ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「鵞鳥湖の夜」

「鵞鳥湖の夜」観ました。
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2012年、中国南部。再開発から取り残された鵞鳥湖の周辺地域。

ギャング達の縄張り争いが激化。そしてリゾート地となっている湖畔では『水浴嬢』と呼ばれる風俗嬢が大流行していた。

刑務所から出所帰りのチョウ(フー・ゴー)は、古巣であるバイク窃盗団へ舞い戻ったばかりであったが、グループ内での対立から勃発したもめごとに巻き込まれる。挙句誤って警察官を射殺してしまった。

たちまち全国に指名手配。しかも30万元の報奨金付き。

血眼になって捜索してくる警察とかつての仲間たち。チョウは己に掛けられた報奨金を妻と我が子に残そうと画策するが…待ち合わせに現れたのは、リウ・アイアイ(グイ・ルンメイ)と名乗る見知らぬ女だった。

 

昭:カッコイイとは、こういうことさ。

和:どこの紅い豚だよ。あ、どうも。当方の心の中に住む男女キャラ『昭と和(あきらとかず)』です。今回は我々が司会進行を務めさせて頂きます。

昭:前作『薄氷の殺人』も痺れたけれど。ディアオ・イーナン監督のセンスよ!

和:お話の進め方とか繋ぎ方とか、そういう点はかなりブツ切れ感が否めないんやけれど…もう圧倒的画力で押し切ってくる。

昭:途中の光る靴底でダンスとか、見世物小屋とか。もう何あれ?!

和:早い早い。その話早い。

 

昭:2012年の中国南部が舞台。そこで起きた、チンケなバイク窃盗団の仲間割れから暴動。盗んだバイクで走り回って互いに傷付け合って。それを抑えにきた警察官を間違って射殺してしまったチョウ。

和:チョウってどう見ても40代前後にしか見えないのに、なんか窃盗団のメンツが明らかに若いんよな~。

昭:某グループのリーダーって書いてあったぞ。つまりはリーダーが刑務所から帰還したけれど、今の窃盗団は血気盛んな若造ばっかりで。チョウのメンツを尊重した縄張り発表をしたら他の奴らが騒ぎ出したと。

和:しかもその中に銃とか持っている奴がいたから事は大事になってしまった。案の定ぶっ放すわ、撃たれた側はいきり立つわ。

昭:とりあえず銃を取り上げて話をしたホテルの一室。あれ何?スクリーン全体にセロファン貼ったみたいなピンク色。

和:この作品から感じる色気みたいなのは、独特な色彩とか光と影から感じるなあと思った。緑や黄土色や青。

昭:雨の降る夜。妻に自分を通報させようと向かった駅で。現れた女。

和:真っ赤な服に身を包んだショートカットの痩せた女性。妻の代理でやって来たというアイアイと行動を共にする事になったチョウ。

昭:二言目には「私を好きにしていいのよ。満足させられると思うわ(言い回しうろ覚え)」。と言ってくるアイアイ…好みは千差万別だけれどさあ。アンタは抱けないよ。

和:知らないよ!アイアイだっておたくには言ってないよ!

昭:何というかさあ。受ける印象が硬質すぎて、エロさを感じないんよな(小声)。

 

和:(無視)アイアイと行動を共にすれば妻の所に行けるのか?そう思うけれど、警察の包囲網や仲間の追跡が行く手を阻んでどうにも進めない。追いつめられていくチョウ。

昭:アイアイは一体何者なのか。身元は鵞鳥湖でリゾート客相手の売春をしている『水浴嬢』の一人だけれど、彼女が属している風俗商売を取り仕切っている男はチョウの妻から報奨金を横取りしようと企んでいる。彼女は本当に妻の代理なのか?それとも男の手先なのか?

和:警察のなりふり構わない強制捜査。血気盛んなバイク窃盗団。復讐や報奨金目当てでチョウを追う者たち。正直ここゴチャゴチャしてるんですわ。

昭:ただ。そこの不満を遥かに超えてくる圧倒的画力。

和:予告でもあったけれど。あの傘のシーンとか、反則ちゃうの?っていう美しさ。追いつめられた二人が延々街中を歩きまわる、入り組んでくたびれた街並み。堪らん。

昭:途中負傷したチョウが自分で包帯を巻くシーンとかも。何あれ。あんなややこしい事しなくても、着物の袖を紐で括るみたいに出来るんじゃ…とは思うけれど。恰好良いんよな。

和:この作品はかねてから当方が口にする『オサレバー映画案件』かなと。

昭:ああ。あの「オサレなバーで無音で延々流れている映画」ですか。確かにこれが薄暗いバーで無音で流れていたら滅茶苦茶サマになるな。

 

和:後、食べ物が美味そうなのは正義。

昭:間違いない。饅頭とか水餃子とか麺とか。美味そうで美味そうで。ただ最後のアレは、俺の中の北の国からが「まだ食べてる途中でしょうが!」と立ち上がってキレたけれどね。

 

和:男たちがもみ合った、幻想的にも見えたセロファンの夜を経て。女たちが手に入れたもの。

昭:これまでと打って変わって現実的な色調の中。彼女たちの表情。あのオチはなんと言うか…小気味が良かった。男なんて所詮愚かな生き物よ。

和:何だかポエムっぽい言い回しで己に酔ってきた所で。そろそろお開きとしますか。

ってああもう。黙って親指立ててるんじゃない。そして帽子を渡してこないで!やらない!やらないよ!紅い豚は!

昭:カッコイイとは…。