ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ルイの9番目の人生」

ルイの9番目の人生」観ました。
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アレクサンドラ・アジャ監督作品。リズ・ジェンセンの同名小説の映画化。

 

賢くて見た目も愛らしいルイ。9歳。

美しい母親ナタリーと二人暮らし。元ボクサーの父親ピーターは、今は別居中で遠くに祖母と暮らしている。

とある休日。3人で行った海辺のピクニック。楽しい時間もつかの間。両親は喧嘩を始め。そしてルイは崖から転落し、海に落ちてしまう。

全身打撲。意識不明の重体で病院に搬送されるルイ。しかし。

 

ルイはたった9年の人生の中で既に何度も危険な目に遭っていて。今回は9回目の生死を彷徨う事態であった。

 

「僕は長くは生きないよ」

 

一時は死亡宣告まで受けて。それでも命の炎を消さなかったルイ。けれど昏睡状態からは覚めなくて。植物状態

 

ルイの治療に当たった、若き小児神経医パスカル。ルイを目覚めさせたい、そう注力する中で。いつしかはまり込んでいく、危なげな魅力を持つルイの母親。ナタリー。

 

事故の直後から姿を消した、父親ピーター。果たしてこの事態は彼のルイに対する虐待の成れの果てなのか。

 

一体ルイに何が起きたのか。起きていたのか。

そしてルイは一体どういう少年なのか。

 

何だか不思議な。込み入った話の組み立て方をした物語でした。

 

9歳の少年の転落事故。(そもそも何で子供が居る家族があんな危ない崖っぷちでランチをするのか…を言ったらぶち壊しですが)不幸にして起きてしまったその事件を基軸として。

以降植物状態になったルイを取り巻く大人。主に母親ナタリーとパスカル医師。の加速していく感情。そして次々起きる奇妙な出来事。所謂現実パート。

主人公ルイの視点から語られる、ルイのこれまでの人生。所謂過去パート。

 

現実パートが大人の色恋だの、誰の仕業だというサスペンス要素だの…かと思えばちょっとホラー要素も含んでみたり。

そして過去パートも随分と聡明で皮肉っぽいルイの人となりを見せていると思いきや…ファンタジーの世界にもすり変わっていく。『怪物はささやく』的な。

 

「ああもう。これは一体どういうスタンスで話を持っていくつもりなんだ!!」

 

持ってまわった言い方をしてもキリがありませんので。

正直「元来健康な9歳の少年が、何度も生死を彷徨う事態って…あれしか考えられんけれど」と思っていたので。まあ…やっぱりなという着地ではありました。と言うより寧ろ他の結論があり得ない。一応マナーとしてネタバレはしませんけれど。

(そして小児科って、こういう案件は一番敏感に察知するもんだと思いますけれど)

 

この作品について『衝撃のラスト9分‼!』という宣伝をしていましたが。その真実事体に驚きはありませんでした。でしたが。

「かつて夢遊病を患っていた」「ハムスター」「ペレーズ医師」「催眠術」「ワカメ人間」ありとあらゆる些細なエピソードたちも全て無駄が無かった。それどころか大きなうねりをもたらす要因であったと思うと、成る程なとうなってしまいました。

 

美しくて不安定な母親ナンシー。何だか不誠実そうな父親ピーター。ナンシー視点で語られる事の多かった夫婦生活の視点を変えてみたら…ピーター何て良い奴なんだ。

(大体こういう女は弱弱しいふりして滅茶滅茶強いからな‼どこに行っても生きていけるんやで!!そして見た目も良いから男は放っとかんのや‼…と語尾を荒げるスケバン当方)

 

ピーターの余りの懐の深さに泣ける当方。ただ…巨大海洋生物恐怖症の当方にとってルイとピーターの旅行の鳥肌感。あんなホテル、当方は怖くて一瞬たりとも居れませんよ。

 

9歳にしては聡明で皮肉っぽい。明らかな異常行動。でもその根底に流れていた悲しい性。切ない。けれど。

 

ルイが無意識の海から上がる事を決めたのなら。

もうそこはかつての世界とは違う。

今度はルイをきちんと守ってくれる人が居る。

 

ルイの9番目の人生が、明るい光に満ちたものになりますように」

そう祈るばかりです。


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