ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「Swallow/スワロウ」

「Swallow/スワロウ」観ました。
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主人公のハンター。大企業の御曹司であるリッチーと結婚し、NYの郊外に住居を構え。

誰もがうらやむハイソな暮らし。けれど。

自分の話を聞いてくれない夫。悪い人たちではないけれど、親しみが持てない義理の両親。

裕福な生活に満足していたはずなのに…違和感を感じ始めた頃、ハンターの妊娠が発覚する。

夫も義理の両親も喜んではくれているけれど。どうしても「後継者誕生!」に沸いているようにしか見えなくて。

「もし…これを飲み込んだら…。」

何気なく手に取ったビー玉。キラキラしている。いざ飲み込んでみたら、異物が喉を通る感覚が気持ちよくて…たまらない。

 

「異食症か…。」

付け焼刃の知識ですが。『氷食。土・食毛など。氷食は若い妊婦に見られる場合があり鉄欠乏性貧血が原因の一つとも言われる。土・食毛は子供に多い。どちらもストレスが起因することが多いとされる。』

物語の序盤。妊娠発覚直後の義両親との会食で氷を手づかみで食べていたハンター。「金属の感触は気持ちがいい。」そう思うと、ハンターの食べていたモノたちは結構この疾患あるあるなのか。危なすぎるけれど。

 

「だって。初めのビー玉やったら真ん丸やから下まで通過するなあ~って思ったけれど。次は押しピンとか。結構鋭利なやつもいってるし…いつかどこかに刺さるって。そして電池もヤバい。」

ハンターは口から異物を飲み込むだけではない。排泄物に手を入れ、確実に下から出てきているかを確認。そのブツを洗って寝室の鏡台の前に並べるという『汚え~コレクション』までが一連のワクワクローテーション。

(余談ですが。例えばそれこそ『魚の骨』でも通過しなくて耳鼻咽喉科や消化器内科…果ては外科手術に至る事だってあるんですよ!あの「喉に骨が刺さったら、ご飯を丸呑みしろ」の危険性…因みに当方の肌感で最もヤバい食用魚の骨は鯛。でもフグの骨が腸に刺さった人もいるし…後、高齢者で危ないのは薬をシートのまま飲むやつ。あのシート、体内で溶けないんやからな!)

 

妊娠が発覚し、定期健診を受けた事で即明るみになったハンターの異食症。

家族は衝撃を受け。ハンターをまともにすべくカウンセリングへの通院と自宅に専属の看護師を雇う事になった。

シリアでの勤務経験のある男性看護師ルアイ。その屈強な体躯と初対面での「戦地では皆生きていくのに必死だからその様な病気になる者はいない(言い回しうろ覚え)。」発言。

自分を否定された様な気がして、彼とは距離を置くことにするハンター。

対して。数回のカウンセリングを経て、カウンセラーにぽつりぽつりと自分の生い立ちを話し始めたハンターだったが。

 

ハンターにとって本当の異物とは何だったのか。それは…一つにはとどまらない。

夫であり、義理の両親であり。そしてお腹に宿った命すらもが彼女にとっては異物でしかなかった。

 

体にとって栄養にならない無機物、しかも時には危険なモノを飲み込む瞬間。異物を口に含むことも、体を通過することもえもしれぬ快感を伴った。なぜなら。

それは必ず自分の体を通過して出てきたから。

 

妊娠と出産について。子を生していない当方がどうこう言いにくいですが。ハンターを観ていて感じたのは「嬉しそうではないな」ということ。

一見夫側の違和感が目立つので「だから彼女はおかしくなったんだよ」と捉えてしまうけれど。実は『ハンター側の事情』の方にも大いに原因がある。

 

周りには言わなかった、ハンター自身の出生の秘密。

これを書くのは致命的なんで…流石に書きませんし、なのでちょっと方向転換しますが。

 

「ところで大企業の御曹司と販売員って、どうやって出会って結婚に至ったんですか?」

元々は住む世界が違った二人。勿論全く出会う可能性が無いとは言わないけれど…お見合いじゃないでしょうから…どこかで出会って恋愛して、そして結婚したんですよね?

最後の最後には「俺の子供を返せ!」等々のアウトな暴言吐いていましたけれど。あくまでも愛し愛されていたから子供も出来たんですよね?

この二人の『物語が始まる前』が余りにも説明不足すぎて…ハンターはかつては気持ちを夫であるリッチーに言えていたのか。恋人から夫婦となり。そしてリッチーが会社の地位が上がった事ですれ違ったのか。何となく想像出来るけれど、あまりにも「お察しして!」という感じが否めない。これ、大切な描写だと思うんですけれど。

 

何故そこに引っかかっているのかというと。「リッチーとその両親はどうなるんだ」という気持ちが拭えないから。

いかにも庶民な娘と大事な息子が結婚した。実はそう思っていたとしても、ハンターに面と向かってそういう発言はしなかった。(確かに、貴方幸せね。とか、うちの嫁なんだから。とか私が妊婦の時は~みたいな発言はあったけれど)カウンセラーは結果アレやったけれど、ハンターにあてがった看護師ルアイのまともな事よ。そういう対応が出来る人たちなのに。たとえ巡り巡って保身の為だとしても。

 

看護師ルアイ。ハンターにとって初めは敵であった彼が、結果最も彼女に寄り添えた人間だった。無理に何かを引き出そうとするわけでもない。押さえつけない。ハンターが不安定な状態でベットの下に体を潜らせた時は隣で横になって眠ってくれた。

そして最後にハンターの背中を押した。

 

いかにも『無意識に傲慢な金持ち一家=リッチーとその両親』だったけれど、彼らなりにハンターを気遣っていた時期もあったじゃないか。ハンターは彼らとどうコミュニケーションを取っていたのか。取れていたのか。努力の限界だったのか。

結局、彼らにとってはハンターが異物となってしまう。理解し合えない、そのための努力も不毛だと諦めた時点で、かつて友好な関係を築けていた相手は異物で不要となる。

これまでの良かった思い出も一気に薄汚れてしまう。悲しいことよ。

 

あくまで物語はハンター視点で進むので。ハンター自身はこれまで溜め込んだ滓が流れてスッキリしたかもしれないけれど…独りよがりじゃないか?…相手を思いやれていないのはお互い様ではないかとも思った当方。

 

最後の最後。ハンターの中を通過していったものに溜息が出たけれど。それが彼女の出した答えなのだから…何も言えない。

ただ。これからは溜め込まなくてもいいように。異物で無理やり押し出さなくてもいいような人生を送れますように、と思う反面。

「初めて飲み込んだビー玉が光って綺麗に見えた。飲み込む前の異物が美しく見えた様に。幸せを感じていた時の事を後々そう思えたらいいな。」

そうあってくれと祈るばかりです。

映画部活動報告「無頼」

「無頼」観ました。
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「正義を語るな、無頼を生きろ。」

 

【無頼:正業に就かず、無法な行いをすること。また、そのさまやそのような人。】

井筒和幸監督作品のヤクザ映画。激動の昭和と平成を生き抜いたアウトサイダーを描いた作品。これは是非この目に焼き付けておかねばと、2021年初の映画部活動で観てきました。

 

「何か。何やろう…思ってたんと違った。」

 

映画館を後にする当方の胸に浮かぶ、若干のもやもや感。

「決して昭和の任侠映画に詳しいわけではない。『網走番外地』や『仁義なき戦い』を観ている程度で。後は『ゴッドファーザー』や『任侠ヘルパー』くらい?任侠映画たるもの!みたいな矜持なんて知らない。知らないけれど…なんかダイジェスト感が半端なかったというか。」

 

主人公、伊藤正治松本利夫)。昭和30年代生まれ。貧しい家庭で子供自らが金を稼ぐしか生きる術が無かった。母親は既に居らず、ボンクラの父親もいつの間にかのたれ死んだ。悪さを繰り返し、少年鑑別所にも入った。

出所して見つけた居場所はヤクザ稼業。何度も刑務所を出入りし「最早戦後ではない」と世間が盛り上がった東京オリンピック刑務所の中だった。

出所し組を持たせてもらう事になり、盃を交わした。上野動物園にパンダがやってきて、オイルショックで日本が揺れた頃に妻となる佳奈(柳ゆり菜)と出会った。

 

~とまあ。つらつらあらすじを書いていてもアレなんで、ここいらでストップしますが。兎に角『伊藤組組長、伊藤正治の半生』を淡々と時系列に描いているんですね。

 

貧しい生まれの少年が必死に生きていくさま。そうして大きくなった時、同じく世間とは折り合いを付けられずにいるはぐれモノたちを纏めながら、裏社会を生き抜いていく。日本全体に勢いがあった高度経済成長期。皆が若く血気盛んだった。日本ヤクザ戦争。抗争に依って仲間を失った。けれどバブルが崩壊し景気に陰りが見え始めた頃、ヤクザ稼業もやり方が変わった。

 

雑に挙げてしまいましたが…この他エピソードもてんこ盛りで146分。けれどどこかのエピソードに重点が置かれている感じでもなく(当方の理解力の問題)どうしても『伊藤組組長、伊藤正治の半生』のダイジェスト感否めず。

また、登場人物が多くて。有名どころを始め総勢400余名の俳優陣が…誰が誰だか分からずごちゃついているきらいもある。

 

「何やねんアンタ、文句ばっかり言って!」

 

やや険しい表情で、煮え切らずブチブチ文句を言っていた当方が「いやいやでもな」と表情を一転させる箇所。「柳ゆり菜は最高やった。」

 

映画『純平、考え直せ』(2018)で一躍脚光を浴びた柳ゆり菜。「この年代にこんなに肝の据わった女優が居たとは!」目からボロボロ鱗が落ちた。以降も「彼女が演るなら間違いない」当方が全幅の信頼を寄せている柳ゆり菜。

今回の伊藤組長の妻、佳奈。元々はエエとこの子だったけれど没落し、ホステスとして働いていた所を正治に目を付けられた。

正治と一緒になった。組長の妻。けれど血気盛んな連中は直ぐに何かしでかすし、正治は何度も刑務所を行き来。しかも自分は惚れた恋女房なはずなのに直ぐに他の女と浮気する。

正治に時には嫌事を言いつつも、しっかり正治不在の時は家を守る。組の若い子らに目を配る。その『姐さん』ぶりに惚れ惚れする当方。

(一つ不満を言うならば。主人公正治を演じた松本利夫が青年期~壮年期までを演じ、最後それなりに年を取ったビジュアルになったのに比べ、佳奈の歳の取らんことよ!)

 

貧しい出目から立ち上がり、時にはなりふり構わずにのし上がった。昔の仲間はもうほとんど居なくなった。そんな還暦の時。正治が下した判断とは。

 

「何にも頼らず、ただ己の内なる掟に従って真っすぐに生きた一人の男」うーんそういう風には見えなかったんですよねえ。そもそも何故刑務所から出て直ぐに組を持たせてもらえたのかも正直未だに良く分からんし(当方の理解力の問題)、頼る頼らんというより「時代の流れに乗るのが上手かったんやろうなあ~」「身のこなしが軽い」という印象。正治の内なる掟がイマイチ…読み取れなかった(当方の理解力の問題)。

 

なので。齢60の正治が下した判断には「はああ~?」という声が漏れてしまいそうになった当方。取って付けた着地点。浅はかではないか。

 

おそらく。期待値を高く設定し過ぎたせいで、勝手な肩透かしに終わってしまった。リアル昭和平成のアウトサイダー史大好き組には刺さるエピソード満載だっただろう。けれどその土台となる知識が無い当方はダイジェストに映ってしまった。

 

「これ。去年公開する予定やったんやな…。」

2020年。幻となってしまった東京オリンピック開催。何も起きなければ景気も人々の士気も明らかに高揚しただろう、そんな世界線でこの作品が公開されていたら…印象が違ったかもしれない。不毛なタラればですが。

 

どちらにせよ。昨今滅多にお目に掛かれないヤクザ映画。貴重な鑑賞体験を以て、2021年映画部活動開始です。

2020年 映画部ワタナベアカデミー賞


昭:怒涛の2020年が終わろうとしている。

和:今年も我々、当方の心に住む男女キャラクター『昭と和』が映画部活動報告一年の締めくくりを担当させて頂きます。

昭:映画好きあるある『今年の映画ランキング』。当方は「皆頑張ったのに順番なんて付けられないよ~。ジャンルも違うしさあ。」という観点から、オリジナル部門別でベストを付けていくアカデミー賞方式を採用しています。

和:ですが。ベストと言いつつも複数の受賞が出る事もあります。その場合は公開順番で公表させて頂いています。以上のルールで進めたいと思います。

 

昭:今年の劇場鑑賞本数は71本。うち旧作は3本。NETFLIX作品は2本でした。

和:少ない…近年は年間100本を切ってきていたとはいえ、流石に滅茶苦茶減っている。

昭:そりゃあなあ…今年はやっぱりどこを切り取ってもコロナ一色。全国の映画館が約2か月間閉館した事が大きすぎたよ。

和:劇場が再開した後もしばらくは間隔を空けての座席制限。収容人数が半分~3割位しかないから、観たい映画が観れなかった日もあったな…ちょっと、部門賞発表前に今年一年の個人的な映画鑑賞の思い出語っていこいうか。

 

昭:2020年幕明けの作品は『エクストリーム・ジョブ』。どこまでもカラッと明るい韓国映画。解体寸前の麻薬取締班が起死回生を掛けて唐揚げ屋になる。
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和:「俺たちは一体何をやっているんだ」。唐揚げ屋に夢中になり過ぎて自分たちが警察官である事を見失っていた。けれど、いざ行動開始したら、実は滅茶苦茶優秀なチームだったと。テンポが良くて楽しい作品やった。

昭:『さよならテレビ』。東海テレビドキュメンタリー劇場第12弾は自社の報道フロア。
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和:観に行ったのが製作者の舞台挨拶回やったんよな。元々小さい映画館ではあるけれど、満席で立ち見で観た。

昭:今では考えられないな。

 

和:中国武漢で発生した新型コロナウイルス肺炎。対岸の火事だったのもつかの間。全世界に波及。日本にも上陸し、あっという間に感染爆発した。得体の知れないウイルスに対する不安と恐怖は人々の判断力を奪い、他人への攻撃に向かう人も多くいた。

昭:マスク、アルコール、その他衛生材料や思ってもみない商品の争奪戦。どこそこでクラスターが発生したと報道されれば総出でバッシング。自粛警察誕生。

和:「まだ映画館とか行ってるんですか?」「もう行くのやめてください」面と向かってそう言われた時、全身が震えるくらいのどす黒い感情が駆け巡ったね。

昭:全国の映画館が閉まった約2か月間。再開してから今だってずっと映画関係や映画館で働く人たちは苦しい思いをしていると思うけれど…正直あの閉まる直前の3月あたりは映画館で映画を観る事をライフワークにしている者にも厳しい時やった。

 

和:何が映画だ。不要不急の外出は~そう叫ばれ出した頃に観たのが『ジュディ 虹の彼方に』。
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昭:鍵っ子だった当方と妹が覚える位に観た、MGM映画会社製作の『オズの魔法使』。その主人公ドロシーを演じたジュディ・ガーランドの人生の終盤を描いた作品。「オズ!」懐かしくて涙が出そうになった出だしから。どんどん堕ちていくジュディと最後の合唱に涙腺崩壊したな。

和:公開初日。本当はもっと観客が居ただろうに…というがらんとした映画館で上映を待っていたら、足を骨折した松葉杖の女性が入ってきた。この人にとっては今観ないといけない作品なんだなと思ったよ。

 

昭:映画館が閉まった間。ミニシアター・エイド基金にもささやかながら募金したけれど…映画が観たい。映画館で観たい。その気持ちが止まらんかったな。

和:そして満を持しての劇場再開。そこで観たのが『復活の日』。
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昭:ドンピシャの選択やったな~。40年前の作品とは思えない現在とのシンクロ設定。そして当時の角川映画が膨大な資金をつぎ込んだというバブリシャス。

和:『AKIRAIMAX版で観られる贅沢。原作者大友克洋が製作に関わっているから世界観が崩れないし流石の画力…でも個人的に圧倒されたのは音楽。迫力があったな~。
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昭:座席数を減らしての再開。映画館の換気システムについて広報され始めたのもあって、映画館=密。の印象がましになってきた。

和:マスク着用必須。飲食についての制限等はあるけれど、座席数制限も解除された。でも…前ほど映画を頻繁には観れなくなった。そもそも公開画延期の作品も沢山出たから…。

昭:未だ渦中という感じがするよな…ところで、思っていた以上に話が長くなったからここで一旦止めて発表に移っていこうか。

 

【ドキュメンタリー部門】

『さよならテレビ』『彼らは生きていた』
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和:『さよならテレビ』ホンマ、東海テレビのドキュメンタリーって良品やなあと思う。自社の報道フロアを対象にした今作。普段はカメラを向けている彼らが撮られる立場になった時の態度。そして3人の男たち。

昭:でも実は…という最後のシーンで足元を掬われる。「一体ドキュメンタリーってなんだ」という困惑。これ、本当に舞台挨拶の回で良かった。

和:『彼らは生きていた』。イギリス帝国戦争博物館所有のモノクロ映像を修復して編集した、第一次世界大戦終結100周年記念事業作品。

昭:西部戦線をメインに。戦争が勃発してからの国の機運や実際の現場。捕虜との交流や戦争終結以降までが淡々と記録されている。

和:何しろ本当の映像やからなあ。下手な演出も無い。こういう戦争映画が観たかったと思ったな。そしてこれ、パンフレットも見ごたえあり。

 

【美味しそう部門】

『在りし日の歌』『エイブのキッチンストーリー』
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昭:『在りし日の歌』は一人っ子政策をとっていた頃の中国で生まれた二人の男の子とその家族を描いた作品なんやけれど…食事シーンが滅茶苦茶美味そうやねん。

和:でっかい饅頭とスープ。悲しい気持ちで食べた年越しの水餃子。堪らん。

昭:『エイブのキッチンストーリー』は主人公エイブがワクワクしながら料理を作る様が観ていて楽しくて。後、ブラジル出身のチコのキッチンスタジアムシーンなんてずっとそこに居たくなるくらい高揚する。

和:美味しいは正義。

 

【お似合いのカップル部門】

『マティアス&マキシム』マティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス)とマキシム(グザヴィエ・ドラン

『本気のしるし≪劇場版≫』辻一路(森崎ウィン)と葉山浮世(志村芳)
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昭:真逆なやつ持ってきたな~。

和:『マティアス&マキシム』5歳の時からの幼馴染の男性二人が、自主製作映画のキスシーンに協力した事に依って恋愛感情に気が付くという。もうねえ…マティアスよあんなにがっつりマキシムを求めといて往生際の悪い…腹を括れ!終始それ。

昭:『本気のしるし≪劇場版≫』どこに良い所を見つければいいのか皆目わからん浮世に俺のメンヘラアラームが早々から作動したけれど。実は全てを受け入れて堕ちる事に快感を感じている辻君こそが芯のヤバい奴。もうねえ~二人だけでひっそり生きて欲しい。誰にも迷惑を掛けん様にさあ。

 

【変態映画部門】

『アングスト/不安』
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和:1980年にオーストリアで殺人鬼ヴェルナー・クニ―セクが起こした一家殺人事件を題材にした作品で1983年に公開された問題作。

昭:主人公K.の行動と彼の脳内ナレーションを延々観せられるんやけれどさあ。もう全然思考に共感が出来ないの。こっちは置いてきぼりやのにお構いなし。

和:犬が…何故この状況でこんなにK.に懐いているのか。そして劇場からの「犬は無事です」グッズ。笑ったね。

 

【ラストが胸アツ部門】

『シカゴ7裁判』
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昭:1968年8月に行われた民主党全国大会。その近くでベトナム戦争反対を掲げて集まっていた群衆の一部が暴徒化。扇動したとされた7人に対し国が10年の禁固刑を求刑した、「アメリカ史上最悪の裁判」。

和:オイタをしたにしても罪が重くないか~。そもそもその日に何があったんだ。けれど裁判自体が余りにも理不尽に進行。フラストレーションを抱えながらも「そうか。そういう事が起きたのか」そうしんみり終わろうとしたら。まさかの胸アツラストシーン。

昭:心の中でスタンディングオベーション

 

【助演女優部門】

『パラサイト 半地下の家族』キム・キジュン(パク・ソダム)
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和:あの作品に於けるメインの女性って誰なんだ。シンプルな奥様?あの奥様も凄く好きやったしこの作品に出てくる俳優陣のそうそうたる演技力には舌を巻いたけれど…キム家の長女キジュン。水が溢れかえる便器に座ってタバコを加える彼女は最高の画やった。

 

【助演男優部門】

『TENETテネット』ニール(ロバート・パティンソン

『罪の声』生島聡一郎(宇野祥平
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昭:『テネット』クリストファー・ノーラン中二病ロマンさく裂キャラクター。最後は「ニール!ニール!」の脳内シュプレヒコール。最近変態っぽい役が多かった印象やったから…正統派イケメン枠に返り咲いたな。

和:そして我らが宇野ちん…(勝手な宇野ちん呼ばわり)。『罪の声』グリコ森永事件をモチーフにした、イケメン俳優二人を主軸に置いた割には浮つかずにしっかり骨太な作りに落とし込んでいた。でも「聡一郎さん」登場からはもう…宇野ちんの独壇場やった。

 

【主演女優部門】

『ジュディ 虹の彼方に』ジュディ・ガーランド(レネー・セルヴィガー)

『ソワレ』山下タカラ(芋生悠)

『泣く子はいねぇが』桜庭(後藤)ことね(吉岡里穂)
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昭:『ジュディ 虹の彼方に』落ちぶれていくジュディ・ガーランドを全身で表現したレネー。老け込んだビジュアル。そしてびっくりしたのがあのパフォーマンス力。

和:歌って踊れるイメージが無かったからなあ。

昭:『ソワレ』父親から虐待を受けていたタカラ。刑務所送りになったのに、遂に出所して自分に会いにきた父親。父親と対峙して取った行動と、たまたま目撃してしまった翔太に見せた表情。

和:何て顔するんだよ。息を呑むとはこういう事。そこからずっと、タカラから目が離せなかった。

昭:『泣く子はいねぇが』正直吉岡里穂のポテンシャルを舐めていた。可愛くて元気な印象が強いからさあ。いつまでも子供じみた夫のたすくに対する苛立ち。そして時が経った今のことね。こんな演技の出来る女優だったなんて。

和:パチンコ屋の駐車場で見せたあの表情…堪らん。

昭:何様だ俺ら。

 

【主演男優部門】

『サンダーロード』ジム・アルノー(ジム・カミングス)
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和:テキサス州の警官、ジム。愛する母親が亡くなったその葬儀で、母親が好きだった曲「涙のサンダー・ロード」に合わせて踊るはずが持参したラジカセが故障していた。動揺し、支離滅裂なスピーチを続けた挙句、自ら歌いながらたどたどしく踊り始めたジム。この冒頭12分。共感性羞恥の末、一体何を見せられているのかという悪夢。

昭:ジムの事、しばらく好きになれなかったな~。すぐキレて大声出すし、暴力的やし。でもジムの必死さが分かってくるにつれて見方が変わったな。

和:最後のシーンは泣ける。ジム…不器用にも程があるよ。

 

【ワタナベアカデミー大賞/ラズベリー賞】

該当作品なし

昭:うわああああこう来たかあ。

和:元々から大賞は出たり出なかったりするというのもあるけれど…今年は映画館で映画を観られた事に感謝したいから。ラズベリーも出さない。

 

【監督部門】

昭:相変わらずぶっ飛んでたテリー・ギリアム監督の『テリー・ギリアムドン・キホーテ』。
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和:良かったね。やっと念願のドン・キホーテを完遂出来て。

昭:コロナ禍で公開延期作が続出した中で。それでも年内に公開した、クリストファー・ノーラン監督の『TENETテネット』。壮大な中二病世界。楽しかった。

和:大林宜彦監督の遺作となった『海辺の映画館/キネマの玉手箱』。何というか…色んな寓話をありがとうございました。
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昭:そしてまさかのキム・ギドク監督。

和:『人間の時間』あれが遺作?ええ~って思うけれど。なんかもう本当にコロナのやつ…。
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昭:延々語りつくしたので。そろそろ〆ますか。

和:ええと。想定外な一年となりましたが、何とか年を越せそうでひとまずほっとしています。

昭:全世界に蔓延した新型コロナウイルス肺炎。それに依って強制的に変化せざるをえなかった生活や習慣、意識。もうこれは。騒ぎが終息したとて、以前の生活には戻らないんやろう。そう思っています。

和:たまたま当方の趣味は映画鑑賞だった。今年は映画館で映画を観る事に窮屈な思いをしたけれど、これは当方に限ったことではない。皆が何かを制限されたり我慢したり諦めるしかなかった。その事で生活が立ち行かなくなった人も大勢いる。

昭:けれどエンターテイメントは生活が安定していないと享受してはいけない訳ではない。映画や音楽、舞台やイベント。人が集まり何かを成す。それらは決して「あっても無くてもいいもの」ではない。

和:ただ。今だにどう対応する事がベストなのかよく分からない感染症のせいで、大切にしている場所やモノが傷付けられたり取り上げられる訳にはいかないから…流動的ではあるけれど「こうしてください」と言われた事を守りながら映画部活動を続けていきたいと思っています。

 

昭:延々と長文にお付き合いいただいてありがとうございました。「観た作品全ての感想文を書く」「観た順番を入れ替えない」自身の課したレギュレーションに押しつぶされそうになることは今年も往々にしてありましたが。何とか完走出来て良かった…良かった(ホッと溜息)。さあ!混沌とした2020年も終わるぞ。という事で『復活の日』からはいどうぞ!

和:「どんな事にだって終わりはある。どんな終わり方をするかだ」。

映画部活動報告「バクラウ 地図から消された村」

「バクラウ 地図から消された村」観ました。
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ブラジル。クレベール・メンドンサ・フィリオ監督作品。

 

ブラジルのとある辺境の村、バクラウ。

長老の老婆、カルメリータが亡くなった。異国で暮らしていたテレサも帰郷。カルメリータの葬儀には村中の人が集まった。

そこからが不可解な出来事の始まり。突然インターネットの地図上から村の存在が消え、大切な給水車のタンクが襲撃された。滅多に来ないよそ者が現れ、そして村人が殺された。

一体村で何が起きているのか?誰が何の目的で村を攻撃しているのか?

 

「一体何を観せられたんだ…」思わずそう呟いてしまう。とんだ怪作。

 

そもそもブラジルという国がどういう所なのかが良く分からないのもあって…多分相当なセンスが光っている作品なんでしょうが、これがどこまでウィットの効いている話なのかが当方には不明(賢いフリは出来ません)。

「まあ確かにこういう…言い方がアレやけれど…田舎はちょっと不衛生で土着文化があって、というコミュニティーが存在しそうな感じがある」。

こんな風に持って回った言い方をするのは何だか適切じゃない。そもそも言いたい事が伝わらない。

 

「つまりは。どうせ田舎の土人だろうと舐め切って潰しに行ったら、とんでもない戦闘力を見せつけられた」という事ですか。

 

長老の老婆が亡くなった。村人総出で送った葬式の場で異常な取り乱し方をする女医。

広場で音楽を流すDJ。大ぴらな性風俗。何かと歌いだす老人。

村人から総スカンを食らっている政治家。どうも彼のせいでこの村はダムをせき止められ水は貴重らしい。

突然現れた白人のライダーカップル。ただの旅人だというがどうも怪しい…何だかぎこちない。彼らはあくまでも旅の休憩地点だと言い張り、早々に村を後にした。

そして村人の乗るバイクの後を付けてくるUFO…UFO⁈

 

終始ブツ切りで進行する物語。「ああ。こういう辺鄙な村ではこういう事もあるのかもしれない。」「ずっと暑そうな場所で水が十分じゃない所はな~」「あれ~なんか結構皆さん脱いでおられる。思いっきり裸ですけれど。R15+で大丈夫~?」「え。ていうかUFO⁈」

コロコロ変わる視点。次々現れる変わったキャラクター。纏まりのない展開に、いちいち「こういう事もあるのかな~」どうにかこうにか誰かに感情移入できやしないかと思うけれど…毎度毎度肩透かしを食らってしまう。でもねえ、これ終始こんな感じで突っ走るし…それがだんだん面白くなってくるんですわ。

 

「UFO⁈」という面白物体に「もしやB級SFモノか‼」と思わずワクワクしてしまいましたが…流石にそれはなく…。

 

つまりは…と説明出来る気もしませんので、感じたままを。

「何にも考えるな。楽しめ。」

 

ブラジルの辺鄙な村。観光資源もなく、ただただ田舎なだけのさびれた村。

とはいえ村人の生活水準は極端に低い訳ではない。何しろ彼ら、インターネット使えますから。意外と近代的。

ところが。謎のライダーカップルに妨害電波装置を設置され。携帯電話でのやり取りが不可になった。加えて停電。

村人皆殺しを企てる謎のスナイパー集団。元軍人?傭兵?警察?ただのサイコパス?いわくありげなイカレた連中が狙う相手は…とびきりイカレた村人たち。

 

終盤の割と残虐な殺戮シーンにはただただ乾いた笑いが止まらなかった当方。そうよな~何も小難しく考える必要なんて無いよな~。

 

オープニング曲と映像から既に「これは古い映画のオマージュかな」というテイスト。

舞台はブラジルなのに西部劇っぽい。徒党を組んで乗り込んでくるやつらを村人が退治するなんて七人の侍みたいでもある。

物資という手土産を持って媚にくる政治家に総スカンを食らわせる村人たちや、けれど政治家が去った後皆で山分けしている風景。

結局この村の消滅を企てた黒幕とは。

多分…分かる人が観れば分かる、今のブラジル社会に対する風刺みたいなのが差し込まれまくっているんやろうな~。事情が分からん当方は何となくその雰囲気しか察する事は出来ないけれど。

 

「ただ。根底にある精神の野生的なことよ」。

やられたらやり返せ。この村にある歴史記念館の物騒な展示物。どうしてよそ者たちは誰もそれを見なかった。この村人たちにはこういう血が流れているのに。強いぞ〜。彼らは強い。

時代は進んだけれど…歴史は繰り返された。

 

まあ。結局何の予備知識もなく観に行くのが正解。最終的にどう感じるのかは個人差があるとは思いますが…この最後の最後まで続く「誰の視点にも立てない」肩透かし感はだんだん面白くなってくるし、そして鑑賞直後おそらくまず思う事。「一体何を観せられたのか」。

 

政治家が持ってきた鎮痛剤?が怪しいと村人に説明していた女医。じゃあ村人たちが皆飲んでいた同じ薬は一体何だったんだ。アンタが処方してんでしょうが。もっとヤバい何かじゃないの。そうなると一体あのスープは何だったんだ。危ないな。

 

当方が思わず声を出して笑ってしまったシーン。温室と藁の屋根がある植物に囲まれた家に住んでいた夫婦。「いやいやアンタら…そういう所やで!」余りにも自然体。

 

カンヌ国際映画祭で高評価だった作品。この作品の持つセンスと本当のウィットを当方は知る由もありませんが…頭を空っぽにして観に行っても十分楽しめる、それでいいと思っています。

 

(バクラウまで17km)
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映画部活動報告「100日間のシンプルライフ」

「100日間のシンプルライフ」観ました。
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目が覚めたら文字通りの『裸一貫』。

所持品は全て倉庫に没収。そこから自分に必要なモノを一日に一つずつ取り戻していくルール。期限は100日。

 

ドイツ・ベルリン。幼馴染で今ではビジネスパートナーのパウルとトニー。それなりに成功しているアプリ開発企業の共同経営者の二人。

スマホ依存症でお勧めの商品は直ぐに買ってしまうパウルと、コンプレックスの塊なトニー。

自社のアプリが超大手IT会社との契約に繋がり。盛り上がりに盛り上がった社員総出のパーティでまさかの大げんか。酔った勢いで大金を掛けた勝負を提示してしまう。

 

『持ちモノ全てを倉庫に没収し、一日一つだけモノを取り戻せる。新しく何かを買うのは禁止。会社の食べ物は食べてよい。期限は100日。達成出来た方の勝ちで、負けた方はアプリの売り上げから自身の取り分全てを社員に分配する』。

 

元々モノに溢れた生活をしていた二人。裸一貫から彼らは何を選択し、そして100日後にはどうなっているのか。

 

とにかく主人公二人の関係性が観ていて楽しかった作品。幼馴染で家族同然に育った二人のキャッキャした感じ。裸だって恥ずかしくないし何なら茶化せる。掛け合いのテンポが速い。

けれどそんな二人にも苦い過去が…かつてトニーはパウルの彼女を寝取った事があり、それを引きずるパウルは新たな恋が出来なかった。

 

そんなパウルが開発したのが音声アプリ『ナナ』。いわゆるSiriの女性音声バージョン。恋人っぽい喋り方でユーザーの生活に寄り添ってくる。

超大手IT企業へのプレゼン。パウルは『ナナ』との生活に依る癒しを強調していたが、トニーはナナとの生活から得られたユーザーの情報が使えると説明。実際にナナを使用しているパウルが、購買意欲に駆られ、いかにナナに言われるがままにモノを買っているかを公表した。

確かにパウルの部屋はモノで溢れ雑然としていた。買った事で満足し封も開けていない商品。同じモノや同じようなモノ。

けれどそれをプレゼンの場で指摘されたパウルは機嫌が悪い。

プレゼン成功で盛り上がる社員総出のパーティーでも、苛立ちが収まらなかったパウルが吹っ掛けた喧嘩。おおいに買ったトニー。

そうして二人のシンプルライフが始まった。

 

「もし当方だったらどうする。何が必要だろうか」。

 

まあ…そんな「もし」は無いとしたいけれど。起きたら裸かあ…しかも季節は冬でしたよ。冬のドイツ…滅茶苦茶寒そう。

確かに一発目は暖かい上着や寝袋になるやろうな。でも…当方にはもっと必要なモノがある。『眼鏡』これが無いと生きていく事が難しくなる。

裸眼で生活出来る人には分からんでしょうがねえ。眼鏡が無いとあんまり見えていない人にとっては体の一部なんですよ。

なので。「眼鏡を掛けると幼くなる」みたいな理由で普段コンタクトをしていたトニーが同じコンタクトを数日使い続けて角膜炎になる、みたいなエピソードに震えが止まらなかった当方。トニーよ!目の病気を馬鹿にしたらアカン。その民間療法も止めろ!ちゃんと眼科に行って処置してもらって然るべき目薬をもらわんと、一生コンタクトなんか付けられなくなるぞ!(終盤眼鏡を掛けていたトニーの姿に安堵)。

 

完全に話が脱線してしまいました。

これは大きな契約になる。アプリの売り上げは凄い事になるぞ。しかもツートップが馬鹿な勝負を仕掛けた。こんなのあの二人が完走出来るはずがない。負けた方の手取りが我々に分配される。これは楽しみ。

おのずと士気が上がる社内。「どちらが勝つか」という賭けまで行われ、「買い物依存症パウルが我慢できるわけが無い」とトニー一強。

これがまた、仲の良い会社なんですね。こういうお仕事では無いのでよく分かりませんが…「この会社には住める」と思った当方。

社内の内装や共有スペースの面白さ。何?あのビニールボール一杯で体を沈める部屋。ワクワクしてしまう。

 

男前二人が裸でキャッキャして(言い方)、コミカルなテンポで進む前半。けれど話が進むにつれて「あ。これ結構しっかりした話やな」と考えさせられる。

 

二人が毎日通う事になった倉庫で出会った女性、ルーシー。彼女の倉庫にはぎっしりと衣装が詰め込まれていて。そこで様々な恰好を楽しんでいた彼女と仲良くなるトニー。

初めこそイイ感じの女性を口説きたいだけだったけれど。何も買えないトニーはいつもの様な気取ったエスコートが出来ない。けれど素朴なデートが愛おしくて。どんどん彼女に惹かれていく。

 

今は一人で暮らすパウルの祖母や、パウルの両親との関り。気になる彼女。仕事。そして何より主人公二人の友情、絆…。多方面から線を手繰り寄せて、けれどそれがしっかり纏まっている。

 

ずっとくすぶっていた過去のこと。お互いに対して本当に言いたかったこと。これをぶつけたら関係性が崩れるんじゃないか。そう思っていたことをしっかりぶつけあう、まさに泥仕合を微笑ましく感じる当方。いいなあ。こういう相手が欲しいよ。

 

100日経った時。過剰にそぎ落とされたけれど、スッキリとした表情の二人。そしてルーシーへの言葉とその姿に胸が熱くなった当方。こんな事を言えるようになったなんてな…。

 

基本的には明るく楽しくテンポの良い…けれど観終わみれば「人生で必要なモノかあ」と考えさせられる。身の回りがごちゃついていないか…心当たりがあり過ぎる。

 

「一気呵成には出来ないから。一年掛けて断捨離していこうか」。

そう思う当方…の先行きが不安なのはハナから「一年掛けて」とか言っている所です。

映画部活動報告「燃ゆる女の肖像」

「燃ゆる女の肖像」観ました。
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19世紀、フランス。画家のマリアンヌはブルターニュの貴婦人から、娘エロイーズの肖像画を頼まれる。近く結婚予定のエロイーズのはなむけとなる肖像画

しかしエロイーズ自身は結婚を拒んでおり、先任者の画家も筆を投げていた。

画家である事を隠し、散歩相手としてエロイーズに紹介されたマリアンヌ。孤島を歩き回り、密かに自室で絵を仕上げていたが、真実を知ったエロイーズに出来上がった絵を否定されてしまう。

意外にもモデルになると言い出したエロイーズ。そうして、一枚の絵に向き合う事になった二人。

見つめ合い。生活を共にしていく中で恋に落ちていく二人。しかし、それもつかの間。

画が完成する期日は二人の別れを意味していた。

 

「美しい…」

 

どこをどう切り取っても美しい、二人の女性の姿。出会った初めは戸惑い。一体相手は何者かと探り合い。けれど正体を知って、自分をさらけ出しぶつかり合ううちに恋に落ちた。けれど…永遠には続かない恋。手に入った途端に終わりが見えている。

 

孤島の城に住むエロイーズ。元々は修道院で暮らしていたが、姉が結婚を拒み自殺したため母親に呼び戻された。帰った途端、姉をなぞるように見合い結婚へと段取りが進められているが、顔も見た事もない男性の元に嫁ぐ事が受け入れられない。

そして画家のマリアンヌ。一人で生きていくと決めた女性。

 

「だがしかし。こんなに普遍的な物語を今日日観るとは…」。

 

もしマリアンヌが男性だったら?

孤島の城に住む年ごろの娘エロイーズ。純粋培養で育った、恋を知らない生真面目な彼女は近く見知らぬ男性と見合い結婚をする。

そこに突然現れた男性(マリアンヌ)。何故自分と行動を共にしたがるのか、何を考えているのかといぶかしがっていたけれど…蓋を開けてみれば花嫁道具の肖像画を描く画家。

だから自分の前に現れたのか。やたらと付きまとい、うるさい位に視線を感じていたのは画家だったからか。

瞼に私を焼き付けたつもりでこそこそ描いて出来上がった絵。こんなものを私だと思われては心外。この画には血が通っていない。

「モデルになる」さあ私を見るがいい。もう隠さない。私もあなたを見るから。

 

~という感じ。男女で観た事あるような気がする。決して奇抜ではない。けれど主人公二人を女性で描かれた時。こんなに繊細な物語になるなんて。

 

キャンバスを隔てて。視線と視線が交差する。「貴方って驚くと…」互いの表情で気分が分かる。頑なだった時、決して笑顔にはなれなかった。けれど今は二人で過ごしている時間が楽しくて自然と顔がほころんでしまう。ここには母親はいない。二人っきり。階級なんて関係ない、同世代の話し相手。こんな人は今まで居なかった。

 

この作品にはほとんど男性は登場しない(船乗りと出来上がった絵を運ぶ男性くらい)。

孤島の城に住む未亡人とその娘エロイーズと召使のソフィ。画家のマリアンヌ。終盤描かれる祭りで歌うのも女たち。そんなむせかえるほどの女ばかりの世界。

 

正直、エロイーズとマリアンヌの恋については「これは女性同士という部分以外はほぼ既視感のあるロマンスではないか」と思った当方でしたが…この美しすぎる物語に生気を通わせたのは『召使のソフィ』の存在。

まだ幼さの残るあどけないソフィ。この城に住む女たちの世話をする。しかし未亡人の居ない所では、エロイーズとマリアンヌとはまるで友達のように会話し食事と共にする。

未亡人が城を空けた数日。実は妊娠中であり、しかし産むわけにはいかないからと堕胎するソフィと立ち会うエロイーズとマリアンヌ。

 

『女であること』を受け入れるとは諦めることなのか。少なくとも19世紀はそうだったのか。

妊娠しても産むわけにはいかないと堕胎するソフィ。ソフィの相手はそもそもソフィが妊娠しことすら知っていたのか?処置を受け涙するソフィの横に付き添うのが笑顔の子供たちという…いたたまれない対比。

見た事もない相手に嫁ぐのは辛いと塞ぐけれど…だからといって母親に正式に抗議する訳ではないエロイーズ。

そして。恋した相手、エロイーズを城からさらってしまおうとはしないマリアンヌ。

村の祭りで女たちが歌っていた、独特な曲が頭から離れない。

各々は熱く燃えるものを持ちながらも運命には抗わない。けれどずっと胸の中でくすぶっている…。

 

「まあ。限られた時間の中で惹かれあった二人…って、障害があればあるほど燃えるっていう側面が絶対あるけれどな」。どうしても素直に首を縦に振らない当方。

多分…「あまりにも綺麗に出来過ぎていた」。おかしな話ですがそうとしか言えない。何かケチを付けようにもままならない。上手くまとまりすぎていて。溜息ばかり。

 

終盤のマリアンヌが語った『その後の私たち』。そのエピソードたちが完璧すぎて「うまあああ~」という感情がこみあげた当方。

片方にとってはそれは弱火で燻っていた恋。けれど相手にとっては、かつて熱く盛り上がった思い出の恋だった。

終わった恋を想い涙する相手を遠くから見つめる自分。けれど…その視線は交差しない。自分が視線を送れば、いつもそれに気づいてくれたのに。

 

二人で取り組んだエロイーズの肖像画。それが完成するという事は二人の別れを意味する。けれど…嫁いだ先に飾るその画はいつも甘い記憶を思いだしただろう。それは、新しい環境で生きるエロイーズをなんと力強く支えたことか。

 

一見普遍的なロマンス。けれどそこに生きた女たち。運命を受け入れ歯車に逆らわなかったけれど…忘れられない恋をした。その記憶はずっと胸を焦がし体を熱くする。

 

「どこを切り取っても美しい…」。122分。まさに動く絵画を観ていたような感覚。

映画館で観られる事がありがたいです。

映画部活動報告「佐々木、イン、マイマイン」

「佐々木、イン、マイマイン」観ました。
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高校の頃の俺たち。いつも気の合う仲間4人でつるんでいた。放課後に自転車で行ったバッティングセンター。よく入り浸っていた、仲間の一人、佐々木の家。

汚い佐々木の家で。皆でゴロゴロして、ゲームをして、佐々木特製カップ麺を食べた。

バカばっかりやっていた俺たちの中で佐々木はぶっちぎりに頭のおかしな奴。俺ら男子が集まって「佐々木!佐々木!佐々木!」。当時『佐々木コール』と呼ばれていた囃子言葉でおだてると佐々木はどこででもすぐ全裸になった。

先生には怒られるし、女子には避けられたけれど。佐々木はいつだって俺たちの中心人物だった。

 

「なんちゅうエモーショナルな…」。

いくつになってもこういう作品には気持ちを持っていかれてしまう当方。心のやらかい場所をしめつけてしまって…息もだえだえ。

 

主人公の石井悠二(藤原季節)。俳優を目指して上京し早何年。鳴かず飛ばず。ぱっとしない。けれど辞める踏ん切りは付かない。

別れたはずの恋人、ユキ(萩原みのり)ともずるずる同棲生活が続いていた。

ある日。掛け持ちで働いている工場に、高校時代の同級生多田(遊屋慎太郎)が飛び込み営業でやってきた。久々の再会。その後飲みに行った場で、久しぶりにかつて圧倒的存在感を放っていた同級生佐々木(細川岳)の話になった二人。

 

悠二。佐々木。多田。木村(森勇作)。高校の頃、4人でいつもつるんでいた。

爆発的なテンションと行動力。次は何をするのか分からない。突拍子がない。一緒に居ると楽しくて。グイグイ引き込まれていく、でも嫌じゃない。佐々木と居るといつも楽しかった。

けれど。4人共分かっていた。

いつも入り浸っている佐々木の家には、ほとんど佐々木しか居ないこと。

父親と二人暮らしのはずの佐々木の家は滅茶苦茶に散らかっていて、佐々木はほぼカップ麺などのインスタント食品しか食べていないこと。

ある日。いつも通り佐々木の家で遊んでいた悠二たちは、唐突に佐々木の父親(鈴木卓爾)が帰ってきる所に遭遇する。

「ちょっと印鑑取りにきただけだから」「次はいつ帰ってくるの?」「仕事が落ち着いたらな」佐々木の小さな動揺、すがるような表情を見逃さなかった悠二。

 

高校生の悠二。どういう事情かは知りませんが。祖母と二人暮らしで、その祖母が老いていく事が直視できなかった彼だからこそ。いつだって底抜けに明るい奴だと思っていた佐々木の不安げな子供の表情が見逃せなかったのだろう。

 

現在の悠二。20代後半。かつてつるんでいた仲間、多田も木村も既に結婚している。なのにいまだに一人で東京にしがみついている。役者も元恋人の事も断ち切れない。

たまたま再会した後輩俳優から舞台での共演を依頼された。題目は『ロング・グッドバイ』。引き受けたけれど…役に集中出来ない。共感出来ない。

 

「20代って…中年の当方からしたら、まだ全然体力もあるし頑張れる気がするけれど…」今だからこそそう思いますが。けれどそういえばかつて「男が無職で夢語っていいのは25歳まで」と言っていた事を思い出した。

結婚。田舎に帰る。きちんとした職に就く。こうなればとことん夢を追いかける。モラトリアムは終了だ。さあどれを選ぶ?30歳を目安に一回ジャッジとリセットを求められる風潮は確かにある。

(ここを過ぎれば人生はもう自由気まま。その代わり全責任を己で取る覚悟)。

 

今のどん詰まりな現状から、ふとかつての楽しかった高校時代を思い出し笑いがこみあげる悠二。元恋人のユキに「どうしたの。久しぶりに笑ってる」と聞かれ「高校の時同級生で佐々木って奴がいてさあ」と話しだしたら尽きなくて。声が弾む。けれど。

佐々木との思い出は楽しい事ばかりではない。

 

明らかに育児(というのか?)放棄していた父親。お金は落としていたのだろうけれど、家族としての役割を果たしておらず家庭崩壊。反して佐々木は明らかに父親の愛情を欲していた。

愛されたい。愛されたい。愛されたい。

学校では皆の人気者。名前を呼ばれて。大きな声を出して騒いで全裸でおチャラけて。そうやっていれば頭が空っぽでいられる。皆に求められている。一人じゃない。

 

そんな佐々木の、動揺し隠せなかった素顔を見つけてしまった悠二。思わず声を掛けたけれど佐々木はのらりくらりとしていて、決して本心は語らない。挙句悠二に役者になれと薦めてくる。

「大丈夫だよ。お前なら大丈夫」。

 

「何て顔をするんだ…」。ひたすら眉を顰めてしまう当方。「何で自分は駄目だと思うんだよ、佐々木」。

高校卒業後の佐々木。その半分投げやりな「俺なんてさあ」という言葉に舌打ちが隠せなかった当方。いや、ああいう暮らしをする人を決して馬鹿にしている訳では無いんですが。佐々木の「俺なんかにはこういう人生がお似合いやろう」というスタンスが気にくわん。

けれど…悠二の目線が外れて佐々木の一日が映された途端、一見自暴自棄な様で、どこか佐々木ならではの純度が見え隠れして。どこかほっとした当方。

 

問題をきちんと整理して解決する。うだうだしない。振り向かない。切り替えて前に進む。

そんなにシステマチックに人の感情は出来ていない。けれど…自分自身に猶予を与えて、楽しい思い出ばかりに浸っていたら動けなくなった。

けれど。今自分がしがみついている所は完全に安心できる場所なのか?都合のいい記憶ばかりを選んでいないか?胸がざわつく事も、嫌だと思った事もあっただろう?

いっそ全部ひっくるめて、全てを地面に置いて歩き出してみたら…いつか振り返った時この場所は…きっとぼんやりと懐かしくて暖かく見えるだろう。

「大丈夫。お前なら大丈夫」。

 

これは、主人公石井悠二が今と過去にケリを付ける物語。そう感じた当方。

 

終盤。「これまた急転直下な」という展開で風呂敷が畳まれ。唸るけれど…確かにこういう生き方が佐々木らしいと言えば佐々木らしいなと言い聞かせる当方。

 

流石にラストシーンは荒唐無稽過ぎて「いやこれは彼らの夢だ」と言い聞かせたけれど。きっと三者三様に大人になってしまったかつての仲間たちの、渾身の『佐々木コール』。

 

佐々木役を演じた細川岳。彼の、高校時代の同級生のエピソードが基になったという…という流石といえば流石の『佐々木』っぷり。

そして主人公悠二を演じた藤原季節を始め、俳優陣が皆生き生きとその役になっている姿に感銘。そして…個人的には木村の恋の行方にグッと胸が熱くなった当方。やるやないかお前!…堪らん。

今作が長編映画デビューとなった内山拓也監督。これからも楽しみです。