサクと公表していきたいと思います。

 

2017年映画館にて鑑賞した作品。106作品(複数回鑑賞はカウントせず)。うち旧作3作。午前十時の映画祭作品3作より選考。

 

ベストオープニング賞:ラ・ラ・ランド
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辛い片思い賞:ハートストーン:クリスティアン
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舐めていてすみませんでした賞:SING/シング
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当方キュン死賞:勝手にふるえてろ 玄関のシーン
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キュンデート賞:人魚姫:チキンデート
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ナイススマイル賞:ゲット・アウト(メイド)ジョージーナ ベティ・ガブリエル
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韓国映画賞:アシュラ
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お嬢さん・コクソン・アシュラ・トンネル/闇に鎖された男・新感染より

 

ベストゴズリング賞:ナイスガイズ! マーチ
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ラ・ラ・ランド・ナイスガイズ!・ブレードランナー2049より

 

ベストエル・ファニング賞:パーティで女の子に話しかけるには
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ネオンデーモン・20センチュリー・ウーマンパーティで女の子に話しかけるにはより

 

ベストシーン賞:スイス・アーミー・マン バス~パーティ~川のシーン
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午前十時の映画祭賞:グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち
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ドキュメンタリー賞:人生フルーツ 津端夫妻
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ベストアクターアニマル:パターソン ネル ブルドック

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助演女優賞:マンチェスタ・バイ・ザ・シー 元妻ランディ ミシェル・ウィリアムズ
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助演男優賞:幼子われらに生まれ 沢田 宮藤官九郎
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主演女優賞南瓜とマヨネーズ ツチダ 臼田あさ美 
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主演男優賞:皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ エンツォ  クラウディオ・サンタマリア
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作品佳作賞:スウィート17モンスター ハートストーン パターソン
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ワタナベアカデミー大賞:スイス・アーミー・マン
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ワタナベラズベリー大賞:コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団
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やっぱり好きなんですな。何だか青臭い…そんな映画が。

『スイス・アーミ―・マン』映画館に3回通ってしまって。もう3回目は殆ど泣いていました。

 

今年は仕事が…ひっそりと終わりつつあった当方の担当部署の復活。その事で非常に職場全体を振り回し。その台風の目として回り続けた一年でした。

そういった渦中に於いて救われたのは『非現実世界』。隙あらば映画館に逃げ込んで。何とか年間鑑賞100作品台を越える事が出来ました。

(と言っても。「あれも観たかった」「これも観たかった」と思う作品は沢山ありました)

 

当方の担当部署再開に際し、僻地に一人始発電車始動で見学に向かった日(有休扱い)。非常に学ぶ事の多い有意義な日ではありましたが。そのストレスに対する唯一の光であった『アシュラ』(コップ噛みを始めとする、狂人達の宴)。

二日酔いやらのダメージ全開で臨んでしまった『クーリンチェ少年殺人事件』

「今日は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2』と『スプリット』を観ますから定時で帰らせて頂きます!」そう宣言した金曜日。

担当部署の再開に伴い。隔日職場から24時間呼び出される事になって。でも映画が観たくて。こっそりマナーモードにして服の中にスマホを忍ばせて(映画マナー違反)観た『おじいちゃんはデブゴン』。

散歩する侵略者』『ダンケルク』『三度目の殺人』をハシゴした日。

「こんなバットマンは嫌だ!」憤りながら帰ったあの日。

「げに恐ろしき『自意識の壁よ』」こじらせ系女子に悶えた『スウィート17モンスター』と『勝手にふるえてろ

エトセトラ。エトセトラ。映画部活動に関しての思い出は尽きず。

 

今年は変態映画をあまり見かけなかったなあ~と思うのと…やっぱり邦画が…あの

「アイドルや人気俳優を起用した漫画原作映画」というジャンルに未だ群がりすぎている感じがあって。さほど観れなかったですね。勿論骨太な邦画作品と良過ぎるセンスの単館系作品も沢山あったんですが。

 

『観た映画全ての感想文を書く』『観た順番を入れ替えない』『飛ばさない』このシンプルなルールは、己で決めたにも関わらず、やっぱり当方の首を何度も絞めてきて。

「書くのが得意なジャンルと苦手なジャンルがあるな」何となく気づいてはいますが。かと言ってこのルールを崩すともうこの備忘録は崩壊する事も知っていて。

 

年間100本越え。そうなると単純計算して3日に1作品は感想文を書いてきた。今年のあのスケジュールを思うと頑張ったなあ~と思う当方も居ますが。「超個人的な備忘録とは言え、クオリティーを考えろよな!」というスパルタ当方も居る。

(取りあえず長文化しているのをどうにかしろよと。考えを纏めろと。吠えるスパルタ当方)

 

…まあ。何にせよ。当方自身にとっては非常に有意義な映画備忘録となっているのですが。

 

今年度も。当方の下らない映画感想文に少しでも目を通して下さった方には、貴重なお時間を頂きまして、ありがとうございました。

 

グチグチとしょうもない愚痴も書きましたが、健康な体で沢山の映画を観れた事は本当に良かったと思います。(歳を重ねるにつれ、何事も体が資本になっていきますので)

 

こうやって年末にベスト作品を出していく作業は本当に楽しくて。それはこの一年を映画を通して振り返られるから。現実世界は良い事ばかりでは無かったけれど。でも悪い事ばかりでも無かった。そしてそれを彩る非現実世界と言う名の映画作品たち。

 

好き嫌いなんて個人差があって当然。皆が良いという作品が全く嵌らない、又はその逆もあってしかり。でもそれが面白くて。ふわふわしていて。系統立てて語れないけれど。

 

「やっぱり映画を観る事が好きです」

 

今年もありがとうございました。

 

そして。来年も沢山の作品に出合えますように。

どなた様にとっても、良い年でありますように。

 

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映画部活動報告「勝手にふるえてろ」

勝手にふるえてろ」観ました。


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綿矢りさの同名小説の映画化。大九明子監督作品。

 

「俺たちの松岡茉優が‼満を持しての主演作!!」周囲の鼻息も荒く。

とは言え特に当方は彼女押しではありませんが。(未だに『桐島、部活やめるってよ』のあのいけ好かない女子の印象が拭えない当方…根に持ってます)

 

な~んか面白そうやなあ~と。特に予備知識無く観に行ってきました。

 

24歳のOLヨシカ。中学時代から10年に渡って同級生の『イチ』に片思い。とは言え卒業以来音信不通…という事は最早リアルな相手では無くて。絶賛脳内恋愛中。

そんなヨシカの前に現れた『二』。同じ会社の営業に勤める二から唐突に告白されるヨシカ。舞い上がるけれど、どうしてもイチの事も忘れられなくて…。

 

「おいおいこういうの…観た覚えがあるぞ…って『スウィート17モンスター』やろ!」

 

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 「げに恐ろしき『自意識の壁』よ。」

 

まあ、端的に言うと『こじらせ系女子』の話。現実とは距離を置いて。サブカルにどっぷり浸かって。俗っぽい周囲を見下して。周りには私なんか理解できるはずがないといきがって。その実とても臆病で。

 

自分は劣っているんじゃないかと。馬鹿にされるんじゃないかと。そう思うと怖くて。どんどん周りとの間に壁を作っていく。そうしていつしか『自意識の壁』の中に一人残される。己で積み重ねた壁の高さは、最早自分からも他人からも視界を奪って…。

 

「そうやって孤独の世界に閉じ込められる前に現れる。彼女達を見つけ出してくれる王子様の存在」

 

「現実にはそんな奴いねえよ!!」急に荒ぶった声を上げるチンピラ当方ですが…まあ。お話ですから。(「そんなの!松岡茉優のビジュアルスペック故だ!!」背後でまだまだ騒ぐチンピラ当方)

 

14歳から24歳まで。(流石にそこまで恋を脳内で温められるのかは疑問ですが)最早周囲には実在するのかすらも疑われていたであろう、イチ。

彼への想いを噛みしめて生きていたヨシカ。そうやって自身が傷付かない世界で夢を見ていたのに。

存在は知っていたけれど。何とも思っていなかった営業の同期、二。

暑苦しいし強引な二からの唐突な告白。誰かから好意を寄せられた!初めて告白された‼その時は舞い上がったけれど…気持ちは全然追いつかない。だって…今でもヨシカの心にはイチがいるから。

 

「ああもう!もどかしい!」

 

自意識の壁に囚われ続けた当方としては…身に覚えがありすぎるけれど。

そしてこの壁が想像以上に手ごわい事も、壊すのが長期戦だという事も身をもって知っているけれど。どうしても他人事となるとヤキモキしてしまう。

 

「だって。だって誰かに好かれるって。奇跡なんやで‼」

 

勿論、誰かを好きだと。愛していると思う事は素敵な事で。でも、今の自分を好きだと言ってくれる人の存在って…肯定してくれる人って。望んだ時に都合よく現れるモノじゃないんやから。

 

イチが好き。とは言え、やっぱり好いてくれる二も気になる。

とある事件(本当にあれはやったらあかん事故です‼)をきっかけに。「イチにきちんとぶつかろう!!」と一念発起。

確かに頑張ったな~という流れからの。あの夜。

 

ヨシカと街の人たちとの関わり。まあ、そういう事だろうなあ~とは思っていましたが。かと言って「そんなに泣かんでも」とそっと背中に手をやりたくなった当方。

 

誰しもが自分の世界を持っていて。

それと現実世界との折り合いを付けて生きている。

100%思っている事を晒す必要なんて無いし、会う人全てと語り合う事なんて出来ない。

不特定多数の人に、何て事無い事を発信する事も自由だし、身近な誰かにだけそっと思いを伝えたって良い。

そのウエイトや匙加減はあくまでも自分が決めればいい事で。

まずは自分が苦しくないように。そして人を不必要に傷付けないように。

 

その他者とのコミュニケーションをどう取って良いのか分からなくて。思っている事を

何処まで晒して良いのか。引かれるんじゃないかと。だから脳内で都合の良い世界を作り上げた。

 

「そんなあんたを好きやって言ってくれるんやから。大切にしなさいよ」

おばちゃん当方の大声。あんたこれ逃したらバチが当たるで。

 

当方はねえ…年老いた当方にはねえ。二(渡辺大知)が可愛くて可愛くて仕方ありませんでしたよ。(何故かちょっと涙声)

 

「なんであんたこんなめんどくさい子が好きなん。」

おばちゃん当方はズイズイ突っ込みますが。だからこそ、最終キュン死。壮絶な爆死。

(あの最終までを持って行く下り…いくらなんでも急転直下な思考でしたけれど。あれ、本当に辞めるしかないし。当方なら恥ずかしくて復職出来ませんな)

 

イチの美しい思い出は。箱にしまって封をして胸にしまったらよろし。目の前の現実を見なよ‼どれほど輝いているか‼(しかもヨシカ24歳!若い!)

 

「ヨシカ目を覚ませ!!」ずっとそう言い続けた117分。そして。

 

「そしてまた一人、仲間が居なくなった」ふっと自意識の壁の中で空を見上げる当方。

(まあ…「こじらせ女子を救うのは、いつも恋する王子様だけかね?」と思ったりもしますが)

 

ところで。大九明子監督って『でーれーガールズ』の方なんですね!

そう知って俄然士気が上がった当方。(『でーれーガールズ』は岡山が舞台の名作。何気なく観た映画館でタオルを顔に押し当てて泣いて。そしてパンフレットを作っていない事に憤った。そんな作品)

 

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 「女子のみっともない所、大人になったら恥ずかしくなるような…でもその時は精一杯だった。そんな女子作品を撮れる監督」だと当方は思っています。

 

主役を始めメインの役者達は勿論。周りを固めるベテラン曲者俳優達の演技も。テンポの良い展開も。非常に観やすくて楽しい作品で。

 

2017年映画部活動は納めさせて頂きたいと思います。

 

映画部活動報告「オレの獲物はビンラディン」

「オレの獲物はビンラディン」観ました。
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「こんなニコラス・ケイジ見た事ない!」

 

アメリカ。実在の人物、ゲイリー・フォークナー。愛国主義者。

「一体アメリカ国家はいつまでビンラディンを野放しにしておくつもりだ!」

2001年の米同時多発テロ。その首謀者と目された、オサマ・ビンラディン。2004年になってもなお、ビンラディンの居場所を見つけられないアメリカ政府。連日の報道をテレビで見てヤキモキするゲイリー。

ある日。定例の人工透析中。「ビンラディンを捕まえろ」という神の啓示を受けたゲイリー。

「俺だ」「俺がビンラディンを捕まえるんだ」使命感に燃え。あの手この手でビンラディンが潜伏しているとされたパキスタンへの入国を目論むゲイリー。

そうして。やっと入国できたパキスタン。しかし、その国の人たちは思いがけず温かで。

 

ゲイリーをまさかのニコラス・ケイジが。でっぷりと太って白髪姿になった彼が演じた。

 

「こんなニコラス・ケイジが…って。そもそも当方はニコラス・ケイジを語れるほど彼の事を知っているんやろうか?」

 

いやいや。知りませんよ(即答)。そりゃあ、幾つかは彼が出演した作品も観てはいますが。「あの人やろ。あのいっつも顔しかめていて。目が悪いのか、ウンコ踏んだみたいな顔してる人な」残念ながらこの程度。

ハリウッドセレブの御多分に漏れず。なかなか破天荒な私生活である事も…何となく知っている程度。ですが。

「確かにこんなハイテンションのニコラス・ケイジは見た事なかった…」


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(こんなニコラス・ケイジは知ってますが)

 

実在の人物。ゲイリー・フォークナー。作中の「彼は精神疾患は持っていない」。ただ行き過ぎた愛国心故の奇天烈人物であるとの注釈に「いやいやいや」と首を振る当方。これはちゃんとした精神科医に診察させろと。絶対何か引っかかるはずだと。

「確かにアメリカ大好きなお騒がせおっちゃんやけれど。ビンラディンを憎む心情も分かるけれど…神のお告げ云々を言ったら終わりやで。」

兎に角騒々しい。ホームセンターでは片っ端から客をいじり。酒場では兵士相手にいざこざ。決着を付けるべく、ダーツで競争しようとして連れにダーツの矢を当ててしまう。

そんな「当方なら絶対に関わりたくない」ゲイリーですが。

 

まあ。基本的には悪意が全くない純粋な人物。だからこそ、破天荒なゲイリーにやれやれと肩をすくませながらも付いてきてくれる仲間達。

 

前述したホームセンターで再会した、高校時代の同級生マーシ。(また絶妙な肉付きの熟女=褒めています)すぐさま恋に落ちるゲイリー。

独身だけれど。娘を残して逝ってしまった妹の娘を引き取って。10歳の脳性麻痺車いす生活の娘を女手一人で育てる為、幾つもの仕事を掛け持ちして生活しているマーシ。

障害を持つ娘とも直ぐに打ち解けて。ゲイリーとマーシと娘。3人で仲良く生きていけそうなのに。実際何回かはゲイリーの気持ちも傾くけれど。

 

「俺はパキスタンに行く!ビンラディンを捕まえる!」

 

そうやってゲイリーの決心が揺らぎそうになると現れる『神様』。

「ずっとお前を見ているからな」「おいおい使命はどうした」。はっと我に返るゲイリー。(そっちの方が正気じゃないけれどな!…という当方の声)

 

『ヨットでパキスタンに渡る』『パラグライダーで空から降りる』等々。誰かまともな奴は周りに居なかったのかという奇策での入国を試みるけれど。勿論失敗。

そして遂に…(得体の知れないオーラで押し切って)ビザを取得。まともなルートで日本刀片手にパキスタンに渡って。

 

まあ…一言でいうと「結局パキスタンが楽しかったんやな」勿論目的であるビンラディン捜索もしてはいたけれど。現地の人達とのふれあいを存分に楽しんでしまっていたゲイリー。

 

「で?ビンラディンはどうなったの?」そこまで書いてしまうと流石にどうかと思いますので…モヤモヤと煙に巻きますが。

 

「結局ゲイリーはどうなれば納得するんでしょうな」

後からふと思い返して溜息を付く当方。

誰もが知っているとおり、オサマ・ビンラディンは2011年にパキスタンでアメリカ政府に依って発見され、殺害された。けれど。今でも「その報道はデマで、ビンラディンは生きている」という噂は聞いた事がある。

作中あった、ゲイリーへの「捕まえてどうするの?殺すの?」という質問。

「俺は引き渡すだけだ。裁くことが目的ではない」そうかなあ?首をかしげる当方。

 

「悪い事をしたのはこいつです!」自分が捕まえて。そうやって。愛すべき自国を傷付けた相手が裁きを受けるのを、自分の目でしっかりと見届けたい。

そして、自分の目で確認しなかった事は信じない。アメリカがそんなぬるい対応で許した訳がない。俺たちは世界のポリスだぞ。

 

確かにカリスマ的な指導者というのは存在するけれど。大きな争いが起きる時、そうなるべき思想の、人々の混沌とした感情は既に渦巻いていて。それが大きな一つの流れとなって行動に起こされる。流れをまとめて誘導する力を彼らは持っていたりするけれど。けれど。

これまでの戦争だってそうやって生まれ、痛みと共に終わった。争いは決して一人の人間で起こせるものではない。そう学んでいるはずなのに。

 

最悪の事態が起きた原因である首謀者は徹底的に見つけ出して潰さなければ。

 

「何かそれって…そういう考え方って。上手くいえないけれど。アメリカ人は共感したり笑えるのかも知れないけれど…笑えないよ。」もごもご歯切れが悪くなる当方。

ただ哀しくなるばかり。

 

まあ。実在の人物の行動が基とはいっても。どこまでが史実に沿っているのか。一応カテゴリーとしてはコメディに振り切っているので。そんな深刻な感じでは一切ありませんでしたが。

 

「後、こんなに好き勝手な事していたら死ぬって!」

どうやって生きて来たのか?だって隔日で透析しているんでしょう?水分調整が非常にナーバスな透析患者ががぶがぶ酒飲んで。どう見ても透析なんて出来ない環境に何度も身を於いて。そんなの、絶対無理!!透析施設ったって、その患者の情報も知らずにいきなり出来ないって!!駆け込み寺じゃないんやから!!

心の中の当方が大声で立ち上がって吠えた、『ゲイリーの透析事情』。いや、当方だって透析した事がある訳じゃないですけれど。けれど。あれってベットにしっかり寝ながらじゃないと相当しんどいらしいし。なんですか。アメリカってソファーに座って透析するんですか?

 

不良患者ゲイリー。それが気になって気になって。正直集中出来なかったです。

 

お騒がせアメリカ人、ゲイリー・フォークナー。実際の彼がエンドロールで現れた時。想像以上にニコラス・ケイジの役作りが忠実であったと感心しましたが。

 

ともあれ。当方はこれ以上、ゲイリーについて追わなくていいなと思いました。

 

映画部活動報告「ビジランテ」

ビジランテ」観ました。
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「この作品を観ずに今年の邦画を語るな!」

そんな声も聞いた、『日本単館系映画の本格ノワール作品』。

ノワール作品=虚無的、悲観的、退廃的な指向性を持つ犯罪映画(ウィキペディア先生より)まあ当方の乱暴な意訳としては暴力映画。

ノワール作品と称される映画は結構好きで。そして映画館でよく見た予告も気になって、随分と期待値を上げて観に行ってきました。

 

結論から言うと「ちょいちょい引っかかる所もあったけれど、好きな感じやった」

 

地方都市。土地の名士であった父親の日常的な暴力に、遂に抵抗しようとした幼い三兄弟。

しかしそれは遭えなく失敗。そしてその夜、長男は失踪した。

30年後。市議会議員になった次男の二郎(鈴木浩介)。デリヘル店の雇われ店長三郎(桐谷健太)。別々の環境ではあるけれど、変わらず地元で生活していた二人。しかし。

大嫌いだった父親の死。それをきっかけに30年ぶりに現れた、長男一郎(大森南朋)。

地元で都市開発事業が進む中。その土地の一部を所有していた父親。誰もが二郎が相続出来ると思っていたのに。まさかの相続権利証書(公正証書)を持って。

「絶対にこの土地は売らない」

頑として土地の権利と売却を拒否し続ける一郎。慌てる二郎。巻き込まれていく三郎。

家族の業。土地。政治。肩書き。金。店。ヤクザ。これらの断ち切れないしがらみ。そしてまさかの外国人居住者問題まで絡めて。とんでもない歯車がぎしぎし絡み合っていく。

 

そういう流れのお話でした。

 

「こういう生き方しかないんかなあ…」溜息を付く当方。地元で生きていくにしても、次郎も三郎ももっと普通の人生があったんじゃないの。

 

市議会委員の二郎。妻(篠田麻里子)と息子の3人家族。小心者で、周りにただただ流されてしまう。正義の気持ちはあるけれど「見ざる聞かざる言わざる」という行動を取ってしまう。

しがらみの多い地方市議の中で。「オヤジさんは立派な人だった」「土地の相続しっかりしろよ(そしてすぐ売却するんだぞ)」相続権が危ういとなれば「役立たず」と圧力を掛けられて。おろおろするばかり。

今作非常に高評価の篠田麻里子。『頼りない夫をあらゆる手段を取って支える妻』を好演していて。確かに当方も「おっ」となりました。

(体当たりのカーセックスシーン云々に関しては「いや…他の女優さん達、軒並み乳丸出しでとんでもない事させられてるで」と思ってしまいましたが)

「なんて頼もしいんだ…」コートを脱ぎながら歩く妻の後姿を見てそう思うけれど。それを見送る二郎の心境を想うといたたまれなくなる当方。

ところで。「政治家って…暴力団がらみで違法な風俗業をしている身内の存在ってあかんのとちゃうの?」三郎の存在は二郎の議員生命に影響は無いのかという疑問がぬぐえない当方。

 

三郎。地元暴力団がバックに付くデリヘル店の雇われ店長という、アウトレイジな世界に身を置きながらも。性根は優しくて面倒見の良い性格。店の女の子達からも愛され。

「この桐谷健太からは、確かに末っ子な印象を受けるな。そして3人の中で一番人情味溢れるキャラクター」

長男が失踪した後。想像でしかありませんが、地獄の日々の中支え合うしかなかった二人の兄弟。互いに選んだ世界は違えども、信頼の絆で結ばれていた二人。そこに現れた、所謂「死んだと思っていた」一郎。

30年ぶりに再会した兄弟。けれどそれは感動する類では全く無く。どう見ても底辺のクズ。なんだこいつ。今更どんな面して俺たちの前に出てこれたんだ。何故今俺たちを苦しめるんだ。一体何様だ。なのに。

「どうしてそういう言葉が掛けられるんだ…」どれだけ優しいんだと。後半の三郎のささやかな提案に地団太踏む当方。「こんな奴、追い出せよ!」

 

まあ。あの兄弟以外の登場人物は当方と同じ思考回路だったようなので。「こんな奴、追い出せよ!(又は消せ!)」にベクトルは振られていく訳ですが。

 

一郎。

初めに書いた「ちょいちょい引っかかる所もあったけれど~」その一つが一郎。

東京で。落ちぶれて借金取りに追われる生活。酒と薬に溺れ。女には手を上げて。およそ好きにはなれないキャラクター。(そこにはケチは付けていません)

30年ぶりに弟たちの前に現れたかと思うと、「この土地は俺のもんだ。ここは誰にも売らない」と公正証書を掲げて宣言。

「そもそも何故その土地にそこまで拘るのか?」

一応作中で語ってましたけれど…けれど。「弱くないか。それ」納得出来ない当方。

そして父親から正当に権利を譲られた…って父親と会ったって事ですよね?その下り、ちゃんと語った方が良いんじゃないの。どういう再会をしたのか。どういう流れでその土地云々になったのか。

「30年前の一郎失踪からばっさり現在に話を持ってきているから。そして回想とかも無いから。一郎の行動原理も背景もはっきりしないんよな」

だから。何だか久しぶりに現れた厄介者がひたすらごねて周りを振り回しているようにしか見えない。(それが正解ですが)

 

「何がしたいの?何が貴方の正義なの?」

 

『ヴィジランテ:vigilante』もともとはスペイン語で。和訳では『自警団』。そして「(法に依らず)私的制裁を加える人」という意味合いもある。

 

3兄弟の。誰もが真っ当な者から見たら正しい事なんてしていない。けれど。彼等には各々守りたいモノと正義がある。それがお互いにぶつかり合う時。哀しくも、破滅していくしかなくて。

 

兎に角寒かったやろうなあ~と震えた、川のシーン。非常に印象深いシーンでしたが…「わざわざ川の中を横切らんくても…迂回路(橋)あるやろう」と冷静に思ってしまった当方。そして後半の三郎よ!頼むから医療機関に掛かってくれ!辛うじて止血できたとしても、あんたその傷口から感染して敗血症とかになって死ぬよ!!

後ねえ~チャチャ入れるついでに。あのおっかないヤクザ(般若)。あの人物の怪力さと、あんなおっかない連中が騒ぐ焼き肉店で。ずっと焼き肉を食べ続けた親子。(母親と息子)

「あの親子って…あの連中の身内?には見えなかったんですけれど」息子に至っては身をよじって成り行きを見ていましたけれど。どんな鋼のメンタルを持った親子だよと。当方なら間違いなく店を後にしますよ。怖いから。

 

まあ。そんな「ちょいちょい引っかかる所もあったけれど」こんなに骨のある作品が邦画で観れたなんて、という感動。(ノワール作品は最近は韓国映画に持って行かれているなあ~と思うので)

 

確かに「この作品を観ずに今年の邦画を語るな!」という作品でした。

 

映画部活動報告「探偵はBARにいる 3」

探偵はBARにいる 3」観ました。
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舞台は北海道。探偵(大泉洋)と、その相棒兼用心棒高田(松田龍平)。

どこかだらしなくて。ススキノは庭。水商売の者は皆顔なじみ。人情味があって、時代遅れ。そんな愛すべき探偵と、飄々としていながらいざという時には頼りになる。そんな高田とのお馴染みバディシリーズ。

 

今回は、高田の後輩の「音信不通になってしまった、女子大生の彼女を探して欲しい」という依頼を皮切りに。

「こんなのすぐ終わる簡単な仕事だ」とたかをくくっていたけれど。

彼女がモデルクラブという名の高給デリヘルでバイトしていた事。そこからバックに付く危ない元締めにまでたどり着いてしまって…。

 

何だかんだ言って、前2作も映画館で観たのですが。いやあもうこのシリーズの安定感。東映だけに『相棒シリーズ』みたいな一定数の顧客が離れない雰囲気。

「結構年配の人が多いんやな…」実は公開翌日には観に行っていたのですが。大き目のスクリーンでお客さんが一杯。でも若者というよりは中高年+年配の客層が目立った感じがしました。

 

「そりゃあそうだ。だってこれ、全身の力を抜いて観れる作品やもん」(あくまで褒めています)

 

特に凝った仕掛けや謎解きがある訳でない。エロも気まずくなるような程ではない。

主人公はとぼけた愛嬌のある探偵。そこに厄介な依頼を持ち込む、どこか影のある美女。大層に騒ぎながら、愉快な仲間達と事件の真相に近づいていくけれど…。哀愁を帯びて。苦い気持ちを噛みしめながら迎えるエンディング…。

 

全くこのセオリーに則った流れで。今回も進んでいました。

 

今回。前2作から監督が交代したという事でしたが。主役二人のキャラクターも関係性も大きな変更はなく。と言うか、やっぱり大泉洋という役者の力量なんですかね。あの『探偵』というキャラクターにイキイキと血を通わせる、手練れの成せる技。

(それでも1作目と比べたら大分三枚目キャラクターになっているな~とは思いますが)

大根役者スレスレの松田龍平も高田というキャラクターにしっかり嵌っている。

そして。オネエ役の篠井英介。ゲイの新聞記者田口トモロヲ。過剰に迫ってくる喫茶店のメイド安藤玉枝。知り合いのヤクザ松重豊

これらお馴染みのメンバーも心地よい。安心して全身の力を抜くことが出来る。

 

今回。高田の後輩の失踪した彼女、麗子(前田敦子)を探すというスタートから。

麗子がバイトしていたモデル事務所にたどり着いて。下手に突っついたばかりに痛い目にあわされる、探偵と高田。でもそれをきっかけに知り合った、モデル事務所の女社長マリ。

「あれ…知ってる…」かつてススキノの風俗街で。どん底にまで落ちていたマリを記憶していた探偵。

そのモデル事務所のバックに付く札幌経済界のホープ北條(リリー・フランキー)。絶対に関わりたくないのに。飛び込んで行く羽目になっていく探偵と高田。

 

一つの小さな事件が。次第に複合的な案件と絡み合っていく。そんな流れ。

 

すっかりカメレオン役者のリリーフランキーの真骨頂、ヤクザ!というのはもう置いておいて。

 

北川景子が意外と良かった」

 

失礼ながら…北川景子には何故か危なっかしい演技をする印象があったんですが。

今回のマリという役は非常に合っていたと思いました。

 

昔辛い目に遭った。もう生きている意味なんて無い。そんな時探偵に言われた「命を燃やすものはあるか?」

時は流れ。ヤクザの元でデリヘルあっせん業を営む自分。けれど。見つけた。「命を燃やせるもの」

薄幸美人。どこか影があって。線も細くて儚げ。非常に雰囲気が合っている…合っている。けれど!!

 

「何それ」

 

マリの背景。それには全然納得がいかなかった当方。それを出したらアカン!日本映画で切り札として病気と記憶障害とタイムスリップと動物は出したらアカン!

「一気に動機が安っぽくなるんよな~」

それに輪を掛けて眉をしかめてしまった、「命を燃やせるもの」。

「それは。普通そんな『モノ』を有難く受け取れる訳ないで。」冷たい当方。だって!あんな不気味な『モノ』を渡されたら…当方なら即警察に通報しますよ。

 

そのマリの行動に説得力を持たせるなら…もっと序盤からマリのエピソードを散りばめないと。ちょっと取って付けた感が否めない。

 

「まあまあ。そんなやいやい言わんと。皆楽しく観てるやないの」

映画館で。食い入るようにスクリーンの世界に引き込まれて。あちこちから聞こえた鼻水をすする音に、己を抑え込む当方。力むなと。

 

結局またほろりと苦い気持ちにさせて。でもしっかりと最後は笑わせる。そんなお見事な終わり方。

 

「THE 邦画」

 

なのに。エンドロールはちゃんと最後まで観ないと後悔する、というMARVELの手法をしっかり取り入れて。…心憎いばかりです。