ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

8月の映画部活動報告

昭:はいどうも。お久しぶりです。当方の心に住む男女キャラ、昭と和(あきらとかず)です。

和:あれ?この映画感想文やめたんちゃうかったん?

昭:やめてない(溜息)やめてないけれど…色々積み重なって、映画感想文を書く余裕がなくなった。でも映画鑑賞は少ないながらも続けているから、書けていない本数だけが増えていく…気になって仕方がないけれどどうしようもなくて…もういっそこのままフェードアウトしようかとも思っていたけれどそれも気持ちが悪いし…。

和:うじうじしていた時にふと浮かんだ折衷案「もういっそ月単位で締めたらいいんじゃない?」。

昭:「観た映画の感想を全て書く」「観た順番を入れ替えない」一つの作品につき一つの感想文を書いていたことを思うともやもやするけれど…そのスタイルを継続するのは現状では難しい。年内まではこれでいこう、そう切り替えていきたいと思います。

和:辛気臭い出だしはこれくらいにして。進めていきましょうか。

 

『ボイリング・ポイント/沸騰』

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昭:一年で最も賑わうクリスマス前の金曜日。ロンドンの人気高級レストランを舞台にした、95分ノンストップワンショット作品。オーナーシェフのアンディを主軸に、曲者揃いのスタッフやひと悶着起きそうな客たち。制作・脚本・監督のフィリップ・バランティー二がレストラン勤務経験者らしく、飲食店あるある(らしい)トラブルが大小同時に同時多発。それらがうねりながらとんでもない場所へと着地していく。

和:なんてせわしないレストランなんだ。騒がしくて、とても高級レストランには見えなかったよ。しかも…コロナ禍を体験した今、あの店の衛生面がひどくずさんに見えた…。主人公アンディが何回も息子とスマホで連絡するシーンが「調理しながらスマホをいじるシェフ」と気になったり。調理中に調味料入れみたいなボトルから水分補給しているのも気持ちが悪かった。なにしろ「触ったあと手を洗っていない」からさ。

昭:素手で料理してたからな。ってそこばっかりじゃないやろう。白人スタッフには愛想よくしているくせに黒人スタッフにはいちゃもんをつける客とか。招かれざるライバルシェフとグルメ評論家のサプライス来店とか。ナッツアレルギーの客とか。

和:ナッツアレルギーに関しては「踏むぞ踏むぞ~」というフラグが立ちまくっていたもんな。一体どこで?という種明かしも「これはどうしようもない」というがっかり感。

昭:スタッフ間のいざこざも盛り沢山。愛されない支配人。働かないジャンキー。まだ新人で不慣れなスタッフ。エトセトラ、エトセトラ。とにかく皆情緒不安定でぎすぎすしていて仲が悪い。飲食店におけるチームワークとはなんぞ?

和:それに関しては、『渡る世間は鬼ばかり』の中華料理店幸楽をだぶらせてみていたな。当てこすりしながら仕事する従業員。正直そんなの聞きたくないよ、こっちは食事しに来てんだから。バックヤードで時間外にやれ。店内で店員たちが大声で喧嘩している店なんてろくなもんじゃないよ。

昭:あれよあれよという間に怒涛の顛末を迎えていた。目が離せなかったし面白かったけれど…若干「盛りすぎかなあ」という感じも否めなかったな。

 

 

キングメーカー 大統領を作った男』

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和:韓国第15代大統領金大中とその選挙参謀・巌昌録をモデルに描いた作品。光の当たる表の存在として民衆の希望となる国会議員、キム・ウンボム(ソル・ギョング)と同じ理想を追いながらもウンボムの影となり暗躍する選挙参謀のソ・チャンデ(イ・ソンギュン)。この国を変えるためには勝たなければならない。どこまでも清廉潔白であろうとするウンボムと彼をのし上がらせるため裏工作に奔走するチャンデ。志は同じだけれど手段が違う。互いに必要不可欠な存在ではあるけれど最終的には混ざり合わない…。

昭:近年の韓国政治モノ映画って本当に面白いよな。史実をサスペンスドラマ仕立てに作り上げる力量。しっかり重厚なのにわかりやすくみやすい。何となくしか知らなかったことが「そういうことだったのか」になる心地よさ。

和:軍事独裁国家から民主的な政権へと移行したい。その想いは同じなのに…「光が強くなれば、影もまた濃くなるものー」影の存在からもう抜け出せなくなってしまった。二人が決別したときの「あのとき 同じ花をみて 美しいといった二人の 心と心が 今はもう通わない」。『あの素晴らしい愛をもう一度』が脳内で流れた瞬間。

昭:最後のシーン…切なかったな。まぶしい…やっぱりどこまでも光と影なんやなと。

和:でも…時の流れは物事のいい所だけを強くするから…老いたときにしみじみ「あの時は楽しかったな」って思うんじゃないかな。間違いなくともに戦った同志やったんやから。

 

『NOPE/ノープ』

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昭:カルフォルニアの山に囲まれた広大な牧場を舞台に起きた、UAP(未確認空中現象)とそれに翻弄される兄妹を描いた作品。ジョーダン・ピール監督。

和:牧場を経営する長男のOJとその妹エメラルド(以降エム)。無口な兄と奔放な妹が牧場で起きている不思議な現象の正体を突き止めようとするが…開けたらびっくり玉手箱。

和:第一印象ではわかりやすい作品やったなと思ったけれど、後から思うと色々深い…人様の考察を読んだら「聖書!」とか「あの映画からの引用云々」とか。よく見てらっさることよ。こちとら「大型バイクときたらAKIRAやりたくなるんやな~」と思ったくらい。

昭:「考えるな、感じろ」でやってますんで。昔のホームドラマ撮影現場で起きた事故のシーンに感じた違和感も「深追いするな」とすぐさま打ち消しちゃったな。

和:ジョーダン・ピール監督がこれまでの作品同様に訴えたかったテーマの一つが『人種差別』なんやと勝手に思っているんやけれど。今回お馴染み黒人キャストだけでなくアジア人キャスティングをしたことでまた違うステージに進んだ気がしたな。

昭:どういうこと?

和:アジア系の少年がホームドラマでちょっと下に見られるキャラクターだったこと。共演していた猿の誕生日パーティの回で、急に凶暴化した猿が共演していた人間たちを襲ったのに、彼だけは襲われなかった。彼もまた『異質なもの』と扱われていた、いわゆる同類だと猿に認識されたから。黒人だけじゃない。アジア系だって、他の人種だって。多種多様な人種が混在する国だと言いながら結局異質だと認識したものを自分より低く、無意識に馬鹿にする者へのメッセージ。お前たちが馬鹿にしている相手にも感情があって、思いもよらないときに爆発するかもしれないんだぞ。

昭:大人になった彼は芸能界とは縁を切っていて、牧場の近くでテーマパークを経営している。もう華やかな世界には興味がない、というそぶりを見せているけれどどこか未練がましいんよな。かつて自分が出演していた件のホームドラマ関連のモノをコレクションしていたり。

和:「これは一体なんだ」そう思って思わず『それ』を見てしまったら終わり。目が合ったら最後、取り込まれてしまう。そこに気づいたOJ。ならば見ることなく対峙すればいい。

昭:OJが馬の調教師だっていう設定が生きているな。相手を得体のしれない化け物として扱うのではなく、生き物だととらえる。そのうえでどうすれは手なずけられるのか、自分のテリトリーから出て行ってもらえるかを考える。見たい、知りたい、そう思ってしまうと相手に飲み込まれる。性質を見極めて受け流す。OJとエムの大捕り物、見ごたえあったな。

和:個人的には、自宅にいて血の雨がドッシャーてたたきつけるっていうシーンに高揚してしまった。ああいうの…好きなんで。

昭:これまでのジョーダン・ピール監督作品の中でもうまくまとまったな~という印象やったな。

 

 

和:めっちゃ駆け足。8月の映画部活動報告かあ…もう11月後半。秋も深まってきてますよ。

昭:そうやなあ。でもずっと気になっていたんよな。感想文が書けないままになっていくの。これまでのスタイルでは難しい、でも備忘録は残しておきたい。やめるときはちゃんとやめる、フェードアウトは嫌やなって思ってた。

和:このスタイルなら頑張れそう?

昭:それはなんとも。でも年末の映画部総括で今年の映画を振り返りたいから、そこまでは頑張りたいとは思っているよ。

和:映画を観ることが重荷になるなんてナンセンス。本来は「映画が好き」。ただそれだけ。年内走り続けたいけれど…体が資本なんでほどほどにしよう。

昭:ということで。月締めスタイルで続けていく所存で、頑張りすぎないように頑張りたいと思います。