映画部活動報告「ダゲレオタイプの女」
「ダゲレオタイプの女」観ました。
黒沢清監督のフランス映画。
フランス発の写真撮影技術「ダゲレオタイプ」長時間の露光を利用し、水銀版にその唯一の姿を刻み込む。
その技法を生業とする写真家の助手になる主人公。彼がその写真家の住む屋敷に向かい、面接を受ける所から物語は始まり。
思いがけない規模のお屋敷(最早城)そこに住む、写真家とうら若き一人娘。
そして「青いドレスの女」
「写真学校の学生とかの、下手に知識がある奴は駄目なんだ」面接は速攻通過。早速見せられる「ダゲレオタイプ」撮影。その壮大なアナログ感。
結局は家族操業。美しく、若い娘。いわくありげなこの世のモノでは無い青いドレスの女。でも。自分には危害を加える訳でもないし。
「まさか、年に2回も黒沢清監督作品が観られるとはなあ~。」
昨年。カンヌでも高評価を得た「岸辺の旅」当方の拙い映画感想文も書かせて頂きました。そして「クリーピー」。
「あんたこそが「クリーピー」だよ」竹内結子にそう言って。いつ「ラ王食べたい」と言い出さないかと西島秀俊を揶揄し。
皆大好き。黒沢清作品。
「岸辺の旅」が余りにもまともだったせいで。(勿論名作ですよ)却って混乱してしまった、古くからの清ファン。
「突然階段から日本兵が落ちてくる」「突然部屋の隅にゴスロリのおねいちゃんがうずくまっている」「中谷美紀が無意味にウイスパーボイスで語りかけてくる」「首長竜が側溝から首を出してくる」「不安を語りだすと自然と照明が暗くなる」云々。こんな事が起きないかとはらはらどきどきしてしまい、集中出来ない。
全く…憎めないですよ。清ってやつは(ちなみに。下手に他の真面目な監督でそんな事をしたらキレると思いますね)
フィールドをフランスに移動しつつも。その「憎めない清」っぷり、満載。
と言うよりも。「清、フランスの方が合ってるやん」思わず敬語を忘れて(今さら)つぶやく当方。
映像の美しさ。フランス人やその生活基盤を映しているので絵面も美しい。何より「ダゲレオタイプ」の美しさ。はかなげで、どこか冷たく硬質な感じもする印象を的確に表すフランス人。(やっぱり、アジア人では無理)
城という非日常感。女子の可愛さ。男子のむさくるしさのソフトフォーカス効果。(だってあいつ。何で赤の他人があそこまで入り込んでくるのか)
そして。フランス映画なら許される。整合性の無さ。
途中までは、何とか辻褄を合わせながら鑑賞した。でも。
「何であの時。彼女があそこに居た」
そこからの怒涛の階段落ち。そして強引な畳みかけ。勢いだけは半端なくて。愛する彼女の扱いは雑で。そんなのあり得なくて。
でも。「そんな不条理が起きそう」という印象で。納得出来る、フランス映画。
だって。こういうフランス映画。観たような気もするもの。
不条理。辻褄は合わない。でもお洒落で美しい。そんなフランス映画。観た事あるもの。(女子口調)
そこからはぐっと「岸辺の旅」に近づいて。あり得ないのに、何だか泣けてきたりもする訳ですが。
まあ。現実的な意見を述べさせてもらいますと。
「筋弛緩薬のあんな大瓶は無い。」「筋弛緩薬を少しでも投与したら。あんなしょうもない機械なんかで体位を保持なんて出来る訳が無いし。」「そもそも、息が止まるぞ。」筋弛緩剤というのは、文字通りだらんと全身の力を脱力させますのでね。立位保持も無理ですよ。
そして一人娘のキュートさ。そして温室の立派さ。
あの主人公の頑なな行動に。やっぱり付いていけない気持ちにはなりましたが。
怒涛の畳みかけに。無理やり引きずりまわされて。
「彼女は。もしかしたら、元々夢だったのではないか。長くて一瞬の水銀板に焼き付けられた…」
気づいたら一人。夢の跡。
「やっぱり、こんな気持ちになるなんて…嫌いになれない…」
嫌いになれない黒沢清監督作品。必見です。