ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「バグダッド・カフェ」

「午前十時の映画祭 バグダッド・カフェ」観ました。
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1987年。西ドイツ映画。

 

アメリカ。モハーヴェ砂漠の中、ぽつんとあるモーテル兼カフェ兼ガソリンスタンド『バグダッド・カフェ』。
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かつて賑わった時があったのかもしれないけれど。店は寂れ。掃除も行き届いていないので尚更みすぼらしい状態。

働かない夫。好き勝手な事ばかりしている二人の子供。幼い孫。悪い者ではないけれど、決して働き者では無い従業員。寂れた店にも、だらけた周囲の人間にも全てに苛々してヒステリックに当たり散らす、女主人ブレンダ。
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ある日。汗だくでスーツケースを引きながら、歩いてやってきたドイツ人の旅行者ヤスミン。
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久しぶりの宿泊客なのに不愛想に対応するブレンダ。

「一体何者なの?」怪しんで、追い出そうとするけれど…全く去る気配を見せないヤスミン。

 

「何か。有名ではあるけれど…結局よく知らない作品。」恥ずかしながら未見。

しかも今回、他の映画鑑賞とのスケジール調整で『バグダッド・カフェ』を選択した当方…でしたが。

 

「これは‼」些末な出来事やらにささくれ立っていた当方の心に。乾いた場所に。しみじみと何かを満たしてくれた…恐らく近日中にBD購入案件。

 

はっきり言うと『雰囲気映画』『何も起こらない』『辻褄が合わない』『自称映画通を名乗る奴がファッションアイテム的に選ぶ映画』そうやってとられかねない。だってそうだから。確かに雰囲気映画で、大きな事件が起きる訳でも無い。淡々と話は進んで。辻褄なんて全然合わない。ツッコミどころは幾らでもある。けれど。嫌いじゃない。寧ろ好き。

 

北風と太陽の話。あの「旅人のコートを脱がせる」というレギュレーションに対して。冷たい風で無く、温かい日差しで旅人はコートを脱いだ。

分かりやすい教訓。『凍てついた人の心は、優しさに依って溶かされる』この作品のテーマも同じ。

 

物語の初め。ドイツから夫婦で車でアメリカ旅行に来たヤスミン。何かで夫と喧嘩になって。砂漠に一人放り出されたヤスミン。
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とぼとぼ歩く彼女の後ろ姿~の『calling You 』。震える当方。

 

そして舞台は変わって。バグダッド・カフェ。店の面々と、一人キレまくっているブレンダ。正直げんなり。夫もブレンダに愛想を尽かして出て行ってしまった。

 

男女に関わらず。落ち着いてまともに話が出来ない人間。大声を張り上げて相手を威圧して。そういう人間が大嫌いな当方からしたら、「ブレンダを出すな!!」と苛々する事この上なし。(しかも物語の中盤位までブレンダこの調子)

 

「一体何者なの?」「本当に旅行者なの?」「何故同じ服ばっかり着ているの?」(ヤスミンが車から降ろされた時に持ってきたトランクが夫の物で。男物しか中には入っていなかったから)うさん臭い、ドイツ女。とっとと出て行って。なのに。

 

最悪のおもてなしをしているにも関わらず。どっかりと居座るヤスミン。そしてブレンダが買い出しで不在の内に、店を徹底的に掃除。

ブレンダは烈火のごとく怒っていたけれど。結局綺麗な事務所は使いやすい。そしてそんなヤスミンの姿に、惹かれていくバグダッド・カフェの面々。

 

ビッチの娘。いつもピアノを弾いていると怒鳴られていた息子。不思議な雰囲気の従業員。隣のワゴン車に住む、カフェの常連客(画家)。初めこそ、皆一応に距離を取って様子をうかがっていたけれど。
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ヤスミンの柔和な雰囲気に。チャーミングな魅力にすっかり魅せられてしまう。すっかりヤスミンに懐柔されてしまう。

 

そして。遂に難攻不落と思われたブレンダの心が、ヤスミンに依って溶かされる。意外とあっさりと。

 

「何で?」「それ何で?」「って言うか。ヤスミンの背景、説明無さ過ぎやろう」ずっこける当方。

 

映画作品の中で起きる事象や人物について、作品内で全て説明せよとは当方も思いません。話には奥行きや個々が感じ取るべきものがある。けれど。…けれどこの作品は余りにも余白が多すぎる。

 

「そもそもヤスミンの夫はどうなったんだ」「ヤスミンの人物描写がふんわりしすぎ。人が良くてお茶目だという事しか分からん」「手品のキットとか民族衣装とか。一体ヤスミンの夫は何者なんだ」「お金、どうしてるの?」「子供の話。それ以上しないの?」大体はヤスミンのリアルな背景に対する疑問。

 

まあでも。それ…きっちり説明しだすと野暮になるんでしょうし、この作品でやりたいのは『北風と太陽』なんでしょうし。

 

溶かされたブレンダの変わり様。最終にはすっかり丸くなっちゃって。まあ最後は皆ニコニコで。店も何故か『手品カフェ』として大盛況。いい人達が集う場所なんでしょうな。ハイウェイカフェなんで大体はトラック野郎なんですが。こんな中年女性二人の手品でワクワクして集まってくれて。お酒も出していないのに。

 

「あ。そうやった。ヤスミンって旅行者やった」そんな急転直下の後。また再会。
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「ここで終わっていたら神映画やったと思う」そう思うんですがね。ちょっと最後蛇足な上に意味不明かなあと。

 

そういう不器用で不思議な作品ではありますが。観ていたらしみじみ癒される。やっぱりギスギスした気持ちで日々を過ごすと腐ってしまう。そんな単調な毎日に、何か面白い事を運んでくれる存在。そうやって一緒に笑って。そうしたら世界はガラッと変わる。

 

音楽も良いし、何より画が綺麗。夕暮れの日が落ちる所。ぽつんと寄り添うワゴン車。広大な砂漠の一本道の中にあるバグダッド・カフェ。美しい。

 

『オサレなカフェかバーで流れる映画』(あの、無音にしているやつ)当方の中であんまり中身の無い、けれども画的に綺麗な作品を揶揄して示していましたが。

「これはまったりしながら。お酒か紅茶片手(当方はコーヒーが飲めないので)に観たい」

当方初めての『店で流して欲しい映画』(勿論それなりの音量で)認定。

まったりまったりしながら。溶けて観たいです。

 

映画部活動報告「悪女 AKUJO」

「悪女 AKUJO」観ました。
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やりすぎ韓国映画枠。『殺人の告白』のチョン・ビョンギル監督最新作。

 

「アクションが‼」「兎に角アクションが‼」人間の成せる技では無いと。そんな前評判を受け。期待に胸をパンパンに膨らませて。劇場に観に行きました。

 

感想ですか?「これ…どうやって」の連発。撮り方。そして人体のポテンシャル。そういった振り幅が広すぎて。もう何が何だか。どうしようもなくて最後は笑うしかなくなった当方。

 

冒頭7分強のPOV。女主人公スクヒ視点の暴力団カチコミシーン。暗い廊下で。そしてエアロビみたいなスタジオで。襲い掛かってくる膨大な相手の動きは縦横無尽。始めこそ銃で撃っていたけれど。次第に刃物。手斧。そして最後には体一つで。ただただ圧倒され。

ただ。その鏡張りのスタジオで。己の姿が写った途端反転する世界。一人称の世界から第三者世界へ。カメラの視点移動から始まる物語。上手いなあと思いました。

 

女一人で暴力団組織を一網打尽。当然国家権力に逮捕。しかし彼女は裁かれず。整形され、秘密裏に国家情報院に送られ。そこで暗殺員に育てられる。

当然反抗するスクヒ。しかし彼女のお腹には子供が…。

「黙って10年任務を遂行すれば、後は一般人として生きていける」その言葉につられ。

 

国家情報院修行。そして娑婆へ。そこで得た、ささやかな幸せ。

「幸せになれる」そう信じたのもつかの間。

 

とある国家情報インからのミッション。それはかつてスクヒが愛した男を殺せという指令だった。

 

お話としては単純なんですよ。「女子は惚れたらあかんのう…」というどこかの田舎お婆ちゃん当方。如何なる身体能力やヒットマン要素を高めようと、惚れた者の負け。

「そんな実態の無い者じゃなくて、目の前の善き人を信じなさい」そう呟くばかり。

 

あのカチコミのあった雨の夜。私は死んだ。生きている意味なんて無い。なのに。

 

生き残ってしまった。しかもお腹には愛した人の子供がいる。

 

愛する子供の為。娘と一緒に平凡に暮らしていく為…。

 

~とかいうしんみりで語るには、スクヒの能力、高過ぎなんですよ!

 

「ああもう。一体どうやっているんですか?」役者。スタッフ。乗り物。カメラ。全方位に渡っての当方の悲鳴にも似たコール。勿論レスポンスなし。

 

大型バイクで全力走行中。サイドから同じくバイクで囲まれ。しかもサイドから日本刀?(兎に角刃渡りの長い刃物)で襲われるスクヒ。

 

ざっと飛びますが。後半。走行中の車のボンネットに手斧を食い込ませて落ちないようにしながら(文章だけでは意味不明だと思います)後ろ手でハンドルをさばくスクヒ。

 

もう…何というか…あまりにもぶっ飛びすぎて…笑うしかなくなった当方。

 

「ペーパードライバーで。原付バイクしか自信を持って運転出来ない当方からしたら。こんなの…死ぬとしか思えん。」

(この作品に限りませんが。当方の人生に、もしその辺に泊まってる車を拝借するシーンがあったとしたら「まずはシートをブレーキを踏んだ距離にセットして。バックミラーをセットして…」即座に標的を見失うOr襲撃されますね)

 

ここまで殺人能力ポテンシャルが高いスクヒ。

しかしそれは国家情報院の付け焼刃では無い。一体彼女は何者なのか。

 

幼い時。父親を殺された。

殺したのは父親の弟。そう思って。彼を憎む事で生きてきた。

 

父親を失った後、育ててくれたジュンサン。当然…と言うべきか、カタギでは無かったけれど。彼には多くを教わった。身体能力の向上。暴漢との戦い方。殺しの技術。…そして彼を愛するという事。なのに。

思いが通じて。愛し合って。晴れて結婚。そして新婚旅行の最中。敵対勢力に命を奪われたジュンサン。

 

そして、冒頭のカチコミシーンに繋がるのですが。

 

物語を進めるにつれ。「スクヒの過去」が少しずつ明かされていく仕組み。まあ…(歯切れが悪く)雑…なんですがね。

 

「結局ジュンサンの立ち位置って何だったんですか」「なだぎ武ですか」「そもそもどうなったらジュンサンはスクヒの育ての親になるんですか。どういう関係ですか」「彼とスクヒの父親、その弟との関係性は」「あのガラス玉って一体何だったんですか」「HDDには何が収められていたんですか」

「あの劇団の母体は何なんですか」「劇団員で食べていけるんですか」「何なんですか。このベッタベタなラブパートの切なさは」「おっと犬死ですか」

 「国家情報院の目的って何だったんですか」「どの組織に於いても、一体何に忠誠を示して、何を敵とする組織だったんですか」

 

~挙手して質問し出したらもう止められない。おかしな点は数多にありますが。

 

「まあいいんじゃないの。あんなの(アクション)見せてくれてんだから‼」

 

げに恐ろしき、そして愛するべきロシア映画ガーディアンズ』論法。

 

「こういう作品、沢山観てきただろ。その脳内引き出しで補てんしな!じゃあ、観たいやつ行くぜ!!」という強気。…でも得てして…そういうのに皆様(当方も)弱いんですよね。

 

最終決戦の下り。もう笑うしかなくて。

 

「やりすぎ。完全にやりすぎ韓国映画枠。」

 

もうねえ~多少お話がおかしくても憎めないし、目が離せない。

 

万人にはお薦めできないのかもしれませんが。スカッとしたい方には取りあえずお薦めしたい。…なんだか観た後はやたらしっかりご飯を食べて。泥のように眠れそうです。
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映画部活動報告「RAW 少女のめざめ」

「RAW 少女のめざめ」観ました。
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フランス・ベルギー合作作品。

「失神者続出」16歳の少女が。進学した獣医学校でカニバリズムに目覚めてしまう内容。

予告段階でそうはっきりとネタバレしていましたので。

 

映画部長と当方。たった二人の映画部でも「得意分野は変態映画部門です」と公言している事からも。これは当方の出番だと。颯爽と公開初日に観て参りました。

 

基本的に、この映画感想文はネタバレをしない方向で進めているのですが。

 

今回は初めて。はっきりと「ネタバレありき」で話を進めさせて頂きます。

 

「一体本国では。何を観て失神したのだろう?」冷静に呟く当方。

 

この作品を最後まで観て。途中から…と言うかかなり早い内から「何故この学校に進学したのか」それに尽きると思った当方。

 

主人公のジュスティーヌ。16歳。神童と呼ばれた彼女はとある全寮制の獣医学校に進学する。

両親も共に獣医。そしてその学校の卒業生。そして一つ上の姉もその学校に在籍中。

真面目な優等生。そんな彼女が他人と違う点。それは家族全員が厳格なベジタリアンだという事。なのに。

入寮したその夜。寝ていた新入生たちを叩き起こした、先輩たちの寮のしきたり。真夜中の狂った乱交パーティー。

そして。通過儀礼の『生肉を食べる儀式』。自身はベジタリアンであると一時は拒否したけれど。姉に押し切られ口にしてしまった『肉の味』。開眼。

初めこそ過剰なアレルギー反応が起きたけれど。抑えらえない肉食への欲求。そして遂に彼女は人肉の味を知ってしまう。

 

「何故彼女がこの学校に進むことを止めなかったのですか?」

 

と言うのも…彼女が女系カニバリズム家系だからですよ。(この作品を観た人ならばヒヤヒヤする発言ですが…一応ネタバレは3段階あるので。2段階までに留めるようにします)

 

同じ学校に進学した、一つ上の姉。アレックス。
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「お前の姉ちゃん変わってるよな」同級生からそう言われる、どこかファンキーなお姉ちゃん。

 

完全な上下関係。先輩は神。先輩の命令は絶対。おかしな学校のしきたりにすっかり慣れているお姉ちゃん。対して神童扱いで生真面目な主人公は学校でも浮きがちで。

「クラブに行くような恰好で過ごしなさい。それが出来ないなら、紙おむつでも履いていなさい」そんな意味不明な先輩の指示にうんざりしながらも。頼ればそれらしい服を貸してくれるお姉ちゃん。

喧嘩もするけれど。悩みがあれば聞いてくれる。そんな頼もしいお姉ちゃん。けれど。

 

とある不幸な事件。お姉ちゃんの指が切断されてしまった。お姉ちゃんは痛みとショックで失神。その時…何故か自身を抑えきれなくなってお姉ちゃんの指を食べてしまう主人公。そして…知ってしまった。人肉からの得難い多幸感を。

 

「また。いかにも『ジャーン』みたいな音楽よ」思わず笑ってしまった当方。

 

夢中で指にむしゃぶりついている妹の姿を見てしまったお姉ちゃん。絶望と嫌悪…と思いきや。『実はお姉ちゃんもカニバリスト』。

 

少し前。『肉』という映画がありました。
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変態映画部門を得意とする当方としては勿論抑えたカニバリズム映画作品。あれもまた『カニバリズム一家』の悲劇でした。

詳細は語りませんが…当方はどうしてもああいう『女の子が泣きながら嫌々食べる様』に心の柔らかい所を押されてしまう傾向がありまして。(変態発言)

 

そう思うと、この作品にはどうしてもじっとりとした要素が薄い感じ。

我を忘れて…そしてはっと気づいたら血まみれの自分。そういう『いつの間にやら獣になってしまう自分を抑えられなくて』という自我に戸惑う…確かに『少女のめざめ』。けれど。

 

変態映画マスター当方としては『自己嫌悪に襲われながら。けれどどうしようもない猛々しさからの生理現象。今まさに人肉を食べているけれど。こんなの嫌。気持ち悪い。けれど体は欲してしまうという本能』という所までいって欲しかったですね。(サラッと変態発言)だって。獣になっていた瞬間の記憶が殆ど無いって…(あってもその心境の描写は無し。ひたすら必死で食らいついている感じ)。酔っぱらって記憶無くしたのと大差無いですよ。(互いに共通しているのは『後から人づてにその所業を聞いて自己嫌悪に陥る』という点。その瞬間は無意識に気持ちよく好き勝手な事をしているだけなんですわ)

 

カニバリズム=食欲。とすると、三大欲求の中の一つ、性欲の爆発もしかり。

「本当にねえ。何であんな学校に行ったのか」溜息の当方。あんな乱痴気騒ぎが日常生活な上。ルームメイトが男子学生。アドリアン
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「俺はゲイだから」だとしても。普通男女を同じ部屋にしますかね?例え恋愛感情が起きないとされても。異性は異性。生活しにくいですよ。

そして案の定。「俺はゲイなんだぞ!」という事態。発情した主人公と、恋なんだか何なんだかの関係に落ちてしまう。

 

そんな二人に食らい付いてくるお姉ちゃん。そして怒涛の結末。

 

本当にねえ…4回目の「何故この学校に進学したのか」。そして。

 

そもそも何故この姉妹は獣医を目指したんですか?(両親が獣医以外で)

両親は何故この姉妹が獣医になりたいと言った時(あったのか知りませんが)止めなかったんですか?

せめて。何故自宅から通える範囲のまともそうな学校を進めなかったんですか?

両親とも、この学校の卒業生ならこの学校の校風は分かっているんじゃないんですか?

何のために一家ベジタリアンでやってきたんですか?

 

あかんあかん。そもそもの動機が弱すぎて。「それでも私は獣医になりたくて」が無いから。折角の良い環境が取り留めの無い、ふんわりしたものになってしまっている。

 

「少なくとも姉妹の父親。彼は完全なMだ…」震える当方。

 

ベジタリアンの秀才少女が。全寮制の獣医学校に入学して。その破天荒な校風から。生肉を食べ…そしてひいては自身のカニバリズム精神に気づいていく…立派な変態映画要素満開なのに。いまいち乗れない。『獣医』という夢と。その解離…の必然性の欠落故。

 

「病める獣たちを救いたい…なのに何故。彼らを診ていて…納まらない鼓動。気付いたら…彼らを食べている。これを抑えられるのは…そう。忘れられない。人肉。あのトップオブ生態系…」例えば解剖シーンで。そこまで行って欲しかったからですかね。

 

まあ。あの『青と黄色のペンキが混ざり合って。緑になるまで出てくるな』という絶妙なアートエロセンス。あれは非常にぐっと心に刺さるフレーズでした。
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映画部活動報告「スリー・ビルボード」

スリー・ビルボード」観ました。
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2018年米アカデミー作品賞その他ノミネート作品。

 

アメリカ。ミズリー州。

「こんな道を通るの、道に迷った奴か田舎者だけだぜ」そんなド田舎の道沿い。そこに。とある3枚の広告看板が張り出される。

『レイプされ死亡』『未だ犯人が捕まらない』『どういう事なの?ウィロビー保安官』

広告主のミルドレッド。
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夫と離婚して女手一つで娘と息子を育ててきた。なのに。ある夜起きた悲劇。娘がレイプされた上、焼死体で発見。それから7か月。

未だ見つからない犯人。ミルドレッドの怒りは次第に「あいつら…仕事してるのか?」地元警察に向けられ。

看板に実名を挙げられたウィロビー署長。
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けれど。彼は決して怠惰な人物では無かった。寧ろ実直で人格者。二人の小さな娘の良き父親。彼を慕う者は多く。

「確かに娘アンジェラの件は同情する。けれど署長が悪いなんてとんでもないよ」

加えて署長はすい臓がんの終末期。ミルドレッドはなんて事をするんだ。

署長の部下。ディクソン。
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差別主義者で傲慢な警察官。署長をリスペクトしている。

そんな彼は勿論、ミルドレッドも、警察の前に会社を構える件の広告会社も憎くて。

そんな三者を軸に。繰り広げられる群像劇。

 

「当方は今。とんでもない作品に触れている。」「これはえらいもんを観た」

とんだ怪作。震え。

 

余りにも完璧な作品を前に。おろおろするばかり。纏まりの無い駄文を打つしかありませんが。

 

「人には多面性がある」そんな当たり前の事を。こんなにしっかりと。納得のいく描写。悲しくて。でもおかしくて。優しくて。

 

『怒りの人』ミルドレッド。作業着みたいなツナギファッションと頭にはバンダナ。化粧っ気も無くて。誰にでもずけずけとした物言い。
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THE強い肝っ玉母さん。けれど。話が進むにつれて。ともすれば崩れてしまいそうな自我を必死に『怒り』というガソリンを注入する事で立て直して。見え隠れする、彼女の弱さ。迷い。

娘のあり得ない姿。勿論その事件に彼女が何か加担した訳じゃ無いけれど。娘との最後の会話。どうしてあんな言い方をした。悔やんでも悔やみきれなくて。その後悔を、もっと大きな感情で覆いたくて。それは…怒り。

 

『良い人』ウィロビー署長。好人物。そして善き夫であり、父親。仕事に対しても忠実で部下たちにも慕われ。

「だからこそやりにくいんよな…」溜息の当方。『怒りの人』ミルドレッドにとって、「7か月も経っているのに犯人を捕まえられない、無能な警察組織のトップ」として憎みたいのに…相手が悪すぎる。

「娘さんの事については全力を尽くしている」「そんな事を言いに来るぐらいなら、仕事しなさいよ」「後…何て言うか。あの看板は…俺は実は…ガン患者なんだ」「それが何よ。街の皆が知っているわよ」話の前半。そうやってミルドレッドはにべもなく署長の訪問を突っぱねるけれど。
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実際目の前で不意に署長の症状の悪化を見せられて。うろたえるミルドレッド。

憎むべき相手は強くあって欲しい。相手は圧倒的な悪。だからこそ自分の正当性を自分の心に言い聞かせられるのに…どうしても署長は悪では無い。その分の悪さ。

(ネタバレ回避の為、詳細は書きませんが。当方は署長を全面肯定はしません。ああいう判断をした思考は理解しますが…彼に愛する妻子が居るのなら尚更…卑怯だと思います)

『嫌な奴』にっくき下っ端警察官ディクソン。

だらしない勤務態度。他人を見下した態度。
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本当に憎たらしい…そう思っていましたが。

家に帰れば年老いた母親と二人。おそらく同性愛者で、その事で彼自身も嫌な思いをしてきている。

スクリーンに映っただけで嫌な気分になったディクソンが。後半には全く違う側面を見せる。本当に…凡庸な言い方ですが「人を見た目で判断してはいけない」。

 

兎に角当方がこの作品を通して感じた事。「狭い田舎の人間関係よ…」

ミルドレッドもウィロビー署長もディクソンも。その他登場人物達。おそらくこの田舎街で産まれ。育ち。そして今。皆が互いを子供の頃から知っている。

だから。皆がどこか街に於ける、固定されたキャラクターを演じている。私ははっきりとモノを言う肝っ玉母さん。俺は良い人の警察署長。俺は皆からの鼻つまみ者。

分かりやすいキャラクター。街の皆も各々互いの性格を把握している。安定の街劇場。…けれど。

「人ってそんな簡単には分類されないぜ」

 

物語の中盤。ガラッと流れを変える事態。街劇場の視点は大きくずれて…キャラクター達の表情は全く違って見えてくる。

 

「怒りは怒りを来す」

 

ミルドレッドの元夫、チャーリーの今の彼女。19歳。

若くて。ミルドレッドは始め何かと馬鹿にしていたけれど。この言葉を聞いてミルドレッドはチャーリーに告げる。「彼女を大切にするのよ」。

 

物語の前半。話を牽引したのは怒りの感情。その発端はミルドレッドの発した看板広告。そこから波及した負のスパイラル。怒りの感情を絶やすまいと必死になればなるほど。一体元は何の感情であったのかも分からなくなって。。

それがあの事件があって。怒りが爆発しきった後。訪れたのは『赦し』。

「怒りは怒りを来す」ならば赦しだって。

 

あのオレンジジュースの優しさ。あの優しさに涙が溢れた当方。
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勿論娘を無残に奪った奴は憎い。けれど。7か月経って、街の皆から娘が忘れられていく…あの3枚の広告看板の本当の意味。大元はそこに対するミルドレッドのメッセージだったのではないか。

「あの娘を忘れないで。」

 

だからあの鹿は会いにきてくれたのだと。

当方はそう思います。

 

「ああここで。ここで終わって…」という所でベストの形で幕引き。この最高さと余韻。

 

「そうやね。あいつうさぎちゃんの代金、払ってないからね」なんて。

 

2018年度米アカデミーどころか。当方の映画人生に留めるレベルの作品を観ました。

 

映画部活動報告「デトロイト」

デトロイト」観ました。
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「1967年。アメリカミシガン州デトロイト。黒人たちの憤懣が爆発した『デトロイト暴動』の中、白人警官3人が起こした『アルジューズ・モーテル事件』」

デトロイト』というタイトルではあるけれど。主には『アルジューズ・モーテル事件』に焦点を合わせて。

ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティー』のキャスリン・ビグロー監督作品。

 

アメリカの都市デトロイト。かつては自動車産業が栄え。アメリカンドリームを夢見て集まった人たち。けれどその夢は次第に衰退。賃金は安いけれど職にはあぶれない。そう期待してついてきた黒人たち。しかし街全体が落ちぶれていく中。金を持っていた白人たちはすぐさま郊外に脱出。街に残るのは黒人の低取得者ばかりとなった。

黒人差別は悪。差別は悪。そういった世論も国内では整えられては来たけれど。如何せん貧しい街で。

治安は悪化。街には取り残された貧しい黒人があぶれ。そして街を取り仕切る警察官は95%が白人だった。

 

「いつ何が起きてもおかしくない」「時間の問題だった」

 

とある違法酒場の摘発。黒人が経営していた酒場に、デトロイト市警が強引な介入をしたことで市民の不満感情が爆発。暴動へと発展した。

 

それがまた。デモとかの理性的な内容ではなく。商店への放火。強奪。死傷者が溢れる惨事。事態は黒人VS白人警官たち(デトロイト市警)との戦いへと様相は変化してしまい。そして。

 

デトロイトにある『アルジャーズ・モーテル』。たまたま居合わせた若者たち。

 

初めて会った彼ら。その中の一人が『スターターピストル(陸上競技用ピストル)』を警官たちに向けてふざけて撃った事から起きた悲劇。最悪な夜。

 

50年前。実際に起きたその事件。

 

「いやあ…まあ…胸が悪かったですね…」この気持ちの落としどころが見つけられなくて。険しい表情をしてしまった当方。

 

この作品を一概に「人種差別って最悪やな!」で切ってしまってはいけない…最悪ではあるけれど「95%の白人警官」の意味はどこだ。果たしてその当時の黒人たちは完全な被害者なのか。街に対し破壊行為を起こした事態はどう集結させたのか。そして。

「アメリカって一体どういう国なんだ」

 

その答えは出ない。アメリカ国民ですら出せないアンサーを、当方が涼しい顔で出せる訳が無い。ただ。

 

「おそらく今でも人間の根底にある差別意識」その問題提起をした作品なのだと思いました。

 

2018年2月2日。NHKで『デトロイト暴動 真実を求めて』というドキュメントがありました。

各位ご意見はあると思いますが。当方はNHKのドキュメンタリーには一目置くスタンスでやっておりますので。そちらも見てから感想を書こうと思っていました。

(50年前の事件。それをリポートした記者の孫が、事件に関わった人たちを訪ねて行く内容でした。)

 

この映画作品について。どうしても『40分に渡る、白人警官3人に依る暴行シーン』そのインパクトが強くて。

 

白人警官の中で。一番若くて。けれどリーダー格であった警官。

「『なんちゃって家族』の‼あの誰からも愛された童貞が‼」
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『なんちゃって家族』は巨大海洋生物恐怖症の当方も思わずDVD購入に至った作品。あの愛すべきあいつが…。「『メイズランナー』でも嫌な奴をやってましたがね!」なんて思わず叫んでしまう、ウィル・ポールター。
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「あいつ…なんて事を…」物語の初め。タバコを吸っている姿だけで「けしからん!お前!」とわなわな震えてしまったおいちゃん当方が。話が進むにつれ本当に震えた後で。しみじみしてしまう。「あいつ…この役。しんどかったやろうな」

 

40分の長尺。ひたすら黒人少年と白人少女の数名を壁に手を付いて立たせ。かわるがわる恫喝。暴行。脅迫。

効果的な音楽が流れる訳でも無い。ただただ『みていられない不快な時間』その間を持たせる緊迫感。流石ビグロー監督と言うべきなのか。でも。その一手を担ったあいつ。

 

「その時あいつに流れた感情は何んやろう…?」何に対する怒り?憎しみ?『差別主義者』そう言ってあいつを切ってしまうのは容易いけれど。ただただ黒人が憎い?何故?

 

自分の任された街の荒廃。何故この街は治安が悪い。何故平和で穏やかな街にならない。いつまでも貧しくて。犯罪が跋扈して。それは一体誰のせい?

とは言え流石に「だから何をしても良い」という思考には当方も結び付きませんが。

 

リスクマネージメント業界(そんなものがあるのかは不明)で有名な『ハインリッヒの法則

「1件の重大な事故・災害の背後には、29件の軽微な事故・災害があり、その背景には300件の異常がある」

 

あの作品の中で。やはり圧倒的に悪者に落とされたあいつ。けれど。事件はあの日あの時たまたま起きた。ある意味『デトロイト暴動』と同じ。多くの背景から成り立つ事件。

 

『いつ起きてもおかしくなかった』

 

NHKのドキュメント。映画では実名を伏せた『あいつ』。現在75歳。

郊外でひっそり。孫に囲まれて暮らしている。

 

そして。暴動と事件から50年。改めてデトロイトの人たちが「どういう事件だったのか。そしてその真意とは」を語り合う姿。

 

時に映画は娯楽には収まらない。ずっしりとした課題を投げかけて。

 

当方もすっきりとした回答なんて出なくて。ぐるぐる回るばかり。けれど。

 

重たいんですけれどね…ビグロー監督作品、当方は嫌いでは無いです。

 

映画部活動報告「殺人者の記憶法」

殺人者の記憶法」観ました。
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韓国のとある田舎町。そこに住む獣医のビョンス。愛娘ウンヒと二人暮らし。

しかし。実はビョンスはかつて『町のクズ』を殺めてきた連続殺人犯。17年前の実績を最後に。以降は真っ当に。ひっそりと暮らしていた。

最近。アルツハイマー症と診断され。どんどんあやふやになっていく自身の世界。そんな中で。

『この町に新たに起き始めた連続殺人事件』ある日。謎の男テジュとの遭遇。

「俺には分かる。あいつが犯人だ。あいつは人殺しだ」

そして。愛娘ウンヒに忍び寄るテジュ。

一人でテジュに立ち向かうビョンス。なのにアルツハイマーの進行に依って記憶は途切れ。混乱し。そして新たに起きた殺人事件。

「これはあいつの仕業か。…それともまさか俺の??」

 

アルツハイマーの元連続殺人犯VS新たな殺人犯』一体その行方は??

 

韓国の。同名小説の映画化。

 

近年で言えば『明日の記憶渡辺謙』や『アリスのままでジュリアン・ムーア』等。若年性アルツハイマーを題材とした映画作品というのは、えてしてシビアで哀しい作品が多くて。当方は多くを語れませんが『メメント』なんかが有名ではありつつも、やっぱり不可逆性な病の進行に依って自我が崩壊していく様を切なく描く作品が多かった。そんな中。

 

「いや。『おじいちゃんはデブゴン』がある」
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昨年2017年日本公開。香港の人気俳優サム・ハン・キンポ―監督&主演作品。

「かつては名うての軍人だったお爺ちゃんが…認知症になって。でも大切な隣人(少女)を守る!!記憶は飛んでも体はかつての動きを覚えているぜ!!」という、切なくともおかしい作品。今回この作品を観たのと同じ映画館に昨年観に行きましたが。

 

意外と。この手の題材を湿っぽくやりがちなアジアで。上手い題材として生かす作品がちょいちょい生まれている。

 

当方はあんまり韓国の俳優事情に詳しくないのですが。

『稀代のカメレオン俳優:ソル・ギョング
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主役のビョンスを鬼気迫る迫力で演じ。激やせし、49歳?には見えない老けっぷり。(後で普段の彼の画像を見て驚愕した当方)

『新しい殺人犯を演じた、実は警察官:キム・ナムギル』。
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普段は爽やか枠なんですかね?映画館に彼の写真がプリントされた緑のお揃い手作りTシャツを着ている奥様方が居られました。「おお…こういう韓流マダムを初めて見た」色んな青春がある。けれど…もし当方の母親がそのスタイリングで外出したら、当方は文句を言いますね。家の中だけにしてくれと。

『愛娘ウンヒ:キム・ソリョン』
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けなげで可愛いけれど。正直それ意外は凡庸なキャラクター。

『皆が大好き。オ・ダルス:警察署長』
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またもや。全身から良い人オーラを漂わせて。あんなにも美味そうで汚らしく麺を食べられてはな…好きになるしかなくて。

 

良い役者を揃えた布陣。加えて秀逸な脚本。

 

街の獣医。一見社会的信頼の高い人物(と言っても気取っている感じでは無い)の、実は…という裏の顔。実は彼は元連続殺人犯。

「記憶を完全に失う前に」パソコンで夜な夜な綴られる、超個人的な備忘録。

「何故俺は殺人を犯したのか」少年時代の悲しいエピソードを皮切りに。「けれど俺は殺人を続けた」「世の中には生きている価値の無い人間が居る」主には家族や他人に暴力を振るう輩を。バレなかったのが不思議な呈で何人も殺害。そして町の外れにある、私有地である竹林に埋めてきた。

そして17年前。最後の殺人、遺棄の後。自身で運転する車。帰宅途中の道で起きた、横転事故。

「恐らくその時頭に受けた衝撃も、現在の脳障害の一因でしょう」

 

突然。顔の半身に起きる痙攣。それは健忘のサイン。また俺は何かの記憶を失っていく。

 

物語の始め。気付けば何故か件の竹林に居た。そしてとぼとぼ歩いている所を地元警察に保護される。

警察に迎えに来たウンヒに「これを使って」とレコーダーを渡される。何かと録音する癖を付ければ、何かと役に立つと。

 

「『おじいちゃんはデブゴン』でもレコーダーというアイテムは出てきましたがね。確かにお話を進める上で非常に有効みたいですが…多分…それを操れなくなる日も。ましてや携帯する意識も長くは持たない気がするぞ」そんな当方のチャチャ…小声で済ませますが。

 

アルツハイマーを含む、認知症という脳血管疾患の。未だ未知すぎる実態。何とも突っ込めないので…「言い方が悪いけれど…(物語的に)都合よく何かを忘れたり、思い出したりする感じ。ご都合主義と言ってしまえばアレやけれど…上手いなあ~とも思う」しどろもどろに語る当方。

 

「たとえ頭は忘れてしまっていても。体は染みついた行為を覚えている」主人公ビョンスの言葉。

獣医としての処置は完璧にこなせる。けれど。その回数は覚えられなくて。そうして本業も廃業。自分の行動に自信が持てなくなる日々。けれど。出会ってしまった。

「あいつの目。俺と同じ。あいつは殺人犯だ」

また。分が悪い事に相手のテジュは警察官。いかにビョンスが「あいつがこの町で起きている連続殺人犯やって‼」と警察で騒ごうが。普段迷子になってお世話になっている警察は信じてくれない。

初めこそ相手にしないようにしていたけれど。ビョンスの娘ウンヒの存在を知って。ウンヒに近づいて。恋人になって。グイグイビョンスと距離を詰めてくるテジュ。

 

愛する愛娘ウンヒが危ない!!そう思うと尚更躍起。けれど。どんどん進行していく健忘に、次第に自身の確信も揺らいでいく…。

 

最後の殺人。その17年前に一体何があったのか。果たして殺した相手は誰なのか。

そして。ビョンスの持つ『愛』という感情は。

 

兎に角主人公ビョンスの行動と、その不確かさに振り回され続ける118分。とは言え、ずっと息が詰まる感じでは無くて「詩教室のコミカル感」とか。意外とクスリと笑えるシーンも散りばめられている。

でもそうやって気を抜くと、またもや差し込まれる「あ。それが…」。お姉さんの下りとか…切なかったですね。そして「オ・ダルス‼」という胸熱。

 

「ところで。あの…最終決戦の件なんですが」ネタバレ回避はしたいので。歯切れが悪く。(小声で)でもどうしても言いたい当方。

「あの人の頭。どういう事ですか?」

当方は…当方だけが見たんですかね?幻なんですかね?あれ。

「あの人は…人間なんですかね?」「ターミネーターかなん…」

ストップ。ここで止めますが。

 

設定の妙。そして下手したらコメディやB級になりかね無かった題材を。巧妙な脚本と圧倒的な演技力で正統派に押し上げた。

 

「え?ラストが別のバージョンがあるの?」そんな情報も知って。下手したらずるずると沼に嵌りかねない。そんな奇妙な作品でした。
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映画部活動報告「ガーディアンズ」

ガーディアンズ」観ました。
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「日本よ。これが露映画だ」

そんな歌い文句もさながら。確かに、なかなか普段お目に掛かれないロシア映画

 

これがロシアを代表する映画と言ってしまってはいけないとは思いますが…何だかとても香ばしそうな匂いがプンプンする。何しろメンバーに熊が居るなんて。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのあいつが見た目には愛らしいアライグマなのに対し、こちらはヒグマ‼勇ましい!!」

 

ある日を境に。どこからともなく現れる予告映像にますます興味は募るばかり。でもこれ…うっかりするとあっという間に上映が終了してしまいそうな予感がして。公開数日後、慌てて観に行きました。そして鑑賞後。

 

「いやあ~これ。好きやわああ~。」ホクホクの笑顔で映画館を後にした当方。まさかパンフレットもあるなんて。(えてしてこういう超B級映画はパンフレットを作っていなかったりしますんで)即購入。

 

初めにお断りしておきますが。黒沢清監督作品しかり。何故か当方には『褒めれば褒める程馬鹿にしているような印象に取られる』というジャンルがありまして。

「多分当方がこの作品をけちょんけちょんに言っていると。そう思われるのだろう…寧ろ真逆なのに‼」さあ、それを念頭において。話を進めますが。

 

1940年代。冷戦時代のソビエト。国家のとある研究所。遺伝子操作を行い、特殊能力を持つ姿に改造された超人部隊を作る作戦(パトリオット作戦)が練られていた。

実際に誕生した超人達。しかし、利己的な科学者クラトフの暴走、裏切りにより研究所は爆破され、クラトフも超人達も姿を消した。

50年後。自らも超人となったクラトフが、ロシアを崩壊すべく現れた。

ロシア国防省のラーリナ指揮官はかつての超人達を探し出す。そしてクラトフの野望を阻止する為の超人チーム『ガーディアンズ』が結成された。

 

何だか聞いた事のあるキーワードをかき集めて。でもあれこれ言う暇など与えない。兎に角流れが速い早い。

上映時間89分というタイトな持ち時間。MARVELやDCなら2時間半位掛けてやるであろう内容を90分でやってしまおうという強引さ。なので。超人達も次々見つかり。

 

何だかパンフレットでの扱いが主役とは思えなかった、リーダーのレア。石を操る念動力の持ち主。スカウトに来たラーリナ指揮官に「俺はただの羊飼いだ」と背中を向けたのもつかの間。「クラトフは生きているわ」その言葉に振り返り。次のシーンでは仲間を探しに向かっている。斉藤工似の超音速で動く剣の達人ハン。そして多分誰もが(ビジュアル的に)愛さずにはいられない熊人間アルスス。サーカスで働いていた、透明になれる美女クセニア。(得意料理はボルシチって‼パンフレットでしか語られていないエピソードですよ!!)

皆一応にごねたりするけれど。もう次のシーンでは行動を共にしている。この話の早さ。
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「えっ‼」思わず声が出てしまう程。「一人の登場人物にこれまでの流れを説明させた」かと思うと「おいおいそれはすっ飛ばすなよ~」という不親切さ。

「これまでこういう話見た事あるだろ。そこから貯めたあんたの脳内引き出しで対応しな!!じゃあ先に進むぜ!!」と言わんばかり。さすがロシア。ソー・クール‼

 

そしてマッドサイエンティスト、クラトフ。
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元科学者…とは思えない体格。何て言うか…首回り室伏。そして『エリジウム』か『マッドマックス 怒りのデス・ロードのあいつ』みたいな「もう一生上半身は裸でしかおれません」という、モジュールなる機械を体と一体化させて。

あらゆる乗り物や電子機器を遠隔操作出来る力を持ち。それを以って、宇宙に漂うロシア冷戦時代の軍事衛星を操作し、各国への脅威とする。そうして世界を牛耳ろうと企み。

 

現代によみがえった『ガーディアンズ』。けれど彼らは元々クラトフが造った超人であって。クラトフには彼等の弱点など承知。これは分が悪い。

 

一度は完膚なきまでに叩きのめされたガーディアンズ。しかし。ロシア国防省とタッグを組み。クラトフに立ち向かっていく。

 

~なんて。丁寧に順を追って説明していては(しかも本編は全く丁寧に説明していないのに)キリがありませんので。ここいらでふんわりさせていきますが。

 

まあ~全てに於いて雑なんですね。話の展開もガタガタ。キャラクターの掘り下げも中途半端。そして最終決戦のエネルギー砲。「それは流石に説明しろ!!」という放り投げ。…ですが。

 

憎めない。というか寧ろ好き。こういう歪な作品は嫌いになれない。

 

意外と丁寧だったのは『CG技術』。『絵面』。

冒頭。ロシア国防省ご自慢の三脚戦闘車両。
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『乗り物を操れる』クラトフに依って奪われたその戦車のシャキシャキした動き。そしてビジュアル。

その他のアクションもなかなか切れる。観ていて楽しい。

 

「何より熊人間アルススの絵面の力強さよ!!」
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彼が動くだけで締まる締まる。「おお。全身が熊になる時が‼しかしそこでびりびりに破れた衣服が…また戻っている!!その生地はただの綿ではないのか⁈」

二刀流の剣の達人ハン。
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「あれ刀を抜く所よりも、見たいのは収める所やで。だって絶対怪我した事あるやろ!!」

唯一の女性戦士。クセニア。「何故彼女には『記憶喪失設定』が…と思ったら。お約束やけれどジンとくるエピソード」

主人公(のはず)のレア。「石の鞭とか…地味やなあ~」

そしてロシア国防省のラリーナ指揮官。
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(何かねえ。全然作品に関係する画が拾えないんですよ!)
「やっぱりロシア女性って滅茶苦茶綺麗。クールビューティーなビジュアルやけれど。ガーディアンズのメンバーのお話を憂いた表情で聞いてあげるカウンセラーポジション。かと思えばナイススレンダーバディをピタピタのライダースーツに包むといったサービスもある。素晴らしい‼」

何だかんだ。ガーディアンズの面々を応援してしまう。不思議な魅力。

 

そうなると、物語のちぐはぐさはご愛敬。もうどう転んでもいいですよ。大抵の展開は脳内の引き出しから補てんしますから。

 

パンフレットに依れば(後ねえ。パンフレットでしか語られていない情報が多すぎですよ)サリク・アンドレアシアン監督。1984年生まれ。33歳。若い。

 

気持ち良い位の振り切ったB級作品。まさかの次回作の存在も匂わせながら終わり。

もうマニアックな連中だけががニヤニヤしながら付いてくる感じになりそうですが。

 

当方もまた。ニヤニヤしながら。待ちたいと思います。