ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「無伴奏」

無伴奏」観ました。

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直木賞作家小池真理子の半自叙的恋愛小説が、時を越え映画化。

1969年仙台。学生運動の盛んな時代。
女子高生の主人公も、学校で真似事の運動をし。
そんな時、バロック喫茶で出会った大学生に惹かれていく。

主人公を成海璃子が。大学生を池松壮亮が演じる。

当方が何故この映画を観たのか。

成海璃子の初脱ぎ?
当方の火野正平枠、池松壮亮のエロ?
セクシー俳優とかいう、有り難くない呼ばれかたをしている斎藤工のエロ?

何だか随分とそこを前面に押し出して宣伝していた様な気がしましたがね。
(って言うか…ネタバレじゃないのかね。あかんやろうそれ)

普段、物静かなビシュアルとスノッブに見せている当方の、その実エロな内面。(…我ながら一体何を言っているのか)

見くびって貰っては困りますよ…って。

この小説を読んだからですよ。
多感な高校生の時期に。

出版された当時に当方は生まれてはいませんが。自宅の本棚にあったので、読みました。

感想の詳細は覚えていませんが。

女子高生が背伸びをして大人の世界を覗こうとして、痛みを伴いながら大人に成っていく姿。そして純文学とライトノベルって表裏一体だなあと思った様な…。

でも。学生であった時代なんて随分後にしてきた現在。いわゆるつまんない大人になった、現在の当方が観て思う事。

「皆子供だなあ」

そもそも1960年代の学生運動に付いても「所詮は一過性の遊びだ」と冷たい当方。
あの時代の事を何にも知らないじゃないかと言われればまあ…そうですけれど。

「社会に飼い慣らされた大人になるな云々」皆が集まる場所で騒ぎ。ビラをばらまき。…でも、衣食住がきちんと確保されているじゃないの。親から仕送りされて。バイトすらしてないじゃないかと。

女子高生だけでは無い。あのすかした大学生達も。
大学にただ席だけ置いて、昼間っから酒飲んでタバコ吸って。いちゃついて。世の中を憂いて。

「自分で金を稼いでから言え」「それが出来ないなら、やるべき事(せめて学校には行くとか)をやれ」「話はそれからだ」

ああつまんない。でも、残念ながらそれが大人という視点なんですよ。

夢や主張だけでは御飯は食べられないですからね。

自分のやっている事は猿真似だと悩みながらも、もやもやする気持ちを大人にぶつける女子高生。年上の大人びた世界。
初めて知った、誰かを好きになるという事。好きな人をもっと知りたくて、自分だけのものにしたくて。

余談なんですが。作中のキーポイント曲。バロック喫茶で流れる「カノン」。

「中学生の合唱コンクール

当方の中学校では、毎年各学年毎で合唱コンクールがあったんですよ。

二年生の時の課題曲。それが「遠い日のうた(カノンより)」

「人はただ 風の中を 迷いながら 歩き続ける」懐かしい…。

ところが。問題はクラスで選んだ自由曲「野生の馬」

他のクラスが「あのすばらしい愛をもう一度」「カリブの歌」等の、愛だの希望だのを歌う中、ただひたすら野生の馬が力強く走る様を歌う当方のクラス。

「野生の馬は 野生の馬は 何故 か け て い く」「駆けていく~」「ダンダダダダダダダダダダ ダンダダダダダダダダダダ」

まあ…。あまりにも馬の走る様をだけを歌う、そのシュールさにハマったから選んだだけ…というクラス満場一致のネタ曲。

面白がり過ぎて、皆思いがけず力一杯の合唱。逆に完成度が上がり、まあまあいい成績に終わった気もする。

そして時が過ぎて。中学校の卒業式。

卒業証書授与。流れる一、二年生の時の合唱コンクールの歌達。穏やかなカノン。夢や希望や儚い恋の歌に紛れ。流れる野生の馬。クラス一丸になってのハイテンション。割れる音。しんみりムードぶち壊しの野生の馬。皆の苦々しい表情。

「筋肉の躍動 胸~に~」「躍動胸に」

…何故?録音装置の近くに居たのか?当方には分かる。当方には聞こえる。狂った当方の猛々しい声が。

「どこまでも どこまでも 駆けて~い~く~」

馬鹿話はここまでにしますがね。

つまりは、カノンが流れると当方はセットで野生の馬が脳内再生されるんですよ。もう今回の映画もおちおち浸っては居られない。時空を越えてのネック。

閑話休題

あの女子高生にとっては、この時代は甘酸っぱい青春のヒトコマ。学生運動の真似事も。
不器用でどうしようもなかった恋愛も。

でも。出会った男性達や、男性の彼女はそのヒトコマから先には進められない。彼等は本当に彼女の青春の中でしか生きられない。

恐らく彼女は大学に行って、ごく平凡な男と恋をして。そして結婚して。子供を産んで。

ふと思い出す。
どうにもならなかった、そんな時代を。
過ぎ去った喜びや痛みはいっしょくたになって、何だかキラキラした思い出になって。勿論二度と戻らなくていいんだけれど、何だか懐かしくて。切なくて。

歳を重ねたからこそ、そこに来る彼女を想像出来る。

年代によって感じ方の違う作品だなあと思いました。