ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「天才作家の妻 ―40年目の真実―」

「天才作家の妻 ―40年目の真実―」観ました。
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アメリ現代文学の父。そう称された小説家ジョゼフ。

ジョゼフの元に届いた、ノーベル文学賞受賞の知らせ。盛り上がる周囲とジョゼフ。

その隣に寄り添う、妻のジョーン。

「天才作家の小説は、実は妻ジョーンが書いていた。」

 

昭:はい。お久しぶりです。当方の心の男女キャラクター『昭と和』がやって参りました。この挨拶の下りも段々手慣れてきました。なのでサクサクと本編へ。我々二人が観て感じた事を好き勝手に話していきたいと思います

和:2019年米アカデミー賞主演女優賞ノミネート、ジョーン役グレン・クローズ。ほんま上手い役者さんやなあ。ああいう『何を考えているのか分からんけれど、腹に一物抱えている人』という表情。堪らん。

昭:怖いよな~。一見天才大先生の妻でひたすら彼をサポートしてきた、という呈で実は彼女こそがその天才大先生そのものやった。けれど周囲にはそんな雰囲気を微塵も出さずに内助の功を装っていた。

和:ノーベル文学賞受賞の一報で幕開け。そして舞台は授賞式が執り行われるストックホルムへ。そこで過ごす授賞式までの日々とその当日。夫妻に付きまとう記者サニエルの存在も相まって。二人の出会いから結婚、そして現代文学の父誕生秘話というヒストリーが紐解かれていく。

昭:もともと大学講師と教え子の関係なんよな。文学部かなんかの。大学生活経験が無いんでよく分からんかったけれど…女子大?なのか女子ばっかりの狭い部屋でイケメン講師がひたすら講釈垂れてんの。それをうっとり眺める女子達。

和:片手でクルミを二個持って、ニギニギ手遊びしながら持論の文学論披露。今の自分なら逆に楽しんでお話聞けそうやけれど…まあハタチそこそこの小娘なんて見た目が良ければ容易く恋しちゃうよね。

昭:当時ジョゼフには妻子があったにも関わらず、二人は恋に落ちて。結果大学講師の職を失ったジョゼフ。その頃、出版社でOLとして働きだしたジョーンは「どこかに新しい才能は居ないのか。」という社内の声を聞いて、夫となったジョゼフを売り込もうとする。

和:なのに。大学で散々文学を語っていたくせに、いざ小説を書かせたらポンコツ。思わず「こういう風にしたら?」とジョーンが手直しをしたら…生き生きと生まれ変わった作品になった。そしてその作品は一気に世間の日の目を見た。

昭:「女の書いた本なんて売れない。」そう言われた1950年台。小説家になるのが夢だったジョーン。大学時代に書いていた小説。評判は良かったけれど、結局世間には認められなかった。もう夢は夢だと諦めていたけれど。夫のゴーストライターとしてその才能は開化した。

 

和:野暮な事を言うけれど。『現代文学の父』には担当編集者とかいないの?マネージメントは全てジョーンがやってるの?

昭:やめろやめろやめろ…。

和:打ち合わせとか、編集者からのコメントとか手直しとか校正とか。ジョーンはお茶菓子でも持って少し同席して。後から夫婦だけになって作戦会議するの?作家生活40年もそんなハリボテでやってきたの?

昭:こらこらこら。

和:今更、どこぞのルポライター風情が「本当は奥さんが書いているんじゃないですか?だって、あなたが大学生の時に書いた唯一の作品とダンナの本、作風が一緒じゃないですか。」なんて。これまでに気付く人幾らでもいるでしょうが。

昭:それはまあ…皆性善説で生きているでしょうし。まさか「大先生には実がゴーストライターが居る」なんて発想、思い付きませんやんか。

 

和:あとねえ。余りにもジョゼフが天真爛漫な子供過ぎる。

昭:子供と称していいいのか。ポジティブ…見栄っ張りと言うか…兎に角、面の皮の厚い人間だなあと思ったな。

和:ちょっとした新人賞とか。せいぜいそんなもんじゃない?自分が書いた事にした、他人の手が入りまくった作品が評価されても受け取れるの。それがノーベル賞って!世界最高峰と言っても過言ではない。よくそんな賞を堂々と貰いに行けるよ。

昭:あくまでも自分の作品だと思っているからやろう。作中でもジョーンに言ってたやん。「お前には発想力が足りない」って。原案は俺、それを仕上げるのがジョーン。そういう家内工業が当たり前で、40年もそうしてやってきた。けれど世間への作品名義は俺。だから表彰されるのも俺。

和:腹立つう!その考え方!

 

昭:二人の関係が夫婦じゃ無かったら。現代文学の父も誕生もしなかったやろうし、したとしても早くに破たんしたやろうな。

和:いつまでたっても大きな子供。実の子供以上に手のかかる夫。浮気も散々されたし、憎たらしい所だって一杯ある。なのに結局断ち切れない。

昭:好きだから。だけじゃないよなあ。夫婦としての絆。共に歩んだ日々があるから…小説だって、初めの作品は「この作品をどうしたら面白く出来るか」を考えた結果の共作。それ以降に書かれた作品については、夫婦間におけるアイデアの比率が分からないけれど…いうなればあの夫婦は共犯で、二人だけの秘密。

和:二人で作った初めての作品が出版社に認められた時。若い二人は手を取り合ってベットの上でぴょんぴょんとんだ。それから40年。ノーベル文学賞受賞の知らせを受けた老いた二人もまた、手を取り合ってベットの上で跳ねていた。…そういう二人なんよな。

 

昭:どうやらハリボテ大先生の正体をつかんだらしいルポライター、駆けだしたばかりでくすぶっている新人小説家の息子。彼らに詰め寄られ。挙句好き勝手な事ばかり言って苛々させてくるジョゼフに「ジョーンいっそすべてぶちまけちまえYo!」という気持ちが観ている側にどんどん募ってくる。

和:彼女が結局どうするのか。ジョーンのあの表情。そこは良い終わり方だなあと思ったな。

 

昭:この作品は一見「天才作家の妻が実はゴーストライターだった」一体いつ彼女のフラストレーションが爆発してとんだ修羅場になるのか、というハラハラ感を感じさせる作りだけれど。40年という夫婦の絆は決してそんな単純なものではない、という。

和:大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い…大好き。

昭:おっとまさかのそのフレーズで。…〆ていきたいと思います。
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