ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「リグレッション」

リグレッション」観ました。
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1990年。アメリカ・ミネソタ

ある少女アンジェラ・グレイ(エマ・ワトソン)が父親からの虐待を告発。事件を担当する主人公ブルース・ケナー刑事(イーサン・ホーク)。告発されたのはなんと同僚刑事。彼は事件の記憶が無いにも関わらず罪を認める。しかし何故その記憶は失われたのか。加えて、少女は一家が悪魔崇拝に憑りつかれていたと証言。

一家の事件を調べるにつれ、ケナー刑事はこの町にはびこる闇に迫っていく。

 

「実話に基づく衝撃のサスペンス!」「1980年代以降アメリカでは悪魔崇拝に依る儀式が次々と告発され、多くの人がパニックと疑惑の渦に巻き込まれた」(チラシより)

 

悪魔崇拝⁈オカルト案件か。」

当方は別にオカルトに造詣が深い訳ではありません。そして似て非なる『怖い話』なんかは絶対に聞きたくない…怖がりやし、如何せん田舎暮らしなんで。夜道に一人真っ暗な道なんてザラ。ですが…何故かオカルト話は意外と知っている。長時間に渡る通勤時のポッドキャストの中にもオカルト番組が入っているし。

 

「1990年代。悪魔崇拝儀式に振り回される人々…ありそう~。」

 

2000年も過ぎて最早20年近く。科学の子である現代人ならば「A・KU・MA?」と聞き返してくるんでしょうが。哀しいかな、1990年代の記憶もある当方からしたら。あながち馬鹿にも出来ない。

 

「1999年。地球終了。」ノストラダムスの大予言。どこか馬鹿にしながらも「何かは起こるんじゃないか」と過っていた。なんたって千の位が変わる年やし。

そんな終末期ムードも相まって。悪魔を崇拝したって良いじゃない。この世に自分を救ってくれる神などいない。そんな連中が集まって。ひたすらに悪趣味な奇行を繰り広げる。しかも大真面目に。…まあ、当方にとって『悪魔崇拝』とはざっくりそういう印象。

 

父親から性的暴行を受けたと告発した17歳の少女アンジェラ。当の父親にはそんな記憶は一切ないけれど。クリスチャンである娘のいう事なら間違いないと罪を認める。けれど。

それ以上捜査の進展は無く。煮詰まったケナー刑事は有名な心理カウンセラーに依頼し父親に退行催眠を行う。アンジェラの証言と並行して得られた父親の記憶。次第にアンジェラの住む家を拠点に、一家を中心とした悪魔崇拝者が集っていたという証言が飛び出し。アンジェラはその家族の奇行の果てに傷付けられたと。

アンジェラの兄、祖母。会った時は誰もがその事に対しふわふわしているけれど。父親と同じく退行催眠を行う事で、引き出されていく家族の記憶。狂っていく家族の精神。

 

そして。捜査を進めるにつれ。自身も悪魔崇拝者の陰に怯えていくケナー刑事。

 

概ね、そういう事をやっていたと認識しているのですが。

 

公開して半月。そもそも本国スペイン、カナダでは2015年に公開されている作品ですので。結構はっきりネタバレしながら進めてしまいます。

 

「あの…1990年とは言え。科学捜査は?被害者の証言と催眠療法で立証しちゃう?」

 

「私は傷つけられた。あの狂った家族に‼」そんな告発をしてきた17歳の少女。いたいけで、圧倒的弱者である少女。そんな少女が語る、おぞましい家族。実際に暴力を受けたのはこの子だ。だから悪いのは家族だ。

まずその先入観があるからこそ。「こいつらは狂った悪魔だ」そうとしか思えなくて。

 

「では何故父親は罪を認めた」

 

終盤。あっけなくオセロがひっくり返っていきますので。「(物語を成立する為に必要とはいえ)それはちゃんと墓場まで持って行かないと。じゃないとアンタが何故こんな話を丸のみしたのかの意味が無くなってしまうやんか。(だから、ケナー刑事には何かを匂わせる程度にしておいて、刑が確定した父親が一人になった時に…真実が回想で語られるとかさあ)」苛立つ当方。

 

はっきり言うと。この話に於いて誰が嘘を付いているのか。真実を語っているのは誰なのか。そして家族の付いた嘘を大人しく飲み込んで従った者。飲み込まれた者。そういう家族の姿を描いた作品だったんですよ。

 

だから。オカルト云々の『悪魔崇拝者』云々はセンセーショナルな嘘でしかない。けれど。その大げさな話を誰もが信じた。それが『THE世紀末』1990年代であった。

 

イーサン・ホークはまた『田舎に住む、頑なで融通の利かないケナー刑事』をしっかり演ってましたね。正直、当方にはケナー刑事と心理カウンセラー、あの二人のタッグがアンジェラの与太話をより加速させたとしか思えん。散々アンジェラの手玉に取られて、引っ掻き回したのはあの二人。とんだボンクラ。そんな大事件に発展する前に、アンジェラこそに心理カウンセラーを配置させろよ。あいつはサイコパス。いつかもっととんでもない事をやらかすよ。

 

まあ。当方が『いたいけで涙ながらに訴えてくるエマ・ワトソン』に一切心を動かされない性分。それがこの作品をひたすら冷静に見続けた所以ですが。

 

「これは実話に基づいた作品。」どこが?どこまで?そして告発され刑事罰を受けた人たちのその後は?そうして人様を陥れた輩は?一体どうなった?

 

そういう意味での『彼らのその後』が観たい。そんな気もする当方です。