映画部活動報告「リメンバー・ミー」
「リメンバー・ミー」観ました。
「近年のピクサー作品の中では飛びぬけた傑作。これは必見。」
死者。舞台はメキシコ。可愛く見えないキャラクター。元々あんまりアニメを見ない当方はディズニーも気が向いたら時々観る程度。
予告時点では正直、あんまり…でしたが。公開直前の第90回米アカデミー賞授賞式。
アニメ部門受賞。そしてそこから聞こえてきた先程の言葉。引っかかって。
結果。何だか散々な感じで終わった金曜日の夜。公開初日。仕事終わりに観に行ってきました。そして。
「これ…子供を連れて行ったお父さんこそが。声を押し殺して泣くやつやないか‼」
ただでさえ涙脆い当方。案の定終いにはぼろぼろ泣いて。かすれた声で「パンフレット一部下さい」と購入に至った次第。(因みにディズニー作品でパンフレットを購入したのは初めてでした。これ、フルカラーな上に、めっちゃ良い紙使ってますね!)
公開して大した日にちも経っていませんし、これから大勢の人が観るのでしょうし…ネタバレしない、浅瀬を駆け抜ける感想で行こうと思います。…が。
文句が2点。
同時上映。『アナと雪の女王/家族の思い出』
22分。長い。
こちらはメキシコ少年の家族の話を観に来ているのに。もう…兎に角前座が長い。
しかもねえ…内容も…なんて言うか「歯科医院とかの待合室に置いてある子供向けの絵本」みたいな。(「エルサが風邪をひいちゃった:前回の続編」「アレンデールのクリスマス:今回の続編」いらんいらん)
クリストフ。キャラクター崩壊がひどすぎて。「お前!何かキメているのか?それとも…」と不安になる程。あんた仮にもヒーローポジションやろう?
そして改めて当方が思った事。一体この王国は一体どうやって生計を立てているのか。
まあ…無から氷の建造物を作る魔術を持つ女王が居るのならば…観光でやっていけるのかもしれないけれど…ただ、彼女精神的に不安定なんよな。
~なんて。兎に角蛇足な前座。これは「リメンバー・ミーが面白かったからもう一回観たい」と思っても、腰が引けてしまいかねない。
そしてもう一点。タイトル問題。
先述の『アナと雪の女王』だって。原題通り『FROZEN』で良いやんと思っている当方。『リメンバー・ミー』だって。分からなくはないけれど『COCO』で良い。寧ろ『COCO』が良い。
国。思想。死生観。家族の絆。記憶の中で生き続けるという事。そういう広大な世界を扱っているのに…最後は一人の女性に落とし込まれる。短いけれど。良いタイトルなのに。
まあ。だらだらとした文句はいいとして。
メキシコの文化。死生観。全く知りませんでしたが。
12歳。ミゲル。この辺りでは知らない者が居ない、靴職人一家。一家の大黒柱エレナお婆ちゃんが取り仕切る大家族の一員。
ミゲルはギターと歌が大好きな少年だけれど。昔音楽に依って悲しい思いをした一族は、代々音楽と触れ合う事を禁じてきた。
この町が生んだ、伝説の歌手。エルネスト。彼に憧れて。日々家族に隠れてエルネストのベストビデオを流しながら歌うミゲル。
メキシコで年に一度のお祭り。『死者の日』。普段から自宅に逝ってしまった先祖の写真を飾る風習のあるこの国では、その日になるとマリーゴールドの花やキャンドルを至る所に飾って先祖が帰って来るのを迎える。
そんな大切な日。広場で行われる歌のコンテストに出たいと切望するミゲル。けれど…家族の理解は得られず。落ち込むミゲル。不注意で写真立てを割ってしまったミゲルが改めてまじまじと見たその写真…点と線が重なって。
「僕のひいひいお爺ちゃんはエルネストだ!」そう思い至るミゲル。「だから僕はこんなに音楽が好きなんだ!」
テンションマックスのミゲル。勢い付いて音楽に付いての情熱を家族にぶちまけるミゲル。当然家族は戸惑い。そしてお婆ちゃんはブチ切れ。
飛び出すミゲル。「何が死者の日だ!バカみたい」「今日こそは。今日こそは音楽を。僕の音楽を皆に聞いてもらうんだ」歌のコンテスト会場に向かって全力疾走。けれど。
「自分のギターじゃないと駄目だ」と断られるミゲル。…諦められなくて。
「ひいひいお爺ちゃんなのなら。このギターを貸してください」
エルネストの墓に忍び込んで。死者のギターを掴んで鳴らした途端…ミゲルは死者の世界に飛んでしまった。
起承転結の起~承の下りを描いただけでこんなに長くなるなんて。まあ。これ以上具体的なあらすじには触れませんが。
日本にもある『お盆』(『お彼岸』というのもありますが)という文化。
けれど日本が真夏にひっそり先祖を偲ぶのとは違う。メキシコの『死者の日』は何だか陽気で華やか。力強い。というのも。
当方の推測ですが。それは「例えこの世界に実体が無くなっても。死者の国でまた家族に会える。そして幸せに暮らせる」という思想があるから。家族の繋がりが強いこの国では、死は必ずも悲しさ一辺倒では無い。
けれど。そんなポジティブな世界観にドスンと横たわる硬質なレギュレーション。「それは生きている人間が死者を覚えている間だけ」
「人は二度死ぬ。初めは実体を失った時。二度目は誰の記憶からも失われた時だ」
聞いた事のある言葉。それは死者の国に住む者達にとって唯一で最大の恐怖。
家族に愛され。そして毎年自分の事を語り継いでくれる。写真を祭壇に飾って。死者の日には道に迷わないように花と灯りで帰る家を照らしてくれる。
「そんな家族が居ない者は?」
誰もが自分を忘れた時。本当の死が訪れる。魂の消滅。 THE END。
死者の国へ行ってしまったミゲル。そこで出会ったヘクター。
「誰も貴方の写真を飾っていません」と。死者の国を出る事が出来なくて。けれど必死。「どうしても今年は出たいんだ」
どうしてヘクターがそんなに必死にこの世に行きたいのか。話が進む内に「まあ…こういう事だろうな」と推測は付きましたが。それが…あの人にたどり着いた時。当方の涙腺決壊。
そもそもどうしてミゲルの一族は音楽を禁じたのか。発端となった人物と出来事。
音楽は悪ではない。音楽を愛していた。けれど。音楽は家族を壊してしまった。だから音楽は封印した。
ミゲルの家族。先祖たち。彼等は決してミゲルが憎い訳でも意地悪をしたかった訳でも無い。寧ろ逆で。ミゲルが大好きで。大切で。だから音楽で壊れてしまった自分の様にはしたくなかった。
「でも仕方が無い。だって音楽が大好きだから」
また。流石天下のディズニー。音楽も映像も美しく。邦題になった、『リメンバー・ミー』どのバージョンも良かったですが…やっぱり最後のあれが…(涙目)。
そういえば序盤にけちょんけちょんに言ってしまった、同時上映の『アナと雪の女王~』。あれと本編との共通点。『鐘』ですか。
後、エルネストというキャラクター。彼の登場の仕方とその展開。ずっと「『アナと雪の女王』のハンス王子みたいだな」と思っていました。
見た事も触れた事も無い、メキシコ文化。強くて華やかで。陽気で大らかに見えるけれどどこか儚くもある。何事も家族の絆ありき。
異国の死生観が驚くほどすんなり飲み込める。
「近年のピクサー作品の中では飛びぬけた傑作。これは必見。」全部を網羅している訳では無い癖に…ぽつぽつ周りにそう言ってしまっている当方です。