ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「スリー・ビルボード」

スリー・ビルボード」観ました。
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2018年米アカデミー作品賞その他ノミネート作品。

 

アメリカ。ミズリー州。

「こんな道を通るの、道に迷った奴か田舎者だけだぜ」そんなド田舎の道沿い。そこに。とある3枚の広告看板が張り出される。

『レイプされ死亡』『未だ犯人が捕まらない』『どういう事なの?ウィロビー保安官』

広告主のミルドレッド。
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夫と離婚して女手一つで娘と息子を育ててきた。なのに。ある夜起きた悲劇。娘がレイプされた上、焼死体で発見。それから7か月。

未だ見つからない犯人。ミルドレッドの怒りは次第に「あいつら…仕事してるのか?」地元警察に向けられ。

看板に実名を挙げられたウィロビー署長。
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けれど。彼は決して怠惰な人物では無かった。寧ろ実直で人格者。二人の小さな娘の良き父親。彼を慕う者は多く。

「確かに娘アンジェラの件は同情する。けれど署長が悪いなんてとんでもないよ」

加えて署長はすい臓がんの終末期。ミルドレッドはなんて事をするんだ。

署長の部下。ディクソン。
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差別主義者で傲慢な警察官。署長をリスペクトしている。

そんな彼は勿論、ミルドレッドも、警察の前に会社を構える件の広告会社も憎くて。

そんな三者を軸に。繰り広げられる群像劇。

 

「当方は今。とんでもない作品に触れている。」「これはえらいもんを観た」

とんだ怪作。震え。

 

余りにも完璧な作品を前に。おろおろするばかり。纏まりの無い駄文を打つしかありませんが。

 

「人には多面性がある」そんな当たり前の事を。こんなにしっかりと。納得のいく描写。悲しくて。でもおかしくて。優しくて。

 

『怒りの人』ミルドレッド。作業着みたいなツナギファッションと頭にはバンダナ。化粧っ気も無くて。誰にでもずけずけとした物言い。
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THE強い肝っ玉母さん。けれど。話が進むにつれて。ともすれば崩れてしまいそうな自我を必死に『怒り』というガソリンを注入する事で立て直して。見え隠れする、彼女の弱さ。迷い。

娘のあり得ない姿。勿論その事件に彼女が何か加担した訳じゃ無いけれど。娘との最後の会話。どうしてあんな言い方をした。悔やんでも悔やみきれなくて。その後悔を、もっと大きな感情で覆いたくて。それは…怒り。

 

『良い人』ウィロビー署長。好人物。そして善き夫であり、父親。仕事に対しても忠実で部下たちにも慕われ。

「だからこそやりにくいんよな…」溜息の当方。『怒りの人』ミルドレッドにとって、「7か月も経っているのに犯人を捕まえられない、無能な警察組織のトップ」として憎みたいのに…相手が悪すぎる。

「娘さんの事については全力を尽くしている」「そんな事を言いに来るぐらいなら、仕事しなさいよ」「後…何て言うか。あの看板は…俺は実は…ガン患者なんだ」「それが何よ。街の皆が知っているわよ」話の前半。そうやってミルドレッドはにべもなく署長の訪問を突っぱねるけれど。
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実際目の前で不意に署長の症状の悪化を見せられて。うろたえるミルドレッド。

憎むべき相手は強くあって欲しい。相手は圧倒的な悪。だからこそ自分の正当性を自分の心に言い聞かせられるのに…どうしても署長は悪では無い。その分の悪さ。

(ネタバレ回避の為、詳細は書きませんが。当方は署長を全面肯定はしません。ああいう判断をした思考は理解しますが…彼に愛する妻子が居るのなら尚更…卑怯だと思います)

『嫌な奴』にっくき下っ端警察官ディクソン。

だらしない勤務態度。他人を見下した態度。
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本当に憎たらしい…そう思っていましたが。

家に帰れば年老いた母親と二人。おそらく同性愛者で、その事で彼自身も嫌な思いをしてきている。

スクリーンに映っただけで嫌な気分になったディクソンが。後半には全く違う側面を見せる。本当に…凡庸な言い方ですが「人を見た目で判断してはいけない」。

 

兎に角当方がこの作品を通して感じた事。「狭い田舎の人間関係よ…」

ミルドレッドもウィロビー署長もディクソンも。その他登場人物達。おそらくこの田舎街で産まれ。育ち。そして今。皆が互いを子供の頃から知っている。

だから。皆がどこか街に於ける、固定されたキャラクターを演じている。私ははっきりとモノを言う肝っ玉母さん。俺は良い人の警察署長。俺は皆からの鼻つまみ者。

分かりやすいキャラクター。街の皆も各々互いの性格を把握している。安定の街劇場。…けれど。

「人ってそんな簡単には分類されないぜ」

 

物語の中盤。ガラッと流れを変える事態。街劇場の視点は大きくずれて…キャラクター達の表情は全く違って見えてくる。

 

「怒りは怒りを来す」

 

ミルドレッドの元夫、チャーリーの今の彼女。19歳。

若くて。ミルドレッドは始め何かと馬鹿にしていたけれど。この言葉を聞いてミルドレッドはチャーリーに告げる。「彼女を大切にするのよ」。

 

物語の前半。話を牽引したのは怒りの感情。その発端はミルドレッドの発した看板広告。そこから波及した負のスパイラル。怒りの感情を絶やすまいと必死になればなるほど。一体元は何の感情であったのかも分からなくなって。。

それがあの事件があって。怒りが爆発しきった後。訪れたのは『赦し』。

「怒りは怒りを来す」ならば赦しだって。

 

あのオレンジジュースの優しさ。あの優しさに涙が溢れた当方。
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勿論娘を無残に奪った奴は憎い。けれど。7か月経って、街の皆から娘が忘れられていく…あの3枚の広告看板の本当の意味。大元はそこに対するミルドレッドのメッセージだったのではないか。

「あの娘を忘れないで。」

 

だからあの鹿は会いにきてくれたのだと。

当方はそう思います。

 

「ああここで。ここで終わって…」という所でベストの形で幕引き。この最高さと余韻。

 

「そうやね。あいつうさぎちゃんの代金、払ってないからね」なんて。

 

2018年度米アカデミーどころか。当方の映画人生に留めるレベルの作品を観ました。

 

映画部活動報告「デトロイト」

デトロイト」観ました。
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「1967年。アメリカミシガン州デトロイト。黒人たちの憤懣が爆発した『デトロイト暴動』の中、白人警官3人が起こした『アルジューズ・モーテル事件』」

デトロイト』というタイトルではあるけれど。主には『アルジューズ・モーテル事件』に焦点を合わせて。

ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティー』のキャスリン・ビグロー監督作品。

 

アメリカの都市デトロイト。かつては自動車産業が栄え。アメリカンドリームを夢見て集まった人たち。けれどその夢は次第に衰退。賃金は安いけれど職にはあぶれない。そう期待してついてきた黒人たち。しかし街全体が落ちぶれていく中。金を持っていた白人たちはすぐさま郊外に脱出。街に残るのは黒人の低取得者ばかりとなった。

黒人差別は悪。差別は悪。そういった世論も国内では整えられては来たけれど。如何せん貧しい街で。

治安は悪化。街には取り残された貧しい黒人があぶれ。そして街を取り仕切る警察官は95%が白人だった。

 

「いつ何が起きてもおかしくない」「時間の問題だった」

 

とある違法酒場の摘発。黒人が経営していた酒場に、デトロイト市警が強引な介入をしたことで市民の不満感情が爆発。暴動へと発展した。

 

それがまた。デモとかの理性的な内容ではなく。商店への放火。強奪。死傷者が溢れる惨事。事態は黒人VS白人警官たち(デトロイト市警)との戦いへと様相は変化してしまい。そして。

 

デトロイトにある『アルジャーズ・モーテル』。たまたま居合わせた若者たち。

 

初めて会った彼ら。その中の一人が『スターターピストル(陸上競技用ピストル)』を警官たちに向けてふざけて撃った事から起きた悲劇。最悪な夜。

 

50年前。実際に起きたその事件。

 

「いやあ…まあ…胸が悪かったですね…」この気持ちの落としどころが見つけられなくて。険しい表情をしてしまった当方。

 

この作品を一概に「人種差別って最悪やな!」で切ってしまってはいけない…最悪ではあるけれど「95%の白人警官」の意味はどこだ。果たしてその当時の黒人たちは完全な被害者なのか。街に対し破壊行為を起こした事態はどう集結させたのか。そして。

「アメリカって一体どういう国なんだ」

 

その答えは出ない。アメリカ国民ですら出せないアンサーを、当方が涼しい顔で出せる訳が無い。ただ。

 

「おそらく今でも人間の根底にある差別意識」その問題提起をした作品なのだと思いました。

 

2018年2月2日。NHKで『デトロイト暴動 真実を求めて』というドキュメントがありました。

各位ご意見はあると思いますが。当方はNHKのドキュメンタリーには一目置くスタンスでやっておりますので。そちらも見てから感想を書こうと思っていました。

(50年前の事件。それをリポートした記者の孫が、事件に関わった人たちを訪ねて行く内容でした。)

 

この映画作品について。どうしても『40分に渡る、白人警官3人に依る暴行シーン』そのインパクトが強くて。

 

白人警官の中で。一番若くて。けれどリーダー格であった警官。

「『なんちゃって家族』の‼あの誰からも愛された童貞が‼」
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『なんちゃって家族』は巨大海洋生物恐怖症の当方も思わずDVD購入に至った作品。あの愛すべきあいつが…。「『メイズランナー』でも嫌な奴をやってましたがね!」なんて思わず叫んでしまう、ウィル・ポールター。
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「あいつ…なんて事を…」物語の初め。タバコを吸っている姿だけで「けしからん!お前!」とわなわな震えてしまったおいちゃん当方が。話が進むにつれ本当に震えた後で。しみじみしてしまう。「あいつ…この役。しんどかったやろうな」

 

40分の長尺。ひたすら黒人少年と白人少女の数名を壁に手を付いて立たせ。かわるがわる恫喝。暴行。脅迫。

効果的な音楽が流れる訳でも無い。ただただ『みていられない不快な時間』その間を持たせる緊迫感。流石ビグロー監督と言うべきなのか。でも。その一手を担ったあいつ。

 

「その時あいつに流れた感情は何んやろう…?」何に対する怒り?憎しみ?『差別主義者』そう言ってあいつを切ってしまうのは容易いけれど。ただただ黒人が憎い?何故?

 

自分の任された街の荒廃。何故この街は治安が悪い。何故平和で穏やかな街にならない。いつまでも貧しくて。犯罪が跋扈して。それは一体誰のせい?

とは言え流石に「だから何をしても良い」という思考には当方も結び付きませんが。

 

リスクマネージメント業界(そんなものがあるのかは不明)で有名な『ハインリッヒの法則

「1件の重大な事故・災害の背後には、29件の軽微な事故・災害があり、その背景には300件の異常がある」

 

あの作品の中で。やはり圧倒的に悪者に落とされたあいつ。けれど。事件はあの日あの時たまたま起きた。ある意味『デトロイト暴動』と同じ。多くの背景から成り立つ事件。

 

『いつ起きてもおかしくなかった』

 

NHKのドキュメント。映画では実名を伏せた『あいつ』。現在75歳。

郊外でひっそり。孫に囲まれて暮らしている。

 

そして。暴動と事件から50年。改めてデトロイトの人たちが「どういう事件だったのか。そしてその真意とは」を語り合う姿。

 

時に映画は娯楽には収まらない。ずっしりとした課題を投げかけて。

 

当方もすっきりとした回答なんて出なくて。ぐるぐる回るばかり。けれど。

 

重たいんですけれどね…ビグロー監督作品、当方は嫌いでは無いです。

 

映画部活動報告「殺人者の記憶法」

殺人者の記憶法」観ました。
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韓国のとある田舎町。そこに住む獣医のビョンス。愛娘ウンヒと二人暮らし。

しかし。実はビョンスはかつて『町のクズ』を殺めてきた連続殺人犯。17年前の実績を最後に。以降は真っ当に。ひっそりと暮らしていた。

最近。アルツハイマー症と診断され。どんどんあやふやになっていく自身の世界。そんな中で。

『この町に新たに起き始めた連続殺人事件』ある日。謎の男テジュとの遭遇。

「俺には分かる。あいつが犯人だ。あいつは人殺しだ」

そして。愛娘ウンヒに忍び寄るテジュ。

一人でテジュに立ち向かうビョンス。なのにアルツハイマーの進行に依って記憶は途切れ。混乱し。そして新たに起きた殺人事件。

「これはあいつの仕業か。…それともまさか俺の??」

 

アルツハイマーの元連続殺人犯VS新たな殺人犯』一体その行方は??

 

韓国の。同名小説の映画化。

 

近年で言えば『明日の記憶渡辺謙』や『アリスのままでジュリアン・ムーア』等。若年性アルツハイマーを題材とした映画作品というのは、えてしてシビアで哀しい作品が多くて。当方は多くを語れませんが『メメント』なんかが有名ではありつつも、やっぱり不可逆性な病の進行に依って自我が崩壊していく様を切なく描く作品が多かった。そんな中。

 

「いや。『おじいちゃんはデブゴン』がある」
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昨年2017年日本公開。香港の人気俳優サム・ハン・キンポ―監督&主演作品。

「かつては名うての軍人だったお爺ちゃんが…認知症になって。でも大切な隣人(少女)を守る!!記憶は飛んでも体はかつての動きを覚えているぜ!!」という、切なくともおかしい作品。今回この作品を観たのと同じ映画館に昨年観に行きましたが。

 

意外と。この手の題材を湿っぽくやりがちなアジアで。上手い題材として生かす作品がちょいちょい生まれている。

 

当方はあんまり韓国の俳優事情に詳しくないのですが。

『稀代のカメレオン俳優:ソル・ギョング
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主役のビョンスを鬼気迫る迫力で演じ。激やせし、49歳?には見えない老けっぷり。(後で普段の彼の画像を見て驚愕した当方)

『新しい殺人犯を演じた、実は警察官:キム・ナムギル』。
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普段は爽やか枠なんですかね?映画館に彼の写真がプリントされた緑のお揃い手作りTシャツを着ている奥様方が居られました。「おお…こういう韓流マダムを初めて見た」色んな青春がある。けれど…もし当方の母親がそのスタイリングで外出したら、当方は文句を言いますね。家の中だけにしてくれと。

『愛娘ウンヒ:キム・ソリョン』
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けなげで可愛いけれど。正直それ意外は凡庸なキャラクター。

『皆が大好き。オ・ダルス:警察署長』
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またもや。全身から良い人オーラを漂わせて。あんなにも美味そうで汚らしく麺を食べられてはな…好きになるしかなくて。

 

良い役者を揃えた布陣。加えて秀逸な脚本。

 

街の獣医。一見社会的信頼の高い人物(と言っても気取っている感じでは無い)の、実は…という裏の顔。実は彼は元連続殺人犯。

「記憶を完全に失う前に」パソコンで夜な夜な綴られる、超個人的な備忘録。

「何故俺は殺人を犯したのか」少年時代の悲しいエピソードを皮切りに。「けれど俺は殺人を続けた」「世の中には生きている価値の無い人間が居る」主には家族や他人に暴力を振るう輩を。バレなかったのが不思議な呈で何人も殺害。そして町の外れにある、私有地である竹林に埋めてきた。

そして17年前。最後の殺人、遺棄の後。自身で運転する車。帰宅途中の道で起きた、横転事故。

「恐らくその時頭に受けた衝撃も、現在の脳障害の一因でしょう」

 

突然。顔の半身に起きる痙攣。それは健忘のサイン。また俺は何かの記憶を失っていく。

 

物語の始め。気付けば何故か件の竹林に居た。そしてとぼとぼ歩いている所を地元警察に保護される。

警察に迎えに来たウンヒに「これを使って」とレコーダーを渡される。何かと録音する癖を付ければ、何かと役に立つと。

 

「『おじいちゃんはデブゴン』でもレコーダーというアイテムは出てきましたがね。確かにお話を進める上で非常に有効みたいですが…多分…それを操れなくなる日も。ましてや携帯する意識も長くは持たない気がするぞ」そんな当方のチャチャ…小声で済ませますが。

 

アルツハイマーを含む、認知症という脳血管疾患の。未だ未知すぎる実態。何とも突っ込めないので…「言い方が悪いけれど…(物語的に)都合よく何かを忘れたり、思い出したりする感じ。ご都合主義と言ってしまえばアレやけれど…上手いなあ~とも思う」しどろもどろに語る当方。

 

「たとえ頭は忘れてしまっていても。体は染みついた行為を覚えている」主人公ビョンスの言葉。

獣医としての処置は完璧にこなせる。けれど。その回数は覚えられなくて。そうして本業も廃業。自分の行動に自信が持てなくなる日々。けれど。出会ってしまった。

「あいつの目。俺と同じ。あいつは殺人犯だ」

また。分が悪い事に相手のテジュは警察官。いかにビョンスが「あいつがこの町で起きている連続殺人犯やって‼」と警察で騒ごうが。普段迷子になってお世話になっている警察は信じてくれない。

初めこそ相手にしないようにしていたけれど。ビョンスの娘ウンヒの存在を知って。ウンヒに近づいて。恋人になって。グイグイビョンスと距離を詰めてくるテジュ。

 

愛する愛娘ウンヒが危ない!!そう思うと尚更躍起。けれど。どんどん進行していく健忘に、次第に自身の確信も揺らいでいく…。

 

最後の殺人。その17年前に一体何があったのか。果たして殺した相手は誰なのか。

そして。ビョンスの持つ『愛』という感情は。

 

兎に角主人公ビョンスの行動と、その不確かさに振り回され続ける118分。とは言え、ずっと息が詰まる感じでは無くて「詩教室のコミカル感」とか。意外とクスリと笑えるシーンも散りばめられている。

でもそうやって気を抜くと、またもや差し込まれる「あ。それが…」。お姉さんの下りとか…切なかったですね。そして「オ・ダルス‼」という胸熱。

 

「ところで。あの…最終決戦の件なんですが」ネタバレ回避はしたいので。歯切れが悪く。(小声で)でもどうしても言いたい当方。

「あの人の頭。どういう事ですか?」

当方は…当方だけが見たんですかね?幻なんですかね?あれ。

「あの人は…人間なんですかね?」「ターミネーターかなん…」

ストップ。ここで止めますが。

 

設定の妙。そして下手したらコメディやB級になりかね無かった題材を。巧妙な脚本と圧倒的な演技力で正統派に押し上げた。

 

「え?ラストが別のバージョンがあるの?」そんな情報も知って。下手したらずるずると沼に嵌りかねない。そんな奇妙な作品でした。
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映画部活動報告「ガーディアンズ」

ガーディアンズ」観ました。
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「日本よ。これが露映画だ」

そんな歌い文句もさながら。確かに、なかなか普段お目に掛かれないロシア映画

 

これがロシアを代表する映画と言ってしまってはいけないとは思いますが…何だかとても香ばしそうな匂いがプンプンする。何しろメンバーに熊が居るなんて。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのあいつが見た目には愛らしいアライグマなのに対し、こちらはヒグマ‼勇ましい!!」

 

ある日を境に。どこからともなく現れる予告映像にますます興味は募るばかり。でもこれ…うっかりするとあっという間に上映が終了してしまいそうな予感がして。公開数日後、慌てて観に行きました。そして鑑賞後。

 

「いやあ~これ。好きやわああ~。」ホクホクの笑顔で映画館を後にした当方。まさかパンフレットもあるなんて。(えてしてこういう超B級映画はパンフレットを作っていなかったりしますんで)即購入。

 

初めにお断りしておきますが。黒沢清監督作品しかり。何故か当方には『褒めれば褒める程馬鹿にしているような印象に取られる』というジャンルがありまして。

「多分当方がこの作品をけちょんけちょんに言っていると。そう思われるのだろう…寧ろ真逆なのに‼」さあ、それを念頭において。話を進めますが。

 

1940年代。冷戦時代のソビエト。国家のとある研究所。遺伝子操作を行い、特殊能力を持つ姿に改造された超人部隊を作る作戦(パトリオット作戦)が練られていた。

実際に誕生した超人達。しかし、利己的な科学者クラトフの暴走、裏切りにより研究所は爆破され、クラトフも超人達も姿を消した。

50年後。自らも超人となったクラトフが、ロシアを崩壊すべく現れた。

ロシア国防省のラーリナ指揮官はかつての超人達を探し出す。そしてクラトフの野望を阻止する為の超人チーム『ガーディアンズ』が結成された。

 

何だか聞いた事のあるキーワードをかき集めて。でもあれこれ言う暇など与えない。兎に角流れが速い早い。

上映時間89分というタイトな持ち時間。MARVELやDCなら2時間半位掛けてやるであろう内容を90分でやってしまおうという強引さ。なので。超人達も次々見つかり。

 

何だかパンフレットでの扱いが主役とは思えなかった、リーダーのレア。石を操る念動力の持ち主。スカウトに来たラーリナ指揮官に「俺はただの羊飼いだ」と背中を向けたのもつかの間。「クラトフは生きているわ」その言葉に振り返り。次のシーンでは仲間を探しに向かっている。斉藤工似の超音速で動く剣の達人ハン。そして多分誰もが(ビジュアル的に)愛さずにはいられない熊人間アルスス。サーカスで働いていた、透明になれる美女クセニア。(得意料理はボルシチって‼パンフレットでしか語られていないエピソードですよ!!)

皆一応にごねたりするけれど。もう次のシーンでは行動を共にしている。この話の早さ。
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「えっ‼」思わず声が出てしまう程。「一人の登場人物にこれまでの流れを説明させた」かと思うと「おいおいそれはすっ飛ばすなよ~」という不親切さ。

「これまでこういう話見た事あるだろ。そこから貯めたあんたの脳内引き出しで対応しな!!じゃあ先に進むぜ!!」と言わんばかり。さすがロシア。ソー・クール‼

 

そしてマッドサイエンティスト、クラトフ。
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元科学者…とは思えない体格。何て言うか…首回り室伏。そして『エリジウム』か『マッドマックス 怒りのデス・ロードのあいつ』みたいな「もう一生上半身は裸でしかおれません」という、モジュールなる機械を体と一体化させて。

あらゆる乗り物や電子機器を遠隔操作出来る力を持ち。それを以って、宇宙に漂うロシア冷戦時代の軍事衛星を操作し、各国への脅威とする。そうして世界を牛耳ろうと企み。

 

現代によみがえった『ガーディアンズ』。けれど彼らは元々クラトフが造った超人であって。クラトフには彼等の弱点など承知。これは分が悪い。

 

一度は完膚なきまでに叩きのめされたガーディアンズ。しかし。ロシア国防省とタッグを組み。クラトフに立ち向かっていく。

 

~なんて。丁寧に順を追って説明していては(しかも本編は全く丁寧に説明していないのに)キリがありませんので。ここいらでふんわりさせていきますが。

 

まあ~全てに於いて雑なんですね。話の展開もガタガタ。キャラクターの掘り下げも中途半端。そして最終決戦のエネルギー砲。「それは流石に説明しろ!!」という放り投げ。…ですが。

 

憎めない。というか寧ろ好き。こういう歪な作品は嫌いになれない。

 

意外と丁寧だったのは『CG技術』。『絵面』。

冒頭。ロシア国防省ご自慢の三脚戦闘車両。
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『乗り物を操れる』クラトフに依って奪われたその戦車のシャキシャキした動き。そしてビジュアル。

その他のアクションもなかなか切れる。観ていて楽しい。

 

「何より熊人間アルススの絵面の力強さよ!!」
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彼が動くだけで締まる締まる。「おお。全身が熊になる時が‼しかしそこでびりびりに破れた衣服が…また戻っている!!その生地はただの綿ではないのか⁈」

二刀流の剣の達人ハン。
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「あれ刀を抜く所よりも、見たいのは収める所やで。だって絶対怪我した事あるやろ!!」

唯一の女性戦士。クセニア。「何故彼女には『記憶喪失設定』が…と思ったら。お約束やけれどジンとくるエピソード」

主人公(のはず)のレア。「石の鞭とか…地味やなあ~」

そしてロシア国防省のラリーナ指揮官。
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(何かねえ。全然作品に関係する画が拾えないんですよ!)
「やっぱりロシア女性って滅茶苦茶綺麗。クールビューティーなビジュアルやけれど。ガーディアンズのメンバーのお話を憂いた表情で聞いてあげるカウンセラーポジション。かと思えばナイススレンダーバディをピタピタのライダースーツに包むといったサービスもある。素晴らしい‼」

何だかんだ。ガーディアンズの面々を応援してしまう。不思議な魅力。

 

そうなると、物語のちぐはぐさはご愛敬。もうどう転んでもいいですよ。大抵の展開は脳内の引き出しから補てんしますから。

 

パンフレットに依れば(後ねえ。パンフレットでしか語られていない情報が多すぎですよ)サリク・アンドレアシアン監督。1984年生まれ。33歳。若い。

 

気持ち良い位の振り切ったB級作品。まさかの次回作の存在も匂わせながら終わり。

もうマニアックな連中だけががニヤニヤしながら付いてくる感じになりそうですが。

 

当方もまた。ニヤニヤしながら。待ちたいと思います。

 

映画部活動報告「消された女」

 

消された女」観ました。
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精神保健法第24条:保護者2人の同意と精神科専門医1人の診断があれば、患者本人の同意なしに『保護入院』という名の強制入院を実行できる】

 

韓国。精神保健法を悪用し、主に富裕層が。財産や個人の利益を目当てに身内を精神科病院に入院させている実態が明るみになって。そんな実際の事件をモチーフに作られた作品。

2016年に国内公開。世論を動かし。韓国の憲法裁で「精神疾患患者の強制入院は、本人の同意が無いと違憲だ」という判決が下った。そんな社会派エンターテイメント作品。

 

いつだってやりすぎ韓国映画。当方は、歯が浮く様なラブコメモノはこっぱずかっしくて観られないけれど。でも。バイオレンスやエロでは「ほんまか??これ」と。本気度が群を抜く韓国映画。それらは目が離せなくて。ちょいちょいチェックしてしまう。

そして。韓国の実在事件にまつわる社会派作品群。当方の記憶では『トガニ 幼き瞳の告発』が記憶に新しいのですが。

 

ドキュメンタリーテレビ番組のプロデューサー、ナムス。時代の寵児だともてはやされていたのもつかの間、番組のやらせ問題を指摘されてあっという間に干されてしまう。

時が経って。テレビ局のお情けで貰った小さな仕事。とある元精神科病院での火災事故を追跡していたナムスの元に得体の知れないメモ帳が届く。何の気なしにめくったその手記の内容に思わずのめりこんでいくナムス。その手記の持ち主は件の火災事故で唯一の生存者で、現在は殺人事件の容疑者として収監されているカン・スア。

元々は普通の若い女性。そんな彼女に一体何が起きたのか。

 

やりすぎ韓国映画案件。どこまでが実在の事件に沿っているのかが不明なので…何とも歯切れが悪くなってしまうのですが。

 

「精神科疾患患者とその家族。そうして法律の問題は…非常に繊細かつアンタッチャブルな問題やからなあ…」

 

冒頭の韓国【精神保健法】の強制入院について。

当方がこの作品を観た土曜日の昼下がり…は『韓流大好きおば様』が沢山一緒の回に居られたんですね。そして観終わった後、ぞろぞろと皆が映画館の出口に吐き出される中で。

「おっかないわあ~あんな法律。怖いわあ~」という声をマスク顔(冬場の風邪対策)で右から左に聞き流し。その脳内で真顔で延々語り続けた当方。

 

「日本の【精神保健福祉法29条(自傷他害の恐れのある精神障害者を強制入院させる:措置入院)】という法律はご存知か?自覚の無い精神疾患患者で、放っておけば自傷他害の恐れのある場合は都道府県知事の権限と責任で精神科に入院させることができるという法律を」

 

精神科疾患のある患者が精神科病院に受診、入院に至るには様々な形態がある。勿論能動的に動くケースだって沢山あるのだろうけれど。(『任意入院』『医療保護入院』『応急入院』『措置入院』『緊急措置入院』入院形態は余りにも多岐に渡る上に長文化、そしてまともに説明する力を当方は持ちませんので。それ以上は語りませんが)

 

例えば。追い詰められ、いつか目を離せば自殺してしまいそうな心配な家族を。昼下がりののどかな道で、突然見知らぬ歩行者にナイフを振りかざす輩を。

そういう、本人は全く自覚のない『危険人物/患者』を。精神科に強制的に入院させる法律が日本にはある。

これは決して悪法では無い。本来は誰よりも本人を守る法律で。

 

冒頭の韓国の【精神保健法第24条】だって。恐らく考え方は同じ。けれど。

 

「信頼と何とか」で構成されるはずの医療が。心無い者に悪用されると…もうどうしようもない。

この作品で言うと、社会的地位のある者と医療者(精神科専門医)がグルになってとある指定した人物を「精神疾患を有する患者。しかも早急に保護が必要」と隔離と言う名で精神科病院に拉致してしまっては。確かに手出しは出来ない。

 

ある日突然。何者かに依って拉致。そして気が付いたら精神科病院

「元々の事件がよく分からないけれど。よくそこから帰ってこれたものよ」そう思う当方。ですが。

 

「やりすぎなんですよ…」苦々しくマスクの下で顔を歪める当方。

 

この作品の狙いが『社会派エンターテイメント』であったのなら。確かに『エンターテイメント』としては盛りに盛っていた。

ある日。昼間の街中で突然男達に車に乗せられ、意識を消失。そして目が覚めたらそこは…お化け屋敷。まさにそこは『お化け屋敷‼!』

 

当方がこの作品に対して思う事。「精神科病院の描写がひどすぎる!!」

 

勧善懲悪。悪い奴はとことん悪。これまでもそういった韓国映画の傾向を何となく感じてはいましたが…そしてこの作品に於いては『医療モラル。倫理の欠落』がテーマの一つではあるんでしょうけれども。それでもあの精神科病院はあんまりにも酷すぎる。

(だって。一見近代的な普通の精神科病院で。まともな医療の提供とまともなスタッフ…の中に何故か放り込まれた方が混乱をきたしませんか?「もしかしたら自分は…?」ってなる様に思いますけれど)

 

「本来病める人を救う法律を悪用しやがって‼」今作公開に依って韓国の世論を動かしたと。そういう触れ込みでしたが。…あくまでもたらればですがもし日本で同じ流れが起きたとしたら…それよりも精神科学会が総立ちでクレームつけてきそうですよ。「精神科のイメージが悪すぎる!!」「精神科はお化け屋敷か‼」そりゃあ怒るわ。

 

個人病院。とは言え。最早コメディーの域の医院長。そして患者たち。なんだこの茶番は。

 

「いよいよ『ゲット・アウト』みたいな事態になってきました!!」終盤。溜息を付き過ぎて酸欠状態の当方。(後あれな!いくら何でも医院長だって医療者の端くれならあの処置に『素手』って事は無いで!己の身を守る為にな‼あんなの素手でやるのは『冷たい熱帯魚』の夫婦の風呂場作業レベルやで‼)

 

サスペンスとしても「⁈」という出来栄え。これ、何とでもこじつけられるやないの。そして韓国って要人であっても自宅付近に防犯カメラとか無いの。後、戸籍とかどうなってるの。

寧ろ最後すんなり終わっておけば…そしてこれ主要な人物が一人見事に「消されて」しまっているやないの。(唐突に『やないの星人』化する当方)おかしいやないの。

 

何だかなあ~。期待しすぎていたばっかりに『どうしてもやりすぎてしまう韓国映画の性』があだになってしまった印象。

 

「そして。【強制入院に本人の同意が必要】という改訂は、まともに取り合えば救える者も救えなくなるし。そしてこういう案件の同意書なんてどうにでもなるし」

 

この作品の元となった事件と、公開された後改訂された法律。一体今韓国の精神科患者強制入院の実態はどうなったのか。それが気になる当方です。

映画部活動報告「ルイの9番目の人生」

ルイの9番目の人生」観ました。
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アレクサンドラ・アジャ監督作品。リズ・ジェンセンの同名小説の映画化。

 

賢くて見た目も愛らしいルイ。9歳。

美しい母親ナタリーと二人暮らし。元ボクサーの父親ピーターは、今は別居中で遠くに祖母と暮らしている。

とある休日。3人で行った海辺のピクニック。楽しい時間もつかの間。両親は喧嘩を始め。そしてルイは崖から転落し、海に落ちてしまう。

全身打撲。意識不明の重体で病院に搬送されるルイ。しかし。

 

ルイはたった9年の人生の中で既に何度も危険な目に遭っていて。今回は9回目の生死を彷徨う事態であった。

 

「僕は長くは生きないよ」

 

一時は死亡宣告まで受けて。それでも命の炎を消さなかったルイ。けれど昏睡状態からは覚めなくて。植物状態

 

ルイの治療に当たった、若き小児神経医パスカル。ルイを目覚めさせたい、そう注力する中で。いつしかはまり込んでいく、危なげな魅力を持つルイの母親。ナタリー。

 

事故の直後から姿を消した、父親ピーター。果たしてこの事態は彼のルイに対する虐待の成れの果てなのか。

 

一体ルイに何が起きたのか。起きていたのか。

そしてルイは一体どういう少年なのか。

 

何だか不思議な。込み入った話の組み立て方をした物語でした。

 

9歳の少年の転落事故。(そもそも何で子供が居る家族があんな危ない崖っぷちでランチをするのか…を言ったらぶち壊しですが)不幸にして起きてしまったその事件を基軸として。

以降植物状態になったルイを取り巻く大人。主に母親ナタリーとパスカル医師。の加速していく感情。そして次々起きる奇妙な出来事。所謂現実パート。

主人公ルイの視点から語られる、ルイのこれまでの人生。所謂過去パート。

 

現実パートが大人の色恋だの、誰の仕業だというサスペンス要素だの…かと思えばちょっとホラー要素も含んでみたり。

そして過去パートも随分と聡明で皮肉っぽいルイの人となりを見せていると思いきや…ファンタジーの世界にもすり変わっていく。『怪物はささやく』的な。

 

「ああもう。これは一体どういうスタンスで話を持っていくつもりなんだ!!」

 

持ってまわった言い方をしてもキリがありませんので。

正直「元来健康な9歳の少年が、何度も生死を彷徨う事態って…あれしか考えられんけれど」と思っていたので。まあ…やっぱりなという着地ではありました。と言うより寧ろ他の結論があり得ない。一応マナーとしてネタバレはしませんけれど。

(そして小児科って、こういう案件は一番敏感に察知するもんだと思いますけれど)

 

この作品について『衝撃のラスト9分‼!』という宣伝をしていましたが。その真実事体に驚きはありませんでした。でしたが。

「かつて夢遊病を患っていた」「ハムスター」「ペレーズ医師」「催眠術」「ワカメ人間」ありとあらゆる些細なエピソードたちも全て無駄が無かった。それどころか大きなうねりをもたらす要因であったと思うと、成る程なとうなってしまいました。

 

美しくて不安定な母親ナンシー。何だか不誠実そうな父親ピーター。ナンシー視点で語られる事の多かった夫婦生活の視点を変えてみたら…ピーター何て良い奴なんだ。

(大体こういう女は弱弱しいふりして滅茶滅茶強いからな‼どこに行っても生きていけるんやで!!そして見た目も良いから男は放っとかんのや‼…と語尾を荒げるスケバン当方)

 

ピーターの余りの懐の深さに泣ける当方。ただ…巨大海洋生物恐怖症の当方にとってルイとピーターの旅行の鳥肌感。あんなホテル、当方は怖くて一瞬たりとも居れませんよ。

 

9歳にしては聡明で皮肉っぽい。明らかな異常行動。でもその根底に流れていた悲しい性。切ない。けれど。

 

ルイが無意識の海から上がる事を決めたのなら。

もうそこはかつての世界とは違う。

今度はルイをきちんと守ってくれる人が居る。

 

ルイの9番目の人生が、明るい光に満ちたものになりますように」

そう祈るばかりです。


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映画部活動報告「ジオストーム」

ジオストーム」観ました。
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アメリカ。ディーン・デヴリン監督。ジェラルド・バスター主演。

 

2019年。世界中を襲った異常気象。それに対峙すべく立ち上がった各国。彼らは『地球代表』として一致団結し、米中を中心に(‼)『ダッチボーイ』という防衛システムを作り上げた。これは国際宇宙気象システム(ICSS)に組み込まれ、世界中の天気をコントロールするというもの。システムの成功に依って、世界中が救われた。…しかし。

ひっそりとシステムの総合責任者であったジェイク(ジェラルド・バトラー)がダッチボーイの管轄に携わっていたアメリカ政府から解任された。彼の上層部に乱暴で反抗的な態度をあげつらって。そしてジェイクの後任の責任者にはジェイクの弟マックスが任命された。

2012年。ダッチボーイに完全にコントロールされていたはずの気象が極端な異常を見せ始める。

ダッチボーイの管轄を任され。そして2週間後にはその責任を移譲する予定であったアメリカは内心慌て。そして秘密裏に解決しようと画策する。「連れてこい。たった一人で、秘密で動いてくれる人間を…」

解雇され。妻子と離婚し一人孤独に暮らしていた、ダッチボーイの全てを知る責任者ジェイク。彼に事態の収拾の白羽の矢が立てられるが。

 

当方がこんなに丁寧な導入あらすじを書けるとは…まあ、この作品に於いてはこれが重要ですから。そしてこれさえ書けたら良いと思いますので。

 

ジオストームの予告編は非常に上手く出来ておりました」淡々と語り始める当方。

 

予告を観た時の「これは!」という予感。

異常気象を制御するために造られた装置。しかし。突然各都市を襲う未曽有の天災。何故?人類はもうおてんとさんを支配できたはずなのに。

一体これは何者の仕業なのか?まさか…新たな創造主(機械)の時代が来たのか?

人類VS人口衛星の闘いが始まる…。

 

~という流れでは全くありませんでした。

 

「あ。これ見た事あるわ」

映画館でありながら。何度も脳内をフラッシュした『何曜日かのロードショー』。

 

独居生活に入ってから尚更テレビを見なくなった当方。うろ覚えですが昔『ベタ子とベタ男のラブストーリー』という何かのバラエティー番組の一コマがありました。

文字通り。『ベタ子』と『ベタ男』の恋の物語なんですが。例えば「雨の中捨てられた子猫を抱き上げるびしょ濡れのベタ男に一目ぼれをするベタ子」「上手くいきそうな二人の恋に影を落とす、唐突なベタ子の難病設定」とかの、主に漫画世界でありがちなありとあらゆる『ベタ』を持ってくる。

 

「これは『宇宙版ベタストーリー』だ!!」ジオストームを観ていて早い時期に気付いた当方。

 

「こういう宇宙船外活動は」「ゼロ・グラビティ!」
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当方の中の越後製菓侍が早押しボタンをばんばん打ってくる。クイズじゃないのに。

 

またねえ…(小声)驚くほど大らかなつくり(苦しいフォロー)で話は進みますので。突っ込みは無限。収まらず。

 

「そもそも技術者っぽく見えないし…あの弟も含めて何故この兄弟がこんな国家の重要なポジションに就いているのか」「宇宙に行くハードルが低すぎないか」「いくら何でもこんな気楽にICSSには行けないやろう(溜息)」「どうしてこんな所に銃が」「よく知らないけれど宇宙って火気厳禁じゃないの」「その暗号は少年…いや、愛らしいとしよう(溜息)」「何や『ゼウス計画』って。『ターボキッド』か」あかんあかん。もう止まらん。

 

下手したらネタバレしかねないので。これ以上は止めますが。

 

良かった所は…アメリカ大統領のシークレットサービス(SP)で弟マックスの彼女。

「恋愛より仕事優先よ」って言いながら結構彼ら兄弟の融通をきかせてくれた彼女。そんな彼女の「強えええ」という一面。あの「死んでいないのが不思議なくらいだよ」というカーチェイスもさながら。
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「なんだいあのマシュマロボディは!けしからんな!!」恋人マックスとの二人っきりの時に見せた柔らかさ。当方の脳裏にしっかりと刻み込みました。

 

正直…雑過ぎる、あの兄弟の葛藤もどうしてこうなったのかという犯人探しもどうでもよかった。何しろ『人類VS人口衛星』というクチで観始めてしまったから…。

 

「そうなるとこの作品に求めていたのは何かというと。『感情等一切通じない、無慈悲な力に依るジオストーム(世界的な大災害:造語)』その有様。そしてその対策」

 

そう書くとぞっとしますが。結局当方が観たかったのはそれなんやろうなと。だってある意味、実際の天災も『無慈悲な力に依るもの』。でも。

 

それが『人類が作った機械』に依る災害だったら?人類はどう立ち向かうのか~そういう話なのかと予告編から期待してしまっていたから…。

 

まあ…あれこれ言いましたが。映像力が上がった現代で。『宇宙でこの設定~から始まるベタ話!』としては十分早押しボタン片手に楽しめる作品ではありました。