ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ローサは密告された」

「ローサは密告された」観ました。
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フィリピン。マニラのスラム街。

ローサとその夫、息子2人、娘1人の5人家族。

雑貨屋を営むローサ夫妻。飴を売り。雑貨を売り…そして麻薬を売って。

大して稼げる訳でも無いけれど。麻薬売買の売り上げ込みで細々と生計を立てていた。

ある雨の夜。何者からか麻薬の売人だと密告され、捕まったローサとその夫。

何もかも終わったと。連行された警察署で起きた、信じられない出来事。

 

「何だかもう…凄まじいで!」という先人たちの感想を聞いて。思わず観に行ってしまいました。そして。

 

「ええと…これは何処までリアルだと認識したらいいのか」困惑する当方。

 

語彙力が無い故に。暴力的な物言いになってしまいますが…一言で言うと兎に角民度が低い所で。

きったない雑貨屋を営むローサ夫妻。駄菓子。雑貨。でもそれだけでは無い。ローサの雑貨屋では麻薬も売ってくれる。

勿論非合法。でも。周りに住む人たちは皆知っている。ローサの店で麻薬が買える事を。遠方からも麻薬を求めて来るけれど。顔なじみから麻薬を買う集落。大したセキュリティも施さず。麻薬が余りにも無自覚に身近。ローサ自身は麻薬を売買するだけれど。ローサの夫は立派なジャンキーになっている。

 

日常故に罪の意識なんて微塵も感じず。そんなある日。摘発されたローサ夫妻。

 

子供の前で逮捕。連行。それだけでも十分ショックなのに。ご近所さんにも思いっきり見られながらの逮捕劇。(日本ならそれだけでも一家転居案件)なのに。

 

「私たちは知りません」「麻薬を売りにくる売人が居たから、店に置いただけ」とシラを切ろうと?するローサ夫妻。ところがところが。

 

「曲がった事は大嫌い!」なはずの警察官が。

警察署…と思いきや。何だか施設の周りをぐるっと回った所にある裏口に案内。

そこをくぐると…そこは裏警察署で。

 

そこで「ええと。これは何処までリアルと認識したらいいのか…」再び困惑する当方。

 

大して社会情勢に明るくない当方。

確か現フィリピン大統領のドゥテルテ大統領。学の無い当方はきちんとした言葉では解説出来ないのですが…つまりは「麻薬の取引売買やら使用した奴、はその場で死刑な!」というおっかない政策を打ち出していて。

「麻薬に手を染める様な人間はあかんやつやけれど…それは極論ちゃうか」と世界的にひかれていた…と当方は認識しているのですが。

 

「確かにきつい政策やけれど…もしこういう実態が横行しているのであれば…個人的には分からなくはない…」ひっそりとため息を付く当方。

 

と言うのも…警察側も十分に腐っているから。

「捕まって豚箱に行きたくないだろう。じゃあ俺たちが提示する金を準備するか、お前たちに麻薬を売っていた奴を教えろ」末端警察官達からの、まさかの司法取引が開始。捕まる訳にはいかないと、すぐさま自分たちに麻薬を卸していた売人を売るローサ夫婦。(自分たちもそうやって密告されたのにな…)

そして。速攻その売人を警察は捕まえたけれど。またも売人にも同じ話を持ち掛け。結局は全員同じ穴のムジナ。

結局は、ローサ夫妻も警察に賄賂として金を位支払わなくては裏警察署からは解放されないと知って。

 

どこまで行っても「麻薬・駄目・ゼッタイ」という流れにはならないんやなあ。そう思ってうんざりする当方。そりゃあ現職大統領が「麻薬に関わった奴は即死刑な!」と言いたくなるかなあと。そう思えて仕方なくて。

 

そこからは、警察からげんなりするほどの「釈放されたければ金を作ってこい」の繰り返しなんで。黙ってムカムカするばかり。

 

「本当の、親のあるべき姿」当方は誰の親でもありませんが。

そもそもの麻薬売買という犯罪に手を染める気がしませんが。とは言え、リスク(捕まる)は承知なはずで。

だとしたら、捕まった時には、本当にやっていたのならばあっさり認める。

(「罪を償う=死」という犯罪ですし、実際にはどういう行動を取るのか。はっきりしませんが)

警察に捕まって連行されるという失態を犯した地域にはもう住めない。

でもやっぱり、釈放されて娑婆で生活したい。犯罪者にはなりたくない。とはいえ。

真顔の当方。「だからって、当方の子供達に。当方の尻拭いをさせたくない」

 

まあ。致命的な犯罪を犯した事はありませんので。何とも言えませんが。

 

ローサ夫婦にとっての麻薬売買に関わった重さは、『遂に今夜捕まってしまった』『捕まってしまった』『抜け道無いかな~』『警察官に釈放するなら金を払えと言われている』『本当に嫌だ。これも麻薬販売に手を染めたからだ』『やらかしたな~』『娑婆に戻ったらもう止めておこう』という程度。(作中でこういう発言はありませんでしたが)

 

麻薬が人間の尊厳と命を脅かすモノで。それと引き換えに得られるモノもあるみたいやけれど。誰もコントロールも制御も出来ない代物。だから取りあえず多くの国で麻薬の一般流通は認められない。麻薬を知る事で失われる理性。人間性。それをローサ夫婦も、恐ろしい事に警察官も分かっていない。

 

ローサ夫婦の3人の子供。「お父さんとお母さんを釈放するためにお金を作って来て」

嫌すぎるミッション。ある者は自室のテレビを警察に売って。ある者は親に言われた通り親戚中に頭を下げ。ある者は自らを売って。そうして三者三様に金をかき集める子供達。険しい顔をして追う当方。つくづく嫌になってしまうシーン。

 

「結局この作品は、どこの誰に向けて作られたんやろう…」途中からふと思う当方。

 

治安や地域差があると言え。この監督は結局、誰に向けてどういうメッセージを送ろうとしたんやろう。国内?…どちらかと言えば国外向けな感じもする(あくまでも当方の私見)

 

「パンフレット買えよ!」何をいってるんだと。お叱りの声が聞こえてきそうですが。

 

「フィリピンスラム街の実態?」それは確かに何処までの再現度なのかは分からないけれど。ベースとしては伝わる感じがした。でも。ローサ達を「そこで逞しく生きる人々」とは言い切れなくて。。全然綺麗ごとじゃないんで。

 

「麻薬を無自覚に売る雑貨屋夫婦」「近所ではすっかり有名な麻薬斡旋の店」「摘発」

「腐った警察とのやり取り」「子供たちのお金の集め方」これらは当方の様なフィリピンの事を知らない者の方が「そういう実態があるのかな」と飲み込みやすい気がする。

だからといって「そういう現実社会を見せたかった」と言うのは安直な気がして。

答えは自ら探さないといけない。

 

「それでも生きていく」

ローサが最後に見せた表情。それは絶望なのか。何なのか。「思えば遠くに来たもんだ」なのか。どちらにしても。

 

この単純な様で奥まった世界観。ドキュメンタリー風の緊張感。

 

「フィリピン映画ってあんまり触れる機会がないから。今回こういう何の飾りつけも無い作品から受けるインパクト。今後も出来れば観てみたいかなあ」

 

今回、モヤモヤと結論は出ませんでしたが。また機会があればフィリピン映画、観に行きたいです。