映画部活動報告「すばらしき映画音楽たち」
「すばらしき映画音楽たち」観ました。
「ああこれ。あの映画の…」
その音楽を聴く時。思い出す『あの映画』。そして。
映画を観ている時。目の前のスクリーンに広がる世界。やはり一番多くを語るのは画。役者の演技。そしてそこまで自身を連れて行ってくれたストーリー。けれど。
その時高揚し、緊張させ、胸に込み上げてくる感情の後押しをするのは、そこに流れる音楽。
「敢えて一切の音楽を排除した」映画も存在するけれど。やっぱり映画に於いて音楽の存在はかけがえが無い、そう思う当方。
そんな映画音楽についての。映画音楽に携わる人たちのドキュメンタリー映画。
予告でその存在を知った時から。これは絶対に観るべきだと確信し。そして公開後数日で。いそいそと映画館に向かった当方。
「93分?短い…もっともっと。もう永遠に観ていたかった。」満たされ…でも求める当方。
『ダークナイト』『パイレーツ・オブ・カリビアン』もう挙げればきりがない、30年以上トップを走り続ける巨匠のインタビューを始め。
「あんな作品も?」「こんな作品も?」メジャー所に寄っている感は否めませんでしたが。凄まじい作品群とその音楽の応酬。観ている者を引っ張りまわし。
「映画には常に音楽が一緒に居た」「無声映画時代であっても、映画館にはオルガン奏者が居て。決められた音楽、又は即興で音楽が付けられた」
「即興?!」また…そのオルガンの「うへえええ」という難解さ。
(当方にはとても説明出来ませんので、パンフレットの裏表紙を撮ってみました)
そうやって映画を楽しんでいた時代を経て。映画に音が入った時。映画音楽も誕生する。
「もし音楽が無かったら。何も怖くないし、安っぽく見えてしまうでしょう。でもね。音楽が付く事で恐怖感が出てくる。」
例えば、ヒッチコック『サイコ』『めまい』。この座りの悪い不気味さ。モノクロ時代の『キング・コング』の迫力を引き上げたのは音楽。これらがもし無声であったとしたら?
映画音楽創世記から、現在に至るまで。流行りすたりはあれども、映画作曲家達の目指すものは一つ。『その映画の世界にマッチする事』(こういう言い方はしていませんでしたが)
「映画監督の多くは、自身の世界を音楽では語れない」けれど。撮り終わった後のその作品に生きた感情を付加するのには音楽は不可欠。
撮り終わった作品を監督と一緒に観て。監督から「これはこういう気持ちで」「こういうイメージで」そんな漠然としたイメージを作曲家たちはすくい上げる。恐らくその映画をイメージしていた時、実際に映画を作っていた時、監督の頭に流れていた音楽を再現するために。
でもそれは。往々にして監督の想像を遥かに超える。その時の監督たちの笑顔がまた。
(エンドロールのエピソードも至高)
とはいえ。どんなに手練手管の作曲家たちだって、新しい作品に向かう時は戦々恐々。「全然浮かんでない」「逃げ出したい」「出来ていないのにもう看板は出ているんだよ」怖いんだと。そして実際に映画が封切られてから。近くのシネコンにそっと足を運んで。トイレに籠って、鑑賞後鼻歌を歌いながら入ってくる客に嬉しくなって。
楽器だって。「それ何?」と目を疑う様な民族楽器から。おもちゃの子供ピアノから。吹きっ晒しの屋外のピアノから。かと思えばスタジオ環境に依って(素人には全く違いが分かりませんが)音が変わるというオーケストラ演奏から。
「兎に角映画世界に合う音楽作り」のあくなき探求。舌を巻くばかり。
(そしてそのオーケストラスタッフのプロ感。まさか楽譜を初見で演奏しているとは!)
(「そりゃあ、映画やから…」と言っては終いですが)この作品には本当に多くの作曲家や携わるプロや評論家が出てくるんですが。気持ちいいばかりに互いをリスペクトしあっていて。それが気持ちいい。
「あの映画ではやられたよ」「ああいう事が出来るなんてな」「彼は偉大だ」(一番震えたのは「オーケストラが演奏する『レッド・ツェッペリンだ』のフレーズでした)勿論個々のオリジナリティはある。でも。どこかで聴いた誰かの作った音楽を意識している時もある。それはどこか仕方ない…だって。互いに『映画に寄り添う音楽』を作っているのだから。
映画に於いて音楽は寄り添うものであって、決して音楽だけが突出してはいけない。
「なんかうるさい映画だな」となってはお終い。
なんて。何だか分かった様な事をだらだら書いてしまいましたが。
この作品は兎に角「ああ。あの映画の…」
それが余りにもひっきりなしで。観ていたら胸が熱くて。
『E.T.』が。『ジュラシック・パーク』が。『スター・ウォーズ』が。『ダークナイト』が。『マッド・マックス』が。『バック・トゥー・ザ・フューチャー』が。『インセプション』が。その他…もう出てきた中で知っているあらゆる映画が。その時観た環境や思った事。どういう感情が押し寄せたのかがどっと押し寄せてきて。
しかも。映画とは関係が無い、あの時胸を痛めていた…今の当方にとってはちっぽけで、でも当時は真剣に悩んでいた事。そんな事なんかも記憶には付いてくる。げに恐ろしき、音楽の力よ。
「子供の頃。何でか車の中に『西部劇のテーマ』というカセットがあって。よく父親と聴いたな」西部映画を殆ど知らないのに。そんな事を思い出して。懐かしくて。
まあ。映画好きなら観て損する事は絶対無い。そう言い切れる作品。プロたちが見せてくるお仕事映画ジャンルではありますが、言葉に出来ない高揚感に包まれる。そして「あなたの映画音楽は?」と聞きたくなる。
当方ですか?言い出したらキリがありませんが。原点はこれだと思います。