映画部活動報告「サバービコン 仮面を被った街」
「サバービコン 仮面を被った街」観ました。
1950年代のアメリカで起きた人種差別暴動をモチーフとして。
『アメリカンドリームの街、サバ―ビコン』郊外の。インフラも整備され、人々も大らかで暮らしやすい。そんなうたい文句の街。しかしそれは『白人の街』だった。
そんなサバ―ビコンに、黒人一家が引っ越してきた。街の住民達は動揺、嫌悪感が抑えられず…。
それなりに地位のある職に就いているガードナー(マット・デイモン)、足の不自由なローズ(ジュリアン・ムーア/2役)、一人息子のニッキー。3人で暮らすロッジ家。
ローズの双子の姉マーガレット(ジュリアン・ムーア)はしょっちゅう自宅に一緒に居て。何てことない、平凡な一家…だった。例の黒人一家が隣りに越してくるまでは。
隣家に対する、住民達の刺さるような視線を感じる中。母親ローズだけはニッキーに「お隣の子と仲良くしなさい」と勧め。丁度同じくらいの年頃の息子とキャッチボールを始め、友情を深めていくニッキー。
しかしある夜。ニッキーの日常は食い破られる。
深夜。押し入った強盗にロッジ家一同が襲われ。ローズが命を失ってしまう。
残されたガードナー。ローズの姉マーガレット。ニッキー。三人での暮らしが始まるが。
まあ…はっきり言うとガードナーとマーガレットがデキていて、邪魔者ローズを街のゴロツキに委託殺人をしてもらった、という話。
そうして手に入れた新生活に正直ウキウキしている二人。特にマーガレットに至っては、元からロッジ家に入りびたりだったけれどすっかりローズのポジションに収まり。髪の毛もローズと同じ金髪にして、明るい色の洋服で着飾って。新婚気取り。
けれど。そんな大人二人の姿を終始怪訝な顔で見ているニッキー。
強盗が押しいった時、彼らの顔をしっかり見ていたニッキー。後日警察で面通しに呼ばれた時。間違いなく犯人がその中に居たのに「知らない」と言い切った父親と叔母。
明らかに浮ついてラブラブな二人。
父親と叔母に対する不信感をニッキーが募らせて行く中。同じくサバ―・ビコンの住民達は「あいつら(黒人一家)が越してきてから治安が悪くなった」とロッジ家の強盗殺人事件に絡めた見解を下し。
「この街にニガーは要らない」「出ていけ」日に日に住民達の嫌悪感は剥き出しになっていって。暴動へと発展していく。
「何か…中途半端やなあ~」
鑑賞後。腑に墜ちなくて。何回も溜息を付いた当方。
まあ。歯切れが悪くぼそぼそ書いていきますが。
「ジュリアン・ムーアがいい加減こういう『若奥さんに収まる』という年齢じゃない、という事は…とやかく言わんようと思うんやけれど…(次第に小声)」
(ジュリアン・ムーア57歳。まあ日本でも、いつまでも『幼い子供を持つお母さん役』の女優さんっていますけれど。いますけれど…)
ジョージ・クルー二―の監督としての手腕、それを見抜く力なんて大それたもの、勿論当方にはありません。ありませんが…でも演出の妙って奴、感じなかったですね。
そしてそもそも脚本事体が変。
コーエン兄弟の作品全てを知る訳ではありませんが。『何だか奇妙で変わっている』ファンの多い脚本家。そこに今回ジョージ・クルーニーも共同執筆したと。
これを言っては話にならないのは分かっていますが。「何故委託殺人の時点でニッキーも殺さなかったのか」
「いやいやいや。彼らは妻のローズが邪魔だっただけで、子供憎しというタイプでは無かったですよ!」分かりますけれど…二人の新生活の相当な足かせになっていたじゃないですか。
「それなら何故、強盗に襲われた時寝ていたニッキーも叩き起こして同席させたんですか?あれ、相当リスキーやし意味無くないですか」
本当にそれ。理解出来ない。ニッキーが子供っていっても、何も分からない程幼い訳じゃ無いし、実際に犯人の顔を覚えていた。「あくまでも一家全員が襲われ、そして不幸にもローズのみが命を落とした」という演出の為?別にニッキー寝ていても良いじゃないですか。大人三人で談笑でもしていた時に強盗に押し入られた、という事で。
そして。折角(という言い方はアレですが)黒人家族に対する人種差別暴動という題材を扱っているのに。ロッジ家の、渦中に置かれた隣家に対しての関心が無さ過ぎる。
まあ、自宅の騒ぎの方が大変だという事も分かるし、もしこの問題をクローズアップしたら話の焦点がどんどんズレて違う作品になってしまうのも分かる。
『隣合わせの二家族に。同時期に起きていたとんでもない事件』という対比をしたかったのも分かる。分かるけれど…何だか上手くいってない。
そして。話のテンポやどこか間抜けな大人たちのキャラクター設定。コミカルでブラック。そんな雰囲気に薄っすら『ウェス・アンダーソン作品』っぽさを感じた当方。
(あの。病的なまでに整った絵面と独特のテンポ。不器用なキャラクター達が織りなす不気味でキュートな世界観。注:褒めています)
似ている。けれどあそこまでビシッと世界観が決まらない。何だか全てが中途半端。
散々文句を言いましたが。個人的にはマット・デイモン演じるガードナー、良かったです。
マーガレットとデキて妻を殺す。そうして手に入れた生活。けれど委託したゴロツキに払う金など無い。案の定ゴロツキ達に追い回され。
妻の保険金を目当てにしていたのに。保険会社はなかなか金をくれない。それどころか保険担当者は厄介な事を言い出した。
妻が居なくなってから、子供も邪魔になってきた。
もう、何もかもが嫌。
一つ無茶をしたことで、次々足元を掬われて。そうなるともうやけっぱち。
墜ちていくガードナー。堪らん。
(後、ニッキーに「寄宿学校に入れ」と自室で命令していたガードナーの背後に写っていた水槽。その中にあったモチーフ?空気を送るやつ?宇宙飛行士のフィギュア?あれ、何なんですか。地味に気になって釘付けでしたけれど…)
突っ込みまくっていた1時間45分。そう思うと意外と楽しんでいたんだなとも思いますが。
ところで。この作品はその日のスケジュール上、あまり普段行かない映画館で鑑賞したのですが。
「何故。当方の隣に座るカップル(推定20代)のカップルは終始いちゃついている⁈この作品ってそういうムードになる要素一切無い気がするのに‼そして一体?一体どちらがこの作品を観ようと思ったのか??」
「この二人、何かおかしい」
劇場ポスターのキャッチコピーを、何回も脳内で繰り返した当方。