ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ミスター・ガラス」

「ミスター・ガラス」観ました。
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M.ナイト・シャマラン監督作品。

2010年公開『アンブレイカブル』と2016年公開『スプリット』の続編。

 

「貴方達は自分は特別だと思っている。」「特殊な能力を持っている、周りの人間とは違う。そういう選民意識を持っている。」「けれど」

「この世に特殊能力など存在しない。貴方達はただの誇大妄想を持つ精神科患者です。」

明らかに常人と違う能力を持ち、それを自覚している者が第三者にそう言われたら?

 

アンブレイカブル』。未曽有の大惨事を引き起こした列車事故の唯一の生存者、デヴィット・ダン(ブルース・ウィリス)。彼はその事故を境に不死身の体と悪を感知する能力を得た。そして事故の犯人である、ミスター・ガラス(サミュエル・L・ジャクソン)。骨形成不全という難病を持ち、わずかな衝撃で骨折してしまう非凡なIQの持ち主。彼等の物語。

 

『スプリット』24人格を持つケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)と、彼に誘拐・監禁された女子高生の物語。

 

M.ナイト・シャマラン監督と言えばやっぱり1999年公開『シックス・センス』。良くも悪くも彼の代表作。以降公開される作品の評価は浮き沈みが激しく…どちらかと言えば沈む時代が長く続いた。(当方も離れた場所に居て…だから正直『アンブレイカブル』は未観でした。)

2015年。『ヴィジット』。あの「お婆ちゃん、ボケてるの?それとも…」というクッキーモンスターに「シャマラン死なず!」と復活を感じ熱くなった当方。

 

そうして満を持して迎えた『スプリット』。多重人格者ケヴィンが最高過ぎて…「おいおいマカヴォイ!マカヴォイよ!!」ニヤニヤ笑いと愛おしさが止まらず。

まさかの続編と聞いて。勢い勇んで観に行った次第。そして。

 

「結論から言うと。最高でした。」

 

前作『スプリット』以降。女子高生を誘拐・監禁したのにも関わらず、警察からの逃亡に成功したケヴィン。新たに若い女の子(チアリーダー)数名を誘拐・監禁。

女子連続誘拐事件の真相を探るべく街をうろつくダン。めぼしい工場近くでケヴィンと遭遇。接触した際、自身の特殊能力から「こいつが犯人だ」と直感する。

ケヴィンとダン。死闘の結果、二人とも警察に逮捕され、精神科施設に収監された。

そこで久しぶりに顔を合わせた、ダンのかつての宿敵ミスター・ガラス。

「貴方達は自分を特別だと思っている。けれどそれはただの誇大妄想よ。」

精神科医ステイプルは三人を集め。各々の特殊能力に対して『証明』を行っていくが。

 

「え?俺鉄格子曲げられるんやけれど。」「それは老朽化の進んだ建物だったでしょう。」「指の力で壁をつたい、駆け上がれるけれど。」「そういう人も居るわ。」

のらりくらり。超人を前に滾々と「貴方はただの人だ」と切り捨てていくステイプル。

24人格を持つケヴィンの中の常識人を呼び出し「貴方達が強いと思っているキャラクターが、実は全然大したことなかったら?」と畳掛けてくる。

車いすにぐったりと沈む無言のミスター・ガラスの表情はうかがい知れないけれど。この集団面談で打ちのめされるケヴィンとダン。

 

これは…昔話題になった元カリスマロックバンドヴォーカル洗脳事件みたいやな…そう頭をよぎった当方。『お前は顎長野郎だ』『俺は顎長野郎だ』『お前は無能だ』『俺は無能だ』『お前は一体何者だ』『俺は無能な顎長野郎だ』

皆から一目置かれる存在であるけれど、一抹の不安と違和感を感じていた。そこに付け込む輩。存在を否定し、特殊性など無いと自尊心を叩きのめし、思考力を奪っていく方法。

 

「いやいやいや。見ただろう?俺たちの力を。」

 

24人格の内、超人的なキャラクターを有するケヴィン。不死身と悪を感知する能力を持つダン。非凡なIQを持つミスター・ガラス。三者の力は決して思い込みや偶然ではない。

 

M.ナイト・シャマラン監督世界の超人三名。一体彼らがどう重なって、反発して…結局向かい合って叩きのめさなければならない相手は誰なのか。

 

そして何故、精神科医ステイプルは頑なに彼らの能力を否定するのか。

 

一応ネタバレしない方向性でやっていますので。ふんわりさせていきますが。

「シャマランと言えば最終どんでん返し!」長らく言われてきた流れがありました。

確かに今回もひっくり返ってはいましたが…それは言うならば『オセロで四隅を取って、倒していく』感じ。ドミノ全倒しの様なカタルシスと派手さはないけれど、徐々にひっくり返っていって、試合が終われば殆ど一色に塗り替えられていた。そういう感じ。

 

「そうやな~。全ての人が世界に発信できる手段を持つ今。秘密を持つことは不可能なのかもしれないな。」(観た人にのみ分かる、意味深な発言)

 

ところで。ブルース・ウィリスサミュエル・L・ジャクソンジェームズ・マカヴォイ。米俳優の中でも超大御所ベテラン俳優たちの競演。面白くないはずはないのですが。当方はやっぱり前作からの「マカヴォイ無双!」。24人格を演じ分けられるマカヴォイから目が離せず。(なのでああいう展開に「テールラアアイ。テールラアアア~」と脳内中島みゆきが鳴りやまず)

 

その他「お話とは言え、あの精神科施設のセキュリティ雑過ぎる。あくまでも相手は凶悪犯やろう?」とか「散々『オオサカビル』がどうとか言ってましたけれど。結局施設の庭で最終決戦て。」「ところで『オオサカビル』って何?『あべのハルカス』から取ってるんですか?」気になるところは幾つもありましたが…ご愛敬という所で。

 

M.ナイト・シャマラン監督の、愛すべき超人キャラクター達の最初で最後の競演。香ばしい設定と抵抗勢力三者三様に見せ場も作って。

「貴方だ~たんだ。貴方だ~たんだ。嬉しい。楽しい。大好き!」

全てが愛おしい。かなり好みな作品でした。
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