ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「バクラウ 地図から消された村」

「バクラウ 地図から消された村」観ました。
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ブラジル。クレベール・メンドンサ・フィリオ監督作品。

 

ブラジルのとある辺境の村、バクラウ。

長老の老婆、カルメリータが亡くなった。異国で暮らしていたテレサも帰郷。カルメリータの葬儀には村中の人が集まった。

そこからが不可解な出来事の始まり。突然インターネットの地図上から村の存在が消え、大切な給水車のタンクが襲撃された。滅多に来ないよそ者が現れ、そして村人が殺された。

一体村で何が起きているのか?誰が何の目的で村を攻撃しているのか?

 

「一体何を観せられたんだ…」思わずそう呟いてしまう。とんだ怪作。

 

そもそもブラジルという国がどういう所なのかが良く分からないのもあって…多分相当なセンスが光っている作品なんでしょうが、これがどこまでウィットの効いている話なのかが当方には不明(賢いフリは出来ません)。

「まあ確かにこういう…言い方がアレやけれど…田舎はちょっと不衛生で土着文化があって、というコミュニティーが存在しそうな感じがある」。

こんな風に持って回った言い方をするのは何だか適切じゃない。そもそも言いたい事が伝わらない。

 

「つまりは。どうせ田舎の土人だろうと舐め切って潰しに行ったら、とんでもない戦闘力を見せつけられた」という事ですか。

 

長老の老婆が亡くなった。村人総出で送った葬式の場で異常な取り乱し方をする女医。

広場で音楽を流すDJ。大ぴらな性風俗。何かと歌いだす老人。

村人から総スカンを食らっている政治家。どうも彼のせいでこの村はダムをせき止められ水は貴重らしい。

突然現れた白人のライダーカップル。ただの旅人だというがどうも怪しい…何だかぎこちない。彼らはあくまでも旅の休憩地点だと言い張り、早々に村を後にした。

そして村人の乗るバイクの後を付けてくるUFO…UFO⁈

 

終始ブツ切りで進行する物語。「ああ。こういう辺鄙な村ではこういう事もあるのかもしれない。」「ずっと暑そうな場所で水が十分じゃない所はな~」「あれ~なんか結構皆さん脱いでおられる。思いっきり裸ですけれど。R15+で大丈夫~?」「え。ていうかUFO⁈」

コロコロ変わる視点。次々現れる変わったキャラクター。纏まりのない展開に、いちいち「こういう事もあるのかな~」どうにかこうにか誰かに感情移入できやしないかと思うけれど…毎度毎度肩透かしを食らってしまう。でもねえ、これ終始こんな感じで突っ走るし…それがだんだん面白くなってくるんですわ。

 

「UFO⁈」という面白物体に「もしやB級SFモノか‼」と思わずワクワクしてしまいましたが…流石にそれはなく…。

 

つまりは…と説明出来る気もしませんので、感じたままを。

「何にも考えるな。楽しめ。」

 

ブラジルの辺鄙な村。観光資源もなく、ただただ田舎なだけのさびれた村。

とはいえ村人の生活水準は極端に低い訳ではない。何しろ彼ら、インターネット使えますから。意外と近代的。

ところが。謎のライダーカップルに妨害電波装置を設置され。携帯電話でのやり取りが不可になった。加えて停電。

村人皆殺しを企てる謎のスナイパー集団。元軍人?傭兵?警察?ただのサイコパス?いわくありげなイカレた連中が狙う相手は…とびきりイカレた村人たち。

 

終盤の割と残虐な殺戮シーンにはただただ乾いた笑いが止まらなかった当方。そうよな~何も小難しく考える必要なんて無いよな~。

 

オープニング曲と映像から既に「これは古い映画のオマージュかな」というテイスト。

舞台はブラジルなのに西部劇っぽい。徒党を組んで乗り込んでくるやつらを村人が退治するなんて七人の侍みたいでもある。

物資という手土産を持って媚にくる政治家に総スカンを食らわせる村人たちや、けれど政治家が去った後皆で山分けしている風景。

結局この村の消滅を企てた黒幕とは。

多分…分かる人が観れば分かる、今のブラジル社会に対する風刺みたいなのが差し込まれまくっているんやろうな~。事情が分からん当方は何となくその雰囲気しか察する事は出来ないけれど。

 

「ただ。根底にある精神の野生的なことよ」。

やられたらやり返せ。この村にある歴史記念館の物騒な展示物。どうしてよそ者たちは誰もそれを見なかった。この村人たちにはこういう血が流れているのに。強いぞ〜。彼らは強い。

時代は進んだけれど…歴史は繰り返された。

 

まあ。結局何の予備知識もなく観に行くのが正解。最終的にどう感じるのかは個人差があるとは思いますが…この最後の最後まで続く「誰の視点にも立てない」肩透かし感はだんだん面白くなってくるし、そして鑑賞直後おそらくまず思う事。「一体何を観せられたのか」。

 

政治家が持ってきた鎮痛剤?が怪しいと村人に説明していた女医。じゃあ村人たちが皆飲んでいた同じ薬は一体何だったんだ。アンタが処方してんでしょうが。もっとヤバい何かじゃないの。そうなると一体あのスープは何だったんだ。危ないな。

 

当方が思わず声を出して笑ってしまったシーン。温室と藁の屋根がある植物に囲まれた家に住んでいた夫婦。「いやいやアンタら…そういう所やで!」余りにも自然体。

 

カンヌ国際映画祭で高評価だった作品。この作品の持つセンスと本当のウィットを当方は知る由もありませんが…頭を空っぽにして観に行っても十分楽しめる、それでいいと思っています。

 

(バクラウまで17km)
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