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ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「スウィート17モンスター」

「スウィート17モンスター」観ました。

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ネイディーン17歳。

子供の時からずっと勝ち組の兄を持ち。比べて、自分は変わり者で負け組だと自覚。母親は不安定。唯一の理解者であった父親はネイディーンが11歳の時他界。
時が経って。すっかりイケメンになった兄。いじけて屁理屈ばかりを言う、いけてないネイディーン。でも構わない。ネイディーンには幼馴染のクリスタが居るから。二人は親友。クリスタには何でも言える。分かり合える。リラックスして、自然でいられる…なのに。

まさかの。兄とクリスタが今更恋に落ちてしまう。裏切られ、ひとりぼっちになってしまったネイディーン。

愛すべきネイディーンの何とも不格好な、ドタバタな日々。

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「これは当方の話か」(震え声)

いや。当方はぴったりこんな青春は送っていませんがね。ですが…何しろネイディーンのあれこれ。身に覚えがありすぎて。悶えて震えて…いたたまれなくて。

奇抜な恰好。というか古着と一点アクセントを置いた着こなし(スニーカーに拘り)。誰彼ともなく何でもチャチャを入れる。そういうのが粋だと思っている。

過剰な自意識。他人と比べて自分は劣っている、変わっていると主張するが、深層では寧ろ自分は他人とは違うステージに居ると思っている。だから他人から理解される訳が無いと周りを見下している。自分には特別な何かがあると思っている。でもそれが何かという探求も、努力もしない。一生懸命な人を馬鹿にはしていないが、茶化してしまう。ユーモアのセンスがあると思っているが、どこかずれている。大人はみんな馬鹿。

「恐ろしい。全部覚えがある…」

ネイディーンの親友。クリスタ。彼女の存在はネイディーンの心の支え。
恰好良い男子にミーハーな熱を上げて見せるけれど。特にアタックする訳でもない。恋なんてものはどこか現実離れしていて。でもいい。クリスタが居れば。

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「二人で可愛いお婆ちゃんになろうね」作中にこんなセリフはありませんでしたが。

「女同士にそういう友情は成立しないんだよ!」(なぜか立ち上がる当方)

案の定。母親が旅行で不在の夜。
自分は酒に酔い潰れてトイレで寝ていた、そんな夜に。
まさかの親友クリスタと兄の急接近。

「どうせ酔ってやっちゃっただけよ!」ところが。何だか上手くいって。正式に付き合い始める二人。ネイディーンとクリスタの友情終了のお知らせ。

荒ぶるネイディーン。暴走止まらず。

クリスタには「私か兄かどちらかを取って」と無茶振り。兄にはボロクソに言い。母親には甘えたりダダをこね。好意を寄せてくれているクラスメイトのアーウィンを振り回し。かねてからおちょくっている担任教師ブルーナに絡みまくり。あまつさえ、ミーハーに騒いでいた男子にまでメンヘラを突き抜けた「サイコなメール」を誤送信してしまう。

「誰か!誰かネイディーンを抱きしめてやってくれ!」悲鳴の止まらない当方。

不器用にも程がある…当方にも覚えがあるんで何とも言えないんですが。こういう時期のこじらせた自意識って、その後の人生に於いてだいぶん引きずるんでね…早く手を打たないと駄目なんですよ。

「私はどうせ変わっているから」「私を理解出来る人なんていない」「周りの常識的な奴なんて皆馬鹿」そうやって自分で自分の周りに壁を作って。そのうち誰もその壁は越えられなくなってしまう。それどころか壁の内側に人がいるなんて思わなくなる。

そしていつしか自分で作ったその壁で、自分も周りの景色が見えなくなってしまう。実はずっと待っているのに。誰かが迎えに来てくれるのを。「私の事を理解してくれる誰か」が。

「げに恐ろしき『自意識の壁理論』(当方の持論)よ」

ネイディーンのこねる屁理屈の全て。「そっくりそのまま貴方にお返しする。ただ…耐えられないと思うけれど」

「貴方まだ何者でも無いよ」


「この最悪な世界」そうですかね?少なくともネイディーンの世界。気持ちを落ち着けてゆっくり見て見たら。結構捨てたもんではないですよ。


「担任教師のブルーナ。最高」

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一人でゆっくり過ごしたい昼休憩。なのに毎回突拍子もない事を言って来るネイディーン。追い返す事も、いい加減な対応も出来る。なのに。
毎回大人の余裕。ウイットの効いた対応。いつも冷静で洒落がきいてる。そしてサラッと言える。「君は僕のお気に入りの生徒だからね」

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「ネイディーンよ。これが大人だ」
見習うべき、目指すべきはこの担任教師。


ネイディーンに想いを寄せるアーウィン

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「めっちゃめちゃキュート!才能もあって。(お金持ちで)仕草も表情もネイディーンに振り回される所も可愛い過ぎる。そして自分の世界をしっかり持っている。これは絶対に逃したらあかん案件やないか!」
夜の遊園地デート。自宅プールデート。なんなん「ホーム・アローンごっこ」って。当方ならノリノリで食いつきますね。


そして兄。

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イケメンで。いつも自信満々。自分はいつも自分に自信が持てないから。だから兄が憎たらしくて。しかも唯一の親友も兄に取られた。でも。

「お兄ちゃんだって、見えない所で努力しているんやで」静かに口に出す当方。

まだ子供だった時に。一家の大黒柱であった父親を失った。残されたのは、頼りない母親と幼い妹。自分がしっかりしなければ。この家族を支えなければと言い聞かせたのであろう、兄。
(そしてお兄ちゃん。実際には別に嫌な奴でも嫌味な奴でも無いですからね)

でも。ネイディーンだって、そこまで子供な訳では無い。

兄が嫌な奴じゃない事は分かっている。兄とクリスタの事も、祝福するしかない。軽い気持ちで絡んでいた相手達のバックヤードの深さ。自分とは比較にもならない世界を彼らは持っている。ちっぽけなのは世界ではなく、壁を作りまくった自分。

素直になれなくて。強がって。でも、周りが自分を置いていくのではと気が気じゃなくて。自分が変わるしかないんやろうけれど。それは怖くて。結局スマートに動けなくて。みっともない事ばかりしてしまって。泣きそうで。誰かに見つけて貰いたくて。抱きしめて欲しくて。

「大丈夫」

ネイディーンを取り巻く世界は温かい。

余りにもシンクロする気持ちが多くて。悶えて苦しくなりましたが。

17歳で。その壁から光が見えたネイディーンを羨ましく思い。

「出来れば17歳でこの作品に出会いたかった」

歳老いた当方は、古くなった自身の壁を見回すばかりです。

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映画部活動報告「パージ:大統領令」

パージ:大統領令」観ました。

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2013年公開となった「パージ」
今作がシリーズ3作目。
本国アメリカでは2016年、正に大統領選真っ最中に公開されて話題となった。

どこかのアメリカ。「一年に一日、19時から翌朝7時までの12時間。殺人を含む全ての犯罪が合法となる」犯罪抑止の為の、年に一度の大人のハロウィン。
お蔭でアメリカの通常時犯罪発生率はわずか1%まで減少していた。
しかし。その狂った一日の標的にされるのは、多くが保険金を払えない者や路上生活者。所謂貧民層。
18年前。パージで家族を殺された「ローン上院議員
大統領選で最終候補まで残った彼女の公約は「パージ廃止」
しかし、それを良く思わない者も居る。現在の政権を握る者。保険会社。武器製造、販売者。パージ賛成派。
喧々諤々の議論が交わされる中。今年もまた、パージの日がやってきた。

パージシリーズ。どういうレギュレーションなのかは知っていましたが、未見であった当方。ですが。

「何もかも上手くいかなかった金曜日。ともすれば爆発しそうな自身を、辛うじて抑えたのは理性」そんな夜。思わず選んだ作品。パージ。

まあ…前二作をきちんと押さえれば、もっと理解も楽しみ方も変わったのかもしれませんが。それでも結構分かりやすく楽しめる作品でした。

国家権力も医療も防災も…およそ国民を守る力が休止。抑止力を一切失った、本物の無法地帯。さあ何でもしてもらって結構ですよ。そんな夜。

「おっかねええ。当方なら、家族を連れて国外に脱出するよ。立ち向かうのも、びくびくして隠れるのもどっちも無理」

パージから守ってくれる。そんな保険も存在するけれど(そんなの信じられん。だってありとあらゆる犯罪に対して絶対安全なんて保障されないと当方は思うから。そしてその保険会社で働くリスク。従業員…。危険手当どころじゃないよ)案の定、パージ前日になって保険料を吊り上げ。払えなくなった者達は自らの力で己を守るしかない。
そうして、小さな日用雑貨店を守る事になった自営業店主ジョーと、従業員マルクス

そして。今回のパージで、恐らく誰よりも命を狙われる事になった「パージ反対派のローン上院議員

これまで「パージ免除」とされていた高等議員達も、今回からはそのカバーを外された。誰もが平等に犯罪に遭う事になった一夜。

ローン議員を護衛する事になった「レオ」

ローン議員の自宅。チームで彼女を守っていたはずなのに。裏切者によって、チームはあっさりと崩壊。たった一人残ったレオと共に魑魅魍魎達が跋扈する街の中へ逃げる事になるローン議員。

銃で撃たれ、負傷しながらも驚異的な防衛力を見せるレオ。危ない目に遭いながら二人は、前述した自営業者ジョー達と行動を共にする事になる。

追ってくる敵から逃げながら。パージを楽しむ者。悲しむ者。立ち向かおうとする者。そして、パージを逆手に取って抗議しようとする者。色んな姿を見て。

「結局物事は暴力では解決しない」

そんなメッセージ性を一応…当方は感じました。

とんでもない法案。パージ。人間の悪意や心の弱みに付け込んだ、とんでもない「息抜き」の一夜。何をしたって良い。一体そこでどれだけの良心を保っていられるというのか。そして結局巻き込まれるのは決まった弱者。これはただの金持ちの憂さ晴らし。でも…どれだけそう声を上げても、結局声は届かない。何時まで経っても声は届かない。失望。

そして。「ならばこちらもパージを使って相手に牙を剥けば良い。やられる前にやってしまえ」まあ確かにそうなりますわ。

「それをしては同じ。パージを利用してしまったら、フェアでは無くなる。お願いだから、選挙で勝たせて。私を信じて」

こんなにぶっ飛んだレギュレーションを持つ作品なのに。非常に真っ当な展開をみせた…意外と安心安定して進んだなあと思った当方。

まあ。その他チャチャを入れていた事と言えば…「レオ無敵すぎる」肩って言うか…鎖骨周囲位を撃たれていませんでしたか?あの辺りは重大な血管も走っているし、まず死にますよ。又は失血死。少なくとも手は動きませんな。なのに。どんな脳内麻薬が出たのか。驚異的な身のこなし。

そして「こんな有事に。眼鏡を失ったら終わりだ!!」終盤、ローン議員の眼鏡が騒ぎの中で無くなりましたが…視力を失うって事は万死に値する事態やのに…結構動けるローン議員。まさか…伊達?現在の日本の防衛大臣と同じ?伊達眼鏡議員?当方の胸中で地味に広がるローン議員への疑惑。

あの「チョコバー云々」と騒いでいた、いかれたティーンエージャー集団に関しては「やかましいから早く消えてくれ」と冷たい当方。

そして、黒人の皆さんがやたら恰好良かった。特に自営業者ジョー、店員マルクス。そして元女ギャングだったレニー。
あの三人でも一つ作品が作れた位の、当方お気に入りの三人組。その末路(確かに…ああいう結末になるんやろうな~というフラグは立ちまくっていました)

何だか続編の存在も匂わせながら。そこを追っていくかは…正直分かりませんが。

爆発して壊れそうだった、金曜日の当方の心を。
何となくならしてくれた…そんな気がした作品でした。

映画部活動報告「タレンタイム~優しい歌」

「タレンタイム~優しい歌」観ました。

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マレーシア。2009年に公開された、ヤスミン・アフマド監督作品。公開同年にまさかの急逝。遺作となった作品。

ある高校で開催される事になった「タレンタイム」所謂演芸コンテスト。7周年の今回。7人の演者がオーディションで最終選出。
そして同時に演者を送り迎えする(高校生の)送迎バイク部隊も選出される。

主にはその演者の中の少女ムルーと、彼女の送迎担当になった聴覚障害を持つマヘシュの恋。優等生ハフィズと、彼のせいで二番手に落ちてしまったカーフォウとの関係性。その二つを軸に。物語は進んでいく。

兎に角前評判の良かったこの作品。

「そうか。マレーシアって…」鑑賞後。これまで触れた事の無かったマレーシアという国に思いを馳せる当方。

「マレーシアは多民族国家です」冒頭。このことわりが表示され。
その後。話が進む中で、無論翻訳こんにゃくを所持しない当方には彼らの言語を聞き分ける芸当は出来ませんが…「これは英語だ」「これは…何か現地の言葉だ」兎に角言語が入り乱れる。これは字幕が難しかっただろうなと思った作品。

しかも。「言葉」は口に出す類だけでは無くて。「手話」も入ってくる。

高校で。「タレンタイム」という演芸コンテストが行われる。マツコ・デラックスみたいな先生の号令を皮切りに。集まる生徒達。そしてオーディション。

すぐさま「次!」と切り替えられる中で。ひときわ光ってみせたピアノ弾き語りのムルーとギターのハフィズ。そして二胡のカーホウ。オーディション通過。

タレンタイム本番を最終目標として。各々練習する日々。でも。それに没頭出来る日々ではない。

ある者は恋に落ち。ある者は永遠の別れを迎えようとする家族を持ち。ある者は自身の能力の限界に胸を痛めている。

演者の個人送迎部隊。

高校生でバイク通学…アジアやしそれはいいとして、この人選。マツコ・デラックス似の先生は何を考えているんですか?

「そりゃあ、多感な高校生男女をペアにしたら…恋に落ちるに決まっているやんか!」

「貴方はタレンタイムファイナリストに決まりました」という知らせを持って自宅にやってきた、無口なイケメン。そりゃあ「貴方だ~たんだ。貴方だ~た~んだ。嬉しい。楽しい。大好き!」ってなっちゃいますよ。

しかも。「なにこいつ。真面目に送り迎えしてくれるけれど、愛想なさすぎ」からの「耳が聞こえなかったの?…ごめんなさい」もう加速的にラブは拡大。「だけど。気になる。昨日よりもずっと」アイツはとんだマーマレード・ボーイ。

(またね…。純朴なはずのマヘシュの「距離近すぎ問題」ムルーにヘルメットを装着してあげる時の距離感。「えっつ?もしかして…チューされちゃうの?」みたいなドキドキ感。ずるい。ずるいまでの天性の「恋人会話力」を持ったマヘシュ)

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マヘシュもまたたく間にムルーに恋してしまう。両想い。高校生同士の恋。好きだけが先行していればいい恋。なのに。

「二人の前にはだかる、マヘシュの母親」ここで効いてくる、マレーシア多民族問題。

「そうか…宗教の違いでこんなにも頑なな溝が生まれるのか…」

マシュヘの叔父。奔放で。プレイボーイ。好き勝手していたと思っていた叔父の、真っすぐ過ぎた、秘めたる純愛。

宗教の違う相手への憎しみ。怒り。当方は強い信仰心は持っていませんので、マシュヘの母親をどうこうは言えません。うわべだけの非難は薄っぺらすぎるから。ですが。

マシュヘの叔父が。マシュヘの姉が。「どうして?好きなら良いじゃない」マシュヘの母親に語り。
そしてマシュヘが叫ぶ「貴方(母親)の事はとても尊敬している。でも…ならば教えて欲しい。好きだという気持ちの忘れ方を」

マッシュへの母親が、決して悪人だとは思わない。宗教とは別の、本能的な「自分の大切な人を守りたい」という判断基準に「宗教の違い=価値観の違い」という概念があって。だから自分の大切な人が傷付けられるんじゃないかと思って必死に牙を剥いてしまう。母性故の防衛本能。
でも…それは自分の大切な人にとっては「誰よりもかけがえのない存在」であって。

叔父からのメッセージ「いかれた母親には耳を貸すな。愛する人がいたらためらうな」

ガチガチな価値観。無意識で、ある意味無神経な先入観。向き合っていかなければいけないのであろう、マシュヘの母親。

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対する、ムルーの一家のフラットで開放的な家族。

イギリス人の祖母を持ち。歳の近い姉妹は何かと言い合いをしながらも仲良し。家族全体が常にじゃれ合って仲が良い。中華系メイドのメイリンに無神経な事を言う客人には、ユーモラスに。でも毅然と抗議する。
娘の恋する相手を温かく受け入れる。

どちらも、家族を大切にする姿。なのに…起きてしまう「二人の恋を引き裂く事態」

もう一つのスポット。ハフィズとカーフォウについて。

ちょっと前の二人で尺を取りすぎてしまったのもあって…あっさりと書いてしまいますが。

出木杉君は基本好かれないよな…」だって。ドラえもんでも出木杉って二軍止まりじゃないですか。それはやっぱりとっつきにくいし、一緒に居たら自身と比較して自身を卑下してしまう。それは…楽しくない。結果距離を置いてしまう。

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まあまあイケメン。勉強が出来て。歌も上手くて。そんな愛せない彼の。「実は末期の脳腫瘍の母親がいる」という事実。(しかもそれを周りには言わない)
放課後。母親の病室でのひと時。甘えたくて。でもいい子で通して(ところで。彼の専属送迎部隊は?)

観ている側に、表面上では徹底的に「出木杉」で通した彼の。見せなかった苦悩に思いを馳せ。最後。やっと母親に甘えるそぶりを見せた彼に。そしてタレンタイムに「ベストを尽くす」と参加した彼に。

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そして。そんなハフィズをずっと憎んでいたカーフォウの、二胡の演奏に。

最後の最後。どっと涙が出て。止まらなくなった当方。


色んな人がいる。色んな考え方がある。一見相容れない事。でも。ゆっくり落ち着いて相手と対峙すれば。決して何もかも分かり合えない訳では無い。
時間が必要な事がある。視点を変えれば景色が全く変わる事がある。ある時突然に何もかもが分かる時もある。

互いを分かり合う時。言葉は要らないのかもしれない。視線を交わせば。握手をすれば。肩を叩けば。抱き合えば。…ただ寄り添えば。それだけで伝わる事は沢山ある。

幾らでも深読み出来る。でも易しい。優しい世界で。誰も悪者の居ない世界で。

確かに優しい歌を聞いた。そんな多幸感で一杯になった作品。

マレーシア。いつかは行きたいです。

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映画部活動報告「ハードコア」

「ハードコア」観ました。

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「目が覚めた?さあ始めよう!」

イリヤ・ナシュラー監督作品。ロシア+アメリカ共同制作。全編FPS(一人称シューティング)スタイルのアクション映画。

主人公のヘンリー。デフォルメされた手術室(っぽい部屋)で目覚めたら、目の前にはエステルという美女。どうやら彼女は自分の妻で、自分は瀕死の状態から機械の体を手に入れて覚醒したらしい。妻は何かの技術者で、そういった人造人間を作る仕事をしているとの事。
と言われても、何も思い出せず。
「後は発声装置を付けるだけね」と妻に案内された別室で。作業の前に突然のエマージェンシー。

「あんたAKIRAの見すぎだぜ!」というハイテンション赤ハイネック、エイガン。「何かやっているのか?」というキマりっぷりで、その部屋に居た研究者達を超能力で殺害。大暴れ。

「逃げろ!」妻と手を取り合い脱出…したのもつかの間。妻はエイガンに誘拐されてしまう。

妻を追い求めるヘンリー。そして現れた道先案内人、ジミー。ヘンリーの命を狙うエイガン。3者の追いかけて、追われて、ぐるぐる回るちびくろサンボ

妻を。そして失った記憶を取り戻せ。

…という事をやっていたのだと、当方は解釈しましたが。

「この作品を、一般的な映画の感覚でどうこう言ってはいけない。」

あくまでもこの作品でやりたかったのは「FPSという手法で長編映像を作る!こういう画を見せたい。体感してもらいたい!」
だから…ストーリー云々とか言ってはいけないと。喉元まで出かかったもやもやを何度も飲み込んだ当方。

(だって。そもそもエイガンの最終目的って何なの?単に冷やかしのお遊びなの?AKIRAごっこなの?このお金は何処から出ているの?どういう社会なの?仲間は一人しか居ないっぽいけれど…どうやって構成された組織なの?…って言うか、エイガンって何者なの?エトセトラ。エトセトラ)

そういう事を言ってしまうと「つまんない事言うなよ!」とはっ倒されそうやし…特に答えも無さそうなんで。考えなかった振りを決め込む当方。

「だってFPSゲームそのものなんだぜ!」

「だって当方はゲームには全く触れなかった種族なんだぜ!」

昔々。学童期に一世を風靡した「赤いファミコン

勿論当方は所持していませんでしたが(欲する事もありませんでした)数少ない友達の家に遊びに行くと必ず皆で「マリオゲーム」ファミコン大会が始まり。
無の境地で同席。そっとしておいてくれたらいいのに、誰かが「当方もやりなよ!」と発言。無理やりコントローラを握らされ。案の定、全くルールも操作も分からない当方マリオは瞬時に死亡。その、余りの早さに静まり返るファミコン大会。

世界に誇れる日本のゲーム文化に…「『オセロ』と『テトリス』はやった」程度しか触れなかった当方。


「文句ばっかり言う気やろう!じゃあ観るなよ!」言われそうですが。

「あの。テレビで昔やっていたじゃないですか。ジェットコースターの、乗っている目線の映像。あれが結構好きだったんです。」

大きなスクリーンで。壮大な体験型映像を観たかった。体験したかった。そういう鑑賞動機でしたが。


FPS酔い。したかった。」

これこそ4DX案件やのに。3D?でもやっていなかったんじゃないですか?(どこかでやっていたらすみません)
2D字幕で鑑賞した当方としては…正直酔うほどでは無かったです。

まあ。アクションが完全に人間離れした超人級やったから、自身の体と心が付いていかなかったのか。

「人の命が空気より軽い世界」で。
ばんばん人が死ぬ。兎に角終始殺し合い。走って追いかけて飛んで。殴って蹴って銃で撃って。

正に当方のイメージするゲームの世界。迎え討つ雑魚キャラやらを殺しながら、次々と新しいダンジョンへステップアップ。
(あの。エスカレーターで巻き添え食ってとことん転がっていった通行人の女性。あの人は不憫で仕方ありませんでした)

基本的にはずっと突っ走っている中。ちょいちょいルールを説明してくれる、道先案内人ジミー。

「基本母体は一つで。数多のコピーロボットを使い捨てしながら、主人公ヘンリーを案内するジミー」
ジミー役のシャールト・コプリーが楽しそうで何より。扮しているのは概ね好きなキャラクターでしたが。あの、名古屋万博のモリゾーみたいな奴が出てきた時はちょっと笑ってしまいました。

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後は…やっぱり「ロシアン風俗店」あそこは詳しくやって欲しかったですね。(さらっと)

エステル役のヘイリー・ベネット。あの佇まいは、やっぱりこういう役に嵌ってしまうんやなあ。ちょっと安易すぎると当方は思いますが。

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ノンストップで駆け抜けて。(「で、結局さあ!」という言葉を飲み込む展開で着地)まあ…斬新な映像と、実は単純なストーリー。

でも。1時間36分もこのスタイルで突き抜けた。それは偉業であったと。

当方はそう思います。

映画部活動報告「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」

「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」観ました。

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1991年に公開されたエドワード・ヤン監督作品。

1961年。台北で実際に起きた、未成年の少年による殺人事件。それをモチーフとした、驚異の3時間56分。伝説の映画。

4Kレストア・デジタルリマスター版として。25年振りに映画館スクリーンに蘇る。

数年前。エドワード・ヤン監督の「恐怖分子」をたまたま映画館で観て。「何だ何だ。この風を纏った映像は。こんなのがカメラで撮れるのか」と驚愕し。余りの瑞々しさに痺れた当方。

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今回「4時間トイレ休憩無し。ノンストップ」と高いハードルがありましたが。それを上回る期待値に押され。当方の住む地方での初日初回に観に行ってきました。

「万全のコンディションで臨まなければならない」

なのに。前日職場仲間に唐突に誘われた花見。酒の前に無力過ぎた当方の、悲しい狂った宴。
(恐らく翌日の映画チケットを映画館に取りに行こうとした…のか?)当方の居住地とは真逆の方角の電車に乗車。入眠。起きたら他県。最終電車な為、帰宅不可能。
ある意味観光地な駅に降り立った為、泊まれる所は観光ホテル。そんな思わぬ小旅行をしてしまった。そんな朝。

「だが当方は。牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件を観に行きたい。行かねばならぬ」

グダグダのコンディション。眠いし、二日酔いで気持ち悪いし。自己嫌悪で気分も最底辺。
快速電車を使っても一時間以上掛かって。やっと馴染みの映画館にたどり着き。「残席3席」という奇跡のチケットを入手した時。もう倒れんばかりでした。

そんな「当方は愚か者です」という見えないプラカードを首から下げて。鑑賞した当方でしたが。


「何故皆様、すんなりこれを受け入れて飲み込んだみたいに言えるんやろう」

二日酔いを差し引いても、初見ではしんどい。これはしんどすぎる作品。なのに。
鑑賞後の口コミ等を幾つか見かけましたが。概ね手放し絶賛の声なんですね。信じられん。映画を嗜む紳士淑女の皆さまはよほど柔らかい感受性をお持ちなのか。当方が馬鹿なのか。

何というか。「何だかとんでもないものを体験した」という衝撃。

1960年代の台北という時代背景。日本に統治されていた台湾と、そこに入り込んでいった中国からの外省人。その一見共存しているようで横たわる冷たくて硬質な関係性。貧富と階級。安定しない生活と治安。不安定な大人達に、実はしっかりと影響を受けている子供達。
夜間学校。不良グループ同士の対立。抗争。そこで揺れる主人公の少年。そして恋。

主人公の14歳の少年。少年が軸なはずなのに。少年を取りまく要素が多い。人も背景も感情も。そして画面の殆どが暗い。

二日酔いで。寧ろ脱水に傾いていた当方の体。依って「鑑賞中の尿意」の心配はありませんでしたが。如何せん、気を抜いたら眠りに落ちてしまう。案の定、思わず意識が飛んだ時が…正直何回かありました。

「ああもう。誰が何をしている所?今は何が起きている所?」

見失って。何だか泣きそうな気持ちになった時が時々ありました。(特に前半)ですが。

中盤以降。色んな所から差し出された提示がとんでもない歯車となって。最後に怒涛の結論を弾き出した時。色んな感情が決壊して押し流された当方。

話の序盤。学校の隣にある、映画スタジオから懐中電灯を盗んだ少年。
それを後生大事に携帯して。肌身離さず。
夜間学校の学生。不良グループとの関わり。自宅のプライベートスペース(押入れ)ある夜の決起集会。

暗闇の中。少年を。そしてその仲間を。恋する少女を。出来事を。照らし出したのはその懐中電灯。

「暗闇というのが、少年そのものを暗示していたとしたら。暗闇の全貌を観客は必死に懐中電灯の明かりで見ようとした。見えない。もどかしい。でもやっと慣れてきた頃に。懐中電灯をスタジオに返した。その後…闇が光に覆われた時。少年(暗闇)の世界は。そしてその象徴であった少女は。崩壊する」

話がまた行ったり来たりしますが。

映画が始まった時。少年と父親が、街の中を自転車で走る。そのどこまでもどこまでも柔らかい光。そして、話が進むにつれて暗く、闇に覆われていく画面。そして。あんなに人工的な屋台の明かりに煌煌と照らし出されてしまった少年の凶行。もうそれ以降暗闇は無い。最後に少年の家族たちで終わる、その落ち着いた光。そのバランス。

演技経験が殆どなかった少年少女達の。計算の無い演技。危なっかしくて。生々しくて。変にリアル。
あの吹奏楽の演奏の合間の。絶妙な音量と間で交わされる告白。うっかり聞き逃がしてしまったりもしたけれど。実はメモしたかった位の名言の数々。
少年の友達。エルヴィス・プレスリーエピソードに全当方が泣くラスト。

「あの少女。絶妙なファム・ファタール
万人受けする器量では無い。ましてや不良グループのトップ、ハニーの彼女だとか。「私を皆が奪い合う」とか。そんな風には見えないのに。でも…何だか惹かれてしまう。恐らくあの少女はハニー以外の誰のものにもならないから。あの少女がそう決めているから。

「恐怖分子の彼女もそう。手に入りそうで、結局するっと手からすり抜けていく…」



映画を観る時。提示される出来事や背景や人物を。出来る限り追っていきたい。見落としたくない。きちんと着地して欲しい。どこかでそう思っていたんだなと、自身について思った当方。

だから。情報量が莫大すぎて。それが消化出来なくて。映画を鑑賞している途中は一時、絶望と焦燥感で一杯になった。けれど。

「一人の人間を語るとき。その人間はどれだけの情報量に満ちているのか。そしてその全てに帳尻が合って、全て説明しなければいけないのか。しかもたった数時間で」

時代。国。情勢。民族。地域。そんな大きな所から。家族と生活背景。経済状況。教育。兄弟。友人。そうやって個の背景は狭まっていく。そして年齢。思考。性。恋。エトセトラエトセトラ。

一人の人間を取り巻く要因。それは無限大。

お話を作るとき。誰かに見せる時。どうしてもその話にフィットした要因をチョイスして主張する。それが多くの映画の見せ方。でもそこには倣わない。この映画は倣わない。

「だから。この映画は一回観ただけでは完結しない」

大きな流れは飲み込めた。でも。後からふっと過って。嵌るピースがある。散りばめられたあの少年を構成していた世界。それはたった1回、4時間の時間ではすんなり受け止めきれない。やっぱりこちらはまだ暗闇の中に居る。

「ただこれ。相当コンディションを整えていかないと…」

そこで。首から下げていた「当方は愚か者です」のプラカードに気付いて。苦い気持ちで一杯になる当方。

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映画部活動報告「暗黒女子」

「暗黒女子」観ました。


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ミッション系女子高の文学サークル。夏の定例闇鍋朗読会。暗闇の中で闇鍋をつつき。その後めいめいのオリジナル小説を朗読する。
私語は禁止。大人しくお話しを聴いて。拍手で終了。
ここに集った5名の部員達。

今回の闇鍋朗読会のテーマ。「いつみの死」

この学院の経営者の娘。白石いつみ。美しく聡明で誰からも愛された、文学サークルの前部長。彼女は先日屋上から転落死した。手にはスズランの花を握りしめて。
自殺なのか他殺なのか。一体彼女に何があったのか…そんな中、まことしやかに学園に流れた「文芸サークルの誰かがいつみを殺した」と言う不名誉な噂。

今夜いつみの死について語り合う事で、真実が明かされる。そうして女子達の闇鍋朗読会の幕があける。

秋吉理香子の同名小説を。「NO MORE 映画泥棒」等を手掛けた耶雲哉治監督にて映画化。

当方の属する映画部の大好き女子、清水富美加清野菜名。彼女らが出るならば観なければと。当方も。後日映画部長も観に行った作品。

(後。個人的にこういう…女子が泥仕合をする作品とか、ミッション系女子高のお嬢さん達のいけ好かない感じとか。大好物なんですよ)

結構早くから劇場でも予告を流していましたし。ポスターもでかでかと貼って。期待値は高まるばかりでしたので。
まずは無事公開されて観る事が出来て良かったです。

清水富美加さんに何があったのか。当方は報道された事しか知りません。それ以上でもそれ以下でもありません。なので無責任な事は言いません。ですが。
「残念です」本当にそれに尽きる。彼女の溢れんばかりの才能やセンス。非常に注目していました。(そして…3部作であったはずの変態仮面はもう出来ないんやろうなという無念)
彼女に穏やかな日々が来ることをそっと祈ります。

閑話休題

一年生の貧乏な特待生、二谷美礼。老舗小料理屋の娘でお菓子作りが得意な小南あかね。ブルガリアからの留学生ディアナ・デチュア。高校生作家の高岡志夜。個性的な4人の部員達と、新しく部長になったいつみの親友、元副部長の澄川小百合。

一人ずつ読み上げる、いつみとの日々。大好きな先輩と出会い、文芸サークルに入った。楽しくて充実した日々。なのに。
「あの人がいつみ(先輩)を殺した」
いつみが握りしめていた「スズラン」の意味。それは一体何を指しているのか。
あの人のせい。あの人がいつみ(先輩)を追い詰めた。いつみ(先輩)から笑顔を奪い。そして命をも奪った。

部員達が語る物語は基本的に同じ時系列。春くらいから問題のイースター祭(イースターって4月ですよ。早くないか?)次第に元気を無くしていくいつみ。そして転落死。それを各々違う視点で見た景色。感じた事。
彼女達が指す「いつみを殺したあの人」は同じ人物では無い。サークルの中のメンバーではあるけれど、同じ時間から弾き出した犯人像の違い。互いに互いを貶める泥試合。

一応ネタバレをせずに進めたいと思っているので…ここからは歯切れが悪い、抽象的な書き方になってしまうのですが。

「一番真っ黒なのはこいつだな」

正直、結構早くからそこには気付いていました。

なので、何の為にこういう話を彼女達がしているのか。誰を?何を守っているのか?どこまでが茶番でどこまでが真実なのかと思っていました。

どうひっくり返せば。彼女達の話は繋がるのか。結局は「白石いつみは何者だったのか」そこに集約されるのだろうと思っていたのに。
最後。澄川小百合が答え合わせをし出した所で。

「ベタ過ぎるわあああああ。」堪らなくなってしまった当方。

ある意味、澄川小百合が「陳腐だ」と言ったように。この軸となる話が…これが「イヤミス」こと「嫌な気持ちになるミステリー」って事なんですかね?

「ただただ陳腐な嫌な奴なだけで。皆をおちょくっていただけなんですか?そして全く納得出来ない。辻褄が合わない。警察とか病院とか存在しない世界ですか?ミッション系でお別れの会無しですか?どうやったらアイキャンフライ案件に出来るんですか?女子高生だけならまだしも…大人をどう目くらまししたんですか?ちょっとわかるように説明してもらってもいいですか?」

軸がおかしいんですよ。此処がしっかりしていないといかんのに。

(もうついでに文句言いますけれどね。ブルガリアパート。何であそこ「オー!マイキー!」みたいになっているんですか。予算?センス?何にしろガクンとチープになっていましたよ)

最後の「闇鍋」の下りは少し楽しかったですけれど。

何だかなあ~。期待値が高かっただけに。肩透かし感が半端なかったです。

「映像化したら難しかったのか…どうにかならんかったんかなあ」ちょっと苦い気持ちで映画館を後にした当方。


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映画部活動報告「ムーンライト」

「ムーンライト」観ました。

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アメリカ。黒人。貧困層。スラム街。母子家庭。母親の薬物依存。同級生達からの虐め、偏見。

頼りになる、父親的存在を得て。初めて温かさに触れた。そして別れ。
次第に目覚めていく自身のセクシャルティ。ゲイであるという事。たった一度。満たされた夜。
そして大人になって。

シャロンという一人の男性の半生を。リトル(少年期)シャロン(思春期)ブラック(成人期)の3期に分けて。各々を違う役者が演じた。

第89回米アカデミー作品賞受賞作。

「これが今年のアカデミー作品賞なのか」鑑賞直後、なんだかなあという戸惑った気持ちで一杯になった当方。
正直な事を言うと、今でもその気持ちはくすぶっているのですが…ですが。

「一体この作品は何だったんだ」ふと。日常生活の中で過る。何故か何度も反芻してしまう。それがこの作品の持つ力なのかと。

「これはシャロンの愛の話」

家族。唯一の肉親である母親との関係性。
赤の他人なのに、本当の父親の様で。暖かな居場所をくれた人。
自身のセクシャリティに戸惑い。悩み。でも。そこにきちんと向き合ってくれた友人。大切な人。

図らずも波乱万丈の半生を送る羽目になったシャロンの。

彼を傷つけた者達。彼らを憎まざるを得なかった、幼かった日々。強くなるためには己を変えていく努力が必要だった。でも。

見た目には大きく変わったシャロンの。芯として変わらなかったもの。時が流れる事で怒りや憎しみは穏やかになって。いつしか相手を赦す気持ちに変貌して。

そして。あまり自身を語らないシャロンが。初めて口に出した告白。

~という感じの事をやっていたんだろうと。当方なりに受け取った概要をポエムっぽく書いてみましたが。

「あのねえ。やっぱりお話の中に要素を盛り込み過ぎ。そしてその割に各章に飛ぶ時が乱暴過ぎ」

ネットラジオ聴取が趣味の当方。これは映画について語られた回ではないのですが。
最近聞いた「デストロイラジオ」という番組でパーソナリティーが話していて、いたく当方が共感した言葉。(細かい言い回しは割愛)

「観ている相手に考えろっていう作品が多すぎるんだよ」「お前が作った作品なんだから、まずはお前の意見を聞かせろよ」

ムーンライトという作品の個性。ある意味それは「相変わらずあんまり話さないんだな」と言われていたシャロンそのもの。ですが。

話の核となりうるテーマをこれでもかと盛り込んで。でもどこにもウエイトを置かない。なので全体としてひどく単調なダイジェストという印象を受ける。

最終的な流れだけを取り上げてしまったら…「下手したら、高尚なBL映画」とも取られかねない。これは当方が荒んだ心を持つからかもしれませんが。

「色んな事に折り合いを付けて大きくなったシャロンの。唯一折り合いが付けられなかった事(相手)幼馴染のケヴィンへの想い」

うーん…他はともあれ。ファンについては触れるべきやったと思いますけれど。当方は。

肉親からは得られなかった、家族的な愛情を注いでくれたファン。でもそんな彼が、結局自分の母親に薬物を売っていたという事実。そこに対してどう気持ちの整理をしたのか。なのに。あっさりと第2章では既にファン退場後という驚き。そして第3章でシャロン自身がファンそっくりな風貌の売人になっているという変貌。何故?どうなったらそういう流れになるのか。

「少年院で売人と知り合って。のし上がったんだ」アホか。そんなセリフ一つで済まそうとするなよと。地味に腹が立った当方。

どう考えても。これは端折ってはいけない。丁寧に追わないといけなかった案件。

母親だって根っから悪い訳じゃ無い。でも。薬物の前には無力で(本当ならその母親の背景も知りたいですよ)。そんな憎むべき薬物を売る側に回っているとはどういう事なのか。かつて父親のように慕っていた人物。その彼と同じ様な風貌に現在変化したシャロンの。その気持ち。

それが提示されずに。「行間を読んでください」その座りの悪さ。流石に「まずはお前の意見を聞かせろよ」としか言いようがない。

(まあ、言い出したらシャロンが対象達を「赦し」ていくに至った過程だって必要だと思いましたけれど。母親は年老いて弱弱しくなったから?薬物との決別?時が解決したとでも?…雑やなあ)

全てを提示して。「あの問題はこういう過程を経て。解決と相成りました」そんな注釈が、物語に必要だとは当方も思いません。ですが。

「ちょっと観ている側に投げすぎやろう」どうしてもそうとしか思えなくて。

芸術性は非常に高い作品。夜の海に佇むリトル。シャロン。ブラック。どの彼も美しくて哀しくて。その黒い肌に青い色が浮かぶ様。独特の光。
画から彼の気持ちを拾っていく…そんな作品なのでしょうが。

「気持ちが上手く着地しない。ひどくアンバランスなものを観た様な感じがして…結局いつまでもあれは何だったんだという爪痕が残される」

不思議な作品。未だもやもやするばかりです。