ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「マイ ビューティフル ガーデン」

「マイ ビューティフル ガーデン」観ました。
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イギリス。ガーデン映画。

兎に角ポスターが。予告での風景が。美しくて。

こう見えて(どう見えて?)草花を愛する精神を持ち合わせる当方。勿論こんな素敵なガーデンライフを送っている訳ではありませんが。時折見かける、こういったガーデン映画は気になってしまい。観に行って来ました。

 

生後まもなく捨てられ。一風変わった育てられ方をした。そして現在。生真面目故に変わり者のベラ。図書館司書。独身。庭付き平屋アパートに一人暮らし。

 

「月曜日の歯ブラシ」「火曜日の」「水曜日の…」と一週間日替わりの歯ブラシをローテーション使い。

毎日同じ時間に起床。同じ時間に同じ食事メニューを摂取。

クローゼットには白、黒、グレーのモノトーンの服ばかり。(しかもシャツには全てきっちりアイロンが掛かっている)

寝坊している訳でも無いのに。玄関の鍵がきちんと掛かっているのかが気になり、暫く玄関で奮闘。結果ほぼ毎日職場に遅刻してしまう。

兎に角、マイルールにきちんと収まった毎日を送らなければ気持ち悪い。

 

そんなベラが苦手なモノ。「植物」

自由奔放で型にはまらない植物達。それらが苦手なベラの自宅庭は荒れ放題。

 

そんなベラを苦々しく思う、隣人のアルフィー。造園家であった、隠居老人の生き甲斐は「植物を愛でること」

 

「お前は地球を破壊している」「何だこの庭は」頑固で憎たらしいアルフィーに、折に触れネチネチ嫌味を言われるベラ。

そして遂に。ベラは管理人から「庭の世話込みでこの家を貸したはず。一か月で庭をまともな姿に戻さないと出ていって貰う」と通告される。

途方にくれるベラ。

丁度その頃。隣人アルフィーの弱味を掴んだベラ。彼の手を借りながら庭のリフォームに取り掛かる事になったが…。

 

「植物が苦手なら何故庭付きの家に住むのか」

見も蓋もない当方の突っ込み。言ってはいけないけれど…言わずにおれない。だって。

「ベラの庭。うろ覚えですけれど。ビール瓶を酒屋が運ぶ為に居れるケースみたいなやつとか、椅子とかが投げてありましたよ」

植物以前の問題。下手したらゴミ屋敷寸前か…少なくとも幽霊屋敷然とした佇まい。

確かに。誰もが四季折々の花々を愛で、愛せる訳では無い。価値観は人それぞれ。それは分かっていますが。ですが。

「やっぱり…それなら庭の無いアパートに住めばいいやん」

大体、几帳面で若干脅迫症を持っている感じの人間が。自身のテリトリーの乱れを許すものなのか…。

あんまりそこを突っ込むと、話が前に進まないし野暮なので止めますが。

 

「一言で言ってしまうと『アメリ映画ジャンル』ですね」

 

おっと。話を進めようとするあまり、一足飛びに当方なりの解釈まで行ってしまいましたが。

「一見風変わりな女子が。変わった隣人やその家政夫に暖かく支えられ。そしてかけがえのないモノ(恋人。夢。豊かな生活)を手に入れていく」そんな映画。

「女子にとって大変都合の良い映画」言い過ぎでしょうか。

大体、あそこまで荒れ果てた庭を一か月で戻せという厳しいミッション。しかもベラは元々何の思い入れもその庭に無い。

隣人アルフィー。気難しく頑固。口も悪い彼は、遂に家政夫ヴァ―ノンを怒らせてしまう。

アルフィー宅から出ていったヴァ―ノンは、話の流れで隣人ベラの家にて働く事になる。(ところで、イギリスの図書館司書って…そんなに高給取りなんですか?)

「出ていけ」と啖呵は切ったけれど。結局アルフィーはヴァ―ノンが居ないと暮らしがままならない。特に食生活が。

「ヴァ―ノンを返せ」気持ちとは裏腹に。強い口調でベラに要求するアルフィー。そして。

「ヴァ―ノンの料理と引き換えに、ベラの庭リフォームを手伝う」という条件が両者の間で成立し。

 

「正直。ベラとヴァ―ノンがいい感じになって…という流れで良かったのに」

 

庭のリフォームに集中しない。この作品のもう一つの柱。「ベラの恋」

 

ベラの働く図書館にやってくるビリーという青年。「私語禁止。飲食禁止」をガンガン破ってくるビリーが気になるベラ。

ビリーは、自作した機械仕掛けの鳥を飛ばす為に、日々資料を朝っていたと知るベラ。

そして毎日言葉を交わす度に近づいていく、二人の距離。

 

「何なんだ。この高等遊民は」

ずっと労働階級の当方の憎むべき相手。何?親の遺産で?いい歳してこんなことして毎日遊んでんの?「良いご身分ですな~(憎たらしい声で)」

 

すっかりいい雰囲気の二人。実は小説家希望のベラは、ビリーの作っている鳥が主人公のお話しをビリーに語り。「もっと聞きたいな」盛り上がる二人。

 

「え?二人何かキメてんの?それ素面なの?」誰かを想う気持ちなんて永久に失われた当方の震える声

『彼は酒に酔っているのではない。自分に酔っているのだ(カラマーゾフの兄弟より)』

…って。ふざけるのはいい加減にしますが。

 

正直「美しい庭になっていく様を見たい」という欲求で鑑賞した作品でしたので。何だかこういう恋愛パートが入ると「それはいいから」という気持ちになっていしまい。

 

「だって。ベラのリミット、結構シビアやで」なのに。

 

「ビリーとデート…と思いきやの!裏切り?」浮かれきって~からの一気に失恋モードに転落。もう何も出来ずに自室に閉じこもるベラ。

「時間は無限ではないぞ!」イラつく当方と打って変わって。すっかり人生の先輩ポジションを取り戻した、アルフィーの受け止めて、しっかり背中を押してくれる様。

 

「というか。アルフィーの庭よ!」

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何なんだ。この楽園は。正に「英国式ガーデニング」溜息を付くばかり。

「そしてアルフィーの部屋。あそこに住みたい。もっと見たい」珍奇植物愛好家たち垂涎のしつらえ。絶対に飽きない。あそこに居たい。

 

「一人の頑なで不器用な女子が。殻を破って、広がる世界を見た。そこは草花に覆われた美しい世界。暖かな人達。そして彼女は羽ばたいていく」

 

赤ん坊の時。捨てられた彼女を暖めたのは鳥。そして、自らを閉じ込めた彼女に世界を見せたのは機械仕掛けの鳥を持った青年。そしてその舞台を整えた隣人たち。そういう事を言いたいお話しだという事は十分に伝わりましたよ。勿論。「これはベラの物語」分かっている。ですが。

 

余りにも圧倒的だったアルフィーの庭。そして部屋。

 

ベラに関しては「一生幸せに暮らしましたとさ!」と早口で言ってしまってから。

 

「もっとアルフィーの庭を見せてくれ。造園家の彼の生き様をもっと語ってくれ。もっと。もっと」

 

アルフィーについての物語を。そして彼の「ビューティフル ガーデン」を。

寧ろそちらを欲する当方です。